椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

デジャブーランドでさようなら


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 8/21

今回の話はあの修学旅行が終わってしばらくしたころの話である。

その間には六道学園のクラス対抗戦でシロタマパピの三人組が大事件を起こしたり、みんなの人気者、霧崎さんと何とやら、など色々とごたごたや大騒ぎがあったのだが、それはまた別のお話。


話は、美神令子のマンションから始まる。

マンションの主美神令子は何故か軽くおしゃれをして電話の前に立っていた。

明日はなんと一日中仕事が無い。だからちょっと出掛けようと思う。
でも一人で行くのもなんだから・・・よ、横島君でも誘おうかなぁっと・・・・。
い、いや別にデートとかじゃなくて、ただ二人っきりで出かけるだけで・・・


・・・・・。


・・・う〜ん二人っきりかぁ〜。


と言う訳で、彼女は三十分以上電話の前にいるのだった。

そして覚悟を決めて受話器に手をかけた。

「は〜〜〜〜・・・ふぅ〜〜〜〜〜・・・(深呼吸)落ち着いて、別にデートのお誘い何かじゃないから緊張するんじゃないわよ、令子!それに横島クンの予定は開いている(ように仕組んだ)から断られる心配も無い・・・」

そうして手をかけた受話器を持ち上げようとした時・・・



ジャリリリリリリリリン!!!!



「うっきゃぁぁぁぁああああ!!!!」

彼女はパニックを起こした。一通りあたふたとしてから、やっとこさ受話器を取る。

「はい、こちら美神令子です。すみませんが今週の日曜日は定休日です(棘)」
美神は精一杯の嫌味を込めた声で応答した。
ちなみにたいていの者はどんな依頼を持っていようが引っ込むという優れものだ。

しかし、今回は相手も相手だった・・・

『・・・悪かったな、美神君。こちらも急用なのだよ』

「(こ、このドスが効いたダミ声は・・・)じ、GS協会本部の・・・すみません!つい一般の方かと・・・」
美神は滝のような汗を流す。
彼ら(GS協会)はチャンスさえあれば一存でS級GSの免許を剥奪できるほどの力を持っている。

彼女のように後ろめたいものを持っている存在には特に、できれば顔を会わせたくない、いや声だって聞きたくない存在なのだ。
そんなもんだから、流石の美神令子も下出に出ざるをえないのだ。

・・・内心じゃあ今にも呪い殺したいところだが。

『別に詫びる必要も無い。こちらも緊急だったからな』
電話の向こうからは相変らず人を見下したような声が聞こえてくる。
美神はそれにこめかみをヒクつかせながら、爪を隠した声で応答した。
「はあ、そうですか・・・。(ああこっちだってあんた何かにゃ〜謝りたくねぇよ)ところで急用とは?(ったく。人使いが荒い・・・どうせ今だってでかいソファーでくつろいでるくせに・・・何が急用よ」
『美神君・・・それが我々に対する君の考えかね?』
「はっ!?い、いえほんの言葉のあやってヤツですよ・・・(声に出てた!?しまった、横島クンの癖が移ったか・・・)」
『そんな事はもういい、それより急用だ。今から言う指令を実行せよ。報酬は弾む・・・』
電話の向こうから半ばあきれたような声が聞こえてきた。
美神は金につられ、指令とやらを聞くためにいやいやながら耳をそばだてる。

















「・・・・・・え?」

『・・・以上だ』
最後に健闘を祈る、とまた偉そうな言葉を吐き出し、電話は切れた。


するりと受話器が美神の手を離れ、がしゃんと音を立てて地面に落ちる。




自分以外誰もいない広いマンションで、その音はやけに大きく聞こえた。







ずいぶんと、同じ姿勢で立ち尽くしていただろうか?

彼女は震える手で受話器を拾い、電話をかける。




ぴ、ぽ、ぱぱぱ・・・・・・・トゥルルルルル・・・・。



『はい、横島です』


電話の向こうから聞こえた声は、いつもどおり元気にあふれていた。






「いやぁ〜うれしいな〜美神さんといっしょに遊園地なんて・・・」
高速を疾走するワゴン車。その助手席に座る少年が満面の笑顔でドライバーに話し掛ける。
「ま、なんだかんだ言っていつも役に立ってるからね。たまにはサービスしてあげようって気になったわけ。変な気ぃ起こすんじゃないわよ?」
ドライバーは前を見たまま軽い口調で返事をした。
「あははは、わかってますよ。この横島、ここまで目前と迫ったチャンスを逃すほど甘くは無いです」
「どうかしらね、というか何が目前なのよ・・・」
「そりゃあもちろん・・・」

話を続けようとする横島の前に、『じゃがりこ』のカップがずずいと差し出された。
「お兄ちゃん、じゃがりこ食べる?(棘」

「・・・い、いただきます(汗」
彼は震える手でじゃがりこを受け取った。

「にしても何であんたがいるのよ、私は誘ってないわよ?(ちっ、シロたちには仕事を押し付けたけどまだこいつが居たか・・・不覚!)」
美神は『あんた邪魔よオーラ』を込めて、後ろの席にいる、『人間ごときが私に勝てるとでも思ってんの?オーラ』を放つパピリオに皮肉じみた声を送った。
「なによ、私がいちゃ悪いっての?」
「もちろん。オトナの付き合いに子供は不要なのよ」
「何よ、自分だって思考回路子供並じゃない」


お互いに相手をけん制しあい、邪悪な笑みを浮かべる二人。

「「ふっふっふっふっふ・・・・」」

二人が放つオーラは禍々しく渦巻き、所々で怪しい発光反応が起こっていた。


「・・・・・・・こ、こわい」
横島はどうする事も出来ず、瘴気に当てられて朦朧な意識のまま震えていた。


・・・・じゃがりこ齧りながら。






というわけでデジャブーランドへついた一行。(どういうわけだ?)


お城、風船、甘い香り、全てがファンタジックで何処かユーモラス。
まさしく夢の世界、といった雰囲気が五感全てを刺激する所であった。

「ね、ね、ね、ね、アレ乗ろう!あれ乗ろう!」
「スプラッシュ魔雲天か・・・結構並ぶわよ?」
「まあ、ちょっとぐらいは待ちますよ。日曜ですし」
始め、険悪なムードに冷や汗を浮かべていた横島だったが、園内に入ってからは二人からの圧迫感が無くなって来ていた。
ようやく彼は肩の力を抜き始めた所である。

「あ、そうだ俺飲み物か何か買ってきますよ。並んでてください」
横島は列に残る二人に手を振ると何処かへ走っていった。

しばらくその後姿を見ていた二人だが・・・


「・・・」きっ!
「・・・」きっ!

一瞬で壮絶な睨み合いが始まった。


「な、なあ別な所行こうぜ?」
「そ、そうね・・・」
「ママー!こわいよー!」
「そ、そうだわ。あっちのアトラクションの方が面白そうね・・・」

空中放電を起こすほどの霊気のぶつかり合い。その凄まじさにアトラクションを並んで待っている人たちはそそくさと退散を始めた。

順番待ちの列はどんどん短くなっていった・・・。


「おまたせ〜〜ってずいぶん進んだな〜」
横島が来るころ。もうすでに美神とパピリオは列の先頭付近にいた・・・。


『えっ?ホンマか?』
『アホやな〜ウソにきまっとんねん』
『もーアンタとはやってられんわぁ〜』


「へぇ〜ニンゲンって面白いもの作るのね〜・・・あ、あれ・・・何とかラビット!」
「実はよ〜〜〜く見ると不気味な人形なのよね、こーゆうの」
「夢を壊しちゃダメですよ美神さん・・・」

アトラクション内部、丸太の作り物のような乗り物に乗り、さまざまなからくり人形の会話などを聞きながらどんぶらこどんぶらこ、と洞窟内を進む横島たち。

パピリオは純粋にはしゃぎ、美神は難癖をつけ、横島はつっこみ担当。

どうにせよ、三人とも楽しんでいた。
ちなみに美神とパピリオは横島を挟むようにして座っている。(え?本物は一列につき二人しか座れないって?・・・そんな細かい事気にすんなよ〜)

そして、三人はそろそろこのアトラクションの目玉にさしかかろうとしていた。


「おおっ・・・そろそろっすよ!」
横島は楽しげに声を上げた。

しかし両側からは何の応答も無い。彼は不審に思ったが、すぐに落下が始まってそれどころでは無かった。


洞窟を出て、外気に触れた瞬間に始まる落下。デジャブーランド全体を一望しながら滝と共に落っこちる。それがこのアトラクションの目玉である。

ちなみに結構怖い。
しかしだからといって顔に出すのはやめたほうがいい。何故なら落ちる瞬間、自動でその様子をカメラに写されてしまうからだ。(ちなみにその写真はアトラクション後に買えるが高い)


そして横島もカメラのフラッシュを受けた。

その瞬間、何やら両側から押し付けられるのも感じた。




アトラクションは終わり、横島は先ほどの写真を購入している。

その間、美神とパピリオは面白くない顔をしていた。
「まさかこのチビが私と同じことを考えていたとはね・・・迂闊だったわ」
「・・・・・どういう意味?」



「ありがとうございましたー」
ファンタジックな格好をした受付嬢が元気な声を張り上げる。

横島は大金を支払い、さっきの写真を手に入れた。

「ははは・・・」
なんだか見ているだけで笑いがこみ上げてくる。


その写真の中では、美神とパピリオに両側からキスされている自分が写っていた。

「家宝だな、こりゃ」
彼は大事そうにそれをポケットに入れた。




その後も何故か横島に積極的な美神や、そんな二人を引き離そうと躍起になるパピリオに、彼が振り回される時間が続いた。


いつも横島ならこんな美神を見ようものなら真っ先に飛びつくところだが、パピリオもいるし、何よりそんな美神が新鮮でならないので、彼は今日一日、純粋に彼女との時間を楽しむことにした。

そんな彼の心意気が通じたのか、その日は彼にとって最高の一日であった。



そう、途中までは・・・・



「トイレいってくるね」
昼過ぎ、三人がテラス風のところで食事を取っていた所、パピリオが席を立った。

そして『手ぇ出すんじゃねぇぞコラ?オーラ』をふんだんに美神に浴びせ、トイレを探しに行く。
「おう、迷子になるなよ」
「わかってる!」
彼女は横島の声を背中に受け、やがて人ごみにまぎれて見えなくなった。

美神はストローで、もはや氷だけになったカフェオレのコップをかき回しながら、何か考えているかのようにうつむいていた。
しかし唐突に立ち上がると横島の手を取って、歩き出す。
「あ、あの何処へ・・・」
横島は突然の事に驚いていたが、
「・・・ついて来て」
美神の真剣な顔に、つい従ってしまった。











美神の飲んでいたコップの氷が、カランと涼しげに音を立てた。




ここはデジャブーランドの中でも植木並木の向こう側の小さな林の中。普通、通常の客は入ろうとしない。

「どうしたんすか?こんなところまで人を引っ張って来ておいて・・・」
横島は服に引っ付いた葉っぱを払いながら言った。

「こんな人気の無い所でいったい何を・・・・え?もしかして愛の告白っすか?」
横島がいや〜困ったな〜などとおどけて見せるが、美神は表情一つ変えない。


やがて美神は唐突に動いた。


愛の告白ではなかった。



美神は拳銃を取り出し、狙いをつける。






銃口は、まっすぐに横島を向いていた。









「横島忠夫。今から、あなたを抹殺します」

機械的な声が響いた。






わずか数十メートル先のデジャブーランドから流れてくる音楽が、何処か遠い世界のもののように聞こえた。


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