椎名作品二次創作小説投稿広場


GSルーキー極楽大作戦

除霊委員顔合わせ


投稿者名:ときな
投稿日時:04/ 9/25

 三國山高校、そこは全国でも珍しい除霊委員が存在する学校である。
 そしてその中の一つの教室、そこに三人の生徒が集まっていた。


「渋滞などに巻き込まれてなければそろそろくるころやね」

 流れるような黒髪を持つ美男子、だがその雰囲気は美男子にありがちな楚々としたものではなく銀一のような活発なものを持つ、彼の名は盾志摩(たてしま)天智(てんじ)。

「ゆーちゃんもカード片付け。お客さんが来るのに、行儀良くないよ」

 緩やかな声をだして友人に語りかけるのは愛子のようなロングストレートの黒髪を持つ河合夏子。

「はいはーい、わかったよ」

 机の上に広げたタロットカードを片付けるのはショートカットの少女、綾見(あやみ)優希(ゆき)。

 以上この三人がこの高校での除霊委員のメンバーである。


「これから来る東京の除霊委員について占ってみたんだけどさ、結構面白い結果が出たよ」
「へぇ、どんなんが出たん?」

 夏子が窓の外に向けていた向けていた視線を優希へと向ける。盾志摩もその言葉に惹かれたらしく興味深そうにこちらを見る。
 優希の占いはタロットカードを使い、抽象的な結果しか出ないが当たる。それ故に優希が占いうと必ず誰かが寄ってくるのだ。

「私達との関係を占ってみたんだけどね。夏子は過去の友人、盾志摩クンは未来での敵、ってな感じ?」
「なんやそれは? 過去の友達……東京へ行ったのは……」
「敵、敵……まさか僕の美貌を揺るがす相手でも来るというのか!?」
「知らん」
「黙っててええよ」

 この盾志摩という男、実際美形なのだがどこか自分で美形ぶってるところがある。ちなみにそれでもやはり顔と性格はいいのでもてるのだが同じ委員である二人はまったくなびいていない。
 考え事を中断させた盾志摩を優希と共に切って捨てると夏子は再び思い出の中へダイブする。とりあえず二人の顔が浮かんだ。両方ともそうそう忘れることの無い相手だ。

「いやでもまさかなぁ」

 夏子は自分の想像に自分の口でツッコミを入れる。ちなみにその隣では盾志摩が手鏡を見て自分を髪の毛をセットし直している。
そして彼らをそんな風にした張本人の優希は会話は終わったとばかりに無茶苦茶分厚い「占い大百科」という本を開く。


 それから数分もしないうちに教室の扉がガラガラと音を立てて開いた。
 三人の視線が集まる先にいるのはこの高校の制服とは違う学生服を着た二メートルくらいの大男だった。その巨体から生まれる威圧感から夏子と盾志摩は即座に立ち上がって戦闘態勢を取り、優希は慣れたように夏子の後ろへと素早く移動する。ちなみにあの重そうな本を持ったままなのにその動きにはどこにもよどみは見えなかったのは気のせいか。

「やあ、そんなに怯えなくても大丈夫だよ。あいつは俺達の仲間だから」

 いきなり後ろから聞こえた声に振り返るといつの間に来たのか今入ってきた大男と同じ学生服をきた赤いバンダナを巻いた少年がにこやかに笑いながら優希と夏子の肩にさりげなく手を回しながら口説いてくる。

「馴れ馴れしいぞ貴様」

 どこから取り出したのか盾志摩は幅の広い刀を、いきなり後ろに現れた少年に向けて振り下ろす。

「どわぁぁ!」

 結構本気で振るわれたその刀は当たりこそしなかったものの女性二人から少年を遠ざけることには成功する。

「テメェ、人の愛の語らいを邪魔するとは何事じゃぁ!!」

 ナンパを邪魔されて怒ったらしいそいつは盾志摩に飛びかかろうとして、後ろから伸びてきた二人分の腕によって取り押さえられる。

「落ち付き、ケンカしにきたわけやないんやで」
「そうですよ、これは交流なんですからいきなりケンカしてどうするんですか!?」

 少年の後ろから現れたのは今どき珍しい和服を着た男性と金髪の青年。ともに美形であることを確認して盾志摩の眉がぴくりと跳ね上がる。

「いっつもこんなん?」
「まあね、もろもてない男の青春て感じね」

 だが彼のそんな表情の変化は誰にも気付かれることなく新たな登場人物が現れた。机を担いだロングヘアーの少女と再び美形の男。そしてこの騒ぎはここで収束を迎えた。

「き、近畿剛一!?」
「え、マジ? なんでこんなとこに!?」

 ミーハーと化した女子二人によってすったもんだしていた四人は軽く吹っ飛ばされ、床に転がる。そんな彼らは無視され銀一のもとで夏子と優希は「なんでここに?」、「サインを」、「もしかして近畿君て除霊委員なん?」とか質問攻めをしている。

 そして床に転がって無視されているうちの一人、横島は軽くふっ、とだけ笑うといきなり藁人形と釘、かなづちを取り出し……それに気付いた銀一が横島を取り押さえる。

「放せ銀ちゃん、モテる奴には正義の鉄槌を下さねばならんのだ!!」
「やめんか横っち!! ちょっと相手にされへんかったくらいで人に呪いかけるな!! あれ結構痛いんやぞ」
「…もしかして、横島に銀ちゃん?」
「「へ?」」

 先程までのミーハー状態とは違う、いきなり素に戻った夏子の呼びかけにどたばたとしていた二人は動きを止め夏子を見る。 

 そして気付いた。

「「お前夏子か!?」」







「なるほど、役作りのためにわざわざ見学…えらいな銀ちゃん」

 互いの簡単な自己紹介と銀一についての説明を終えると夏子は感心したようにうんうんと頷いた。

「あんがとな、それにしてもやっぱ何年も見ーへんと変わるもんやな。ぱっと見、わからんかったで」
「お互い様やって。うちもすぐに分からんかったし」

 気安い笑顔でぱたぱたと手を振りながら気にしないよう言う。

「にしてもつくづく縁があるな。まさか夏子もGS目指していたとは」
「中学二年のころに霊能力が目覚めてな。それ以来師匠のところで修行中や。まお互い一人前なれるようがんばろ」

 幼馴染二人に会えて機嫌が良いらしく本当に楽しそうな夏子が中心となり会話が進んでいく。



「ね、ね。ピートさんてバンパイアハーフなんでしょ? 血とか吸うの?」

 優希が興味津々と言った感じでピートに訊く。本来はあまりきかれたくない質問なのだが優希の気楽な態度に感化されてかピートも気負うことなく答える。

「確かに吸えますが普通の食事でも栄養を摂取できるので基本的には吸いません」
「なんだ、つまんない」
「…もしかして吸血を見たかったとか?」
「うん」

 なんのためらいもなく言ってのけた目の前の美少女に対してピートはちょっと引き気味になりながらも笑顔を崩さずに言う。

「じゃあこれで我慢してください」

 そう言うとピートはかばんの中から薔薇の花(食事用)を取り出すして優希の目の前にかざすとそれが急速に萎れていく。


「わ、すご」
「おもしろーい」

 それを見て夏子と優希は素直に感心するのだが

「お、おもしろい……」

 ピートは自分の能力が一発芸扱いされた気がして落ち込んだ。




「なあなあ愛子ちゃん」
「なに?」

 盾志摩が声を潜めて愛子に話しかける。

「あの二人と僕、どちらがかっこいいと思う?」

 そう言って彼が指したのはピートと銀一。どうやら鬼道は歳の差ゆえ無視するらしい。それに対して愛子はうーん、と少し考えて答えた。

「微妙ね〜。それぞれの良さってものがあるからね」
「そうか、ありがとう」

 愛子の言葉に神妙に頷くと盾志摩は愛子も自分になびかなかったことに少々落ち込みながらもバックに炎を映し、拳を握り締める。

「優希ちゃんの占いに出た敵とはお前らか……だが僕は負けへん。この僕の美貌は決して負けはせーへんで」
「ライバルに向かう敵愾心。これぞ熱き青春よね♪」


 一人で熱くなる盾志摩、ソレを暢気に見つめるのは一人の机妖怪。

 だれかお前らおかしいぞと突っ込んでやれ







「それじゃ、そろそろ昼飯に行こか」

 既に正午を回った時計を見て鬼道が未だ話題の尽きない生徒達をまとめる。

「先生、その後はどうするんですか?」

 言われたとおりそれぞれが立ち上がるなか、ピートが鬼道に質問をする。

「その後はここから少し離れたところにある興院神社で除霊の講習会やな。その後夜の学校を見回りして今日は終わりや」


 一方そんな風にてきぱきと予定を話す鬼道を見る夏子と横島。

「それにしてもすごいなぁ横島の学校。妖怪の生徒が居て霊能もちの先生が居るんやろ」

 なんだか夏子が自分の学校を過大評価してることに横島はぱたぱたと手を横に振って否定する。

「ちゃうちゃう。確かに愛子はうちの生徒だが鬼道は六道女学院の教師だ」
「え? なんで関係ない高校の先生が一緒に来てるん?」
「『除霊』委員の交流会だからな。霊能のある教師じゃないと引率が勤まらないんだろ。だから六道女学院から出張してきたそうだ」
「なんやそうなんか」

 そんな何でも無い会話をしながら二人も荷物を持って立ち上がる。
 そして一番最初に教室から出ようと扉を開けた優希は浮かぶ何かを視界に入れた。

「きゃっ!」

 思わず声をあげる優希。その目の前にいるのは鎌とハサミを持った足の無い子供。「テケテケ」と呼ばれる妖怪だ。
 そしてその存在に一番速く反応したのはピートだった。
 人間離れした瞬発力で優希をかばうように前に出るとテケテケをにらみつける。そしていつでも闘えるように霊力を……

「こらっ!!」

どうにもできなかった。
 一声、その中にこめられた霊力は指向性を持ってピートに叩きつけられ、彼をびくりさせた。ピ−トはただ驚いた顔で声を発した人物、夏子を見る。
 一方彼女は「まったく」とか言いながらテケテケへと無防備に歩み寄っていく。その様に一同が何も言えずにただ見てる中、彼女はテケテケの頭に手を置いて撫で始めた。

「あー、脅かしてごめんね。こっちも悪気はなかってん。」

 そう言ってなで続けているとテケテケはにっと笑って消えた。
 それを見届けると夏子はピートに先程までとは違う厳しい目を向ける。

「あかんやろ。テケテケはただの脅かすだけで人を傷つけたりするような妖怪やないねんから。あんな風にいきなり戦闘態勢とったりしたら怯えるだけやで」
「す、すみません」

 と夏子が説教する。ちなみに最初にタイガー相手に戦闘態勢とったのは相手がよくわからんかったのでOK、らしい。
 そして「神よ、申し訳ありません」と懺悔しているピートに

「全くだ、修行が足らんぞ」

と調子よく言う横島。そんな彼に夏子がピンッ、とデコピンを食らわせる。

「あんたもやろ。自分も隣で動こうとしてたやんか。調子いいところは変わってへんな」
「ちっ」

 見破られていたことを意外に思いながらも説教みたいなことをされることに少々拗ねた態度を見せる。それと同時に夏子も変わってないなと思う。小学生のころから可愛くて、しっかりとしてて、優しい彼女は学校の中でアイドルのような存在だった。そして横島もまた彼女のことを恋、とまではいかなくともなんとなくいいな、と子供心に思っていた。だから転校していく銀一に夏子が告白したと勘違いしたとき、多少のショックはあったがそれも一日経てば直っていた。

「へいへい分かったよ」

 そんなことを思い出しながら横島は軽口を叩いた。







 そして彼らは昼食へと向かったのだがその内容は記載しないで置く。ただ書くならば

「タンパク質ー!!」
「栄養ー!!」
「こら横っち、それは俺のんや!」
「横島、人のん取るんやない」
「こらうまいなぁ」(他人の振り)
「そうでしょう、ここでは私もよくたべるんですよ」(同じく他人の振り)



 こんな会話がなされたということくらいである。







「食事の後は程良い運動、やっぱこれに限るね」

 長い石段を一番に登り切った夏子が気持ち良さそうにする。

「これは何かの嫌がらせか? なぜこんな所に建ってるんだ?」
「夏子、普段よくこんなの登ってるよね」

 次に来たのは横島と優希。普段大荷物抱えて山道登ることもあるため意外と余裕そうだ。一方優希も疲れは見えてるもののいつものことと割り切った感じが見える。ただその言葉の中に気になることがあったから尋ねる。

「普段ってどういうことだ?」
「言ってなかったっけ? ウチ、ここで修行してんねん」

 横島の疑問に答えたのは夏子。だが彼女はまだの者達を待つつもりは無いらしくさっさと先へ行ってしまう。とは言ってもみんなもすでに追いついてきているので置いてけぼりにしている、というわけではないが。とりあえず夏子の後を追って神社の奥へと進んでいく。周りは木が生い茂り、清浄な霊気の漂う中、除霊委員達は歩を進める。
 そして辿り着いたのは神社の裏に建てられた屋敷。夏子はその扉をためらい無く開けると元気よく叫んだ。

「師匠ー、ただいまもどりましたー!」
「おお、来たか」

 屋敷の奥から出てきたのは優しげな表情をした神主の男性。わりと歳をとっているのだろう、髭や髪の毛に白いものが混じっているのが良く分かる。だがそんなものから得られる印象とは逆に体つきや姿勢はしっかりしたものである。
 そしてその影にもう一人。かなり小柄な体格の男で恐らく横島より背は低いだろうがその目つきと体つきがそいつを弱そう、という感じを持たせない。だがそのにらみつけるような瞳は最初だけでこちらを見た瞬間、見開かれ、驚きを彩っている。

「お前らは……」

 彼の瞳に映っているのは………横島とタイガーだった。


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