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GS美神「ミッシングリンク」

第三章「神と魔と世界と」


投稿者名:遊
投稿日時:04/ 8/ 7


「どんなに悪い事例とされていることでも、
それが始められたそもそものきっかけは立派なものであった」
マキャベリ「政略論」より


「俺が、魔族になる?」
横島はベスパの真剣な表情に確認するように尋ねる。

「そうだ。もし、お前が魔族になるのなら、
お前の中にあるルシオラの霊破片を取り出すことが出来る。
そうすれば、ルシオラを復活させることが出来るんだ」

その言葉に横島は驚くことなく肯き、
「・・・だけど、俺は俺ではいられなくなる・・・だよな?」
と静かに告げた。


GS美神「ミッシングリンク」第三章


「実はさ、俺もその手は最初に考えたんだよ。
ドグラの奴が言っていたからな。
魔物ならともかく、俺は人間だから、そう何度も粘土みたいにちぎったり、
くっつけたりでは魂が原形を維持出来なくなるって。
それは、言い換えれば魔物になれば、霊体の切り張りが出来る。
俺の中からルシオラの霊体を取り出せるってことだろ?」

「そうだ。そうすれば、ルシオラは復活出来る」

「だけど、俺には不安があったんだ。あ、勘違いするなよ。
姿形がどうとかってんじゃないぞ。
ルシオラとやるためなら、猫耳が生えようが、血が紫色になろうが、
太陽に当たると緑の泡になって溶ける体質になろうが、全然OKだ!」

「お、お前、魔族を何だと思ってる?」
少々あきれ顔で、横島を見るベスパ。
その様子を見て、おちゃらけ顔から、真面目な表情に戻って続ける横島。

「だけどさ、俺、知っているんだよ。一人。
体のでっかいオカマ。雪之丞の昔の仲間で魔族になった奴。*注1
雪之丞に言わせると、そいつは人間だった頃と全く別の人格になっていたって。
それで、カオスに聞いたんだ。そしたら・・・」

「魔族には、本能として強い殺戮と破壊の衝動がある。
最初から、魔族として生まれたものならともかく、
他の種族から魔族になった場合、多くの者は、力に溺れ、
その破壊衝動をコントロール出来ず、以前の人格を失う」
そう説明するベスパに横島は肯く。

「・・・そうなんだ。そして、だとすると、俺は魔族になることは出来ない。
なる訳にはいかないんだ。だって、ルシオラは俺に会いたいんだから。
体はともかく、中身まで別人じゃ、あいつの望みを叶えたことにはならんだろ」

「確かに、普通ならその通りだ。・・・だから、私は別の手を用意してきた。
お前がお前のまま、魔族になる方法だ。
・・・・・それは、地獄への道かもしれないがな。
だから、お前はこれから、私の話を全部聞いて、それから判断してくれ。
魔族になるか、ならないかを」

「・・・・地獄への道か。
だから、俺がお前達のことを忘れていたら、帰ろうとしていた訳だな。
・・・是非、聞かせてくれ」

「うん。では、まず、お前は世界がどんな風に出来たか知っているな?」

「え?」突然の質問に固まる横島。
その様子を見て、ジト目で尋ねるベスパ。

「もしかして、知らないのか?GSの勉強とかはしていないのか?」

「いや、GSなんだから勉強しておけと言われて、
美神さんやカオスから聞いたことがあるような気がするんだが、
俺の頭は、興味のないことは急速に忘れるように出来ているらしく・・・」

「・・・つまり、忘れた訳か」

「興味あることなら、チラっと見たことでも忘れないんだがな。
難しいことはどうも、頭が拒否反応を起こすようで・・・」
と、頭を抑え痛みを抑える仕草をする横島。

「〜〜〜〜」
なんで、こんなアホに負けたんだろう?少し、悲しくなるベスパ。

「いや、必要な知識は憶えているぞ。アホじゃないからな。
世界がどうなっているかなんて、生きていくのに関係ないじゃないか。
俺は、不要な知識は憶えないだけなんだ」
その様子を察したのか、慌ててフォローする横島。

「じゃあ、どんなことなら憶えているんだ」

「・・・・・・女の子に関係することなら」
悩んだ末に帰ってきた情けなさ過ぎる応えに、呆れ果てた顔のベスパ。

「・・・俺にとっては、何より大事なことじゃ。そんな目で見ないでくれ!
・・・・・何なら、試してくれたっていいぞ。アホじゃない証拠に」

「・・・・じゃあ、美神令子のスリーサイズは?」
投げやりにベスパが呟くと、
「B90cm、W58cm、H90cm。こんなのは楽勝だな」
間髪入れず応え、何故か得意顔の横島。

「・・・・じゃあ、氷室キヌ」
「B78cm、W56cm、H80cm。
これは幽霊の時の奴だから、今はもう少し大きいかもしれないけどな」

「じゃあ、あたし」
「B○×cm W□×cm H△×cm」

ドコン!

ベスパの握り拳が横島の頭に直撃し、畳にめり込む横島。

「いつ調べやがった!」

「だって、お前ら、俺に洗濯までさせたじゃないか。
そんなことさせたら、健康な若い男なら、興味を持って当たり前やないか」
畳にめり込んで、頭から血を流しながら、呟く横島。

「お、お前という奴は」怒りに拳を振るわすベスパ。

「ベスパ、ふざけてないで、そろそろ話を進めよう」
と、まるで、何もなかったように、立ち上がり座り直す横島。

「お前が、ふざけるから、話が進まないんだろうが!」

「・・・あまりシリアスが続くと、疲れる体質なもんでな。
で、世界はどんな風に生まれたんだっけ?」
と真面目な顔で平然と尋ねる横島。
その様子に、悔しそうな顔をしてから、もうちゃかすなよ、と釘を刺して一息ついてから、ベスパは説明を始める。

「初めに、造物主が陰と陽を作った」*注2

「つまり、神様が世界を作ったって訳だ」

「違う。造物主だ。造物主は、神族でも魔族でもない。別の存在だ。
考えてみろ。何処の神がわざわざ自分の敵になる魔族を作ろうとする。
魔族の中には、神族から魔族に変わったものもいるが、
生まれついての魔族も沢山いるんだ。
神族が我々を作った訳ではない。
そういう意味では平等なんだよ。我々は」
「なるほど、でも、大分違う気がするけどな」
ーまあ、そう話を急ぐなーとベスパは釘を刺して話を続ける。

「ただ、この造物主という奴は、陰と陽を作った後は、
直接には世界に介入しないから、あたしらにも、見たり触れたり出来る存在ではないんだ。でも、確かに、存在はする。私は、見た事ないが、そう言われてる。
一説には、宇宙意思こそ、造物主の意思という考え方もあるがな」

「だけど、何で、そのゾウブツシュって言うのは、神族と魔族を作ったんだ?
揉めるに決まっているじゃないか」

「調和ある対立と作り出すためだ」

「調和ある対立?何だって、そんなものを?」

「ちょっと考えればわかる。ポチ、神が作った世界を想像してみてくれ」

「・・・神様が作った世界?
そりゃ、綺麗な花畑があって、綺麗なねえちゃんと美味い食べ物が沢山あってだな・・・」

「そして、それが永遠に続く。変化も進歩もなくな。だろ?」

「あ、ああ」

「それに、変化を与えるために私達魔族がいて、調和ある対立を起こすんだ。
世界の進歩と発展。それが造物主の意思なんだよ」

「なるほど、だから、魔族は邪悪に作られて、この世界を壊そうとする。
そういうことか?」

「それは、少し違う。さっきも言ったが、神族と魔族は本来平等なんだ。
どちらかが邪悪に作られている訳ではない。
両者には同じ世界を創造する欲求が与えられているんだ」

「どういうことだ?」

「アシュ様もおっしゃっていたことだが、神と魔はコインの裏表なのさ。
さっき言ったように、造物主は、陰陽である、神族と魔族を作った。
そして、神族が、この世界を作ったのさ。お前達を含めたこの世界をな」
なるほど、と横島は肯き、口を挟む。

「だけど、魔族にも世界を作りたい欲求がある。
でも、この世界がある限り、新たな世界の創造は出来ない。
だから、今の世界を憎み滅ぼしたい衝動を持つ。そういうことか?」

「そう、それが魔族の破壊欲求の正体だ。
今はデタントの世の中だからな。
世界を創造したい欲求があるから、今の世の中を破壊したいという衝動がある。
でも、その欲求は世界の為に生み出されたもので、
そんな欲求を持っても仕方ないと説明はされているんだよ。
でも、理屈で判ったからと言って、衝動が押さえられる訳ではない。
憎いものは憎いのさ。
デタント後に生まれた私達の欲求は、アシュ様達より押さえられてはいるようだがな」

「なるほど。だから、魔族が作った世界では神族が邪悪になる訳だな。
小竜姫様が邪悪になるってピンと来なかったけど。
それなら判らんでもないかな」

「うん。なかなか、飲み込みが早い。満更アホでもないんだな」
と、少し感心した様子のベスパ。

「いや、聞いているうちにカオスの説明を思い出した所もあるんだが・・・」
とちょっと照れた様子の横島を見て、ほくそ笑みベスパが続ける。

「こうして、魔族は世界を滅ぼしたいと願うんだが、
神族は、創造した全てのものを愛するから、神族と魔族の対立が始まる」
人間を人質にとられ、人質を見捨てられず、自分を犠牲にして守ろうとした小竜姫や、
気の良い貧乏神、何故か自分を見逃してくれた死神のことを思い出して、
横島は肯くが、フェンリルの狼のことを思い出して、横島は首を捻る。

「ちょっと、待ってくれ。
俺、昔、神話に出てくるオオカミと戦ったことがあるぞ。
あいつは、神話に出てくる位だから、神族じゃないのか?
でも、世界を滅ぼしかけたとも聞いたけど」*注3

「私には、何のことを言っているか、よく判らないが、
人間の場合、自分より力のあるものを神と呼ぶ傾向があるからな。
邪神なんて言い方をするだろ。
基本的に世界を滅ぼそうとするものは、魔族と考えてもらって構わないんじゃないか?
確かに、魔族が作った世界を神族が破壊しようとする可能性もあるがな。
・・・話を戻していいか?」

「ああ、すまん。続けてくれ」

「さて、こうして神と魔の対立が始まるんだが、対立をそのまま放置することは出来ない。何故だか、判るか。ヨコシマ?」
ベスパのスラリとした指が横島に向けられると、横島は顔を赤くして呟く。

「・・・しかし、スーツ姿のお前から、こう、いろいろ話を聞いていると、
美人家庭教師の個人授業を受けているような、妙な気になってくるな。
そもそも、お前ってええ体しとるのに、
それをこう無理に堅いスーツに押し込めてってのが、何ともHで・・・」

バキッ!

「真面目に聞けと言っている!」

「・・・あまり堅い話ばかりしていると退屈してきて」
今度は壁にめり込んだまま、応える横島。つくづく不死身の男である。

「で?何故、対立を放置出来ないか、わからないのか?」
壁から血まみれになって這い出てくる横島に何事もなかったように話しかけるベスパ。
そろそろ彼女も横島に慣れてきたようだ。

「放っておいたら、神族と魔族の全面対決になるけど、
そんなことしたら、両方滅ぶか少なくとも世界が滅ぶからだろ?
ゾウブツシュって奴が、世界の発展を望むなら、そんな事態は避けたいだろうからな」
横島は曲がっていけない方向に曲がっている首を治しながら応える。

「そう、だから造物主は一部の高位の神魔族達に様々な制約を与えたんだ。
バランスを保つために、その力を無制限に使わないようにするために。
もっとも、その制約が顕在化しているのは、魔族だけで、
神族は創造者の地位にいる限りその制約は潜在化しているらしいがな」

「何で、高位魔族の制約だけが表に出てくるんだ?
神族と魔族は平等なんだろ?」

「神族は、魔族を滅ぼしたいという気持ちは持っていないからな。
世界を守るために力を使うなら、世界を滅ぼすような使い方をする訳がない。
もっとも、神族と魔族の地位が入れ替われば、
神族に与えられていた制約が顕在化し、魔族の制約は潜在化するらしいが」
ーなるほど、と肯く横島にベスパが説明を続ける。

「それに、下っ端の魔族が本能に従って破壊をしたところで、世界が滅びる訳はない。
結局、大事なのは、
その下っ端をまとめる魔神クラスの破壊欲求を如何にコントロールするかなんだ」

「例えば、アシュタロスが、死んでも強制的に復活させられると決められていたようにか」

「・・・・ああ、だけど、それは神魔のバランスを保つために必要なことで、
破壊欲求をコントロールするために与えられる制約じゃあない。
・・・・・アシュ様に与えられた制約は・・きっと・・・優しさ・・・だったんだ」
ベスパが唇を噛みしめ、俯きながら呟く。

「・・・・優しさ?」

「・・・・そうだ。・・・・お前達には信じられないかもしれないがな。
・・・・・・あの方は、お優しい方だったんだ。
・・・・だが、・・・破壊欲求は、あの方にもあった。
・・・荒々しい衝動が、身体を支配し視野を狭める。
・・・・・・抑えきれない衝動が辺りを破壊し・・・・
後になって・・・・いつも、・・・・アシュ様は自分が何をしたか
・・・思い知らされ、後悔していたのさ。
・・・・・そして、・・・・その後悔が次の衝動を抑える力となる。
・・・・・それがアシュ様に与えられた制約だったんだよ」
堪えきれず、俯いたベスパの涙が、膝の上で堅く握った手の上に落ちる。

ドクン!

横島の鼓動が再び激しくなる。
さっきから、ベスパをからかう前に起きていた鼓動よりも、さらに激しく。
息も苦しくなるほどに。

横島の目の前に、荒野が映る。
理由の判らない怒りに吼え猛る自分。
誰かの血で真っ赤に染まった拳。
・・・振り返ると、そこには無惨に引き裂かれた美神やルシオラの姿が!

全身に鳥肌が立つ。
何故だ!何故、俺に、こんなものが見えるんだ?
横島は震える自分の身体を押さえながら考える。
俺は、何に気づこうとしているんだ?
俯くベスパは、そんな横島の様子に気づかずに話しを続ける。

「・・・・だから、アシュ様は、ルシオラのことに、気づかなかった。
・・・アシュ様は、おっしゃった。
創造者に逆らうメフィストは、自分の作品だと。
・・・だから・・・愛していると・・・」
横島の目に、傷ついた小さな子供のようなベスパが映る。
横島は、そんなベスパを慰めようと、荒れる息を懸命に整えようとする。

「・・・でも、・・・ルシオラもまた・・創造者に逆らう・・アシュ様の分身だった。
・ ・・アシュ様は、・・裏切ったルシオラに、怒り狂ってたけど・・・・・
そう、・・・あたしは、気が付いていたんだよ
・・・破壊衝動に縛られたアシュ様の目が、怒りで曇っていることに・・・・・
アシュ様が、ルシオラのことも、愛するようになる可能性に・・・
なのに、・・・あたしは・・言わなかったんだ。・・・もし・・言っていれば・・・」

横島の脳裏にコスモプロセッサでの中の様子が思い浮かぶ。
美神さんの復活を見逃しておきながら、ルシオラの復活を許さず、
自分をコスモプロセッサからはじき出したアシュタロス。
もし、あいつが生き残り、世界を滅ぼしていたら、どうなったんだろう?
先ほどの血まみれの腕が思い浮かぶ。
愛する者を滅ぼしてから、愛していたことに気づく呪い。
生きていることが辛くても、誰も罰してくれない、永遠に続く魂の牢獄。

ドクン!

横島には、自分を襲う激しい鼓動の意味が判った気がして言葉を紡ぐ。
「・・・そこが、俺の行く先なのか?」
突然の横島の言葉に驚き、涙で濡れた顔を上げるベスパ。

「なぜ?そう思う?」

「・・・わからない。でも、何故か判ったんだ」

「・・・そうだ。アシュ様と同じ魔神になれば、・・・・。
強大な力の持ち主が、理性を失い破壊の限りを尽くせば、世界は崩壊する。
だから、魔神は、完全に破壊衝動に飲み込まれることはない。
そういう風に出来ているんだ。
だから、お前が魔神になるのなら、お前という人格が失われることはない」

「・・・そうすれば、ルシオラに会ってやることが出来るのか?」

「ああ、それは保証する。・・・だが、地獄への道かもしれない」
悲壮な表情で、ベスパが告げる。

ーもし、神族と魔族がデタントなんぞ、やっておらねば、
アシュタロスもあそこまで追いつめられなんだろうに、気の毒な奴じゃなー
何故か、横島の脳裏にカオスの言葉が浮かび、横島は初めてその言葉の意味を理解する。

ーそうか、もしデタントの世の中でなければ、
アシュタロスの優しさは、そんなに悪いものではなかったんだー
確かに、凶暴な破壊衝動は、誰かを傷つけるかもしれない。
その結果、優しさの所為で、後悔に襲われ苦しむかもしれない。
だけど、逆に、優しさは、激しすぎる他の魔族の破壊衝動を
抑える方向に働いていたかもしれない。
誰かを助けることが出来たかもしれないんだ。

そうすれば、あいつは、たとえ血まみれの腕でも、
自分のいる意味を許すことが出来たんじゃないだろうか。
自分を許すことが出来たんじゃないだろうか。
だけど、デタントの世界では、暴走する他の魔族なんかいなくて、
ただ、他者を傷つけることしか出来ないで・・・

何故、自分はこんな時にアシュタロスのことを考えているのだろう?
何故、こんな時にカオスの言葉の意味が判ったのだろう?
不思議に思いながら、横島は考える。

ベスパは、横島の見た事もないような真剣な表情を見る。
彼女は、そっと横島に近づき肩を叩く。
「だが、これは強制なんかじゃない。
お前が、美神の母親を責められないように、
私もお前が魔族になることを拒否しても、責める資格なんてないんだ。
だから、正直に応えてくれ」

「・・・・・・・・・・・・・・」
真剣な表情の横島の口から言葉が漏れる。

「・・・・・・・黒か・・・」

「・・・・・・?」
意味不明の横島の視線の先を追ったベスパの顔が真っ赤になる。

グシャ!

「脳みそぶちまけてやろうか、クソガキ!」
ベスパのアッパーカットがモロに決まり天井に突き刺さる横島。

天井に突き刺さった頭を抜こうと手足をジタバタさせながら、
「スカートで、そんな格好するからいけないんじゃないか。
それに、こんなことして、雨漏りしたらどうするんだよ」と、文句を言う横島。
身体の心配はいらないらしいところが、実に彼らしい。

ドサっと天井から外れて落ち、めり込んだ頭を肩からひっぱり出してから、
横島は真顔に戻ると尋ねる。

「だけど、人間が、そんなに簡単に魔神になれるのか?」
切り替えの早過ぎる横島の様子に軽い頭痛を憶えながら、ベスパが応える。

「ああ、種族間の変化は大きな力を生みだす。
その上、神魔のバランスを取る必要があるからな。
魔族をレベルアップさせて魔神を作るよりも、他の種族から魔神を生み出した方が、
ずっと効率が良いんだ。お前の知り合いで魔族になったという人間。
そいつの力も凄かったんじゃないか?」
香港でメドーサに匹敵すると言われた力を示したオカマ野郎のことを思い出し肯く横島。

「何よりも、神魔のバランスを取るために、
他種族から、魔神を生み出すことを神魔界の最上層部が決定したんだ。
今度、魔族になる人間は、傾いた分のバランスを取るだけの力が、
アシュ様と同等の力が与えられることになっている」

「・・・なるほど、それなら、確実に魔神になれる訳だな」

「ああ、だから聞かせて欲しい。
・・・・ヨコシマ、お前、ルシオラのこと、本当はどう思っているんだ?」
これ以上ない真剣な表情のベスパの瞳が、横島を貫いた。

                             つづく

*注1:体のでっかいオカマ。雪之丞の昔の仲間で魔族になった奴
 鎌田勘九郎のこと
「人間の姿と記憶があっても、あいつは妖怪」
「人も神も一人残らず死ぬといいわ!!」
「勘九郎の奴、メドーサに匹敵するほどのパワーを持っている」
(第13〜14巻「香港編」参照)

*注2:神族と魔族と世界と造物主
「魔族の本質は闘争と殺戮だ!」
「他の魔族のような凶暴な衝動」
(第21巻リポート8「今、そこにある危機!!」参照)
「私たちは調和ある対立を続けねばなりません」
「完全な融合や一方の勝利は、宇宙のエントロピーを早めてしまいますからね」
「宇宙のはじまりに私たちという陰と陽が生まれた意味」
「もったいないこっちゃ、
ここまで生物と霊的エネルギーが進化して多様化した世界はめったにないのにな」
(第25巻リポート3「私を月まで連れてって!!」参照)
「神は自分の創ったものすべてを愛する」
「私もまた造物主に反旗をひるがえすもの」
(第32巻「GSの一番長い日!!」参照)
「魔と神は同じカードの裏表にすぎん」
「私は必ず抜け出してみせる!!たとえ造物主が相手でも」
「あれだけやれば、多少のバランスが狂ってもほかで調整するでしょうね」
(第35巻リポート7「ジャッジメント・デイ!!」参照

*注3:神話に出てくるオオカミ
フェンリルの狼のこと(第18巻「バトル・ウイズ・ウルブズ!!」参照)。
なお、既に去った存在で確認方法がないため、
フェンリルの狼が、神族に属するのか、魔族に属するのかについては、未だに議論がある。


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