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BACK TO THE PAST!

この辺書きたかったんです。


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/10/31


イアン、ほか二名がジャングルへ飛び込んだとき、ちょうど精霊龍は活動を再開していた。

まるで、何者かにタイミングを合わされているかの様だった・・・。








ザザザザザ・・・

草を掻き分けながら走る、乾いた音が高速で移動していた。
もちろんイアンたちである。

「エイジ、右だ!ビィト、お前は左から!散開して3方向から錯乱する!!」
イアンが走りながら仲間に指示を出す。
しかし、仲間は無言で、指示に従おうとしない。
「「・・・・」」
「おい、どうした!」
イアンは前方をさえぎる大きな葉っぱを払いのけながら、イライラとした声を出した。
エイジ(旧A君)はそんな彼を弱弱しい目で見つめ、
「だってよぅ・・・・本当に俺たちで勝てるのか?」
ビィト(旧B君)も彼に続く
「悪魔ヨコシマですら勝てなかったんだろう?あんな化け物にどうやったら・・・」
二人はかなり消極的だった。

「・・・」
イアンは弱気な二人を見つめ一瞬言葉を選んでから口を開く
「おいコラ・・・てめぇら・・・俺達が今まで一度でも獲物をしとめられなかった事があったか?!
一度でも死んだことがあったか!!

俺達は相手がキメラだろうと魔獣だろうと一度も怯むことなく戦ってきた!今回だってやりゃあ出来るに決まってんだろうが!!」

その言葉にくすぶっていたエイジとビィトの心に火がついた。
性格はあまりよくないイアンだが、こういう時と狩についてのカリスマ性はただものではないのだ。

「そう・・・だよな。俺たちに不可能なんかねぇよな!」
エイジの目に光が戻り、
「そうさ、今回はちょっとばかし・・・・いつものキメラより10倍ばかしでかいだけじゃねぇか!」
ビィトの足取りがしっかりした。

イアンは満足そうににやつくと
「じゃあいくぜ・・・散開!」
「「おう!!」」

イアンは、慣れ親しんだ仲間が左右に分かれていくのを感じ、そして、


小さく呟く。


「・・・・それに、別に俺たちが倒さなくたっていいのさ・・・」





一方、ヨコシマ達は・・・

もちろんするなど事が無く、ただ青年三人と精霊龍の戦いを遠くから見つめていただけだった。

木々の向こうでは戦いの火蓋が取って降ろされたのであろう、時たま風を切って飛来して行く矢や、怒り狂う精霊龍がちらほらと見えた。

「お〜お〜やっとる」
ババ様は感心しているような声を出してそれを眺めている。
「・・・・」
ヨコシマはあまり興味が無さそうだ。
タータは・・・

一人拳を握り締めていた。

何となく・・・・悔しかった。

確かに自分よりもイアンの方が腕っ節も技術も経験も数段上だ。
彼が伝説の若者に選ばれるとしても疑問は無い。

だが・・・この、突然大切なものを奪い取られたような虚脱感には、

どうしても納得する事が出来なかった。


「・・・さて、そろそろ行くか。風穴どの、ついて来てくれ」
やがてババ様がそう言い、ヨコシマの黒いマントのすそをぐいぐい引っ張って、何処かへ連れて行こうとする。見かけによらず、信じられないほどの力だった。
「おい・・・。何処行く気だ」
ヨコシマはちょっとよろめきながら、ひかれるがままにその場を移動し始めた。
大して動揺していないのは魔神ゆえの貫禄だろうか。
「きまっちょるだろう。光の洞窟じゃ」
自己中ばあさんはあっけらかんとそう言うと、今まで以上に力を入れてマントを引っ張り始めた。
それにはババ様の鉄の意志が感じられた。
「わかったわかった、行ってやるから引っ張らないでくれ・・・」
ヨコシマが観念したように言う。

二人は木々を掻き分け、ずんずんと森の奥へと進んでいく。

・・・そしてヨコシマは光の洞窟の中で待つのだろう。
伝説の若者イアンを。

タータはそんなことを考えながら、小さくなっていくヨコシマの大きな背中を見ていた。
しかし、

「何してる、タータ!お前も来るんだよ!!」
突然ババ様に呼ばれた。

なのでタータは、走り出した。


もしかしたら胸に淡い期待のようなモノがあったのかもしれない・・・。





ちなみに精霊龍は大空で暴れまくっている。



「ここじゃ」
「・・・いかにもって感じだな」
ババ様の案内で一行は光の洞窟へとたどり着いた。
ヨコシマはあまり機嫌が良さそうでは無いが、ここまで勝手に利用されれば誰だって怒るだろう。
だが今はそれよりも化け物退治だ。

「・・・光っていないな」
しかしヨコシマが目を細めて洞窟を見つめるがどう考えても洞窟は光っていない。
「何、もうすぐ光る」
ババ様はけろり。

すると、

ギャァァァォォォ・・・・ンン

すぐ近くで怒り狂った精霊龍が暴れまくり、その体から何かきらきら光る物が弾き飛ばされてきた。

「精霊石!?」
ヨコシマがそう叫んだ瞬間、石は光と共にはじけ、閃光がほとばしる。

やや遅れて洞窟へとたどり着いたタータは思わず目を覆ったが、ヨコシマが庇ってくれたおかげで大事には至らなかった。

「だ、大丈夫か」
タータが心配したような声を出し、
「痛ぇ・・・」
ヨコシマがぶすっとそう言った。魔族の血が流れる者にとって、いかに力ある者でも精霊石の光はとても痛い。

ちなみにババ様は当然のごとくタータの後ろに隠れていた。

ヨコシマは文句を言おうとしたが、別の物に目を奪われてしまった。

洞窟が光っていたのだ。
洞窟の周りの壁がピカーッと光り輝き、まるで本当に「・・・昼みたいだ」。

おそらく先ほどの精霊石な反応したのだろう。どうやらこの洞窟を構成している岩石はわずかながら精霊石を含んでいるらしい。
といっても、何100トンの岩に数グラムといった金にもならない量だろうが・・・

「さて準備は整った」
ババ様はそう言うとつかつかとヨコシマの前まで歩み寄り、
「おま・・・」
ヨコシマが何か言う前にその足元を杖で突付いた。

「うおっ・・・」
地面はまるでガラスのように砕け散り、彼は漆黒の闇に落ちていった。

「ヨコシマ!」
タータは慌てて穴を覗き込むが、相手が黒ずくめなのも加担してか、どうなっているのか全く解らない。

「あとは、勇気ある若者の出番じゃな・・・」
しかもババ様はそう言いって座り込んでしまう。
そしてしばらくして、いつまでも穴を覗き込んだまま喋らないタータに声をかけた。
「どうした?」

タータはしばらくその言葉を無視していたが、
「俺は・・・何のためにここにいるんですか?」

ババ様が「はぁ?」という顔をする。

「せっかく・・・せっかく皆のためになれそうだったのに、そのまで役目イアンにとられて、今度は何しなきゃいけないんですか!?

イアンが洞窟に行くのを笑顔で見守れとでも言うんですか!」
ぎっと歯をくいしばり、ババ様を睨みつける。

いつも温厚でへらへらしているタータが、怒り狂うのがよほど珍しかったのか、流石のババ様も少しばかり動揺する。しかしそのうちに、いつもの人を小ばかにするような顔に戻ると、

「・・・・・馬鹿か貴様は?お前が行くんだよ」

「はい?」

ババ様は、タータが突然の事に戸惑っているうちに、ひょいと杖で足を払い、穴の中へと突き落とした。

「どぅおあああああああああ!!!」
彼は暗い穴の中を5mほど落ち、ドスンと地面に着地する。
幸い、柔らかい所に落ちたらしく、怪我をする事は無かった。

痛む尻の辺りをさすりつつ、立ち上がろうとすると、上からババ様の声がした。

「タータァ!!伝説の若者が一人だなんて誰が言った?
勇気ある若者は何人もいるのさ!!

今ごろ村中の勇気ある若者が武器を手に化け物を食い止めている!!

そしてお前も勇気ある若者の一人さ!!

さぁ、行くんだタータ!お前が皆のために神の弓を取ってくるんだよ!!
そして新しい世代のお前達で化け物をぶち殺して、新しい村を作り直せ!!!」

タータはボォッと今言われたことを考えていた。

俺・・・が?
俺が皆のために何かやれるのか?

ババ様がかすれはじめた声で叫ぶ
「行け!」
タータも叫んだ。
「はい!」



そしてヨコシマもタータの尻の下から叫んだ。
「いいかげんどけ!」




・・・・・・・・・。




二人はゆっくりと洞窟の奥へと進んでいた。

ピチョン、と時折水滴が滴る音やひんやりとした空気はいかにも洞窟らしさをかもし出している。
ぬらりとした岩壁は、相変らず光を放っており、光源にだけは不便しない。

しかし奥に行くにつれてだんだんと光が薄れてきたので、少々薄暗い。
なのでサングラスモドキなどつけているなら視界が悪くてしょうがないはずだ。
「なぁ、それ外したら?」
「いや、見えるから大丈夫だ」

見えるらしい・・・。


「さてと・・・最初の難関か?」
ヨコシマが立ち止まった。


前方には二つの穴が口を開いていた。


「ど、どっちだ?」
タータがきょろきょろと両方の穴を調べるが、どっちもどっちで変わりも無く、両方とも先に続いてそうに見えた。

「こういう時はな・・・」
ヨコシマは髪の毛を数本抜き取ると、パッと空中へ放る。

髪の毛は空中で二手に分かれ、両方の穴へと吸い込まれて行った。

「・・・・・・・」
「だめじゃん」

一瞬落ち込んでいるように見えたヨコシマは
「そういや伝説・・・ってそのまんまじゃないか・・・・タータ、最初の部分はなんていったか?」
「あ、ああ、わかった・・・ええと、若者四度勇気と知恵を試される。一度目は軽く知恵比べ。黒い翼に付いて行け。・・・・って」



・・・・・・・。



「まんまだな」
「うん。そのまんまだね」

洞窟+黒い翼=蝙蝠

偉そうな事言っているわりには結構簡単だった。

「よし、蝙蝠がいるほうに進むぞ」
「わかった」


二人は足を進めようとしたが、

「・・・どっちにもいないな」
「・・・・うん」

壁の光のおかげで大分見通しが良いので解るのだが、どうみても両方の洞窟には蝙蝠など一匹もいそうに無かった。

おそらく夜なので外に出て餌でも食べているのだろう。

「まずいな・・・・いや、まてよ・・・」タータにその場にとどまるように言いって、ヨコシマはとりあえず右の方の洞窟へと入っていき、しばらくすると戻ってきた。

「こっちだ」
そしてタータを左の方へ導く。
「何で解るんだ?」
タータは不思議そうに聞いた。

「何度か洞窟に隠れていた事があったから解るんだが、蝙蝠のいる所にはな・・・」
ヨコシマはしばらく進んでから続ける。
「・・・必ず大量のフンがある」
確かに地面には何か白っぽい大量の土のような物が降り積もっていた。

「向こうには無かったから、こっちが正しい道だ。あとコイツは舞い上がるうえに病原体の塊だからな、吸い込まないように気をつけろ」
「わ、解った」
タータは言われるがままに頷いた。

こういうサバイバルな状況では達人に任せるしかない。

そして先を進むヨコシマの後を追おうとしたが、

ぐちっ、

なんだかよくわからないものを踏み、その感覚に疑問を浮かべる。

「ああ、言い忘れたが・・・」
ヨコシマが振り返った時にはもうすでにタータは今ふんずけたモノを見て硬直していた。

「・・・そのフンを餌に、ちょっとばかし虫が住んでる」

百足、蜘蛛、ゴキブリ、ミミズ、羽虫、名も知れぬ甲虫、さらに何だか良く解らないヌルヌルしたモノ。
そんなモノが所狭しとウゾウゾと蠢き続け、タータの足(裸足)の下でそんな彼らの体液が飛び出していた。






うぎゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!





洞窟に悲鳴が響き渡った。






コツ、コツ、コツ、・・・・

二人はようやく恐怖の蟲地帯を抜け、わりと足元のしっかりした場所を歩いていた。

ヨコシマの履いている不思議な材質で出来たブーツが立てる音がやけに大きく聞こえる。


「なぁ・・・」何となくタータが声を出した。
「ん?」


「何で、助けてくれるんだ?」
それは始めからの疑問だった。

助けを借りていた所まではまだ理解できる。

しかし、この魔神にとっては村を助ける事によるメリットなど何も無い。

ヨコシマはちょっと考えてからあっさりと答えた。
「そうだな・・・よくわからん」

「はぁ?」

「本当によくわからねぇのさ・・・俺はこの世界に大切なものを奪われた。でもな、だからといって全世界的に回して暴れまくっても、俺を陥れた奴が傷を負う訳でも無い、俺の大切な人が喜ぶとも思えない・・・」
フッと皮肉な笑い。
「・・・だから何となくだ。
本当に俺がどうしたいなんて事すら今の俺には解らないんだよ・・・・

つまりは・・・俺の機嫌が良くて運が良かったな。ってわけさ」

「そんな・・・」
あいまいな理由にタータは釈然としない顔をする。が、

「さぁ、話は終わりだ。次の試練のお出ましみたいだぜ?」

ヨコシマは目の前に現れた大きな石製の扉を見上げて言った。




『二度目は少し腕試し。飢えた野獣が待っている』


タータは伝説を思い出し、ゴクリとつばを飲み込んだ。


流石に蝙蝠を探すよりは手ごわそうだった。


だが、何故か頭の中の大半は他の事に気を取られていた。

それは・・・

(もし、ヨコシマを陥れた奴が解ったら・・・あいつはどうするのだろう?)





だがタータは無理やりその考えを追い払う。

今は、化け物退治が先決だ。


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