椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

白い温泉


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 7/17

カポ〜ン、ココロイヤシマス・・・。

ここは命の洗濯場。ホテル露天風呂、その名も『人骨の湯』ネーミングは悪いが肌には良いと年頃の女性から年配の方々まで人気は高い。
しかし今回は六道女学院の貸しきり状態になっている。

まさに・・・ 楽園(エデン)!!

当然横島も覗きに行きたい・・・いや、行かなくてはならないようなシチュエーションだが、美神に釘を刺されているうえ、年下に危害を加えるのは流石に避けたほうが良いだろう。と、何とか自分中の獣を封印することに成功し、今はホテルのロビーでぼ〜っとしていた。

「も〜知美ったらなんでじろじろ見てたのよ・・・」
「え〜だってあなたすごいイイ肌してるんだもん」
「なによ、自分だってスタイルいいじゃない!」

きゃぁきゃぁきゃぴきゃぴ・・・


−横島脳内−

ゴァァァアア!!!
がちゃがちゃがちゃ!!

け、獣が暴れている!!外部からの刺激が大きすぎたか!!

まずい!檻が壊されるぞ!!麻酔銃は何処だ!!実弾でもいいぞ!

たーん!たーん!

ギャオオォォォ・・・・・・




「あ、あのぅ・・・横島さんですよね?」
「え?」
横島がガスガスと自分の額を壁にぶつけて煩悩を追い払っている時、何やらものすごく控えめな声がかろうじて聞こえた。
「キミは・・・あの時の」
「はい!先ほどは助けていただきどうもありがとうございました!」
慌てたようにぺこりとお辞儀する彼女は、先ほど横島が除霊実習でが助けてやったショートカットで目が可愛い彼女だった。
「いやいや、とーぜんの事しただけだしそんなに恐縮しなくても・・・」
「あ、はい!すいませんでした!」
またもやぺこぺことお辞儀を繰り返す彼女。

横島は苦笑いをした。
「(な〜んかピュアで可愛い子やな〜)あはは・・・とにかくどうした。他に何かあったのか?」
すると急に彼女はうつむき、黙り込んでしまう。

え?何か悪いこと言っちゃった?

横島の背筋に冷や汗が浮かぶ。
しかし助かったことに、彼女は自分から理由を教えてくれた。
「自信が・・・無くなちゃったんです・・・」

ああ、そう。確かに誰だって死にそうになればそうなるか・・・。

横島はしばらく考えてから言葉をつむいだ。
「う〜ん、自信・・・か。そりゃ難しいな」
彼女に絶望的な顔が浮かぶ。
「い、いや、そんな顔しなくても大丈夫だって。自信をつける方法って言ったらやっぱり自分を誉めなきゃ」
「で、でも私後衛だし、近距離戦の人たちの足元にも及ばないし・・・」
「だからそれがダメなんだって。第一に自分を見下すな。まあ自信過剰はだめだけど。第二に他人と比べるな。短所長所はそれぞれ違うからな。
別に後衛だからって自分を卑下て考える必要なんて無いぜ?それに君はいつも後衛の仕事を手ぇ抜いてたことあるか?」
ふるふると首を振る彼女。
「な、十分頑張ってんじゃないか。それに前衛の奴らなんてなぁ、後衛が自分の事をサポ−トしてくれるってだけでもかなりな助けになるんだからさ」
「そうなんでしょうか・・・」
「そうだとも。それに一流のGSでも前衛を完全に雇ったガードに任せ切ってる人だっているぞ。・・・まあその代わり黒魔術もできるけど。それと俺だって昔はただその場にいるだけだったし」
「はぁ・・・」
まだ納得できないような顔をしている彼女。
横島はふと、原因に気づいた。
「・・・もしかして怖いのか」
「あぅ・・・」
痛いところを突かれて目をうるうるさせる彼女。
「あ、すまんかった!悪いこと言ったか・・・でもそれについては大丈夫だと思うよ」
「でもっ、私弱虫だし、さっきだって・・・・・・私みんなみたいになれないです」
「いや、それでこそいいのさ。除霊は怖い。死ぬかもしれないんだからあたりまえだよ。一応はプロの俺だって怖いさ。自ら危険を望むようなヤツはプロになれない。なる前に死んじまうからな。
だからキミには素質があるとも言える訳さ」

「でも・・・私には必要最低限の勇気だって・・・」
彼女はそう言ってうつむき、黙りこくってしまった。
とことん自虐的なタイプである。

「よし、じゃあ発想の展開だ。キミが悪霊に立ち向かった時、何が起こる?」
「はい?」
「ふっふっふ・・・一般市民が襲われなくて済むのだ。たとえ俺たちにとってどんなに小さな悪霊だって普通の人から見れば脅威だ。何人もの人が死ぬだろう」
「・・・」
「君がいれば、君が少しでも頑張れば何人もの人が救われる。キミはヒーローだよ。もっと自分に自信をもて。・・・な?

どうだ、少しは元気でたか?」



無言。


何かやばかった?と、横島が背中に冷や汗の滝を作り始めた時、

「うわぁぁぁぁ〜〜〜ん!」
彼女は横島にすがりついて、せきを切ったかのように泣き出した。
自分に自信をもてなかった。私なんかよりすごい人はいっぱいいる。弱虫の私にGSなんて勤まらない。ずっとそう思いつづけていた彼女にとって、彼の言葉は優しすぎた。
「う、うわっ!」
横島は当然ながらビビリまくった。

横島脳内では天使君と悪魔君が彼を揺さぶる。

「くっくっく、どうした、おまえが望んでいた展開だぞ?さあそのまま抱きしめて禁断の世界へ!」
と悪魔君(西条に見える)。
「何を言っているんだ!そんな破廉恥なことしちゃダメだ!」
天使君(ピートのような・・・)が反論する。
「おいおい、もともとこういうのを求めてこの修学旅行に来たんだろ?据え膳喰わぬは男の恥、さあやるんだ!」
「くそっ、この悪魔め!!」
天使君はナイフを手に悪魔君に襲い掛かった。

しかし悪魔君は西洋合理主義者だった。

ぱぱぱぱぱぱぱぱ・・・・!

天使君は悪魔君のフルオート連射に倒れた。

「・・・さぁ、やれよ」
悪魔のささやきが横島の脳内に響く。

うんそうだね、と横島は意思決定をして手を伸ばすが・・・

「はっ!?」
そこら中に人がいることに気づく。
みんな興味しんしんでこっちを見ていた。
もちろんその中には・・・

「よ・こ・し・ま・くぅん?解ってんでしょうねぇ・・・」
殺気バリバリ、神通昆は放電中の美神さんもいるわけで。

「ち、ちがう!やましい気なんか無いっす!」
「でもちょっとは?」
「まあ、最後は少しぐらい・・・ってああ!!」
「死刑決定!!」
「うわぁああ!!まだやってないぃぃぃいい!!」
「問答無用!!」

かっこよくは終わらない横島だった。


うぎゃぁぁぁぁ・・・・・。

人骨温泉ホテルロビーに悲鳴が響く。





「ん?今何か・・・」
露天風呂で優雅に湯に使っていたパピリオはふと何かを敏感に感じ取った。
「どうしたでござるか?」
突然あさっての方向を眺め出すパピリオをシロが心配そうに覗き込む。
「いや、気のせいみたい。もしそうならシロもタマモも気づくはずだし」
シロはそうでござるか、と呟くとぱちゃぱちゃと水をかきながら向こうで泳いで行った。
そして他の級友とお湯かけで遊び始める。
「オイオイ・・・」
パピリオは眉をひそめた。
「ガキね・・・」
天然石に寄りかかるタマモもそう言って溜め息をつくが、頭にタオル、完全にリラックスしきった姿だ。
「・・・じゃあタマモは年寄りね」
パピリオは皮肉をこめる。
「あら、そうかしら?でもたまにはいいじゃない」
しかし今回は軽く流されてしまった。温泉パワーは気まで柔らかくするらしい。
「・・・でも、ほんっとにたまにはいいわね〜」
パピリオは空を見上げた。
天然の岩や、大木。その隙間からは墨を流したような真っ黒な清んだ夜空が広がり、そして惜しげも無く、きらきらと幻想的に輝く星たちが瞬いている。
決して都会では味わえない、すらっとした景色を思う存分に楽しめる。
なんだか坂本九の名曲を歌いたくなる気分になるほどだ。

みーあーげてーごらんー、よるのーほーしをー、ハァービノバン!

「温泉も気持ちいいわ・・・」
タマモも白濁したお湯に肩を沈めつつ呟く。
「なんか良く解んないけど。ミネラルが豊富なんだってさ」
パピリオはお湯をすくってみる。薄めたミルクのような湯は指の間を潜り抜け、元あった場所へと還って行った。
「ふ〜ん・・・ん?」
タマモがふと手を伸ばすと指先が何かに触れる。
ぺたぺたと触れてみると丸い物のようだ。
そばに引き寄せて持ち上げてみた。

頭蓋骨だった。


おはようさん。頭蓋骨はそう言ったような気がした。

タマモは丁寧にそれを元の場所へともどす。


「・・・・・・・人骨の湯、ねぇ。カルシウムがたっぷりだわ」
タマモは深く考えないことにした。
しばらく二人ともただ純粋に温泉を楽しんでいたが、やがてパピリオの口から問題発言がぼこんと飛び出す。
「さてと、つるつるお肌も準備オッケー。これで何が起きても大丈夫ね」
「ちょっと、あなた・・・横島に夜這いでもしかける気?」
何か子供は見ちゃいけない世界を脳裏に展開し、うっとりとしているパピリオに、タマモが思わずそう言う。
「・・・・・ふふふ。子供には解んない話よ」
パピリオは不敵な笑みを浮かべつつ、無い胸を張った。
言われたタマモは当然うれしくない。当然言い返す。
「・・・くすっ・・・その幼児体型でよく言うわね」


怒!!


温泉パワーはモノノケどもの怒気に敗北した。


ばちっ!   きゃー!


妖気、魔力の霊気が衝突して空中放電を起こし、近くにいた生徒が感電する。
星空の下、露天風呂にて、片や大妖怪、片や上級魔族の血みどろの戦いが展開されようとしていた。
「タマモはアシュタロス編後に転生したんだから私よりガキじゃない!」
「私には前世の記憶あるから。あなたよりも頭の中は進んでるわよ」
「きー!ムカツクわね!!自分もまだまだ幼児体型から脱出して無いくせに!」
「・・・私、傾国の美女だもん」
「でも今はただの生意気なずん胴体型のガキよ!」
「言ったわね・・・」

ばちばちばち!!

きゃー!うぁー!ひぃー!
お互いにののしりあう二人。そしてそれがヒートアップするたびに新たな犠牲者が生み出されてゆく。温泉(電解液)は良く電気を通すのだ。

やがて口喧嘩のネタも切れ、タマモパピリオ共に握りこぶしを固めたころ、ほとんどの女子生徒は気絶するか緊急避難してしまっていた。
「ふふふ・・・いくわよ?」
タオルを体に巻き、岩の上で胸を張るパピリオはどっかから集めた蟲たちを使役し、怪しい笑みを浮かべた。
「ふっ、すぐに消炭にして上げるわ」
おなじくタオルを巻いたタマモも少し離れた岩の上で、前かがみの戦闘体勢を取る。

一触触発とはまさにこんなことを言うのだろう・・・。

そして極限まで張り詰めた空気がはじける・・・!!
「いくわよ!」
「こい!」
双方がはじけるように前に飛び出す・・・「いいかげんにするでござる!」

すぱーん!!
霊波刀が小気味いい音を立てて二匹のモノノケの後頭部に炸裂した。
「「いったぁああ!!!」」
「他の人に迷惑でござろう!」
パピタマが涙の浮かんだ眼で先ほどの襲撃の犯人を睨む。
それはうきゅぅと目を回す級友たちを肩に担ぎ、こめかみに筋を浮かべているシロだった。
もともと仲間を助けることを誇りに感じる彼女であり、さらにずっと山の中にいたため野生パワーも相互効果で上乗せとされたことによって、今の彼女の正義心とパワーはいつもの比ではなかったのだ。

「・・・悪かったわね」
「はいはい、あたしが悪ぅござんした」
もともと負い目があった二人は仁王立ちするシロに怒る気も失せた。

それより・・・
「あんた、前ぐらい隠しなさいよ」
タマモはあきれて言った。
「別に気にすることでもないでござるよ?」
そしてお気楽娘は気にもかけなかった。

しかも・・・

こいつ・・・よく見りゃ私たちよりスタイルいいじゃない。

そう、問題はそこだった。
毎日適度(?)な運動し、鬼のように食う彼女は当然の事ながら、プロポーションは無敵のナイスバディへと変貌するはずだ。やがてその体からあふれる健康美はそこらじゅうの男どもを魅了するだろう。
しょせん毎日蜂蜜やらお揚げなどをほおばりつつ、ごろごろしているだけのパピタマに勝ち目など無い。

しかもよく考えたら・・・コイツが一番年上なんだっけ?

そう、原作時、タマモ、パピリオは0歳児であったが、シロだけが大体6歳ぐらいの年齢だったのだ。

なんかずげーくやしい・・・。
パピタマは恨めしそうにシロの体を見た。
「な、なんでござるか」
シロは思わず手で体を隠す。


パピタマははぁ、と大きな溜め息をついた。



一方そのころ、血みどろになった横島は・・・

山に捨てられていた。

その体には徐々に小動物が集まってきた。

「・・・まだ死んでねぇよ。あっちいけ!」
小動物は残念そうに帰っていった。

「・・・・うう、寒いよー」
そして彼は理不尽な仕打ちに泣いてた。

・・・そんな横島に自業自得と言うのは酷だろうか・・・?


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