椎名作品二次創作小説投稿広場


GSルーキー極楽大作戦

意外な再会、そして勝負


投稿者名:ときな
投稿日時:04/ 9/27

 目覚めたら俺はベッドの上で寝ていた。

 俺はどうなったんだ……GS試験に出てあいつと戦っていて…そこで記憶が途切れている。
 ここがどこだか確認しようにも体を動かそうとすると激痛が走る。

 何があった  わからない  俺はどうなったんだ





 ここの神主であろう初老の男性と共に出てきた男は横島とタイガーを見て驚いていた。
 だがそれも少しの間だけのことですぐに落ち着きを取り戻すと居心地が悪そうに目をそらして……

「久しぶりだな」

とだけ言った。これが彼の精一杯だった。道を踏み外し、荒れた情けない自分をこの二人はよく知っていると思ったからだ。そう、自分と戦ったこの二人は……。




 そしてそんな男、陰念を見た横島とタイガーの反応は


「「「「「誰??」」」」」

夏子を除いた全員と共にユニゾンした疑問の声だった。


「陰念だ! てめーら俺と戦っただろうが!!」

 あんまりといえばあんまりな反応に思わず先程までの居心地の悪さも忘れて横島とタイガーを指差して叫ぶ。事件現場に居なかった愛子や鬼道、その場には居たものの陰念にはあまり関わってないピートはともかく、実際に戦った横島とタイガーがこの反応とは酷いと言えよう。
 尤も陰念も割と変わってたりする。目つき、というか顔つきの悪さは変わってないが登場時は逆立っていた金髪は今では黒髪が普通に重力に従っている。

「……おお、言われてみれば」
「……たしかに顔はそれっぽいですノー」

 言われてから結構間を空けて気づく二人。そこでようやく警戒心と言うものが生まれた。

「てめえ、何でここに!?」
「とゆーよりも生きてたんですノー」

 あからさまに、ではないもののいつでも動けるように気構えをしておきながら軽口を叩く。そこに割り込むように神主が彼らの間に手を翳す。

「君達に色々あったようやがこいつは今、保護観察の身。特に何かするわけでもない。諍いは無しにしてくれんか」

 穏やかな声でそういわれると横島もタイガーも元々喧嘩気質ではないのであっさりと引き下がる。それを見て神主は微笑むと夏子へと顔を向ける。

「夏子、除霊がまだ一つ残っているのでな。すぐに戻れるからすまんが彼らに茶を出しといてくれるか」
「わかりました」
「それでは皆さん、今は失礼させてもらいます」

 そう言うと神主は陰念を連れて外へと出て行ってしまった。
 一方横島たちは屋敷の中へと通され、一部屋にしてはかなり広い畳部屋へと通された。


「それにしても何で陰念がここに居るんだ?」

 夏子が持って来た緑茶と煎餅を頂きながら横島は隣に座る夏子に尋ねた。

「ウチもよう知らんねん。何か悪いことやろうとして未遂やったから保護観察の処分が下されて二週間前に師匠が観察役になったとしか聞いてへん。それ以来ここに居候してる。そういう横島はなんで陰念のこと知ってるん?」

 今度は夏子が尋ねてくる。特に隠すことではないので横島も軽い気持ちで応える。

「ああ、去年のGS試験で戦ってな……」
「ええっ! 横島GS試験出たん!?」

 最後まで言う前に夏子の驚きの声が響く。
 そう言えばさっきのまで雑談でも美神のところで働いてることは言ったがGS資格を取ったことまでは話してなかった。

「おう、きちんと資格も取ったぞ」

 かなり命がけだったけどな、と心の中だけで付け足す。

「凄いなぁ、ウチは高校卒業してからて思っとったけど…ウチも次の試験受けよかな」
「そうか、安心しなさい。このGS横島が手取り足取り尻取り教えよう!!」
「いやあの尻はえーねんけど」

 いきなり目を血走らせて手を握ってくる横島に夏子はちょっと冷や汗垂らしながらやんわりと否定する。
が、そこで横島が引き下がるはずも無く、この状況を打破したのは第三者だったりする。

「横島君、汚い手で女の子に触るのは良くないね」

 盾志摩が二人の間に割って入り横島のてを引き剥がす。

「なんじゃキサマ、何美形ぶっとるんや、あ?」

 一方横島も初対面時からここに来るまで夏子や優希とコミュニケーション(セクハラともいう)を取ろうとするとことごとく邪魔してきた盾志摩にあからさまに敵意を見せる。絵で描写できるなら口から火でも吐かせたところだ。

「ふ、モテない男の僻みか?」

 盾志摩の冷笑。 

「ほー、そーゆーテメーも夏子や優希ちゃんにはあんまり相手されてねーみたいじゃねーか。美形ぶってる三枚目にしか見えねーぞ」

 横島も負けじと小馬鹿にした笑みを浮かべ、挑発的な言葉を返す。そしてそれに盾志摩が思いっきり反応した。

「言ってはならんことを言ったな! 表へ出ろ、その詰まらん口きけんようにしたるわ!」
「じょーとーじゃぁ!! 」






「資格を持ってるからっていい気になるんやないぞ。貴様みたいなヘナチョコ、叩っ切ったるわ」
「ふ、テメーは持ってねーのか。なら先輩が直々にGSの厳しさを叩き込んでやろう」

 自信満々な態度をとる盾志摩と鼻で笑う横島、ある意味正反対とも言える行動を取る二人が屋敷の庭先で向かい合う。



「横島さーん、頑張るんジャー!」
「横島ー、ファイトやでー!」
「一人の女を賭けて闘う男二人、青春だわ!」

 一方観戦のため縁側に移動したその他、もちろんお茶と煎餅も持ってきている。タイガーはともかく原因となった夏子までが横島の応援をしている。一方で他の面々は中立で観戦する。



「来い、『龍紺刀(りゅうこんとう)』」

 盾志摩の言葉に呼応して影の中から青い刀が出てくる。初対面時に盾志摩がどこからか取り出して、そし
て何処かへ消えた刀である。その刀身は硬度があるように見えるがに鋼のような輝きは無い。むしろ甲羅や骨といった生物のような感じが見受けられる。

「『ハンズ・オブ・グローリー』」

 一方横島も右手に霊気を具象化させる。その霊気は右手を覆い、手甲のような物へと収束した。それは盾志摩とは違い青白い淡い輝きが発せられている。

「わわ、何あれ?! 何もないとこから何か変なのが出てきたよ」

 優希が横島を指差して隣のピートに尋ねる。ちなみに横島は自分の技が変なもの扱いされたのは聞こえてないようで別に動きは見られない。

「えーと、あれは横島さんが霊気を具現化して作ったものです…(多分)。
それであっちの盾志摩さんのは何なんですか? 影から出てきましたけど」
「夏子パス」

 ピートから返して聞かれた質問に優希は迷わず夏子に任せる。どうやら彼女、説明は苦手らしい。

「ピートもGS資格とったんやろ。なら式神は知っとるよな」

 それは知っている。身近に一人とんでもなく強力な式神使いが居るし、すぐ近くにいる鬼道も式神使いであることはここに来るまでに聞いた。

 そこで気付いた、一つの共通点に。

「もしかしてあれも式神ですか?!」

 ピートの驚きを含んだ声に夏子は静かに頷いた。

 そしてそれが合図となったかのように二人が動いた。

「くらいっ!」

 まず仕掛けたのは盾志摩。大きな刀を苦も無く振り上げ、振り下ろす。一発目は小手調べ。鋭く軽く動けば隙は消せる。それでも速い剣筋を横島は霊波刀を生み出し受け止める…いや、正確には受け止めることにはならなかった。

「なっ!?」

 受け止める程度だったはずの横島の動きで盾志摩の一撃が大きく弾かれた。小手調べのつもりで軽く打ったのと横島の霊波刀の出力が予想以上に高かったためだ。


「わはは、いきなり隙ありじゃー!!」

 完全に不意をつく形になった横島。相手の力が出し切れてないから見逃そうとかそういう武士道精神は全く持たない男である。当然の如く容赦はしない。

「てめーみてーなキザ野郎は病院行きじゃー」

 遠慮のかけらも無く振るわれる横島の右手。盾志摩の体は完全に死に体になっている。横島を侮り、最初の一撃に手を抜きすぎた結果である。どう体を動かしても横島の攻撃には間に合わない。そして横島の一撃は決して軽いものではない。

 非常にあっけなく終わる。横島の邪悪な笑い顔を見ながら観戦客の殆どはそう思った。
 だが彼らは気付いていただろうか。盾志摩は確かに肉体的にはどうしようもなかった。だが最初の一撃は小手調べ、霊力もさほど込めていない。つまり霊的にはまだ余裕があったということに。



 そして次の瞬間にこの場に響いた声は意外なものだった。

「なっ!?」

 この声は横島、彼は確かに腕を振り、目の前の二枚目野郎に天誅を喰らわす……はずだった。




 青白い輝きを放つ横島の霊波刀はいきなり現れた妙な模様のある赤い壁のようなものに遮られていた。そしてその向こうから倒すべき敵の声が聞こえる。

「っつぅ〜、結構痛かったで。生身で食らったら危なかったな」
「うわっ!」

 目の前の壁がいきな横島を弾き飛ばすように動いたので横島は後ろへと跳ぶ。盾志摩もその壁を引き連れて距離を取る。
 そこでようやく横島は盾志摩を視認した。そして先程の壁の正体もわかった。


「雀紅翼(じゃくこうよく)。僕の二つ目の武器や」

 赤い翼を背から生やした盾志摩は微かに笑っていた。


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