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初恋…?

そのろく(回想そのさん)


投稿者名:hazuki
投稿日時:04/ 7/27

へらっと、ゆうねえたる人物の言葉を思い出して横島は笑っていたが、ふとそれがどうしたんやろ?と我に返る。




(そうや、銀ちゃんにゆうねえについて質問されて………)



でなんで質問されたかって言うと、夏子と加賀由美が…………

ぽりぽりと、頭を掻きながらこんな答えでいいのか?と二人のほうに視線を移すと……

なにやら、お世辞にも健康そうにみえない二人の顔色だったのである。

夏子はすっすらと熱でもありそうな位頬が赤いし、加賀由美はまるで幽霊でもみたように真っ青だ。

銀一が大丈夫だというけども、本当に大丈夫だろうか?

横島は心配になり、表情を曇らせて言う。



はっと本当に横島を心配させていると思った加賀由美は、無理やりに明るい表情をつくり





「ああっ大丈夫や!なんでもあらへんっ」



ひらひらと右手を振りながら言う。

笑うその姿は可愛らしく、そして心配されているということに嬉しさを感じたのだろう、顔色も戻っている。


一方夏子も本当ならそんな風にいいたいのだ。

にっこり笑って、『大丈夫だよっ』と言えたらどんなにいいだろう。

だけども出てくる言葉は───





「そうやっ横島が心配すると、ええもんも悪くなるわ」




そんな憎まれ口だけなのだ。

内心自己嫌悪に陥りながらでも、そんな言葉だけはすらすらと出てくる。





そして横島が、夏子の内心の葛藤などわかるわけもない。




「まあ、二人がそういうならええけど………夏子!!人が心配してやってんのにその言い方はなんや?」





かちんと、頭に来るものがあるらしく眉間に皺を寄せながらそう言うのだ。


そうして始まるのは、何時もの口喧嘩である。





「ああ……また始まった」

なにかを諦めたように銀一。


西の空は茜色から濃紺へと変化し、ちらほらと家の中には灯りが灯っている。


(よこっち……きっと今日は早くかえらなあかんて事も忘れてるんやろなあ……)


切りのいい所で締めんとこの二人、いつまでも喧嘩するからなあ。


喧嘩している二人をみつつ、見捨てずそんなこをを思う銀一。


どこどこまでも善人であった。














そしてそんな銀一の苦労(?)も知らずに夏子と横島。





「なんやっ文句でもあるんか?」



ふんっと笑い小憎らしく夏子は言う。

可愛らしく笑うことは困難になっているのに、こんな風に笑うのはもう意識せずにできる辺りが哀しい。





「あるに決まってるだろうがっ」




があっと


腹に据えかねたような、と思わせる声音である。



眉間に皺をよせたまま尚も言う。






「大体俺が何かすると夏子すぐつっかかるやん。何かいうと大きなお世話いうし、なにもいわんと問答無用でローリングソバットかけるし、最近なんかゆうねえといっしょにおるといつも俺の事睨んでるやろ?」




ぜえぜえと、一気にいったために肩で呼吸をしながら横島。

どうやら今まで不満がたまっていたのだろう。





「………それはちょっと」


思わず加賀由美も呟くほどの待遇の悪さである。





「おう。へんやよなあ加賀。」



くりっと視線を加賀由美に向け、同意を得ようと横島。





「ええとお……」


が、その返答にはつまってしまう。

加賀由美は、その夏子の行動がどこからくるのかわかっていたのだ。

というか横島以外のクラスメイトで、夏子の横島に対する感情に気付かない人間は居ない。

それほど、純粋で一途であからさまだったのだから。

ただ横島は生来の鈍感さに加えて、銀一という女子のアイドル的存在がいることで、たくさんの銀一に向けられる視線や好意といったものは全て銀一へのものと勘違いしているために益々『自分に対する』好意に鈍感になっていくのだ。




(それに、なっちゃんもきちんといわへんからなぁ)


それを知っててあんな風な態度とるんなら仕方ないわなあ




「なんやとおおっ」




そう思い加賀由美が言葉を繋ごうとする前に夏子が叫んだ。





「なっなんやっ」



条件反射で一歩くらい後ずさる横島もこれまた悲しいものがある。





「………テキト−なとこで切り上げてなあ」


止めるタイミングを失ったのだろう。


銀一はもう諦めたように二人を眺めている。




後ずさる横島に心が痛むのを感じながら夏子は拳を握り締める。








「横島の分際で言うかあっ!!………横島なんてうちよりも勉強もスポーツも出来へんくせにっ!!!」



それでも好きだとその目が言っている。

そしてそんな事は関係ないんだと知っている。



その目をみれば分かりそうなものなのだが、横島はもう顔をおおいたくなるほどの鈍感である。

言葉だけを受け取りふふんっと笑う。




「何言うてん?俺にはそんなの関係ないわ、第一そんなんいったら夏子は銀ちゃんに頭あがらへんじゃないか」


横島は、銀一を指差し呆れたように笑う。

ちなみに銀一は、運動よし、頭よしの言うなればクラスの『出来すぎ君』状態なのである。

さすがの夏子も銀一も叶わないのだ。



ぐっと

言葉につまった夏子は黙り込み、ただ横島を睨みつける。



「第一分際とか言うおまえのほうがあほや。」


それはいつも夏子が言っている言葉である。


─女のくせに


─男のくせに



その言葉にいつも夏子は怒っていた。


男子を殴り倒して


女の子を怒り飛ばして(流石に女子相手に実力行使はしない)


ので横島の言うことは最もであり、夏子としてぐうの音もでない。





その躊躇うような表情に横島はにんまりと笑い、更に調子にのる。

それもそうであろう。

彼にとって夏子は大事な友人でもあるが、それと同時に倒すべき敵(笑)でもあるのだ。

が口では一言えば十言い返され、実力行使では、技術の差が違いすぎる。

力にしてもこの年代では男より女の方があるのは当たり前で、夏子に横島が勝てる訳はないのだ。

しかも夏子がなんの遠慮もなく容赦もなく徹底的に横島をぶちのめすのだ。

いつも負け犬の悔しさに歯がみしている横島としては、一年に一回あるかないかの口喧嘩で押しているときくらい調子にのるのは仕方ないとも言える。


が、しかしである。


仕方ないといえるのは、横島の心情のみであって夏子としてこの鈍感無神経大魔王にぶちきれるなという方が無理なのである。


更に軽い自己嫌悪と子憎たらしい目の前の横島。



ぶつっと




夏子のなかでなにかが切れた。


はあっと呼吸をととのえて今もちえる最大の業をこの大ぼけ男に食らわせようと(若干の八つ当たりを含め)気合を入れた瞬間。




「……横島」

加賀由美が控え目に口を挟む。



「なんや?」


きょとっと夏子から加賀由美へと視線を移し横島。


夏子も気をそがれたように動きを止める。



加賀由美は、おずおずと躊躇いがちに口を開く



「今のは……横島がわるいと思うで」




と。



その言葉に横島は頬をふくらさませ反論する。


「なんでや?元はといえば夏子がつつっかかってくるからや」


その言葉に加賀由美は一瞬言葉を詰まらせる。

そうといえばその通りなのだが、それでは夏子があんまりにも可哀想だ。


夏子の思いを知っており(いや知らないのは横島だけなのだが)更には横島へのあまりの鈍感さにないている身としては、夏子のつっかかりたくなる気持ちがわかうから。





「だから、それは横島が夏子のことに気付かないからや」


気付かないからこそ横島やけどね、そんな言葉を心で付け加え加賀由美。



「まあ、ここまで言われて気付かないよこっちもなあ……」




「あんなあ……なんや気付いてくれってオレにいうの無理やて」


が、二人の援護射撃に対してあっさりきっぱしと横島。


それこそ自信満々といった感じである。


「よう分からんけど、そしたらみんないつも自分以外のこと考えとるんか?オレは自分のことしか考えとらんし、自分の思ったことは全部口に出してるぞ?加賀も銀ちゃんも夏子もオレに言いたいことがあるんならちゃんと口にだしてくれへんとわからん。気付いてくれって口で言えばすむことやろ?」


一応鈍感(?)という自覚はあるらしい。


「横っちらしいなあ」

淡い笑みを浮かべ銀一。

銀一はいつも自分のことよりも他人の事に目がいくタイプなのだ。

自分を抑えて人に接するので『自分のことしか考えてない』と言い切る横島がほんの少し羨ましかった。







「………」


加賀由美はぼんやりと、横島を意識した時のことを思い出していた。


それはバレンタインの日。

憧れの銀一に手作りチョコを渡そうとしたがその日銀一は女の子に囲まれてとうとう渡せずに、放課後に一人教室でチョコを持ってぽつんと教室の席に座っていた。

目の前には、一生懸命つくったチョコ。

一生懸命つくったのに渡せないのだろうか?と目の前のチョコの入ったつつみを見つめていると


がらっと音をたてて横島が入ってきたのだ。


なにやら忘れ物をしたらしく、横島はばたばたと走り机の中を物色している。

お目当てのものがみつかったのだろう、ぱあっと目を輝かせて満足げにそれをかばんの中にいれ顔を上げた。




「あれ?どしたん加賀?」


はよ帰らんと、もう下校時刻やでと言葉を続けようとした横島の視線にチョコがあったのだ。


二月はまだ日も短く、暗くなるのが早い。

しんとしずまりかえった教室のなか、火傷したであろう手といびつな箱。

そして今日この日。


横島はゆっくりと口をひらく。


「銀ちゃんにわたせんかったんか?」


と。


加賀由美はこくりと頷く。


「加賀は銀ちゃんすきやもんなあ、銀ちゃんええ男やしな」


「……一生懸命つくったんだけど」

加賀由美はそう一言言うとまた俯く。


(せめて渡したかったなあ)


加賀由美は、たくさんのチョコを袋に入れている銀一を思い出しながらなんであの紙袋のなかにいれれなかったんだろうと思う。



ふと、目の前に陰がかかった。

横島がにいっと目の前で笑ってチョコを取っているのだ。



そしてなんの邪気もない笑顔で


「銀ちゃんにわたしといてやるわ」


といいひょいっとチョコのはいった包みをもつ。




「………え?」





「だって、加賀手火傷だらけや、チョコつくるために頑張ったやろ?すごいやんか」





そんなチョコならきっと銀ちゃんも食べたいはずやからっ






つづく

すいませんかなりの間があいてしまいました(汗)
ちょっとお話をかける精神状態ではなかったのです(汗)ほんとーにすいません
週に一回ていってたのに(汗)今日はなんとか落ち着いたのでかきました。
送れていた分ちょっと頑張ります><


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