椎名作品二次創作小説投稿広場


GSルーキー極楽大作戦

除霊委員出向命令


投稿者名:ときな
投稿日時:04/ 9/20

 朝…と言っても十時を過ぎたころ美神除霊事務所に電話の音が鳴り響く。

「はい、こちら美神所霊事務所でござる」

 それを取るのはここの居候、犬塚シロ。普段ならオーナーである美神が取るのだが彼女はまだ来ていない。同じく居候であるタマモはこういうことはしたがらないので必然的にシロがとることになったのだ。

「あ、シロ? 私だけどなんだか風邪ひいたみたいなの。今日の仕事、あんた達でもできる仕事だからやっといて」

 それだけ言うと一方的に切られた。シロももう用を為さなくなった受話器を降ろす。

「美神殿でも風邪をひくんでござるなぁ」

 自分も滅多にひかないことは棚に上げておいて美神に聞かれたら即刻お仕置きされそうなことを言う。

「シロー、今の電話はなんだったの?」

 扉を開けてシロの同居人にして天敵(相棒?)のタマモが入ってくる。

「美神殿が風邪をひいたので今日の仕事は拙者達だけでやるように、とのことでござる」
「へぇー美神さんでも風邪をひくんだ」
「意外でござるよな」

 珍しいくらい静かに意見が合う。それほどまでに美神令子という存在は彼女達の中で強い(傍若無人で風邪だろうと何だろうと倒してしまいそうな)人なのだ。そういう人が風邪と言う一般的なものにやられるとは意外なことこの上ないことなのだ。
 美神も人間なのだから風邪くらいはひく……。

「じゃあ今日のお昼どうする? おキヌちゃん、美神さんの分まで作っていったから一人分余るけど」
「先生なら一人でも二人分食べるのでござるが……今日は午後まで学校でござるから」
「いいんじゃない。あいつのことだからどーせ来たら余り物でも食べるでしょ」

 あまり興味のなさそうなタマモ。実際そんなに気にすることではないと彼女は思っている。
 シロもそんな態度を取られれば普段は怒るのだが今回は確かに本当にどうでもいいことなので特に怒りは無い。タマモの意見通りと言うのは腹立たしいがそれでいいか、と思ったときシロの頭に一つの名案(少なくともシロにとっては)が浮かんだ。

「な、なによ。あたし、変なこと言ってないわよ」

 どんな顔をしていたのかタマモがシロの顔を見てそんなことを言う。だがシロはそんなこと聞こえていないかのように台所へ行き、戸棚を漁り始めた。

「ちょっと、一体どうしたの?」
「へっへー、拙者いいこと思いついたでござるよ」

 そう言って上機嫌に笑うシロにタマモは付き合おうかどうしようか迷っていた。



――横島の高校


 高校、それは多くの少年少女達が将来のために勉学に励み、多くの大人が生徒のために教育を施す場所。それがごくごく一般的な高校という場所である。しかしこの学校は他の学校とは少し違う側面を持っていた。

 それが除霊委員。その役職は霊能力を持った者四人で構成される。
 そんな変わった役職がある高校にシロとタマモは来ていた。ちなみにシロは重箱をもっている。美神がこないので食事が一人分余計になったのでそれを横島に持っていこうとシロが言い出したのだ。しかもこの際ということで昼飯三人分をまとめて持ってきたのだ。


「確かに私も横島の食料事情がどーしよーも無いくらい低いのは知ってるけど…」

 タマモはそこで一端言葉を止め、隣にいる上機嫌に大き目の袋を持った相棒に尋ねる。

「なんでさっさと渡しにいかないの?」

 時刻は正午を過ぎ、彼女達はすでに校門の前まで来ている。だが彼女達がここに到着してから既に二十分近く経っていた。
昼飯の時間に早いから待っている、というわけでは無いだろうと思うので尋ねたのだがシロは自分が有利になった時に見せる得意げな顔になる。

「これだから常識を知らない狐は……学校にはお昼の時間が決まっていて渡すならその時間にするものでござるよ」

 なんだか渡す時間が限定されてるみたいな説明だが一応間違っていない。
 だがタマモは理解できないという顔をする。

「何でそんなことするのかしら、食べたいときに食べればいいじゃない」
「…おぬし、そんなこと言ってると電車にもバスにも乗れないでござるよ」

 珍しく、本っ当に珍しくシロがタマモに対して呆れたような顔をしたので一瞬ピキーン、と来たタマモだが次の瞬間鳴った鐘の音に感情の流れが遮断されてしまう。

「この音がお昼休みの始まりでござるよ。せんせー、今行くでござるー!!」

 校庭を爆走するシロ。そんな彼女を見てタマモはさっきのイラつきがすっぱり消えたのに気付く。
 その理由はやはり

「やっぱあいつの方がバカね」

というものだった。



 そして横島の教室

「はぁ、飯か」

 ため息を吐きながら鞄の中を漁る横島。正直彼は学校にはあまり来たくは無かった。バイトでの稼ぎが減るし何より

「うううぅぅ(涙)」

 取り出した食パン五枚入りの袋を見ながら涙する。ちなみに隣には日の丸ドカ弁をあけて涙するタイガーがいる。


 この昼飯時が横島が最も学校に来るメリットがないと感じるときである。事務所に行けば少なくとも飯が食える。しかもまともな!! もちろん作っているのはおキヌなので栄養もばっちりだ。しかもタダ!!!!
 しかし学校に来れば昼飯は自腹だ。そうなれば当然横島の薄給ではロクなものが食えるはずも無い。というわけで上記のような状態とある。


「ん?」

 どこから取ってきたのか分からないバラの精気を吸っていたピートがふと顔を上げる。

「横島さん」
「ん、なんだ?」

 ピートの美形である顔をみて何だかやりきれない気持ちになりつつも返事をする。
 それにしても羨ましい、と横島は思う。こいつは美形で女にモテる。普段はそこに憎しみが行くのだが今回は出てくる感情がちょっと違った。

(こいつ、バラから精気を吸えるんなら他の花からでも精気を吸えるよな。とゆーことは道端に咲いてる花とかから栄養補給できる? しかもそれならタダ!?)

 普通ならこんな思考そこで終わるはずだ。しかし横島は違った。『模』の文殊なら、と考え突然ピートの手をがしっと握ると驚くピートにかまわず言った。

「ピート、実はちょっとぶへぇっ」
「横島のくせにピートの手握るんじゃないっ!」

 横から横島を殴ったのはもちろんクラスの女子。ピートはどうしたものかとおろおろしている。どっちかってゆーと友達がいが無いように見えるのは気のせいだろうか?

「嫉妬に燃える女の子、青春よねー」

 多分違う

 愛子の言葉を聞いた者達がそう思ったとき、教室の入り口から元気の良い少女の声が聞こえた。

「たのもー」
「あら、また新しい子ね。ピート君」

 私服の少女。この場合学校にそんな格好の人間がいることはおかしいはずなのだが愛子は少女が手に持った包みから特に気にせずいつものように取り次ぐ。

「あ、はい」

 ピートは倒れている横島を一応気にしながら少女のもとへと向かう。少女もピートの方と向かい……彼の横を素通りした。

「え?」
「横島せんせー、おべんと持って来たでござるよ」

 少女はピートを無視して横島のもとへと駆け寄るときゃんきゃん♪という擬音がつきそうなはしゃぎかたで横島に持っている包みを見せる。

 ざわり、と教室の空気が変わった。

「ばかな!! 横島に弁当だと」
「きっと幼い純真な心につけこんで洗脳したんだ!!」
「可哀そうに、きっとなにか弱みを握られたのね」
「横島さん、友達だと思ってたのに…弁当持ってきてくれるおなごがおるなんて…最低なんジャー」

 非常識な事態に次々と横島を攻める声が連発する。一人だけ違う思惑からきてそうな奴がいるが……。

「やかましいぞお前ら。俺が女子と接点持つのがそんなに変か!?」

 横島が一対多数のケンカを繰り広げていると遅れてやってきたタマモがその様子をみてシロに尋ねる。

「こいつら何やってんの?」
「さあ? それそれそれとして…お久しぶりでござるピート殿」
「え? ええと……どこかで会ったっけ?」
「ピートさんとも知り合いですカイノ?」

 気になったのか言葉の応酬からタイガーが抜け出してくるとシロは今度はタイガーに向き直り

「あ、タイガー殿もお久しぶりでござる」
「ワ、ワッシもですカイ?」

 タイガーもピート同様に慌ててるとシロは何かを主一出したようにポンと手を打つ。

「見た目が変わったから分からないかかも知れぬが拙者、犬塚シロでござるよ」
「「ええぇ!!」」





「へー、そんなことがあったんですか」

 論争もひとまず鎮まりシロが詰めた重箱の中身をつつきながら横島はピートとタイガー、あとタマモにシロについての説明をする。

「まあなー、あんときゃほんとに驚いたよ」
「そりゃ気がついたらびっくりするくらい成長してたなんて驚きますよね」

 ピートはバンパイアハーフで成長に時間がかかるので短時間で成長したことに関心がいくのだろう。本当に感情がこもった声でそう言う。

「にしても美神さんが事務所に来なければ学校に来てもうまい飯が食えるのか。それはそれでいいよな」

 学校にくるにおいて一番の苦痛であった栄養補給がうまくいくのならこれはこれでいいかも、と思う。
 尤もこんな偶然はそうそう無いだろうが。

「ふー、ごっそさん。シロ、サンキューな」

 弁当を食べ終わると横島は感謝の意味もこめてシロの頭をなでる。

「へへ、このくらいお安い御用でござるよ。それじゃ先生、また後で」
「遅刻しないようにね」

 そう言うとシロとタマモは教室から出て行った。










 さてそして放課後

 横思案は何時も通り、美神所霊事務所へと……………まだ向かっていなかった。

 彼のいる場所は校長室。ちなみに誤解が無いように書いておくがここに呼ばれたのは横島だけではない。愛子、タイガー、ピート。つまり所霊委員である。
そしてそんな役職が割り当てられた彼らにかけられた言葉は…

「交流会、ですか?」

 ピートが四人を代表して言われた言葉の意味を問い返す。

「うむ。学校と言うのは霊的なものが集まりやすい場所だ。また君達や六道女学院を見れば分かるように高校生でも霊能力を持つ者はいる。
だから他の学校にも除霊委員というものはある。数えるほどしかないがね」
「で、その交流会というわけですね」

 愛子が瞳をキラキラ輝かせながら確認する。こういう学生イベントはそれこそ青春といえるのだろう。本当に嬉しそうだ。

「これに関してはGS協会も積極的に活動していてね。無論旅費はこちらから出す。それに旅行の三日間は出席扱いになる。行ってくれないかね」
「はいっ、わたし、行きますっ!!」

 いの一番に答えたのはやはり愛子だった。直前までの反応を見れば当然である。

「僕も多分いけると思います。それでも一応帰って唐巣神父に聞いてからでないと答えは出せませんが」

 すこし考えて答えを出したのはピート。彼もやはり他の人間との交流には興味があるのだろう。お金を出す必要がないうのなら断る理由は彼には無い。

 残るは横島とタイガー。彼らの思考時間は少々長かった。彼らはバイトで生活を賄っている。だから当然交流会に出席すればその間のバイト代はでない。これは彼らの生活を脅かす要素である。しかし同時にここで出れば出席扱い、放課後の分のバイト代は出ないがその間の食費は浮く。
 そんな計算の結果彼らの出した結論は…

「俺もいきます」
「ワシもです」

 何はともあれ全員出席となった。



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