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BACK TO THE PAST!

デジャブーランドでさようなら3


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 8/24


話は十数分前・・・。

「あ〜!!ちくしょうあのイケイケクソ女抜け駆けしやがったわね!!」

夢の王国デジャブーランドのカフェテラスで、一人の少女が見かけに似合わぬ恐ろしい言葉使いで、周りの客を硬直させていた。
「いまにみてろー。すぐに見つけ出してやる・・・」
パピリオは怒りを隠そうともせず、虚空を睨みつける。まるでそこに仇がいるかのように。

しかし、そんな彼女に声をかける勇気ある若者が居た。
「あの〜〜〜・・・」
「なに!」
鉄板に穴を開けそうな眼光がほとばしる!
「うっ・・・・・・御代のほうを」
若者は、震える手で先ほどの飲み食い三人分のレシートを突き出した。




その後響き渡った毒舌の悪さに、子供が居るものは、しっかりと彼らの耳をふさがなければならなかった・・・・。




「・・・とは言ったものの・・・いないわね」
始めのうちこそ殺る気満々だったパピリオだったが、園内は広く、何処を探しても見つからない。だんだん気持ちも重くなってきた。しかも対照的に財布は羽が生えたかのように軽い。
仕方無しに彼女はベンチに座って何となく時をすごしているのだ。

ちなみにその傍らにはナンパ野郎が二三人ゴミ箱に突っ込まれている。

「はぁ・・・」
右を見てみる。・・・・知らない人ばっか。

左を見てみる。・・・・知らない人ばっか。

後ろには壁があって、前には何やら「カブーリの海賊」とか言うアトラクションがあった。

・・・・何か寂しい。もしかして私って今迷子?


パピリオが本気で迷子センターに行くか考え始めた矢先、

「え?」
強大な魔力を感じた。しかも・・・これは・・・

「お兄ちゃん?・・・・何で・・・」

しかもぐんぐん大きくなる。
その魔力がひときわ大きくなった次の瞬間、今度は一気に小さくなった。消え去りそうなほどに。

「そんな!」

こんな反応は今まで一度しか見たことが無い。そう、姉達が次々と死んでいったあの時のみだ。


パピリオは飛翔し、先ほどの反応があった場所を探す。

「おい、女の子が飛んでるぞ!」
「アトラクションか?」

下には黒山の人だかりが出来た。

「見世物じゃない!あっちいけ!写メール撮るな!!」
彼女が「うがー!」と叫びながら、恐怖を与える程度の霊気を当てると、彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「こっちか・・・」
パピリオは霊感を頼りに見当をつけ、林の中にと降り立った。




そこで見たのは・・・いとしい人が血まみれで地面に倒れている所だった。

彼女は慌てて駆け寄った。
他にもその場には何人か誰か居たのだが、今の彼女にはそんなもの見えなかった。

「ねえ!ちょっと!いやだよ・・・・返事して!」
彼の体はまだ温かかった。しかし急速に体温が失われていくのがパピリオにも解る。

横島はうっすらと目を開けた。
「ぱ・・・ぴ・・・・りお・・・そこに、いるのか?」
「ポチィ・・・・死んじゃいやだよ・・・!!」
彼女はどうする事も出来ず、彼の体にすがり付いて泣き始めた。


「またしても予想外だ・・・どうしたものか・・・」
神族は腕を組んで考える。魔族の方がその肩を掴んだ。
「・・・見取らせてやれ」
神族のほうは、鎧の下で意外そうな顔をする。
「おまえ・・・結構甘いな」
「ふん・・・どうせ助からんからな」
二人の姿は掻き消えるかのように消え去った。


「すまねぇな・・・・ずっと・・・一緒だって言ったのに・・・」
「やだ・・・そんな事言わないで・・・」
パピリオははらはらと流れる涙をぬぐう事も忘れて、ひたすら不慣れなヒーリングをかけていた。しかし、その程度でふさがるような傷ではない。

「・・・形見だ・・・・持っててくれ・・・」
横島はゆっくりとバンダナを外すと、パピリオに握らせる。
「何言ってんの!お願っ、いだからっ・・・っ・・そんっ、な事言わないで・・・!!」
パピリオはバンダナを握り締め、ぐすぐすと嗚咽を上げる。

「・・・・すまん」
横島は、ゆっくりを目を閉じた。

「おにい・・・・ちゃん・・・・?」


その体からは、もはや生気は感じられなかった。


「イヤァァァァァアアアアアアア!!!」

彼女は彼の体を抱きしめて泣いた。

お気に入りのワンピースが真っ赤に染まる。しかしそんな事は全く気にならない。

ぽっかりと開いた心の隙間にはもう何も無かった。




しばらくわんわんと泣いた後・・・彼女の脳裏に一つの方法が浮かんだ。

これなら・・・まだ彼を助けられるかもしれない。

私は彼を助けるためならこの方法でどうなってもいい、しかしこの方法では・・・彼は・・・・

じっと考え込んだ後、パピリオは覚悟を決めた。

「ごめんね・・・」
そう呟いて・・・彼女のいとしい人に、くちづけをした。

彼のバンダナを握り締めて。







ここは・・・・何処だ?

俺は死んだのか・・・じゃあ、あの世か?

「ここはあなたの心の中」

パピリオ?何でこんなところに・・・

「・・・・ごめんね。お兄ちゃん・・・」

おい待てよ・・・行くなよ・・・それにごめんって・・・・






目が覚めた。
「生きてる・・・」
始めに呟いた事はそれだった。
「なんで・・・?」
胸に開いた穴をさするが、服が破けているだけでなんとも無い。なぜ・・・?

横島は立ち上がった。体が軽い。

そして、立ち上がった拍子に何かがずり落ちた。

「これは・・・パピリオのワンピース・・・・・それと俺のバンダナ?・・・

・・・・・・・・・・まさか!!」

慌てて自分の魂を探る。

嘘だ・・・嘘であってくれ・・・頼む・・・

しかし・・・自分の魂の中には、紛れも無い彼女の、パピリオの気配。
彼女は・・・姉と同じ手段を取ったのだ。

自分の魂の全てを犠牲にして・・・横島を助けたのだ。



『ごめんね・・・』







「・・・う・・・うわ・・・うわぁぁぁぁあああああああああああ!!!!」

涙、後悔、悲しみ、喪失、いろんなものをごちゃ混ぜにして、彼は絶叫を上げた。







どれくらいの時がたったか?

トランシーバーを片手に一人の男が現れた。

「こちら西条。横島君を発見。政府を出し抜いてやった。・・・・心配ない、やはり生きている。気絶しているようだ。だが・・・・・・他の二人はもう・・・」
西条は横島の下へと歩み寄った。
ペチャペチャと、まだ乾ききっていない血が音を立てる。
横島は頬に涙の後を残し、バンダナを握り締めながら仰向けに倒れている。
「なあ横島君・・・君とはいつも令子ちゃんをめぐって争っていた・・・でも、こんな終わり方、酷すぎないか?」

いつもクールを決め込んでいる彼の顔が悲しみにゆがむ。
押さえきれなかった涙が頬を伝った。

「何で守ってやらなかった・・・・・・

・・・・・・・クソッ!クソォ!!」

西条は手近にあった太い木の、そのゴツゴツした表面を殴りつけた。

何度も何度も。

彼の拳が血まみれになって、木が赤く染まるまで。


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