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WORLD〜ワールド〜

第十六話 狂想曲(3)


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/10/28

「ベスパァアァァ!!!!!!!!!」

 横島は右手にハンズ・オブ・グローリーを発現させた。
 その拳は横島の感情の爆発と相まって、目も眩まんばかりの煌きを放っていた。
 怒りをきっかけに、横島の潜在能力が解き放たれてゆく。

「くっ……なんてプレッシャー………!」

 ベスパは横島の放つ闘気から庇う様に、自らの顔の前に腕を出し、構えていた。
 横島の体から放たれる霊気の煌きは辺りを包み、真っ直ぐ天に伸び、光の柱と化していた。
 そのうちに変化が生じた。
 美神、おキヌ、弓かおりの三人に作用していた『治』の文珠が、その形状を変えてゆく。
 やがて文珠は、かつて横島がルシオラによって霊力をブーストされていた時に発現した、二文字同時入力が可能な文珠へと形を変えた。
 その文珠に『蘇生』の文字が刻まれる。
 すると蒼白だった三人の顔に赤みがさし、微弱ながらも規則正しい呼吸が戻ってきた。
 全て、横島が無意識に行ったことだった。

「あああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 次に横島は左手に文珠を生成、念を込める。
 刻まれた文字は『加速』。
 さすがに超加速ほどのスピードを得ることはできなかったが、ベスパとほぼ同等の加速を得ることはできる。

「そうさ! きなよ!! そうすれば私も……!!!」

 言い終わる前に、横島の拳とベスパの拳が衝突した。
 パワーは互角…な訳がない。
 ベスパの圧倒的パワーの前では、『まだ』ヒトに過ぎない横島の力など、チンケなものだった。

「ぐ…お……ッ!!」

「は…ああァ!!!」

 ベスパの拳が横島の拳を押し返す。
 横島はそのままパワーに押され、体ごと弾き飛ばされる…その刹那。
 横島の右手を包んでいたハンズ・オブ・グローリーが解け、横島とベスパの拳の衝突点に流れ込んだ。
 そして流れ込んだ霊力はそのまま文珠の形に凝縮する。
 ベスパの目に文珠に刻まれた『縛鎖』の文字が映った。

「なっ……!!」

 文珠が輝き、発動する。
 すると地面から数本の鎖が飛び出し、ベスパの体を束縛した。
 横島は弾き飛ばされながらもすでに体勢を整え、空中でベスパの方へと体を向けていた。
 その手にはサイキック・ソーサーが輝いている。

「はあッ!!」

 掛け声とともにサイキック・ソーサーが放たれた。

「なめるなぁッ!!」

 ベスパは四肢に絡みつく鎖を力任せに引きちぎると、迫り来るサイキック・ソーサーを殴りつける。
 サイキック・ソーサーは爆砕、霧散した。
 横島はすでに地面に降り立っていた。
 その手には、再びハンズ・オブ・グローリーが輝いている。
 ベスパはゆっくりと横島の方へ向き直った。





 水晶観音を纏っていたおかげか、三人の中で最も軽傷(といっても致命傷にかわりはないが)だった弓かおりは、いち早く意識を取り戻していた。
 そして、目の前の光景から目を離すことが出来ずにいた。
 ベスパと、横島の……ほぼ互角の闘い。
 自分の目では捉えきることのかなわぬスピードでの攻防。
 それを横島は行っていた。

(あれが…横島さんだというんですの……?)

 また視界から横島の姿が消える。
 かおりの脳裏に普段の横島の姿が浮かんだ。
 いつもへらへらしたいい加減な男。
 美人とくれば誰にでも飛びつく節操のない男。
 美神除霊事務所で勉強会を開けばかならず二桁は顔を出す。

「あんな男のどこがいいんですの!?」

 と、おキヌに問い詰めたこともあった。
 その時のおキヌの答えに納得はいかなかった。

「あいつはすげえやつさ。ま、普段はとてもそうは見えねえけどな」

 そんな雪之丞の言葉にも頷くことはできなかった。
 それほどまでに、かおりの中で横島の評価は最悪だった。
 だが………。
 ベスパの霊波砲にサイキック・ソーサーをぶつけ、縦に両断した横島の姿を見ながら、かおりの中で横島の評価は確実に変わりつつあった。

「横島さんは…すごく優しくて…… とても…強くて………」

 そんなおキヌの答え。
 今なら、なんとなくわかる気がした。





 ベスパと横島の、何度目かの交差。
 遂に横島は膝をつき、両手を地についた。

「はあ…はあ……」

 ベスパは荒い息をつきながら横島に歩み寄り、2メートルほど手前で立ち止まった。
 そして手のひらを横島に向ける。

「終わりだよ……ヨコシマ……」

 手のひらに、魔力が集中する。
 膨大な魔力は、小さく圧縮されて凶悪な殺傷力をもつに至る。
 横島は顔を上げてベスパを見たが、立ち上がろうとはしなかった。
 ベスパは霊波砲を放とうとした。
 放とうとして、横島が右手をついているあたりの地面にヒビが入っていることに気がついた。
 自分がつけたものではない。そんな覚えはない。
 だとしたら………?

「しまっ……! があッ!!」

 突如ベスパの足元の地面が爆砕、そこから伸びたハンズ・オブ・グローリーがベスパの顎を打ち抜いた。
 横島はハンズ・オブ・グローリーを密かに伸ばし、地面を掘り進んでいたのだ。
 モロにくらってしまったベスパの体は、意思に逆らい、ふらついてしまう。

「終わりだ! ベスパッ!!」

 横島はハンズ・オブ・グローリーを霊波刀のように展開させると一気にベスパとの距離を詰めた。
 そのまま大上段に構えて振り下ろそうとして……ガクンとからだの動きが鈍った。
 まるで後ろから引っ張られたかのように、急激に動きが止まった。
 それが『加速』の文珠の効果がきれたことによるものだということに気付くには少々時間がかかった。
 そして……ベスパを相手にその隙は致命的だった。
 がら空きのボディにベスパの拳が打ち込まれた。

「げっ……ぐぇ………おえぇッ……!!」

 体を折り曲げて、無様に地面に転がって、胃の中の物をしたたか吐く。
 だが、ベスパの一撃をまともに受けて、体が原型をとどめているだけでも称賛ものだった。

「がっ…かはっ!」

 横島は、悶えながらも手のひらに霊力を集中し、文珠を創りだそうとした。
 しかし、その手をベスパに踏みつけられて、霊力は霧散してしまう。

「ぐあッ!!」

「今度こそ…今度こそ、おしまいだよ。ヨコシマ」

 ベスパのその声には一片の慈悲もなかった。
 そのまま横島を見下ろし、再び霊波砲の構えをとる。
 そこで、上空から迫る小さな影に気がついた。

「ダメえぇぇぇぇッ!!!!」

「パピリオッ!?」

 パピリオは両手を突き出してベスパの体を横島の上から突き飛ばした。
 そのまま横島を庇うように立つ。

「ベスパちゃん! どうして!? どうして今更ヨコシマのことを!?」

 突き飛ばされたベスパはゆっくりと立ち上がり、妹であるパピリオに冷たい眼差しを投げかけた。
 その底知れぬ冷たさにパピリオは気圧されてしまう。
 それでも目をそらそうとはせず、辛抱強くベスパの言葉を待った。

「ヨコシマを殺せば…私はもう一度アシュ様に会えるんだ。…もう一度会えるんだよ」

 少しうつむき加減になり、パピリオから目をそらしてベスパは言う。
 その言葉は自分に言い聞かせているようでもあった。

「そんな…そんなの、どうやって……アシュ様は死んでしまったんでちゅよ!? ベスパちゃんの言っていることはわからないでちゅ!! それに……」

 それに、もしそれが事実だったとしても。
 パピリオは、ベスパほどにアシュタロスに対して思慕を寄せてはいない。
 それよりも、まるで本当の妹のように接してくれていた横島に対する想いの方が強かった。

「ダメでちゅ! ヨコシマは殺させまちぇん!!」

 パピリオは横島の前に立ったまま、両手を広げる。
 そして、その目が大きく見開かれた。
 ベスパは、なんのためらいもなく、霊波砲を放ったのだ。

「くあッ!!」

 パピリオは咄嗟に防御の姿勢をとった。
 霊波砲はパピリオに決して少なくはないダメージを与え、消えた。

「そんな…ベスパちゃん…どうして……?」

「たとえ…たとえアンタでも…邪魔するというのなら容赦はしないよ」

「嘘…でちゅよね? だって…だって…」

 パピリオはベスパを縋るような目線で見つめた。
 だが、ベスパの目は完全に敵を見つめるソレだった。
 再び霊波砲が放たれる。

「あぅ…! そんな…そんな……ベスパちゃん!!」

「どきなッ!! パピリオッ!!!!」

 ベスパの迫力にパピリオはその幼い肩をビクリと震わせた。
 本気だ。
 どかなければ、本気で姉は自分を殺す。
 それが、否定したくてもできない事実が、パピリオの胸に突き刺さった。

「ヒ…ヒック……うぐぅ………」

 涙がとめどなく零れ落ちる。
 ベスパを止めるということは、ベスパと戦うということ。
 この世でたったひとりの姉と戦うということ。
 姉を失う苦しみは嫌というほど知っている。
 そんなことが、できるはずがない。
 パピリオは迫り来るベスパに対して、何も出来ぬまま、ただ泣きじゃくっていた。

「ベスパアアアァァァァっ!!!!」

「ヨコシマッ!!」

 再び激情にかられて横島はダメージも抜けきっていないままベスパへと突進した。
 だが、文珠による加速を得ていない横島の動きなど、ベスパからすればスロウもいいところだった。
 霊波刀状に発現させたハンズ・オブ・グローリーはあっさりと空を切り、カウンターで魔力の込められた拳をもらう。
 横島はギリギリで両腕を交差させてそれを受け止めた。
 骨が砕けるいやな音が辺りに響く。

「ぐああぁぁぁぁッ!!!!」

「死…ねぇぇぇーーーーーー!!!!」

 顔面に迫るベスパの拳。
 横島にはそれがとてもスロウに見えた。
 死に瀕して、集中力が極限まで高まったのだ。
 そして『創造力』は発現した。

「なにぃ!?」

 ベスパの、驚愕の声。
 横島の眼前に、巨大な盾が現れた。
 それはベスパの拳を受け止めるだけでは飽き足らず、その巨大な質量でベスパの体を弾き飛ばす。

「馬鹿な! 文珠を使う暇なんてなかったはずだ!! お前、一体…!?」

 その光景を見ていた、ベスパ、パピリオ、そしてかおりは呆気にとられていた。

「今のは…横島さんがやったんですの…?」

「ヨコシマ……凄い…」

 横島を中心に『力』が渦を巻く。
 空間を歪ませ、岩盤を砕き、巻き込んでゆく。
 やがて、その力は指向性を持ち、ベスパへと叩きつけられた。

「ぐぶっ…!!」

 ドゴンとけたたましく、鈍い音をたて、ベスパは岩壁へとめり込んだ。
 そして横島は膝をつく。
 文珠を出して、腕の治療にとりかかった。

「ヨコシマ…大丈夫でちゅか?」

「パピリオ…ああ、大丈夫だ。ありがとな…助けてくれて……」

「ううん……。ベスパちゃんは………?」

「死んじゃいないだろ。かなりのダメージは負ってるだろうけど…」

 そう言って横島は先ほど自分がやったことを思い出す。
 無我夢中でやったことだったが…確かに、『創造力』を感じた。
 目覚めてきた力に対して多少の喜びは感じたが、心は晴れなかった。

(俺の…俺のせいで…全てが狂ってゆく)

 もう、心がぐちゃぐちゃだった。
 突然、『創始者』を名乗る男に襲われ。
 自分には『創造力』が備わっているという。
 生きるためにはそれを引き出さなきゃならず。
 開始された修行。
 上がらぬ成果。
 そして…敵に回ったベスパ。
 美神、おキヌ、弓かおりの傷ついた姿。
 次々と襲い来る理不尽の連続に、まだ17歳にすぎぬ横島の心は、疲弊しきっていた。
 ふと、思う。

(俺のせい? いや、違うだろ? 悪いのは全部…)

 しかし思考は、かおりと目が合った時点で中断された。

「弓さん! よかった! 無事だったのか!!」

 横島は喜色を満面に浮かべてかおりの下へと駆け寄る。
 そこでようやく美神とおキヌも呼吸を取り戻していることに気がついた。

「よかった…みんな無事だ……。もし…もしみんなに死なれてしまったら、俺は……」

 横島の目に涙が浮かぶ。
 やがて涙は瞳からこぼれ、頬を伝い流れ落ちた。

「横島さん……」

「ヨコシマ………」

 そんな横島を心配そうに見ながら、かおりとパピリオは声をかけた。
 横島は二人の方を振り向いて答える。

「大丈夫…大丈夫だよ……二人の方こそ―――――ッ!!」

 ゾクリと。
 背筋を怖気が走った。
 岩壁が爆砕し、中から影が飛び出す。

「ヨコシマァァァァァ!!!!」

「ベスパッ!!!!!!」

 ベスパはひどく傷ついていながらもなお、その身に闘志を漲らせていた。
 ありったけの魔力を込めて、横島に拳を向ける。
 横島は、パピリオは、かおりは、完全に気を抜いていた。
 かわすことも、庇うこともできなかった。
 だが、それでも。
 ベスパの拳は横島には届かなかった。
 横島の前に、パピリオでもかおりでもない影が立ち塞がっていた。
 ベスパの拳は、その男の纏った紅蓮のごとき紅い装甲によって完全に受け止められていた。

「へへッ、間一髪ってか!? なんかおかしなことになってんな。状況説明は後で聞くぜ!!」

「雪之丞ッ!!!!!!」

 真紅の戦神、伊達雪之丞推参。






「邪魔を…邪魔をするなあ!!」

「おっとぉ!!」

 今度は雪之丞にむけて突き出された拳を雪之丞は首を曲げるだけで回避。
お返しとばかりにベスパのボディに痛烈な一撃を見舞う。

「ぐはッ!!」

「おっ…とっと……」

 雪之丞の一撃を受けてベスパは地に倒れ付す。
 ベスパはもはや全ての力を使い果たしていた。
 すでに立っているのもやっと、といったほどだ。
 しかしそれは雪之丞も同様だった。
 彼も、メドーサとの闘いで体力は尽きている。
 膝は笑い、まともに立つことも怪しかった。

「邪魔を…邪魔をするなよ……私は…私は、アシュ様に会いたいんだ……」

 目に涙すら浮かべて、ベスパは歯を食いしばって立ち上がる。
 体は見ていて痛々しいほどに傷ついていた。
 それこそ、パピリオが思わず目を背けてしまうほどに。
 一方、雪之丞は一切目をそらすことなくベスパを見つめていた。
 その目には怒りすら表れている。

(なるほどな…そういうことかよ……)

 雪之丞は、なぜベスパがパレンツの側についたのか、その全てを理解した。
 理解したからこそ、ベスパを許すことができなかった。

「この、バッカ野郎がッ!!!!」

「ッ!!」

 雪之丞はなんの霊力も込めず、ただ腕力に任せてベスパを殴り飛ばした。

「会いたい、会いたい…さっきから勝手なことばかりぬかしやがって…! てめえ、そんなことをアシュタロスが望んでると思ってんのか!!」

「!?」

「何万年も、何十万年も足掻いてようやく眠ることができたんだろうが!! 気持ちよく眠っている所を叩き起こされて、頭にこねえやつなんかいねえんだよ!!」

 雪之丞は大声を張り上げながらベスパへと歩み寄る。
 ベスパは呆然と立ち尽くしていた。
 雪之丞は、左手でベスパの胸倉をつかみ取る。
 そして右手を思い切り握り締めた。

「死んだやつにまでてめえの『エゴ』を押し付けてんじゃねえ!!!!」

 叫び、もう一度ベスパを殴り飛ばす。
 かつてパレンツの誘惑をはねのけたからこその、雪之丞の怒りだった。

(死んじまった奴にいつまでも依存してたってしょうがねえんだ…死んじまった奴も絶対にそんなこと、望んじゃいねえ)

 ベスパは、今度は立ち上がろうとはせず、ごろりと仰向けに転がった。
 その頬には涙が止め処なく流れていた。

「わかってた…わかってたさ、そんなこと……。アシュ様が、そんなこと望んでないってことくらい………だけど、会いたかった……会いたかったんだ………!!」

 震えた声で、ベスパは己の心情を吐露した。
 涙を隠そうともせず、ベスパはしばらくの間泣き続けていた。

「そうだ…間違ってた……私が間違ってたよ」

 独り言のように呟いて、ベスパは体を起こした。
 その顔は妙に晴れやかというか、達観したというか、そんな感じがあった。
 弱々しい微笑みを浮かべながら、雪之丞たちに向き直る。

「アシュ様には…やっぱり私のほうから会いにいかなきゃならなかったんだよね……」

 そう言ってベスパは己の胸に手のひらを当てた。

「馬っ鹿野郎ッ!!!!」

「ベスパちゃん!!!!」

 咄嗟に飛び出そうとした雪之丞よりも。
 姉を失いたくない一心で駆け出すパピリオよりも。
 さらに早く飛び出した影があった。
 横島は、ベスパの手を掴み、覆いかぶさるようにしてベスパを押し倒していた。

「バカヤロウ……それこそ大馬鹿野郎だ、お前は………お前がいなくなっちまったら、パピリオはどうするんだ……一人っきりになっちまうだろが」

 言って、横島は立ち上がる。
 遅れて、パピリオがベスパに覆いかぶさった。
 ベスパの首にすがり付いて泣きじゃくる。

「嫌だよ……ベスパちゃんまでいなくなっちゃったら、私…私……!」

 そこからは、もう言葉にならなかった。
 ただ、ベスパの胸に顔を埋めて、泣き続けた。
 ベスパは、倒れたまま起き上がろうともせずに、泣きじゃくるパピリオを見つめていた。
 その頬を、再び涙が伝う。

「そうさ……馬鹿なんだ……馬鹿なオンナなんだよ…私は………」

 そしてそのまま、姉妹は泣き続けた。
 妹は姉にすがって。
 姉はすがりつきたかった者を胸に思って。

「ちっ……」

 雪之丞はそんな二人から視線を外し、地面を転がっていた小石を蹴飛ばした。

「胸糞悪ぃぜ………!」

 やがて、美神とおキヌも意識を取り戻した。
 むくりと起き上がり、事態の把握に努める。

「ううん…私たち、生きてる…? 一体、どうなったの? ベスパは?」

「横島さん……?」

 おキヌの視線の先には、横島がいた。
 ただおキヌの方からは背中しか見えないため、横島の表情を読み取ることはできなかった。
 二人の意識が戻ったことに気がついたかおりが、かいつまんで状況を説明した。















 この時、横島の中にあったのは、ただ、怒り。
 
 いや、それすらも超えて、もはやそれは憎悪。
 
 そして、そこから生み出される殺意。
 
 それだけが、横島の中にあった。
 
 そしてそんな横島の頭の中に。
 
 最も憎むべき者の声が響いた。











 そして妙神山から横島の姿は消えた。



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