目覚めたら俺はベッドの上で寝ていた。
俺はどうなったんだ……GS試験に出てあいつと戦っていて…そこで記憶が途切れている。
ここがどこだか確認しようにも体を動かそうとすると激痛が走る。
何があった わからない 俺はどうなったんだ
ここの神主であろう初老の男性と共に出てきた男は横島とタイガーを見て驚いていた。
だがそれも少しの間だけのことですぐに落ち着きを取り戻すと居心地が悪そうに目をそらして……
「久しぶりだな」
とだけ言った。これが彼の精一杯だった。道を踏み外し、荒れた情けない自分をこの二人はよく知っていると思ったからだ。そう、自分と戦ったこの二人は……。
そしてそんな男、陰念を見た横島とタイガーの反応は
「「「「「誰??」」」」」
夏子を除いた全員と共にユニゾンした疑問の声だった。
「陰念だ! てめーら俺と戦っただろうが!!」
あんまりといえばあんまりな反応に思わず先程までの居心地の悪さも忘れて横島とタイガーを指差して叫ぶ。事件現場に居なかった愛子や鬼道、その場には居たものの陰念にはあまり関わってないピートはともかく、実際に戦った横島とタイガーがこの反応とは酷いと言えよう。
尤も陰念も割と変わってたりする。目つき、というか顔つきの悪さは変わってないが登場時は逆立っていた金髪は今では黒髪が普通に重力に従っている。
「……おお、言われてみれば」
「……たしかに顔はそれっぽいですノー」
言われてから結構間を空けて気づく二人。そこでようやく警戒心と言うものが生まれた。
「てめえ、何でここに!?」
「とゆーよりも生きてたんですノー」
あからさまに、ではないもののいつでも動けるように気構えをしておきながら軽口を叩く。そこに割り込むように神主が彼らの間に手を翳す。
「君達に色々あったようやがこいつは今、保護観察の身。特に何かするわけでもない。諍いは無しにしてくれんか」
穏やかな声でそういわれると横島もタイガーも元々喧嘩気質ではないのであっさりと引き下がる。それを見て神主は微笑むと夏子へと顔を向ける。
「夏子、除霊がまだ一つ残っているのでな。すぐに戻れるからすまんが彼らに茶を出しといてくれるか」
「わかりました」
「それでは皆さん、今は失礼させてもらいます」
そう言うと神主は陰念を連れて外へと出て行ってしまった。
一方横島たちは屋敷の中へと通され、一部屋にしてはかなり広い畳部屋へと通された。
「それにしても何で陰念がここに居るんだ?」
夏子が持って来た緑茶と煎餅を頂きながら横島は隣に座る夏子に尋ねた。
「ウチもよう知らんねん。何か悪いことやろうとして未遂やったから保護観察の処分が下されて二週間前に師匠が観察役になったとしか聞いてへん。それ以来ここに居候してる。そういう横島はなんで陰念のこと知ってるん?」
今度は夏子が尋ねてくる。特に隠すことではないので横島も軽い気持ちで応える。
「ああ、去年のGS試験で戦ってな……」
「ええっ! 横島GS試験出たん!?」
最後まで言う前に夏子の驚きの声が響く。
そう言えばさっきのまで雑談でも美神のところで働いてることは言ったがGS資格を取ったことまでは話してなかった。
「おう、きちんと資格も取ったぞ」
かなり命がけだったけどな、と心の中だけで付け足す。
「凄いなぁ、ウチは高校卒業してからて思っとったけど…ウチも次の試験受けよかな」
「そうか、安心しなさい。このGS横島が手取り足取り尻取り教えよう!!」
「いやあの尻はえーねんけど」
いきなり目を血走らせて手を握ってくる横島に夏子はちょっと冷や汗垂らしながらやんわりと否定する。
が、そこで横島が引き下がるはずも無く、この状況を打破したのは第三者だったりする。
「横島君、汚い手で女の子に触るのは良くないね」
盾志摩が二人の間に割って入り横島のてを引き剥がす。
「なんじゃキサマ、何美形ぶっとるんや、あ?」
一方横島も初対面時からここに来るまで夏子や優希とコミュニケーション(セクハラともいう)を取ろうとするとことごとく邪魔してきた盾志摩にあからさまに敵意を見せる。絵で描写できるなら口から火でも吐かせたところだ。
「ふ、モテない男の僻みか?」
盾志摩の冷笑。
「ほー、そーゆーテメーも夏子や優希ちゃんにはあんまり相手されてねーみたいじゃねーか。美形ぶってる三枚目にしか見えねーぞ」
横島も負けじと小馬鹿にした笑みを浮かべ、挑発的な言葉を返す。そしてそれに盾志摩が思いっきり反応した。
「言ってはならんことを言ったな! 表へ出ろ、その詰まらん口きけんようにしたるわ!」
「じょーとーじゃぁ!! 」
「資格を持ってるからっていい気になるんやないぞ。貴様みたいなヘナチョコ、叩っ切ったるわ」
「ふ、テメーは持ってねーのか。なら先輩が直々にGSの厳しさを叩き込んでやろう」
自信満々な態度をとる盾志摩と鼻で笑う横島、ある意味正反対とも言える行動を取る二人が屋敷の庭先で向かい合う。
「横島さーん、頑張るんジャー!」
「横島ー、ファイトやでー!」
「一人の女を賭けて闘う男二人、青春だわ!」
一方観戦のため縁側に移動したその他、もちろんお茶と煎餅も持ってきている。タイガーはともかく原因となった夏子までが横島の応援をしている。一方で他の面々は中立で観戦する。
「来い、『龍紺刀(りゅうこんとう)』」
盾志摩の言葉に呼応して影の中から青い刀が出てくる。初対面時に盾志摩がどこからか取り出して、そし
て何処かへ消えた刀である。その刀身は硬度があるように見えるがに鋼のような輝きは無い。むしろ甲羅や骨といった生物のような感じが見受けられる。
「『ハンズ・オブ・グローリー』」
一方横島も右手に霊気を具象化させる。その霊気は右手を覆い、手甲のような物へと収束した。それは盾志摩とは違い青白い淡い輝きが発せられている。
「わわ、何あれ?! 何もないとこから何か変なのが出てきたよ」
優希が横島を指差して隣のピートに尋ねる。ちなみに横島は自分の技が変なもの扱いされたのは聞こえてないようで別に動きは見られない。
「えーと、あれは横島さんが霊気を具現化して作ったものです…(多分)。
それであっちの盾志摩さんのは何なんですか? 影から出てきましたけど」
「夏子パス」
ピートから返して聞かれた質問に優希は迷わず夏子に任せる。どうやら彼女、説明は苦手らしい。
「ピートもGS資格とったんやろ。なら式神は知っとるよな」
それは知っている。身近に一人とんでもなく強力な式神使いが居るし、すぐ近くにいる鬼道も式神使いであることはここに来るまでに聞いた。
そこで気付いた、一つの共通点に。
「もしかしてあれも式神ですか?!」
ピートの驚きを含んだ声に夏子は静かに頷いた。
そしてそれが合図となったかのように二人が動いた。
「くらいっ!」
まず仕掛けたのは盾志摩。大きな刀を苦も無く振り上げ、振り下ろす。一発目は小手調べ。鋭く軽く動けば隙は消せる。それでも速い剣筋を横島は霊波刀を生み出し受け止める…いや、正確には受け止めることにはならなかった。
「なっ!?」
受け止める程度だったはずの横島の動きで盾志摩の一撃が大きく弾かれた。小手調べのつもりで軽く打ったのと横島の霊波刀の出力が予想以上に高かったためだ。
「わはは、いきなり隙ありじゃー!!」
完全に不意をつく形になった横島。相手の力が出し切れてないから見逃そうとかそういう武士道精神は全く持たない男である。当然の如く容赦はしない。
「てめーみてーなキザ野郎は病院行きじゃー」
遠慮のかけらも無く振るわれる横島の右手。盾志摩の体は完全に死に体になっている。横島を侮り、最初の一撃に手を抜きすぎた結果である。どう体を動かしても横島の攻撃には間に合わない。そして横島の一撃は決して軽いものではない。
非常にあっけなく終わる。横島の邪悪な笑い顔を見ながら観戦客の殆どはそう思った。
だが彼らは気付いていただろうか。盾志摩は確かに肉体的にはどうしようもなかった。だが最初の一撃は小手調べ、霊力もさほど込めていない。つまり霊的にはまだ余裕があったということに。
そして次の瞬間にこの場に響いた声は意外なものだった。
「なっ!?」
この声は横島、彼は確かに腕を振り、目の前の二枚目野郎に天誅を喰らわす……はずだった。
青白い輝きを放つ横島の霊波刀はいきなり現れた妙な模様のある赤い壁のようなものに遮られていた。そしてその向こうから倒すべき敵の声が聞こえる。
「っつぅ〜、結構痛かったで。生身で食らったら危なかったな」
「うわっ!」
目の前の壁がいきな横島を弾き飛ばすように動いたので横島は後ろへと跳ぶ。盾志摩もその壁を引き連れて距離を取る。
そこでようやく横島は盾志摩を視認した。そして先程の壁の正体もわかった。
「雀紅翼(じゃくこうよく)。僕の二つ目の武器や」
赤い翼を背から生やした盾志摩は微かに笑っていた。
盾志摩については次回説明します
あと本編の補足説明。
季節は三学期が始まったばかり、あと夏子たち三人は全員二年で横島たちと同じ、という設定です。書き忘れていました(汗 (ときな)
オリキャラも、出てきたときには少し心配しましたが、きちんとエピソードを作ってキャラ立てしようとしているのがわかるので好感が持てます。
あえて注文をつけるなら、周囲の様子や心理などをもう少し綿密に描写してみてはいかがでしょう。
現状の描写だと、イメージ的には、それなりに生き生きと動くキャラクターの周囲「だけ」にぼんやりと背景が見える、といったところです。
今一歩進んで、背景の「中」でキャラクターが動いているイメージが出せると、より良くなるのではないでしょうか。
個人的に少々もったいないと感じたところは、せっかく神社というシチュエーションがあるのに、対決するのがただの庭先になってしまっているあたりですね。
おそらく位置的にいちいち移動するのは不自然という判断もあるのかと思いますが、やはり対決するなら神社の境内でやって欲しかったですね。
なぜならそのほうがカッコイイから(笑)
続きに期待します。がんばってください。 (はくはく)
自分が考えるにGSの世界では、悪霊には物理的な攻撃ができる存在が
結構存在すると考えます。実際に徐霊委員と言うのは、
その霊に対するわけですから、一緒に行動するわけですし戦うならともかく
GSを目指しているのですからどんな能力を持っているかで生死に関わっていますし霊力、身体力の強さも気になるのではないかと考えたわけです。
実際にGS試験では実戦も有る訳ですし、余計に気になると思うんですが。
感想ですが、なんというか良い感じに横島らしいですね。
オリキャラもいい感じに動いてますし、早く続きが読みたいです。
でわ。 (Louie)
ここまで読んでの感想です。
はっきり言って面白いです。
原作キャラの行動も違和感がなく、GS美神の世界観を良く掴んでいると、私には感じられました。
文章も書きなれた感じで、大変読みやすくていい感じです。
ただ話の展開で、チョット気になる点(というか、不吉な予感)が…。
SSにオリキャラが登場すると、作者も自分が創造したキャラが可愛いせいか、原作キャラを不当に貶めたり、引き立て役にしてしまうという例が時たま見受けられます。
原作にある設定(美神の銭ゲバ、横島のセクハラ、ピートのナルシー、美智恵の非情さなど)を使ってやる分には良いのですが、原作にない自己設定を作ってまでオリキャラを持ち上げる方もいらっしゃいます。
そうなるとその作品は、オリキャラに感情移入できない人間には、とたんにツマラナイ作品に堕してしまいます。
今回の展開ですが、真正面からのガチンコタイマン勝負なら、業界トップの美神より強い横島と、魔族や神族や雪之丞ならともかく、GS免許修得前の見習GSでは勝負にならないような気がするんですけど…(^^;
オリキャラのキャラを立たせるためだけに、横島と互角の勝負なんていう展開にならないことを祈ります。
これからの展開がチョット心配。 (ドッペル)
負けたら俺が消してやる (ミネルヴァ)
参考意見として、つまらないオリキャラについての、私の個人的な考えです。
SSをつまらなくするオリキャラのパターン
一、完璧超人
敵役や師匠など、主人公にとって乗り越えるべき存在としてならば良いのですが、原作主人公以上の実力を持つ味方は、主人公を喰ってしまいかねません。
さらに言えば、完璧すぎるキャラだと、ストリーがご都合主義になりやすくなる恐れがあります。
味方がピンチに陥る→完璧超人なオリキャラの活躍で、ピンチ脱出→大団円、という読んでる方がウンザリする悪夢のようなパターンになりやすく、ピンチがピンチで無くなる為、ストリーが盛り上がりません。
二、原作主人公、及び原作のメインキャラ以上に大活躍
SSの読者は、原作のキャラ、及びその世界観が好きで読んでいる人が殆どだと思われます。
読者が求めているのは、原作のキャラの活躍であって、見たことも聞いたこともないオリキャラの活躍では無いでしょう。
また、原作の主人公=読者の視点=読者の分身と仮定すると、自分以上に目立つキャラなど邪魔なだけです。
あくまで原作キャラを引き立てる存在(主菜に対する副菜、絵画に対する額縁)に徹させるべきではないでしょうか。
三、メインヒロイン、サブヒロイン、及び一発キャラでも、原作本編で主人公と恋愛関係にある、若しくは、なる可能性のある異性キャラと恋愛関係になる
二、でも述べましたが、原作の主人公=読者の視点=読者の分身と仮定すると、自分の恋人、若しくは恋人候補を、何処の誰とも判らない相手に寝取られたようなものです。
特殊な性癖の持ち主以外の読者には不愉快でしょう。
四、原作の設定を無視したり、もしくはSS作者のオリジナルの後付け設定で原作世界のバランスを壊してまでオリキャラを贔屓している
原作の設定を膨らませるのなら良いのですが、原作の設定を否定してまでやると、読者にはオリキャラへの露骨な贔屓に感じられます。
オリジナルキャラ=作者の創造物=作者の分身と仮定すると、作者の自慰行為を見せられているようで、あまり気持ちのいいものではありません。
またストリーがご都合主義になりやすくなる恐れもあります。
五、原作の雰囲気にあわない
元々オリジナルキャラは、原作キャラたちの中では浮きやすい存在です(特にアニメやマンガが原作だと、読者の持つイメージも限定されています)。
原作がコメディタッチな話なのにやたらシリアスだったり、またはその逆だったりすると、その違和感はさらに大きくなることでしょう。
読者も違和感が気になり、ストリーに入り込めません。
浮世絵の世界にピカソの人物画を描きこむようなものです。
六、原作キャラと被っている
あえてオリジナルキャラを出す意味がありません。 (ドッペル)
>周囲の様子や心理などをもう少し綿密に描写
ご指摘ありがとうございます。自分でも背景になっている連中が影が薄いとは思ってましたから。「背景の「中」でキャラクターが動いているイメージ」が出せるようにがんばってみたいと思います
>神社の境内で
確かにそっちのほうがカッコイイですね(笑
>Louieさん
>霊力、身体力の強さも気になるのではないか
確かにそうですが前回の返事で書いた理由と同じようなものですが「どんな能力持ってるん?」というような台詞は違和感を感じたのであるので書かなかったのです。それに先に能力を紹介しておくと後々の展開が単調になってしまいそうなんで(汗
>ドッペルさん
不吉な予感、言いたいことはよーくわかります!
とりあえずそういう風な感じにするつもりは無いので安心はしてください(作者もそういうのは嫌いなんで)
ただ盾志摩は強いです。オリジナルだからとかそういう理由ではなくて盾志摩や夏子の強さがいまいちだと何か東京が強くて大阪弱いという風になるのでソレが嫌なので強くしました、これは作者の勝手ですが。無論最高潮の横島にかなうほどではありませんが横島自身、感情で実力の変動激しそうなので楽勝♪ とはいきません。それでも横島強いですけど
>GS免許修得前の見習GSでは勝負にならないような気がする
確かにそうでしょうが免許取得前の人間でも強い奴は強いと考えてます。GS試験の時の雪之丞と勘九朗は強かったですし(勘九朗は人間と判断するかは微妙ですが完全に人間の状態でもやっぱり強かったかと思うので)
と言うわけでとりあえず実力としては彼らのようにGS試験でぶっちぎれるような実力、と言う感じです
(他にも冥子なんかGS試験の時から実力変わってないんじゃないだろーかと頭の隅で思ってます)
参考意見どうもです
>ミネルヴァさん
勝ちます。だから消さないでください(w (ときな)
仮にも美神に勝っている横島相手(マジなとき等の)では、知識はともかくタイマンでは、一般的な既にGS免許を取って事務所を営行しているプロでも勝負にならないような気がします。
また、六道冥子は、規格外すぎで、例えに並んだろうと思いますし、勘九朗は、GS試験の段階でGSバスターなるものの修行を積んでいて魔装術使用していたとしても(当時のとはいえ)美神とエミ・冥子+αを一人で相手に出来る強さは、規格外(人間としては、)んなの例えに出されても、困るような、ただ、横島自身、感情で実力の変動激しそうなので楽勝♪ とはいきません。それでも横島強いですけどというくだりは大変すきです。
ギャクな感じで相手の攻撃から逃げ回るのはいいけど、マジな感じで相手に苦戦はしないでほしいかな。 (ttt)