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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

哀しきもの、その名は男!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 9/28


俺ってつくづく弱いよな…立場が。

流されるままに逃げ回って、気がつけば簀巻きにされて転がされて…。

俺の意見はすべて却下。

誕生日の主役から、一転して景品扱い………。

……悪い、話しててくじけそうになった。

でも、男って皆そうなんだよな…。





「ホーッホッホッホーッ!! こういう勝負なら、私に有利なワケ!! 伊達に闇市とかに通じてないワケ!!」

「エミちゃん、ちょっと待って〜! 私〜、オークション苦手なのに〜!」


高笑いを上げながら、値段も吊り上げていくのはエミさんだ。

さすが、百戦錬磨のつわもの…駆け引きが上手い。

冥子ちゃんもえらい金額をぽんぽん出してるけど…。




「ど、どうしよう、貧ちゃ〜ん…!」


小鳩ちゃんは知っての通り貧乏だ。

俺でさえ同情を禁じえないほどの貧乏だ。

福の神がいるのに、何故か以前と変わらず貧乏のままだ。


「くっそ〜…美神はんめ! ワシらが貧乏なの知っとって、こんな企画立てよってからに〜!」


貧乏神改め福の神は、福の神からは到底出てきそうにない台詞を吐いていた。


「…きっと、私みたいに貧乏な子は、欲しいものなんか手に入らない運命なのね…。」

「諦めたらアカンで、小鳩ッ!! 貧乏かてきっと幸せはある! 幸せを掴むんは金やない、小鳩自身や!!」

「だって、だって…ッ!!」

「泣いたらアカン!! 泣くな〜、小鳩ォ〜!!」


…………。

仕方ない、少しフォローしてやるか。


「あ、あの〜…美神さん?」

「さあ、他には!! 他は…って、なによ?」

「小鳩ちゃんたちみたいな一般人には、このルールは厳しいんじゃないかと…。」


視界の端で、俺の言葉が聞こえたのだろう小鳩ちゃんがこくこくと頷いている。


「あら、何もお金じゃなくてもいいのよ? それならそれで、支払えるものは他にもあるでしょ?」

「ま、まさか…!!」


俺の脳裏を駆け巡るいかがわしい妄想。

さすがに、その全てを語るわけにはいかないので、ここでは割愛させてもらう。


「って、人の人格を貶めるような妄想はやめんかーッ!!」

「ああっ、心を読まれたッ!? …って、違うんですか?」

「違うわよ!! 他にもあるでしょ!? さっきのシロやタマモみたいに交換条件とか、他には労働力とか!!」


そのとき、視界の片隅で小鳩ちゃんの目が光った気がした。


「…こ、小鳩…?」

「貧ちゃん…辛くても、くじけちゃダメよ…。」


不吉なことを呟いて、小鳩ちゃんは決意を秘めた表情で叫んだ。


「一年間、貧ちゃんを美神さんのもとに奉仕させます!!」

「こ、小鳩ォォォーッ!?」


いきなり身売りされた貧が、驚愕に目も口も大きく開く。

開いた口が塞がらないってのはあーゆー事を言うんだろうな。

かくいう俺も、金魚みたいに口をパクパクさせるしか出来ない。


「でもねー…貧乏神に奉仕されても…。」

「大丈夫です!! 一応、こんなんでも福の神ですし!」


こんなん呼ばわりされた貧が、ショックのあまり石になってる…。


「んー…そうね。エミとかを貧乏にしたりすれば面白そうだし…オッケー! その提案、受けましょ。」

「あ、ありがとうございます!!」


って受けるんですか、美神さん!?

いやいや、小鳩ちゃんも喜んでないで!! 貧が灰になっていく!


「ちょっと待ったァーッ!!」


異議を唱えたのは、当然と言うか何と言うか、エミさんだった。


「なに不穏当なこと口走ってるワケ!? そんなこと、させるワケないでしょーがッ!!」

「あらそー。なら、もっと頑張りなさいね〜♪」


美神さん…あんた楽しんでますね、心の底から。


「グググッ…!! なら…こっちはタイガーを奉公に出すワケ!!」

「エミさんッ!?」


不意打ちで名前を持ち出され、タイガーがうろたえる。


「タイガーの能力の恐ろしさはあんたもよく知ってるワケ! それを二年間無料奉仕!! これでどう!?」

「ふむ…。」


美神さん、なに心動かされてるんですか!?

タイガー…お前もこれから、俺と同じ目にあうことになるのか。


「待ってくださいよ、エミさん! そりゃ、あんまりタイガーが可哀想じゃないか!!」

「真理しゃん!!」


真理ちゃんの援護で、救われたように表情を輝かせるタイガー。

……同情してやって損した。


「あーら、タイガーはうちのスタッフなワケ。つまりはうちの備品。どう扱おうが私の勝手なワケ。」

「な…ッ!? タイガーはあんたのモノじゃないだろ!? タイガーは…タイガーはアタシのモノだ!!」

「真理しゃん…!」


感動的ですねー。

勝手にやってろって感じやねー!

別に羨ましく…あるもんか、チクショー!!


「ほほう…いい度胸なワケ。で、あんたのモノだから、なんなワケ?」

「だから……アタシがタイガーを担保にする!!」

「真理しゃァァーんッ!?」


…すまん、タイガー。一瞬でもお前を妬んでしまった。

哀れすぎる…。


「ちょっと!! タイガーはうちのスタッフでもあるワケ!! 優先権はこっちにあるはずでしょ!?」

「スタッフだから何だってんだ!! タイガーはアタシのモノだって言ってるだろ!?」


エミさん、真理ちゃん…。

タイガーの所有権を巡って言い争ってるけど、当の本人えらい落ち込んでるぞ。

雪之丞のヤツが優しく肩叩いてるけど……このとき俺も雪之丞も、この後さらに起こる悲劇は予想していなかったんだ。


「…雪之丞。あなたも他人事ではありませんわよ?」

「へ!?」


弓さんの一言に、その表情がひきつる雪之丞。


「美神おねーさま! 私は雪之丞を担保にいたしますわ!!」

「ゆゆゆ、弓ィィッ!? てめぇ、何トチ狂ってやがるんだ!?」

「おだまりなさい! おねーさまの下に仕えることが出来るのよ!? 少しは有難がったらどうなら!!」

「無理ゆーなァァァッ!!」


うん。無理だろうな。

万年、美神さんの下で働いてる俺が言おう。

あの人は鬼じゃ。そして、鬼の下で働くのは辛すぎる。


「この仕事、常に人手不足と聞いていますし、でしたら雪之丞でも人手になるかと。」

「そうねー…。それに雪之丞の力なら、充分役に立ってくれそうだし、なかなかいい話かも…。」

「冗談じゃねぇ!! 俺はいかねぇからな!!」


断固拒否の姿勢は、とても立派だぞ雪之丞。

しかし、その二人を相手にどこまで持つかなー…。


「…雪之丞。あなたに拒否権はなくってよ。」

「何のことだよ?」

「もし拒否するのなら、今後我が家は一切、あなたに仕事を斡旋しません。」

「んなッ!? そりゃねーだろ!? 俺みたいなヤツに仕事をまわすとこなんざ、そうそうねーんだぞ!?」

「なら…いいですわね?」

「な……。」


…早かったな。堕ちるの。

タイガーと二人して『ドナドナ』を歌うな。せつなくなる…。


「…じゃあ〜私も〜、まーくん賭ける〜〜。」

「って冥子はん!? いきなり何を!?」


冥子ちゃんの突飛な行動はいつものことだが、今回のこれはどういう思考回路で判断したのだろう。

どうせわけのわからん理由だろうが、やられる方は一大事。

必死に鬼道が説得する。


「何でや、冥子はん!? あんたなら正攻法でも充分やろ!? わざわざ僕を賭ける理由なんて…!!」

「え〜。でも〜、エミちゃんも〜やってるし〜。」

「そッ…そんな理由…!?」


予想以上にくだらん理由だったな。

鬼道の身体にふつふつと怒気が漲っていくのがわかる。

その気持ちも、わかる。


「冥子はん、あんたな〜! そんな理由で人の人生を…!!」

「だって〜これって〜、大好きな人を賭けたほうが〜いいんでしょ〜?」

「……は?」

「だから〜私も〜、まーくんを〜賭ける〜♪」

「え…? えぇっ、いや、それって…! あ、あれっ?」


にこにこと笑う冥子ちゃんを前に、真っ赤になりながら混乱する鬼道。

今度は俺の身体にふつふつと怒気が漲っていくのがわかる。

その気持ちも、わかるだろ?


「まーくんは〜、私の大好きなお友達ですもの〜♪」


………あぁ?


「あ…お友、達…。は、ははッ…ま、ええか。」

「? ど〜したの〜?」

「何でもあらへんよ。」


そう言うと、くるっと美神さんのほうを向き直る鬼道。

その顔は、どこか清々しくて。


「美神はん…お願いします。」


両手を差し出すその姿は、犯罪者が自首するときのようでもあり。

お前はそれでいいのか、とか。

あんたやっぱり漢や、とか。

いろいろ言いたいことがあったりするんだけど、もうなんか涙しか出やしない。



俺は敬礼した。

縛られてたから、心の中で敬礼した。

雪之丞、タイガー、おまけに貧も敬礼していた。

みんな泣いていた。

もちろんBGMは、『ドナドナ』だった。








なあ、男って哀しいよな。

もちろん、これは今日起こった出来事の一幕に過ぎないさ。

とんでもないことは他にもあった。

でも、同じ男として身につまされたというか、とにかく胸が震えたんだ。

これが男の歌…ってやつなのかなぁ。


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