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GSルーキー極楽大作戦

除霊委員交流会新メンバー?


投稿者名:ときな
投稿日時:04/ 9/22

 除霊委員出立の日  六時七分


 集合は六時半。東京駅には少女が一人立っていた。

 いつものように高校の制服を装いとした少女は机妖怪の愛子。今回の交流会は青春大好きの彼女としてはまさに至高の一品、もとい一会。こうして予定より早く来て待つのもまったく苦痛にはならない。むしろ待つ間もうきうきして喜びが押さえきれないほどだ。
 その彼女が今回の参加者のうちの一人がやって来たのを見つける。それは意外にも大穴、一番遅刻する可能性が高い人物、横島忠夫だった。彼もまた学生服を着ている。参加人数は少ないが一応これは学校行事なのだから当然だ。なんだかえらく疲れているようで肩で息をしている。そしてその後ろに続くのは先日紹介してもらった横島の弟子の犬塚シロ。片脚の肌を惜しげもなく周囲にさらしながらもご機嫌の様子である。

「おはようでござる愛子殿!」
「ええおはよう。あなたは横島君の見送り?」
「そうでござる!」

 元気の良いシロに愛子も静かだがこれまたご機嫌な様子で返事をする。
 一方横島は「さんそー」とか言ってへたりこんでいる。

 そんな横島が回復するのに約五分、その間にタイガーとピートも到着した。

「大丈夫ですか横島さん?」
「なんとかなー」
「横島さん、なんでそんなに疲れとるんジャー?」
「ここまで歩いてきたからな」

 その言葉に愛子、タイガー、ピートが驚く。横島の家からここまでは結構な距離だ。なのにそれを歩くとは。

「歩けばその分のバス代が俺の懐に入ってくるだろーが」
「そ、そこまでしますか」

 横島の執念ともいえる行為に畏怖すら覚えるピート。

「ついでにシロの散歩と兼用と思えばどーとでもなる」

 毎日朝晩五十キロにくらべればこんなもの屁でもない。尤もここまでの所要時間がわからないから早めに出て…シロが当分散歩できないからということではしゃいで走って…そのおかげで早めに着いたのだがその結果横島がどうなったのかは上記の通りである。

「そういえば愛子さんはどうやって来たんです?」

 そこでピートが気になったのか愛子に尋ねる。朝っぱらからこんな机を持ってバスに乗ったのならかなり目立ったろう。

「あ、校長先生が車で送ってくれたの」
「ぬあにぃ!! あの教師め、俺への態度は散々なくせに愛子へは優しすぎるぞ。チクショー、てめーそれでも教師かー!」

 横島がバックに荒波背負って叫ぶ。原因の大部分が自分にあることは棚上げだ。

「その校長先生はどうしたんですカイ?」
「あ、引率の先生迎えにいったみたい」
「…そういえば引率ってだれがするんでしょうね?」

 完全に横島を無視して盛り上がる三人。彼の相手をするよりこっちのほうがよっぽど気になることらしい。

「おお、みんな集合の十分前だというのに揃っとるな。横島もいるのは驚きだが…感心感心」

 ちょうどそのとき、話題の校長先生が姿を現した。隣には恐らく今回引率をする人だろう、黒い長髪の男性が立っている。そして彼と横島の目が合う。


「あ、てめーは!?」
「ん!? 君は…」

 二人が同時に相手の顔を確認して声を上げる。








「冥子ちゃんに果たしあい挑んでボロ負けしたやつじゃねーか」
「この間のクラス対抗戦に来てたやろ」


 両者「あれ?」という顔をする。話が噛み合ってない。

「冥子はんとの果し合いのこと、何で知ってるんや」
「俺、その場にいたぞ」

 横島にそう言われて男、鬼道政樹は思い出す。

「そういえば見学に美神はんの他にも二人いたな。君やったんか」
「俺はその他扱いか」

 確かにあのときの横島は影が薄かった。覚えて無くても不思議ではない。もちろんおキヌも同じだが…。

「で、クラス対抗って六道女学院のだろ? なんで知ってんだ」

 折角女子高に行ったのにほとんど何も出来なかったことを思い出して鬼道に訊く。

「ボク、六道女学院で教師しとるからあんとき来た君は覚えとるよ」

 もっともこちらは審判してただけだけでやはり影はうすかったからあの時来てても覚えてないだろう…と言うか女子高と言う場所で横島が男の顔なんぞ覚えてるわけが無い。

「ぬぁにぃぃ! 女子高の教師じゃとー!! 貴様は美形だけじゃ飽きたらんというのかー!! 男の楽園を独り占めしやがってー!! ちくしょー、この世は不平等じゃー!!」
「やかましいぞ横島!」

 血の涙と鼻水を垂らして絶叫する横島に校長が突っ込みを入れる。

「すいません鬼道先生。こんなやつもいますが今回の引率、本当によろしくおねがいします」
「は、はあ」

 未だ向こうで涙などを流している横島を見ながら鬼道は頭を上げる校長にとりあえず頷く。

「横島、私はこれで帰るがくれぐれも妙な行動起こすんじゃないぞ」

 校長はそう釘を刺すと帰っていった。

「うっうっう、この世は不平等だ。女も富も流れていく奴のところに流れていくんだ」
「まーまー横島先生、横島先生にはいいところはいっぱいあるでござるよ。だからそんなに落ち込むこと無いでござる」
「そうですよ、だから元気出してくださいよ」
「横島さん、ワシらは友達です。この苦しみ、ともに分かち合いましょう」
「ふう、これも青春の一ページよね」

 壁に八つ当たりをしている横島に愛子を除いた三人がなぐさめの言葉をかける。友達がいのある奴ら、とも言えるが単にこんなところでそんな風にされると放っておくわけにはいかないだけかもしれないが。

 そんな彼らの傍ら、鬼道は時計を気にしながらあたりをきょろきょろしている。そんな様子を見て愛子は声をかける。

「先生、ホームへ行かなくて良いんですか?」
「ん、ああ最後の参加者がきたらな」
「他にもだれか来るんですか?」

 除霊委員はここにいるので全員だし引率の先生もいる。他に誰がくるのだろうか?

「聞いとらへんのか? なんか芸能人が役作りのために見学したい言うてな、GS協会も教育委員会もOKしたらしい」
「女かっ?」

 瞬間移動のように、いや獣のような素早さで一瞬にして鬼道の目の前に移動した横島がまさしく獣のような形相で尋ねる。
この男の頭ではすでに女なら美人と言う設定が出来上がっているのだろう。表情がすごいことになっている。

「男や」
「ちくしょー、また美形が増えるんかー!!」

 壁への八つ当たりを再開する横島。目立って恥ずかしいのだがどうやめさせればいいのかわからないので……いや普段美神と横島を見ているのでどうすればいいのかは分かるのだが実行できないのでとりあえずまーまーと言って抑えることしか出来ない。
 そんな彼らを見て鬼道は思う。

(ボク、やってけるんやろーか?)

 なんてちょっぴり遠い目をしてるところにこの場の誰でもない声が割り込んだ。

「なにやってるんや、横っち」
「へ?」

 ぐるりと首を回して見てみるとそこには前髪を少し垂らした美形が呆れたような顔をして立っていた。

「お、お前銀ちゃん!?」










「大阪府知事と同じ名前の横山です!!」


「横山さん、ここはぼくたちに任せてください!!」

 一人の男子学生が力強く宣言する。

「横山君、私なら大丈夫。あなたはがんばって、ね」

 線の細い、一人の女子学生が自分の足を抑えながら気丈に微笑む。

「横山君、私は教師だ。だから生徒達は私に任せたまえ」

 スーツを着た、一人の教師が決意に満ちた顔でそう語る。



  《踊るゴーストスイーパー『恐怖の高校・闘う生徒達』》









「と、まあ今度の舞台は高校なんで役作りのために今回の交流会に参加させてもらったんです」

 パタンとマネージャーがノートパソコンを閉じ、銀一が解説する。

「にしてもまさかその除霊委員に横っちが入っとるとは思わんかったけどな」
「まったく、何年も音沙汰なしだったのにいきなりこうも縁ができるとはなー」

 横島はシートに体重を預けながらなんだか愚痴っぽいことを言う。 ちなみに彼らはすでに列車に乗っている。もちろんシロは改札口のところで別れた。少々駄々をこねられたが…。

「それにしても横島さんがあの近畿剛一と知り合いじゃったとは…おどろきですノー」
「小学校のころの友達で、美神さんとこに見学に来て、そいで再会したんだよな」
「アイドル、これこそ現代の青春の象徴よね。というわけで後でサイン頂戴ね」
「おう、任せてくれや」

 もうすっかり打ち解けた感じで雑談に興じる除霊委員+α。

「にしてもこれ以上美形はいらんのに…なんで銀ちゃんまで」
「まあそう言うなや。うちからも少し金出したから横っち達が泊まるところ、割とええところになったんやで」
「さすが銀ちゃん、ええ友達やなぁ」

 打って変わった態度で銀一の手を握る横島。

「まあ、それはどうでもええねんけど…楽しみやな」
「何がだ?」
「いや、だからこれから行く高校」
「何で?」
「いやだからなんでって…もしかして行き先知らんのか?」

 ツーカーで通じると思ってた話題が全然通じないのに銀一は昔の親友の行動パターンを思い出して気付いた。

「横島さん、しおり見てないんですか」
「いやだってどーせ知らん高校だろ、大阪っつーとこだけは見たけど…高校は見てもどうもならんだろ」

 それはその通りとも言えるがこの調子だと本当に必要最低限のことしか見てなさそうだ。

「ほんとに変わらへんな。小学校のころも遠足で先生の話もきかんとよう怒られてたもんな」
「…おまえもな」

 銀一は楽しそうににやりと笑いながら続ける。

「ま、教えといたる。今から行くのは三國山高校、これだけ言えば横っちもわかるやろ」
「………………おお!」
「なんか間が長かった気がするけど思い出したか」
「ああ、確かにそれなりには楽しみだな」
「何か縁っつーもんを感じるな」
「そうだな」
「あの、横島さん会話に入れないんですけど」

 何を話しているのかさっぱりわからないピーが会話の合間に質問すると横島が簡潔に答えた。



「俺らの小学校のあった地元の高校だよ」


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