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横島異説冒険奇譚

修行


投稿者名:touka
投稿日時:04/ 8/30

「頼もーーー!」
 ゴンゴンとデカイ音で扉を叩く横島。
「ぶわっ!!顔を叩く出ない顔を!!何の用じゃお主等。ここは神聖なるお山じゃぞ。おぬしのような煩悩塗れの人間は小竜姫様に近づく出ない!!」
 眠っていた?鬼門が目を覚まし、口角泡をつく勢いで捲くし立てる。
横島は降り注ぐ飛沫をタイガーで避けつつ返答した。
「何用って修行しに来たんだよ。さっさとサービスせんかぁ!!ここの売りは色気と女気じゃなかったんかぁああべろっ!!」
「な・に・が、色気と女気なんですか横島さん?」
「ああっ!姫勝手に開けられては我々の存在意義が!!」
 軽やかに鬼門を否定しつつ颯爽と現れた小竜姫は手に持った神剣できつく横島を打ち据えた。
癖になりそう、とヤヴァイ思考に流れるのを感じつつ横島はピートの方角へと吹き飛んでいく。
「ああっ、横島さん大丈夫ですか?」
 目の前には両手を広げたピートが待ち構えている。
「いやっ!全然大丈夫さ。」
 何か危険な香りを嗅ぎ分けた横島は持ち前の化け物じみた回復力で慌てて踏みとどまった。
あそこに飛び込んだら死ぬ。
 彼の乏しい霊感はそう告げていた。
「よう、小竜姫の大将。猿の師匠にまた稽古つけて貰いに来たぜ」
 横島並みに言葉遣いがなってない雪之丞、横で鬼門が騒ぐのを聞かずに小竜姫へと問いかける。
「あ、はぁ・・・・・そこのお二方もですか?」
「そうですケンノー」
「はい」
 アシュタロスとの戦いで見かけた事があるタイガーとピートを小竜姫は見た。
若手としては中堅かそれ以上の面子が揃ってここにきている事に首をかしげる。
「ふむ・・・まぁ、話は中で聞きましょう。さ、どうぞ三人とも」
「ああっ!!我々は無視!?姫、試練をパスせずにいれるのはどうかと!!」
「大丈夫です。この三人は先の戦いにおいて重要な役割を果たしました。ここの門を潜るには十分な資格を有しています。」
 にこやかにそう告げると小竜姫は三人、雪之丞、ピート、タイガーを中へと誘う。
「ああっ!!俺は完全無視!?ちょっとここ開けてんかーーー!!」


 場所は変わりここは妙神山修行場境内?である。
三人は道すがら小竜姫に大体の事情を説明した。
小竜姫はふむふむと頷くと三人を修行場の入り口へと案内する。
 銭湯の番台、一言で言い表せば見も蓋もないその入り口に三度目とはいえ雪之丞は違和感を隠せない。
 経験者でさえこれなのだから初体験のほかの二人の困惑は推して図るものだった。
「こ、これは・・・・・・・?」
「銭湯ですけぇノー」
「ではあなた方にはここに入って、修行着に着替えて貰います。わたしはこっちの・・・」
「女湯に入るならお供します小竜姫さばっ!?」
「ど、どこから現れてるんですか横島さんっ!!」
 にこやかに雪之丞たちとわかれ女湯の暖簾を潜ろうとした小竜姫に突然中から横島が迫る!!
だがそこは妙神山管理人である小竜姫。
咄嗟のバックステップからの流れるような三連撃。
上中下の峰打ちによる衝撃で横島は頭胴体下半身が在らぬ方向を向いた。
「横島さん・・・・」
「相変わらず女子の事となると物凄いですジャー」
「ふっ、流石俺のライバルだぜ」
 あんたこんなのがライバルなんですか、と小竜姫の白い目に気づかない雪之丞は一人うんうんと頷き自分の世界に浸っている。
 そんな可笑しな親友関係の二人に後始末を任せると少し疲れた顔つきで残りの三人は暖簾の奥へと消えた。


「さて、横島さんからだの具合はもう大丈夫ですね?では、これより斉天大聖老師直々の修行『超すうぱあすぺしゃるさんだあでらくす地獄もびっくり大変こうす』を始めます。
 相変わらず横文字苦手なんだなー、と訳のわからない感心をする横島。
っていうか俺の身体をボロボロにしたのはアンタやろ、というツッコミはこの際置いておく。
 何故って小竜姫の言ったなんだかよくわからないがとにかくキツそうなコースなんて真っ平ごめんで逃げたしたいからだ。
 実際すでに彼は出口まであと一メートルという距離まで詰めている。
「それではこれより皆さんに殺し合・・・じゃなかった仮想空間に行ってもらいます。では頑張ってください」
「ああっ!!待って俺は行きたないーーーー!!」
「つべこべ言ってないで行くぞ横島!強くなって帰りたいだろうが!!」
「イヤー!お家帰るー!!こんな原作でも出てこなかったきつそうなコース受けたないんやぁああ・・・・あー・・・あー・・あー」
 後一歩というところで逃げ切れなかった横島は襟を雪之丞に掴まれたまま虚空の彼方へと消えていく。
 彼の出頭の決意は脆くも崩れそうだった。



「ここは!?」
「どこですケーノー?」
 今回の驚き要員であるピートとタイガーは驚きっぱなしだ。
それが彼らのアイデンティティーでもあるのだが少しやりすぎだった。
流石にもう横島のフォローは無い。
というよりできない状態であった。 
 何故なら、彼は本日三度となる壁への食い込みに果敢にも挑戦していたからだ。
「ヨコシマーー。パピリオに逢いに来たんでちゅねーーー!!」
「ぱ、パピリオ・・・お前俺に抱きつくのはいいが俺を柱に抱きつかせんでくれ・・・もうこれ以上固形物と抱擁したくな・・い・・・」
 流石に日に三度は彼でも危険らしい。
彼の中では、レッドゾーンに突入しだした彼の生命の灯火を某蛍の化身が必死で維持している。
助けた男の命を妹に奪われるのは流石に避けたいのだろう。
「ひ、酷い怪我でちゅ!一体誰がこんな事を・・・」
「おまえだぁっ!!」
 出た手の芸人かおのれわとノリ良くツッコム横島、拍子に噴出した血が水芸のようにピートにかかる。
「おい、なんでお前そんなに恍惚としてんだよ」
うっとりと、顔にかかった血液に指を這わせるピート。
 来るとこまでき始めている友人に、いや元友人であった何かに距離をとり始める雪之丞、およびタイガー。
 だが!!ここは限定された仮想世界。スペースは有限だ。逃げ場は無いぞ!!どうする!?アイフ
「お久しぶりです皆さん。さ、老師がお待ちです。こちらへ。」
 やってきたのは魔界軍情報仕官のジークフリード。
アシュタロス直属の配下であったパピリオの妙神山在留に伴い、デタント推進特別在留員として妙神山に滞在していた。
「よぉ、甘ちゃんは直ったかジーク」
「余計なお世話だ雪之丞。さ、老師はあっちの部屋でお待ちになってる。」


「お待ちになってるって・・・猿ですか!?」
 おー驚いてる驚いてる、と横島と雪之丞は経験者の強みから二人を生暖かい視線で見守る。
最初は驚くんだよなー、とかこいつらなんか驚く事しかしてなくねーか?とか余計な事ばかり話している。
「師匠どのはこのゲームにハマってしまってもう三ヶ月もやり込んでるんですよ。」
「長っ!?そんなにやってもまだ飽きないのか?」
 自らもゲーセンでやりこむ事が多い横島が驚愕の声をあげる。
そんなに面白いゲーム出てたっけか?と同時に疑問も浮かんだ。
「いえ、まったくクリアできないのです。そのせいか随分と気を荒げておられて・・・」
「キーっ!!キーっ!!」
 言ってる傍からコントローラーを地面に叩きつける斉天大聖、それでも納まらないのかそれを今度は踏んづけている。
「ヘタレじゃねぇか!!三ヶ月かかってクリアできないってなんだそりゃ?ロマサ○3かよ!?」
 どんなタイトルだと見てみると激怒している斉天大聖の手の中のパッケージには、




             『超兄○』


「うわぁ・・・・」
「痛ぇ・・・」
「欲しい・・・」
「「「えっ!?」」」
 もう何も言うまい。
三人は彼岸へと達した元親友のこれからを温かく見守っていこうと思った。


「そんなわけで、今師匠殿は一応この空間を維持していらっしゃいますがあなた方は師匠殿がこのゲームをクリアするまで出る事ができません。
 幸いここと外では時間の流れが違うので心配は無いのですが・・・・」
「ですがなんだよ?」
 言いよどむジークに問い詰める雪之丞。
あまり横島の文字が出てこないが、彼は現在パピリオに遊ばれているため画面外にいる。
ちょっとピートが加わりたそうなのは秘密だ。
「本来このコースは仮想空間で皆さん超加速に入られた状態で修行を行うというものなんです。
そうする事で修行の効果を何倍にも高める事ができるんですが・・・・・」
「肝心の相手がアレってことか・・・・・」
 二人の目の前ではポーズを決めたいかつい漢、兄貴を巧みに操ろうとして失敗する斉天大聖の姿があった。
「相手がいないんじゃなあ。ここに閉じ込められるのは流石に勘弁だぜ。それなら外で竜の大将に技教えてもらったほうが有意義だ。」
「ですよねぇ・・・・どうしましょう?」
 困ったなぁと頼りないジーク。あんたホントに魔界の軍人なのかと問いかけたい雪之丞だったがまぁやめた。
それよりも出る事が最優先である。
「そうだ。そういや前んときは気を乱したとかですぐ外に出られたじゃなかったか?」
「それがだめなんです。今回は元々中で修行するよう作られた空間なのでちょっとやそっとの霊力の乱れじゃ簡単に破れないようになってるんですよ。
外と連絡を取ろうにもここから出られないので話になりませんし。
僕の魔力ぐらいじゃ出られないんですよ。
パピリオはパピリオでここにいれば修行しなくていいって手伝ってくれないし・・・・」
 そう言ってがっくりと項垂れるジーク。
彼も最近縦線が似合う男になってきたとは魔界に住む姉の弁である。
「あのー・・」
 背中が煤けている二人に声をかけたのは今ここで最も影の薄い男、タイガー。
「ワッシ思うんじゃが一人でだめならワッシら全員でやるってのはどうジャー?
幸いここにはワッシを含めて五人おりますケン。」
「「それだ!!」」
 なんですぐこんな事思いつかんのジャー。
何気に口をついたこの意見にブチ切れた二人の私刑ショーはしばらく続けられた。


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