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BACK TO THE PAST!

小悪魔を追いかけろ2


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 8/12

たったったったった・・・・

はっはっはっはっは・・・・

かれこれ、かなりの時間を走りつづけている。当然ながら息も上がるし足も痛い。
だが、今の自分はなんとしてでも妹を見つけなければならない。

横島は、木々の合間を縫うように走りつづけていたが、やがて唐突に開けた場所へと転がり出た。

「あれ・・・・・しまった!ここは森の反対側か!!」

慌てて引き返してゆく。

妹パワーでいつにもましてパワフルである。




そのころ森の中心部付近では夜闇の中を足早に移動する二匹のモノノケの影があった。

そろそろお互いに競い合うのが馬鹿馬鹿しくなってきたので、今では協定を結び、協力している・・・

「馬鹿!そっちじゃない!!」
「なっ!?こっちでいいのでござる!!」

・・・のか?
まあどっちにしろ徐々に濃くなってきたパピリオの匂いから目的地が近いという事だけは解る。

目的地に近づくにつれ、だんだんと二人の速度は落ち、口数も減っていった。
何故か二人の間に気まずい空気が流れ出し、それを振り払おうとタマモが声を出す。

「ねぇ、あんたはやっぱりヨコシマのことを知るためにパピリオに会うのよね」
「あたりまえでござる。冷静に考えてみれば何かと理由があるはず。拙者は先生を信じるでござる」
シロは不気味に生い茂る草をガサガサと掻き分けながら言った。

その目はまっすぐに一点だけを向いてるように・・・タマモには見えた。



何となく、くやしかった。



そんなタマモにシロが振り返る。
「そういえば何でタマモは・・・」

「え?」
聞かれた彼女はハッとした顔をする。



―――私は・・・・


「「っ!危ない!!」」

シロタマは同時に突然叫ぶと横っ飛びにその場を離れた。

ギュォォオオン・・・!

二人の間を霊波砲が通り過ぎる。

「な、なんなのよ!」
「解らんでござる・・・」
二人は歩み寄り、背中合わせにあたりを警戒する。
そして茂みの向こうから近づいてくる巨大な魔力にすぐに気づいた。


禍々しい瘴気で一歩ごとに足もとの草木を枯らせながらそいつは登場する。
「た、タタリ神でござるか?」
残念な事にタタリ神ではない。


「よ〜く〜も〜今までよりによって!この私を!コケにしてくれたわね!!」


「「パピリオ!?」」

「泣いて詫びるがいい!!」
最凶の悪魔が二人へと飛び掛った。

「「な、なんかよくわかんないけど違・・・・」」
「問答無用!!」


きゃーーーーー!!


黒い森に二人ぶんの悲鳴が鳴り響いた。

・・・・容赦もクソもなかった。



しばらくして・・・
「あら?よく見りゃシロタマじゃない」

・・・いつか殺す!
あちこち傷だらけで肩で息をするシロタマはそう思った。


「それじゃあまだ守人とか言うクソヤローは何処かにいるってわけね・・・」

「何よ守人って」
タマモはパンパンとユカタをはたきながら言う。
「うん、なんか執拗に私の事をトラップとかで攻撃してくるヤツが・・・・って言ってるそばから何やってんのよ」

タマモとシロは振り子のように迫ってきた岩に巻き込まれていた。

―――あんたにボコされなきゃ軽く避けられたよ・・・

彼女らの目はそう言っていた。

でも口では言わなかった。
これ以上ダメージを受けるのは得策ではないと思ったからだ。
とりあえずはよけいな事を言わずにトラップを避ける事にする二人だった。

あくまでとりあえず。



とまあトラップを避けつづける三人だったが・・・

「うわっ・・・銀の銃弾!?」
「霊体ボウガンもあるでござる!!」
「ねぇ・・・なんでこんなところにミサイルが・・・・きゃー!」

ガガガガガ!バキューンバキューン!!ドッゴォォォオ!!ドムッドムッ!!

トラップは次第にエスカレートし近代兵器が目立つようになってきた。
どうやら守人はこの三匹の異常な戦闘能力に被害をかえりみない戦法を取り始めたようだ。

「くっ・・・森の守人の癖に自然破壊していいの!?」
タマモは飛んでくるミサイルを打ち落としながら叫ぶ。
ちなみにあたりはもう一面、焼け野原だ。
『は〜っはっは!!森を荒らすヤツを倒すためならどんな事でも許されるのだー!』
また、人をおちょくったような守人の声が聞こえる。

ちなみに今まで出てこなかったのは、キレまくったパピリオが怖すぎたからである。

一方そのパピリオにいたってはすでに正常な思考が働かなくなってきた。
「く、くっくっく・・・・こうなったらもー山ごと吹き飛ばして・・・」
「やめてー!木は生きてるのよー!!」
「はなせ!何もかも壊してやるー!!」
暴走中のパピリオをこっちも混乱しつつあるタマモが何とか羽交い絞めにした。

一方シロは、まるで冗談のように連射されるボウガンを泣きながら打ち落としていた。

「うわぁぁぁぁん!来るなー!来ないで下されー!!」

ぎんぎんぎんぎんぎんぎんぎん!!

犬飼と戦った時の経験が役に立ったのか、打ち洩らす事は無かった。
何とか全てを打ち落としたシロは涙目で叫んだ。


「くっ・・・まるで横島先生や美神殿の兵法そっくりでござる!」






すると・・・・突然、攻撃が止んだ。

三匹が不思議がっていると、茂みがガサガサと音を立て、小さめの影が転がり出すように現れた。



「お、おまえら、横島の兄ちゃんを知ってるのか?!」



















「「「殺してやる!!」」」

「わーーーーっ!!!何か予想してた展開と違うーー!!」


守人の悲鳴は木々の間を抜け、山の中へと消えていった。






殺戮大魔人×3によるリンチが行なわれている場所から約1000メートルほどの地点で、山中を歩く例の女中さんは、耳をぴくりと動かした。

「はっ・・・今何か聞こえませんでしたか?」
「いえ、私には何も」
霧崎さんは背伸びをして耳をそばだててみるが、特に何も聞こえない。
・・・ちなみに全く関係は無い事だが、今彼女は横島のGジャンを着ている。
もちろんサイズが合わずだぶついているが、彼女の場合はその方が似合っていたりする。

「胸騒ぎがします・・・息子に何かあったのかも知れません・・・・もしかしたら美神令子に捕まったのかも。ああぁ!なんていうことでしょう!!」
霧崎さんは不安げに同じ場所をぐるぐる回り出す女中さんに、野生動物に通じるものを感じた。ついでに思い込みが激しい人だなぁ、と失礼とは思いながら考えてしまった。

「と、ともかく、急いでもいいでしょうか?」
「そうですね・・・あ、ちょっと待ってください。そんなに急ぐならいい物があります」
そう言うと霧崎さんは懐からなにやら白いものを取り出した。
そして地面に這いつくばって、それを何やら折り紙のように折り始める。
「何ですか?それは・・・」
「ちょっと待ってください、もう出来ますから」
霧崎さんは手を休めずに不思議そうに覗き込む女中さんを制す。
その一瞬後に霧崎さんは何やら『紙ヒコーキ』を手に喜々した顔で立ち上がった。
「出来ましたっ」
「・・・あのぅ。急いでるんですけど」
「あ、これからが本番なんです」
鬱な顔でこちらを見つめてくる女中さんに慌てて、彼女は何やら呪文のようのものを唱え始めた。
「・・・・・はっ!」
そして最後に気合とともに霊気を送ると、紙ヒコーキはオトナがゆうに5人は乗れるほどの大きさになっていた。・・・ちなみに乗るのが霧崎さんならゆうに8人ぐらいいける。
「これは・・・式紙ですか」
「ハイ正解です。乗ってください」
霧崎さんは女中さんの問いに答えつつ、彼女にヒコーキに乗るよう促した。
霧崎さんは自分も乗ると、式紙に命令を出す。
「とりあえず、こっちの方に飛んでくれるかな」

『ガッテン承知ですぜ大将!!あっしに任せていただければ地球の裏側だろうと何処だろうと瞬きする間につきまさぁ!!ひゃっほうっ!!』

紙ヒコーキの前頭部に粋なんだかイッちゃってるんだか区別しがたい、目が血走り口は裂けた顔が浮き上がる。
女中さんは不安げな顔で霧崎さんをじぃ〜っと見つめた。
「・・・ごめんなさい。私の腕が未熟なのかわからないんですけど私の式紙ってやけに元気なんです」
霧崎さんは目を逸らした。
「まぁ、とにかく行きましょう。何処かしっかり捕まっててください」
『よっしゃ、任せてくんせい楓さんの姉御!アクセル全開、ニトロエンジンだぜィ!!イーヤッハー!!』
「ちょ・・・捕まるっていったい何処に・・・・



みぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

紙ヒコーキは爆音を立てて浮上した。




夜風を切って暴走する紙ヒコーキ、その上で女中さんはやっぱりカタカタ震えていた。
「あ、あそこに地面がえぐられたようなあとがあります。女中さんが聞いた音ってアレの音じゃないですか?」
霧崎さんの問いに彼女は苦笑いしながらコクコクと頷いた。
そんな彼女に苦笑いをし、
「・・・あと、とても言いにくいんですけど」
と続ける霧崎さん。



「さっきの悲鳴の時から。耳、出てますよ」



なるほど女中さんの頭からかわいらしい猫耳が飛び出している。
女中さんは慌てて手で隠すがもう遅い。
「貴女・・・・猫又ですね」
女中もとい猫又は彼女の声に戦闘体勢に入る。
「あ、いえ、それがいけないとかそういうのは無いですよ。見ところ悪い人(?)じゃないみたいですし、何かするって気も無いみたいですし。私は貴女をどうかする気はありません。最近のGSはいい妖怪には手出ししませんし。・・・たぶんですけど美神さんももうあなたを狙ってはいないはずです」
霧崎さんはニッコリと猫又に笑いかけて見せた。

猫又はしばらくピクリとも動かなかったが、やがて体の緊張を解いた。
「そう・・・ですか。すみません私が猫又だって黙ってて。昔は妖怪という理由だけで迫害されてきたものですから。
私の名前は美衣。息子の名前はケイと言います。ご迷惑をおかけしました。
危険が無いと解った以上、これ以上迷惑を掛けられませんね・・・
貴女はそろそろ旅館に戻った方がいいですよ。私はどうせなので息子の所へ行きます」
美衣がそう言って頭を垂れるのに、霧崎さんはあわあわと慌てた。
「いえ、迷惑だ何てとんでもない!・・・そうだ。どうせですから息子さんの所まで送って差し上げますよ」
「そんな気を使ってもらわなくても・・・」
「いいんですよ、どうせ乗りかかった船です」
「はぁ・・・そうですか」

「よし、じゃあとりあえずはあの地面のえぐれてるあたりに下降!!」

『ガッテン承知!今だっ!トルネードデンジャラスボンバー着陸スタンバイ!!』

「えっ・・・・ちょ・・・・


ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!」

美衣はずっと前に息子にせがまれて乗った『びっぐさんだーまうんてん』とやらを思い出していた。

気絶寸前だった。←絶叫系はダメ






時間と場所は変わり、スポットライトは横島へと向けられる。
「・・・・ここか?」
彼は何故か使えるようになっている双文珠『捜索』を握り締め、草を掻き分けて空き地に出てきた。
目の前には時代錯誤な山小屋が一軒建っている。
窓から漏れ出す光があたりをぼんやりと照らしていた。
「パピリオ・・・ここにいるのか?」
横島は戸を控えめに叩いた。
「ごめんくださ・・・「兄ちゃん!」「先生!」ぶわっ!な、なんだ?!シロ?それと・・・おまえケイか!!」
ケイはまるで、そうだよとでも言うように喉をゴロゴロ鳴らした。
「やっと来たわね、ヨコシマ・・・。妹の面倒ぐらいみてもらわないと困るわよ」
奥から不機嫌そうなタマモも現れる。

「おまえらなんでこんなところに・・・?」
唖然とする横島は何故かみんな傷だらけなのに気づいた。
しかしそれは不意に現れた人物にうやむやにされる。

「ホラ、ケイ!あなたはまだ消毒が終わってないでしょ、こっちいらっしゃい!」
「美衣さん!相も変わらずお美しい!!」
横島は目にもとまらぬ早業で彼女の手を取る。彼に抱きついていたシロとケイは床に落っこちた。
「あら、ご冗談を・・・」
美衣はそう言って手を引き抜くが、その顔はなんだかうれしそうだった。
そんな美衣の後ろから新たに一人現れる。
「いちおう私もいるんです・・・」
「き、君は・・・」
「霧崎です」
「・・・じゃあ霧崎さん、何でここに?」
「自分でもナニガナンダカ・・・それより今はパピリオさんを探しているんじゃ無いんですか?」
「あ、そうだった・・・誰かパピ知らないか?この辺にいるはずなんだが・・・」
「あいつならあっちの方の川にいるわ。行ってやんなさい」
タマモがご丁寧に教えてくれる。
「お、サンキュータマモ」
くるりと回れ右をする横島。しかしシャツのすそを引っ張られて立ち止まった。
「あの・・・、これありがとうございました」
霧崎さんが恥ずかしそうにシャツを掴みながらGジャンを差し出している。
「あ、どーも。ありがとう」
横島はついつい自分も恐縮しながらそれを受け取ると小屋を飛び出していった。
「拙者も・・・」
「オイラも!」
当然の事ながらこの二匹は追いかけようとするが
「だめよ、アンタまだ消毒終わってないでしょう?」
「ケイ、あなたもです」
別の二匹に文字どおり『引き』止められる。
「いやだー!赤チンしみるからやだー!」
「自業自得です!間違って罪も無い人たちを攻撃するなんて・・・」

「タマモ!武士の情けでござる!見逃せ−!!」
「イヤよ、さぁ馬鹿犬、このしみ〜る赤チンをたっぷり付けましょうね〜!」


「「ぎゃー!!」」

霧崎さんはそんな彼らを見て一人苦笑いしてた。




「・・・川ってこっちか」
横島は水のせせらぎに誘われて森の中を進んでいた。
せせらぎはさらさらと、まるで人をいざなうがごとく涼しげな音を立てている。

彼は森の途切れ目が目に入り、足を速める。
「ここか?・・・・・・・・・・・・・っ!」



その瞬間、彼は空中を幻想的に舞う、光る雪のようなものに目を奪われた。




それは千をゆうに越える数の蛍だった。


てらてらと光を反射して波打つ川の水面。

草木をかすめ、はかなげに点滅するヒカリ達。


それは短い恋の一瞬に全ての命を賭ける、魂の灯火だ。


その淡い光たちの中心で、一人の少女が川の真ん中からこちらをじっと見つめている。




「パピリオ・・・」


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