椎名作品二次創作小説投稿広場


ドッグス オア ウルヴズ?

式場で会いましょう


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:04/12/ 8

 「よっこっしっまぁぁぁ〜〜〜!!!」

 今日もまた、コリもせずに突っ走っていく美神令子。愛車に飛び乗り、凄い勢いで事務所から飛び出して行きます。

 ちなみに本日の原因は一枚のお葉書き。

 その内容は、と申しますってぇと…





 私達、結婚します   横島 忠夫

                   タマモ





 ちなみに、美神がその葉書きを放り出して飛び出した瞬間、ポンと音を立てて煙と共にそれは一枚の葉っぱになってしまいました。

 これが本当のお葉書き。お後がよろしいようで。

 もっとも、そんな事には気付かなかった美神令子は結婚式場に怒鳴り込もう…として、たまたまバイトで訪れていた唐巣神父に止められるまでヒートアップしまくっておりましたが。



「いや〜…神父がいるならって、ついここを指定しちまったけど…やっぱ架空の住所にしといた方が良かったかな?」

「そうねぇ…でも、あの程度ならいつもヨコシマがやられてるのに比べたら大した事無いんじゃない?」



 まさに体を張って弟子の暴走を止めた神父と、頭が冷えたのかワビを入れつつ何とか誤魔化そうとしている美神を柱の影から見物しつつ、そんな会話を交わすのは横島とタマモ。

 この2人、ここ数日外食する美神の席から見えるカップルを自分達の姿に見せかけたり――そのカップルは横島の思惑もあって、男の方が美神に殴られる直前まで幻術を解かなかったせいで現在も入院中です――

 文珠“夢”を枕の下に仕掛けてイチャつく自分達を見せたり――タマモが念を込めたため、結構なシロモノになったようです――

 シロやおキヌと横島が親しげに会話する姿を遠目に見せた…後、ゴキブリのように逃走したり――これは幻覚でなく実際にやったため、効果は抜群だった――

 などなど、美神の嫉妬をあおり続けていた。

 しかし、それでも自分の気持ちに気付かない。もしくは気付こうとしないからこそ美神令子。

 魂に自分でプロテクトをかける程の筋金入りの意地っ張り。



「なぁ…あの人が俺にホレとるってマジなんか?」



 もっとも、そのお相手たる横島忠夫もそれら一連の行動を見ても、なお気付けなかったりするので、逆にいいコンビなのかもしれない。

 そんな隣の相手を、このにぶちん…とジト目で見ながら呆れた様に答えるタマモ。



「…あんだけ解りやすいってのに、何で理解できないのよ…」

「いや、だってなぁ…お前に言われて、そーだったのか!って最初は思ったけど…段々自信が無くなってきて…」



 真正面から聞いても、美神令子は否定します。そっぽを向いて、顔を赤らめて。

 それを見て、まさか、ひょっとして。と正解に一応気付きつつも、それに自信を持てないのが横島忠夫。座右の銘は「この世に自分ほど信じられんもんが他にあるかああっ!!」。



「あんたねー……ま、いいわ。この私が保証してあげる。間違いなく、美神さんはあんたに惚れてるわ」



 実際、一度それとなく美神は横島にモーションをかけたことはあったのです。自分の想いを自覚して、行動しようとした事が。

 でもその時期に丁度ルシオラさんがいたわけで。そのモーション、というか探りはお互いすれ違って終わってしまいました。

 その後、一旦はルシオラに横島を委ねて諦めようとしたんですけど、ルシオラさんはいなくなってしまったわけで。

 現在。美神令子は自分が横島をどう思っているのか目を逸らしつつ、でも心の奥では自覚していて精神的にガードが甘い。でも気付かれると恥ずかしいし、でも横島が他の誰かに行くのは嫌。という……

 言わば、思春期のオンナノコ状態だったりするのです。

 素直になれば色々と問題が片付くのですが、横島をシロとくっ付けようとしているタマモにとってはそれでは困ります。

 完全に横島と美神を離せればそれもいいのですが、美神を敵にまわすのは怖いし、縁を切るには勿体無い。

 ここは一つ、横島に精神的に美神より上に立ってもらって、若干距離を置くのが理想的。



「ホンマか〜?だとすると…だとすると……今までの苦労がよーやく報われるのかっ!?あのねーちゃんのワガママなボディをこの俺が思うさまに貪れるんやなっ!?ううっ……長かった……コミックスにして39巻くらい長かったっ……!!」

「ってバカ!!横島!声が大きいっ!美神さんに気付かれちゃうじゃない!」



 妄想に入ってしまい、しかもその内容を叫ぶ横島に大声でツッコむタマモ。そんな事をすれば当然、鬼さんこちらと言ってるようなもので。



「そこにいたかー!!動くなアンタらーー!!!」

「ああっ!?見つかったー!?」

「いいから逃げるのよ、ヨコシマッ!ほら、こっち!!」



 命がけの追いかけっこが開始されてしまったわけです。



「やれやれ…」



 教育を間違ったな。

 さっきまで美神に説教をしていた唐巣神父は、今まで何度思ったか知れない弟子への確信を新たにする。今までのものとは、少しばかり意味合いが違いましたが。



「もう少し、大人になってくれればなぁ…」



 苦笑して、その場を立ち去る唐巣神父。

 鬼ごっこ3人衆が結婚式場に突入、嵐のように縦断してゆき、その苦情が回ってきて苦笑が引きつり笑いに変わるのは、もう少し後のお話。


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