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BACK TO THE PAST!

超!修学旅行完結編


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 8/18

座らないか?

横島が言い、

ええ。

パピリオは返した。

二人は川辺の岩の乾いた所に並んで腰をおろした。
お互いに口を開く事は無く、ただ何となく、時が川のせせらぎと一緒に流れていった。

蛍たちの光はゆらゆらと、まるで二人の心のように揺れていた。

「あ〜・・・パピリオ?」
ぎこちない笑顔を貼り付け、横島は思い出したように声をかける。
「何?」
パピリオはそっけなく言った。

横島は凍りついたように馬鹿な笑顔のまま動けなくなった。


可哀想な彼をほうったまま、また川のせせらぎと蛍だけの時が流れる。


「ルシオラちゃんってさ」
唐突にパピリオが声を出す。
「やっぱり見た目どおりおせっかいだったのよ」
「パピ・・・」
呟く横島を気にかけず、彼女は淡々と語りつづけた。
「私が始めて目覚めた時、『始めまして、パピリオ』って言ったのまだ覚えてる。
あとさ、みんな知らないだろうけどメカフェチっ気もあったんだよ?何かあるとすぐに何かしら機械作ってさ、しかもたまに大失敗して大変な事になったのよ。
それから・・・・」
何の取り止めも無い事を、前後関係も全く無くただ話しつづける彼女。
横島は静かに聞きつづけた。
彼女の瞳に映る蛍の光に目を引かれながら。

やがて話のネタも尽きたのか、彼女の話が途切れた。
その一瞬後に、
「そっか」
と横島が呟いた。

「さっきはごめんな」
横島が言う。
「ううん。こっちもごめんね。変な事言った私が悪いのよ。それに今話してた事も当て付けもいいトコだわ・・・」
パピリオは恥ずかしげに言って顔を伏せた。

そんな事は無い・・・

「私が悪いの。せっかくポチが家族になってくれたのにさ・・・」

パピ、違うよ・・・

「それ以上を要求した私が・・・「そんな事ねぇよ・・・!」・・・!」

横島はぎゅっと小さい肩を抱きしめる。
「今気づいた・・・俺、ずっとおまえの面倒見て、それでルシオラに詫びろうと・・・ずっとそう思っていたんだ!そうさ、始めから俺が見てたのはパピの事じゃなかったんだよ・・!
すまん・・・・俺、最低だった・・っ!!」

横島がそう言って精一杯の懺悔の気持ちを伝える。しかしパピリオは彼の腕を跳ね除け、懺悔の気持ちも受け取らなかった。
「自分を責めないでよ!そんなのずっと前から知ってるわ!でも・・・そうだとしても、そうであっても、あなたと居れるだけで私は幸せだったんだから!!」
今度はパピリオの方から横島を抱きしめる。
「さっき『ゼロ歳児』がどうのとか変な事言ったのは・・・ちょっと甘えたかっただけなの。

ごめんね・・・」



二つの影は一つになっていた。
蛍たちが祝福するかのように、周りを飛び回り、幻想的な風景を




「・・・でもガキ扱いしたのはまだ許してないから。もう私はオトナだからね?」



・・・作ってるのを、このたった一言がぶち壊した。
「おいおい・・・せっかくしんみりしたシーンをぶち壊すなよ・・・」
横島はあきれた声を出した。
「だってお兄ちゃん、せっかく乙女があそこまでしたのに相手にしてくれなかったんだもん・・・。ちなみに我慢できなくなったらいつ来てもオーケーだからね?」
パピリオはにやにやと笑みを浮かべる。
「はぁ・・・心配してそんした・・・」
ヨコシマは心底あきれたような、安心したような溜め息をつく。


そしてどちらとも無く笑いが漏れた。

「ふはは・・・」
「んふふ・・・」


まあどっちにしろ・・・仲直りできてよかった。
二人はそう思っていた。

「んで、結局・・・」
パピリオは横島を掴む腕に力を込め(いちおー握力200キロ越えです。)逃げ道をふさぎながら言う。
「な、なんだ?」
横島はちょっと怯えた。

「私の事、愛してるの?もし愛してるなら・・・・・キスして」
彼女はそう続ける。
横島の顔が冷や汗でいっぱいになった。

なんと答えるだろう?キスするだろうか?

彼女は思う。

しかし、何となく想像がついた。いや、おそらく絶対・・・

「もちろん愛してるさ・・・・ってあくまでプラクトニックラブだからな!!」
そう言うと彼は恥ずかしそうに私の額にキスをした。

ほ〜らね。


「・・・今度は俺の昔の話してやろうか?」
「うん!」
「そうだな〜・・・」



しばらく、川辺には楽しげな笑い声が響いていた。

今度こそ、蛍たちが祝福するかのように二人を照らしていた。



その後、横島はパピリオが急に静かになったのを怪訝に思い、声をかけたところ・・・

「おい、パピリオ・・・って寝とるし」




猫又の山小屋。

かくして横島はパピリオを背負ってここへ帰ってきたのだった。
「う〜っす。ごめんくださーい」
そういうやいなや飛び出してくるケイとシロ。
横島は「にゃんまげ」のごとく飛び付かれ、苦笑いを浮かべる。

「あら、仲直りできたみたいね」
送れて出迎えに出てきたタマモはパピリオの幸せそうな寝顔を見てそう言った。
「ああ、・・・それよりこいつらを何とかしてくれ」
両手が使えないのでやられ放題の横島は、情けない顔でそう言った。

横島は美衣が敷いてくれたせんべい布団にパピリオを横たえ、やっとこさ自由になった。

シロとケイを気にしなければだが・・・

久しぶりに憧れの兄ちゃんに会えてうれしくて仕方が無いケイがべたべたとくっ付くので、それに対抗してシロもいつも以上にべたべたするのだ。
よって小屋の中に、異常に人口密度、温度、湿度が高い空間が出来上がるのだ。

「ええい!鬱陶しい!はなれんか!!」
「にゃーん!」
「わうー!」

耐えかねなくなった横島は二人を引っぺがす。

「ふぅ・・・やっと落ち着いた・・・」
横島はパタパタと上着をあおって涼もうとする。
すると霧崎さんも団扇であおいでくれた。
「大丈夫ですか?」
「お〜ありがとう。今時気が利くむすめさんやー!」
「ど、どうも・・・」

その片隅ではシロとケイが美衣に説教を喰らっていた。
「もうっ、人がいやだといったらすぐに止めなさいと何度も言ったでしょう!」
「は、はい・・・」
「な、なんで拙者まで・・・」

タマモは美衣に出してもらったのか、お茶をすすっている。
横島が目を合わせると質問を投げかけてきた。
「そういえば聞こう聞こうと思ってたんだけど、この際聞かせてくれない?」
「何だ?」
「さっきパピと「シロが仲直りを邪魔しないようにしてくれたら聞きたがってたこと教えてあげる」ってことになってたんだけど、あいつ眠ってるし、代わりに横島に聞きたいってわけよ・・・」
タマモはここで一呼吸置き、めいいっぱい冷たい声を出した。

「あんたが手を出そうとしたって言うゼロ歳児のルシオラって子の事よ・・・」

「!」×4

「にい・・・・ちゃん?」
「横島せんぱい・・・まさか・・・」
「うわぁああ!!ケイ、霧崎さん!そんな汚物をみるような目で俺を見ないで!シロも霊波刀しまえ!美衣さん!!たのみますから半獣体型から戻ってくださいぃ〜!!」


ひともんちゃく・・・。


「・・・というわけで、彼女はゼロ歳児とはいえタマモみたいに生まれた時からある程度成長していたわけだし、知識もあったわけ。OK?」
横島は何とかみんなを説得する事に成功した。

何故か傷だらけだったけど・・・。

しかもアシュタロス戦役まで詳しく説明する事にされてしまった。
「ホントは機密事項とか多いんだけどな〜。それに面白い話じゃないぜ?」
横島はそう言うが他のみんなの目はそんな事蚊ほども気にしていない、期待に満ちた目だった。
前のめりになって目をきらきらさせる美衣さんは、結構可愛かった。
「(美衣さんまで・・・)まあいいか、じゃあ話すぞ?アレは確か美神さんの前世がそもそもの始まりでなぁ・・・」

彼は始めはこの事を話すのに抵抗を感じていた。
しかし話しつづけているうちにそういうのは無くなって行った・・・

話が進むにつれ、抵抗に変わり不思議な安堵や安心感が心に満ちていく。

彼は夢中になって話した。

前世の戦い。

エネルギー結晶。

アシュタロス。

逆転号の日々。

南極。

一時の彼女との平和な生活。

最終決戦。

東京タワーの別れ。

決着。


「・・・とまあこれが真相。ほらな、別にやましい事でもなかったろ・・・おいおい、泣くなよシロ・・・」
「だって・・・だって・・・せんせい・・・」
めそめそと涙を流す弟子の頭を慈しむように撫でる横島。
そうしている内に彼女は眠ってしまった。

そんな彼らを見ながら涙ぐむ息子を抱きしめていた美衣は、あっと声を上げる。
「そろそろ帰らないとまずいのではないですか・・・?」
「「「あっ!」」」

じっと真剣な目をしていたタマモ、ぶわっと浮かんだ涙を拭いていた霧崎さん、シロの頭をなでていた横島は、同時に顔を見合わせた。



帰り道。

猫又親子に見送られ、帰り道につく横島たち。(距離的には意外と近かったのだ。だから普通に歩いて帰ることにした。)

横島は一人でパピリオを抱きかかえ、シロを背負いながら歩いている。
「にしてもよく寝てやがる・・・」
彼は前と後ろから聞こえるいびきに苦笑いをした。

タマモはそんな彼をじーっと見つめる。

コイツが・・・ねぇ

初めて知ったアシュタロス戦役の全貌。
いつもへらへらと場に流されているような、こんな奴があんな世界を賭ける戦いに巻き込まれていたなんてあまり想像は出来ない。
しかし、時折見せる、私をドキリとさせる、あの真剣な顔を見るとなんだか想像できなくも無い。

「ねぇヨコシマ・・・」
タマモは前方を歩く霧崎さんに聞こえないような声で声をかけた。

「ん、何だ?」
その振り返った横顔はやっぱり彼女をドキリとさせるもので・・・。

「今日、あんたの話聞いてさ、やっぱりって思った。私・・・・あんたの事・・・・



き、・・・嫌いじゃないからっ!」

そう言うとタマモは走り出した。霧崎さんを弾き飛ばしながら。「きゃぁ!」


多分、私はこれが言いたくてここまで来たんだろうな〜
とか思いながら。


当の横島は・・・・ちょっぴりうれしそうな顔をしていた。

(う〜ん・・・後5年後ぐらいだな・・・)
何を考えているのやら・・・




何だかんだあってホテル前に到着する横島一向。

しかし・・・・




・・・・じごくのもんばんがあらわれた!(BGM、DQWの戦闘のテーマ)

「よーこーしーまー・・・こんな夜更けに女子高生連れて何処行ってたのかしら〜?」

霧崎さんはこんらんしている。
あうあう言っている。

タマモはこんらんしている。
耳を押さえてうずくまっている。

シロはねむっている。

パピリオはねむっている。

横島はにげだした。しかしまわりこまれた!

「す、すいません!!だけど別にやましい事はぁ〜!!たすけてー!今『鉄の金庫』持ってない!!ここで全滅したらお金が半分になってしまう〜!!」
立ちはだかるじごくのもんばんからの鉄建制裁を覚悟し、訳のわからぬ平謝りする横島。
だが、返ってきたのは意外なものだった。

「・・・・解ってるわよ。そんなの。
さっきの話の内容からしてあんたたちが何をして、何を聞いてきたかは冷静に考えれば天才じゃなくてもわかるわよ。

ったく・・・この馬鹿たれ!」
ゴツッ!
「いてっ!」
横島はゴツンと軽い拳骨を貰う。
「・・・心配させんじゃないわよ」
そして彼だけに聞こえるように小さく、そう言った。

「美神さん・・・」
横島はまだ今起こった事を信じられていないような顔をした。

(あの美神さんが俺に拳骨一発だけ?最近、ずいぶんと丸くなってきてるな・・・ま、まさかそろそろ美神エンディングが近いのか?!そうなのか?!ああちくしょう、パピとシロで両手がふさがっていなければ今すぐ伝説のルパンダイブで飛びついたのに!!」

「そんなに鉄拳制裁の方がよかったの?」

「イエ・・・ホンノジョークデス・・・」
いつものように思わず妄想を口に出し、わざわざわが身を危険にさらす、愚かと言えば愚かな男横島・・・今日も美神の握り締める鉄拳に冷や汗を流すのだった。

「さあさあ!あした5:30起きよ!あと3時間しかないんだからとっとと部屋に戻れ!!」
美神が最後にそう言い、横島たちは慌てて部屋へと戻って行った。




まあこうして波乱の修学旅行は終了したのだが、しいて言えば・・・


横島が「ゼロ歳児とヤろうとした!」という誤解を六道学園全体から消すのに大いに奮闘したと言う事をここに記そう。


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