椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

涙光る時2


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/12/21


「・・・また眠っちまったか」

その日の夜。布団の横島は突然目を開くと、ポツリと呟く。

そして脳裏に、眠る寸前の記憶が蘇ってきた。

「・・・ハズい」

大の大人が女の胸に抱かれてめそめそしていたのだ。恥ずかしい事この上ない。




ふと、いい香りが漂ってくるのに気がつき、そちらに目をやる。
台所で誰かが何か作っているようだ。

「・・・シロ」
ついついその名を口にしてしまう横島。
すると・・・


がん!ごかかかっ!!ばっしゃん!!「あじゃぁっ!!」


と恐ろしい音+悲鳴が聞こえた後、笑顔のシロ(もち割烹着)が顔を出した。

「目が覚めたでござるか?ちょうど夕飯が出来上がったところでござる。
あ、待っていてくだされ、蝋燭を・・・」
「今凄い音がしたけど・・・大丈夫か?」
「ちょっと鍋がひっくり返って火傷しただけでござる。つばでもつけとけば治るでござるよ」
彼女は、明かりの蝋燭に火をともしながらそう言うと心配した横島に立ち上がる隙すら与えずにぺろぺろと、手の赤くなったところを舐め始め、言葉の通り一瞬でヒーリングしてしまった。

「今食事を持ってくるでござるよ」
シロは、なんとも言えない表情をしている横島を残して台所へと引っ込み、おぼんにお粥の入った土鍋を載せて、危なっかしい足取りで戻ってきた。
そのひやひやさせるステップに、起き上がって手伝おうとする横島だったが、


「先生は寝ていてくだされ!!」
その剣幕に・・・彼には従うしかなかった・・・。



「お・・・・お食事です・・・」
何とかひっくり返さずにヨコシマの布団の横へと到着。

「あ、ありがとう」
一安心と同時に恐縮する横島。


そして彼の枕もとに丁寧に正座した彼女(割烹着)は当然のようにさじを手に取り、お粥をすくい、横島の近くまで持っていく。





・・・・・・・。





「なあシロ」

「何でござるか?」←割烹着





「そいつはやっぱり・・・」

「あーんでござる」←くどいようですが割烹着






「いや、俺自分で食えるから」

「無理をしてはいかんでござる。その怪我の責任は拙者にあるがゆえ、拙者が看病するでござるよ」←何度も言いますが割烹着







・・・・・・。



沈黙・・・。




やがてシロの方がその沈黙を破った。

「あ、ははは・・・拙者何を言っていたんでござろうな?やっぱりこんなの先生に迷惑でござる・・・」
と言って食器を戻し、横島を起こそうと手を伸ばした。
が、その手を横島が掴む。
「あのさ・・・・え〜と。・・・やっぱ無理しない方がいいや。おねがい・・・できるか?」

「・・・は、はいっ!」
シロは、満面の笑みで答えた。







細く白い手に握られたさじが、土鍋の中に差し込まれ、少量の粥がその上に乗る。

湯気が上がるその粥は、彼女にふーふーと息を吹きかけられ軽く冷められる。


「あーん」

と言う言葉で口を開け、中にさじを入れてもらう。




さじの中身が口の中に移り、それを軽く租借すると、昆布風味の香りと、なにやら隠し味のピリリとした辛味が、口一杯に広がった。


美味かった。




「美味しいで・・・ござるか?」
目の前のシロは、少し心配そうに聞く。
「ああ、凄く美味いぞ」
「良かった・・・それならもっと食べるでござるよ」

そう言って彼女は次のさじを突き出して、

「あーん」←忘れているかもしれないですが割烹着です。











・・・しばらくして、土鍋の中身はカラになった。

「ごとそうさま」
「お粗末様です」
シロがカチャカチャと食器をかたし始める。

なんかいろんな意味で満腹になってしまった横島はふぅ、と息を吐き、思わず天井のはりを見ていた。

でも、悪い気はしなかった。




すると突然食器を片付ける音が止み、目をやるとシロが食器を片す姿勢のまま、うつむいている。

「おい、どうし・・・」
彼がそう言おうとした時、ぽたぽたと、床に何かが零れ落ちた。

「本当に・・・先生でござるよね。夢じゃなく・・・」

ぽたぽた・・・。

「朝起きたら全てが夢なんて・・・もう無いでござるよね・・・」

ぽたぽた・・・。

「シロ・・・泣いてるのか?」

横島が上体を起こし、その顔を覗き込む。
すると心配したとおり、蝋燭の光に照らされるシロの目からは後から後からぽろぽろと涙があふれ出ていた。

彼女もまた、孤独だった。

「会いたかった・・・・会いたかった・・・・」
彼は、そう言って抱きつく彼女をを、一瞬ためらった後にぎゅっと抱きしめる。

その抱きしめた肩は思っていたよりもずっと小さくてか弱そうだった。



この小さな体で・・・感覚では数十年に渡る苦労をすべて背負ってきたのかよ。

俺は・・・何てひでぇ事をしちまったんだよ・・・。
九年間も気づかなかったなんて・・・。



「何て言ったらいいか解んないけど・・・・すまん」

「せんせぇ・・・」

抱きしめる腕に力がこもる。





そしてその夜二人はまるで何かを取り戻すかのようにお互いを求め合った。


誰かの体温というモノが・・・狂おしいほど懐かしかった。















朝、横島は一人目を覚ました。
隣に目をやればシロが、途方もなく幸せそうな顔で、すやすやと眠っている。

そして自分の胸へと回される白い腕には・・・けして小さくない切り傷。
他でもない自分が戦闘でつけてしまった傷だ。
傷つけられた本人は「こんなもの超回復にかかれば三日で傷跡すら残らないでござる」などと言っていたが・・・。


こみ上げる小さな罪悪感。



再び彼女の顔に目線を戻す。すると、さっきは気づかなかった涙の後が、うっすらと残っていた。

何と・・・・何と美しいのだろう。

何と健気なのだろう。


自分などには・・・・勿体無すぎる。



「・・・ごめんな」

彼は布団のそばに脱ぎ散らかした衣類から、双文珠を取り出す。

込める文字は・・・『忘却』。





「・・・・」

























しかし、なにを思ったか。
彼はその文珠を元通りしまう。



「せめて体力が回復するまで・・・・それぐらいならそばにいてもいいよな」









それは・・・・・・・・・贅沢すぎる願いであろうか?


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