椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

超!修学旅行。出発の巻


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 7/ 7

「再生・します」
無機質な声が暗い部屋の中ひっそりと響く。続いてアンドロイドM−666・マリアの目から光の束が発射された。そして古ぼけ、所々穴のあいた土壁にその淡い光がとある男の映像を映しだす。

『コイツは俺の女だ!手ぇ出すヤツは誰だろうとぶっ殺す!!』
ザシュッ!
 『ガァァァアアアアア!!』

その映写されている映像を食い入るように見つめている人物Drカオスは時折手元の他の計器を垣間見ながらじっとその画像を見つめる。

「やはり・・・間違い無いか」

彼はもうよい、とマリアを手で制し深い溜め息をついた。





うって変わって。

始まりは一本の電話だった。
「あ、横島クン?私よ私。なんというか・・・その・・・こないだは悪かったわね。何よ!驚いてんじゃないわよ!・・・そうそうお詫びっていうほどでもないんだけどさ、


六道学院の修学旅行ついてこない?」


そこまで言うと電話はすぐ切れた。
美神家の電話の前ではふぅ、安堵の溜め息をついて座り込む人物がいて、
横島家では電話の前で立ち尽くす者が確認できた。

その男の脳裏には

『イタリア系マフィアは相手を殺す時贈り物をして油断させるそうです・・・』

という友の言葉がリフレインしていた。
何度も何度も。





最近の美神さんおかしいし、何か知らんがこの間も死にかけたし、このままでは死ぬかも知れんな・・・。

今度という今度こそ命が危ない。しかし六道学園は水着を着たままの除霊実習なんかあってとてもおいしい・・・おいしいが、・・・いや、これは罠だ。罠だよ。罠かな?いや罠だ。やはりここは慎重に・・・

「ねーねーお兄ーちゃん。バス酔いしちゃった子がいるんだけど薬無い?」
「ああ、ここんところのポケットに・・・ホレ」
「ありがと」
たたたた・・・と走って行くパピリオの背中を何となく見ている俺。



「ってもう悩んでも遅いし!!」
がーっと叫んで頭を抱える彼。

だが!男というものは目の前の若い娘と水着ためなら命の危険をかえりみてはならんのだ!・・・・それが男ってもんよ。(犯罪気味である)

しかし横島ももう流石に高校生は射程範囲だ。でもまあしかし、若い子にきゃあきゃあ言われればそれなりにうれしい。

漢(オトコ)を乗せてバスが行く。野を越え山を越え谷を越え。
行き着く先はきっと楽園(エデン)。

横島を乗せたいかにも金をつぎ込んだような二階建てバスは目的地へ向けて爆走するのだった。

うわ・・・ナニアレ?
キモーイ
近づいちゃダメよ・・・

そしてバスの最後尾の座席でぐふぐふ笑う彼は生徒たちに遠巻きにされていた・・・。


「どうせ水着!とか〜考えてるんだろうとは〜思うけど〜もしかして〜知らないのかしら〜?」

間延びした声と共に横島の横に座ったのは
「あ、冥子ちゃんのお母さん」
「理事長で良いのよ〜その方が作者も楽だし〜」
作者ってナニ?という疑問はほおっておいて、とりあえず横島は先ほど起きた疑問を口にした。
「それより俺が何を知らないっていうんですか?」
「ああ、それね〜」
そう言っていつもの何考えてんだかわからない顔でこう答えたもんだ。

―――今年の修学旅行は山なの〜。そ、山〜。

固まる横島。

「窓の外を見れば解るでしょうが〜」
一号車、『六道学院御一行』と書かれたバスは、ただ無常にうっそうと木の生い茂る山道を爆走していった。


そんな彼を見つめる目線が、ひとつあった。
青い顔をしてうめく女子生徒に酔い止め薬を手渡しながら、じっと横島を見るパピリオの目線だ。しかしそれは少女の目線と言うよりはもうすでにオンナのもの・・・。

まだ、今の私には勝ち目は無い。
私の今の使命は・・・時間を稼ぐこと。
少しでも時間を稼いで、イイ女になって、その間他のライバルを寄せ付けないこと。
しかし、一番の強敵が行動に出てしまった。
これは今まで以上に妨害工作が必要か・・・。

彼女は窓の外の他のバスに乗っているであろう最大のライバルに目を向ける。

ポチは渡さないからね。美神令子・・・。

まあ前に恋愛対象で見るのやめるなんて言ったけど、ずっと有効なんて言ってないもんね。

彼女は修学旅行中の甘い生活計画と妨害計画を思い浮かべ、ニヤリと笑った。



当然の事ながら、今回の修学旅行は無事には終わりそうも無かった・・・。



そして、

「酔った・・・」
「大丈夫かーパピ?」
「うぅ・・・ちょっとやばげ・・・」

ふと周りを見れば約3分の2の生徒が青い顔をしている。
中にはなにやら思いつめた顔をして紙袋を握り締めている者もいた。

そんな様子に危機感を覚え、いつの間にか最後尾から移動してきた横島は運転手に問い掛ける(ホントはこんなことしちゃイケマセン)。
「なぁ、後どれぐらいでつくんだ?」
運転手はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。

   なーにもうすぐですよ・・・。

それは薬珍並にたちの悪い者の笑みだった。

それから約一時間もの間、
砂利道、坂道、下り坂。連続カーブにカビ臭いエアコン。それら全ての盛り合わせが一号車を襲った。

「ヤバイ!こっち一人で臨界点を突破しかけてるわ!」
「だめよ、こんな所であきらめちゃダメ!」
「喉まで上がってきた?!飲んで!飲み下すのよ!!」
「何か良いことを、楽しいことを思い浮かべれば・・・うう・・」
「パルス逆流しかけています!逆流ですよ逆流!!」
「まさか・・・暴走!?ひぃぃいいい、こないでぇ!」
「解らない、私三人目だから・・・うぇっぷ」
「誰か僕を助けてよ!・・・ってマジでヤバイ!」
「フンフンフ〜ン、歌はイイねぇ・・・一時でも気分がまぎれる」
「キモチワルイ・・・」

車内はまさに地獄絵図。いたるところでバイオハザード警報がMAXで鳴り響いている。
パピリオとて例外ではない。

「お〜い、大丈夫かー」
「・・・話し掛けないで」
横島が心配して話し掛けるが、今の彼女にはそれすら苦痛のようだ。どうすることも出来ない横島はただおろおろしている。

「たいへんねぇ〜。そういえば横島君は酔わないわね〜」
サードサバイバー(生存者3号)の理事長はまるで人事のようにそう言った。(ちなみに生存者2,1号は運転手と横島)
「俺はよくトランクの中とかに放り込まれてましたから・・・ってあなたも酔ってないじゃないですか」
「え〜私よく解りませんわ〜」ニコニコ
「・・・もういいです」
ほわ〜んといつも通りに笑う理事長の顔に負け、横島は深く追求するのをあきらめた。
それに顔見りゃ解るような気もした。

しっかし・・・こらヤバイな。

改めて辺りを見渡す彼は事態の深刻さに頭を悩ませる。流石に横島とて目の前で華の女子高生がゲロる所など見たくは無い。

「しょうが無いか。勿体無いけど・・・」
彼はごそごそとポケットをまさぐり、文殊を二つほど取り出す。

『爽』『快』

「みなさーんちょっとこっちに寄ってくださーい」
何事か、と土気色の顔をこちらに向ける女子生徒たち。それを確認した横島は文殊を発動させる。

さわわぁぁあああ〜〜〜〜〜んん・・・・・

すると横島の手の中からなんだかよくわからない謎の波動(香りつき)が流れだし、一号車の一階を包み込んだ。
とたんにみんなの顔色が良くなる。

す、すごい・・・
なにこれ、きもちい〜
あ、治った。

「じゃあ効果が切れないうちに二階にも行ってきます」
あちこちで聞こえる感嘆の声を受けながら、横島は微笑を浮かべて二階へと上がっていった。

ミント系の香り漂う一階は、一斉にざわざわと騒ぎ出す。
「ねぇねぇねぇねぇ、パピリオさん。あの人ってお兄さんなんでしょ?」
「しかも現役のGSなんだって?!」
「すごいじゃない。さっきのナニ?」
「彼、名前なんていうの?教えてよ!」
一気に詰め寄られたパピリオはうっと一瞬息を詰まらせ、
「・・・そのうち解るわ」
とだけ言った。

それには深い訳があるのだが、まだ触れないでおく事にしよう。

「あら〜見えてきたわよ〜」
理事長が突然そう言いながら窓にぺたっと張り付く。
確かに外では道が開き、何やら建物が建っているのが伺えた。
とにかく、彼らは宿泊地へとたどり着いたのだった。

バスを降り始める女子生徒。横島もそれに混じる。
そして、そういえば行き先聞いてなかったんだよなぁ、と思い起こし宿泊地の名前を確認しようと女子生徒の前へと進んだ。



『人骨温泉ホテル』。



人骨温泉ホテル・・・温泉ホテル・・・温泉、ホテル・・・


『温泉』!!


「・・・・うぉぉおおおお「先生!!」
横島が淡い期待に雄たけびを上げようとした瞬間、突然タックルを喰らいさらに地面を滑走する。
「なにすんじゃぁ!」
「先生〜♪」
シロだ。

横島はぐりぐりと擦り寄るシロを引っぺがそうと躍起になるが、無理やり離されていた為かいつもよりしつこい。
本来一号車に乗るはずの彼女は先ほどから鬱陶しすぎるという理由で横島とは違う、二号車に放り込まれていたのだった。
「解った、解ったから離れろ!」
前と比べ、色々と成長しているシロにしろもどろになりつつ引き剥がそうとする横島。

しかしなかなかうまくいかない。というか引き剥がす時手を触れる場所に色々と問題があるわけで。
結局、むっとした顔のパピリオが乱入するまでそのままだった。
「おまえなぁ・・・」
横島はひりひりする背中をさすりつつ、あきれた目線で愛弟子を見る。
「く〜ん」
シロはまだ抱き着き足りなかったらしく不満げだ。
パタパタと一定のリズムで尻尾を揺らしつつ、柔らかい物欲しげな顔での上目遣いは破壊力満点だった。

もう彼女もそこまでガキというわけではない。

「解った解った。あとで相手してやるからその上目遣いを止めてくれ」
「ホントでござるか!」
とたんにぱぁっと顔を輝かせて辺りを飛び回るシロ。
横島とパピリオは自分でも良くわからないが、溜め息が出た。

やっぱガキやなぁ・・・と言うか上目遣いなんて高等テクを何処で手に入れたんだ・・・

そんなことを考えてる彼だったが、ふとここに居なくてはならないはずの人物を思い出す。
「なぁ、美神さんは?」
「さぁ?私知らない。そういえばタマモもいないわ・・・」
パピにも意見を求めるが謎は深まるばかり。
「おい、シロ。確かおまえらみんな二号車だったよな。美神さんたち何処だか知らないか?」
「美神殿?」
シロはぴょこぴょこ飛び跳ねるのを止めた。
「ああ、まだ車の中でござる。タマモも美神殿もまだまだ修行が足らんでござる〜」
「え?」
一瞬シロの良くわからない説明に疑問を浮かべた横島だったが、ここまでの車内での惨状を思い出し、大体予想がついた。
「なに?どうしたの?」
察しが悪いパピリオ。いや、そのほうが幸せなのかもしれない。
「ちょっと行って来る・・・」
横島は恐る恐る、二号車に近づいていった。


ほとんど満席で、しかも今が華の女子高生が乗っているはずのバスは、不気味な沈黙を保ち続けている。
横島はその周りをとりあえず一周してから、じりじりとバスの入り口へと近づいていった。

そのドアはなんだかラークーンシティ出身のような気がした。

「あの〜、だいじょうぶっすか〜?」
横島が内部を覗き込もうとした次の瞬間・・・っ!内部から突き出した手に肩を捕まれる。
慌てて振りほどこうとするが、ソレは信じられないような握力を誇っており、びくともしない。
「う、うわっ・・・!!」
しかもその押し倒され、強く背中を打つ。さらに膝をみぞおち辺りに置かれ、全く身動きが取れない。
『YOU・DIED』
そんなフレーズが脳裏で瞬いた。

「・・文珠・・・文珠!」
「へ?」
横島はそこではじめて文珠を要求されていることに気づいた。
「浄化!」
「は、はい!」
慌てて『浄』の文珠を取り出し、差し出す。
横島にのしかかるそいつは、パッとかすめ取るようにその文珠を受け取り、またバス内部へと消えていった。
後姿から推測すると、ソレは美神だった。

一瞬の空白の後、車内で清らかな光があふれ、そして静かになった。

やがてバスからちらほらと生徒たちが降りてくる。その手には『オミヤゲ入り』のエチケット袋がしっかりと握り締められていた・・・。美神も、その中に混ざっていた。
「・・・横島クン、助かったわ・・・これで服のシミにはならないはずね・・・」
彼女は横島とすれ違いざまにそう言うとそのまま向こうへと去っていった。
バスの中で何が起こっていたのか、それはあえて説明はしないでおこう。

また、涙目のタマモ、なんだか状況がわかっていなくてニコニコしてる冥子もバスから降りてきた事をここに書き足しておく。
バスのそばには微妙な表情を浮かべる横島が残された。


大体皆の気分も良くなり、『オミヤゲ』の後始末も終わった後。
人骨温泉ホテル、ロビーにて。

間延びした理事長の声で全参加者の集合が確認される。
横島と美神はその脇で並んで立っていた。
「うわー・・・結構いますね」
「まあね、一応全校生徒だし」
横島は三桁レベルの目線を全身に浴び、ややどぎまぎしている。
ただでさえ唯一の男性であるうえ、一号車の車酔いを全て静めた、という功績で注目度はかなり高い。

「さ〜おまちかねの今年度のつきそいGSの紹介よ〜」
僅かにざわついていた生徒たちが押し黙る。
彼女たちにとって本物のGSと触れ会える数少ないチャンスなのだ。しかもS級のGSなどめったにお目にかかれるものではない。

「じゃあ一人目〜・・・美神令子ちゃ〜〜〜ん」
とたんに割れるような拍手がホールを包み込む。
それもそのはず、彼女たちが普段使っている教科書の54ページにはしっかりと彼女の写真が乗っかっているのだ。美神のここでの知名度は尋常ではない。

美神はそんな、ヨン様に付きまとう女性のような勢いの女学院生徒に、いつもの事ながら苦笑いを浮かべた。
「え〜っと・・・私は特に教えるなんてのは苦手だけど、まあ数日間よろしく」
そんな彼女の短いスピーチにすら観衆は盛り上がった。とことん盛り上がった。
最前列の生徒が感動のあまり数人気絶し、救護班に連れてゆかれた。
「次頼むわ・・・」
彼女は引きつった顔で理事長に先を促した。

「それじゃあ次、六道冥子〜〜〜」
ぴたっ

生徒達は一瞬だけ動きを止め、


わ、わぁーーーー・・・


思い出したかのように、なんだか引きつった顔をして歓声のようなものを上げた。
拍手は全く飛ばなかった。
度重なる暴走事件は六道学園では『学校の七不思議』などよりよっぽど恐ろしいものなのだろう。
「みんな〜よろしくね〜」
そんなことには全く気づいていない冥子様ご本人はニコニコ笑顔でそう言った。

「それじゃあ〜、最後は皆が〜一番気になってる〜彼を紹介しますわ〜」
理事長はそういって横島の方へ手を向けた。
ざわめきが止まり、解けつつある謎に張り詰めた空気が流れる。
「AランクGS、横島忠夫さんで〜す」
横島は心の中でニヤリと笑う。
くくく、そういえば俺とてこう見えてもAランクのGS。女子高校生の黄色い悲鳴が目に浮かぶわ!



しかし、・・・現実は甘くは無い。
「ま、まさか、横島忠夫ってあの横島忠夫!?」
「幾度となく進入不能と言われた学園内に進入し、教師や先輩達に痴漢の限りを尽くし」
「我校ではもはや怪談化した伝説の変態・・・」
「スケベ大魔王、または超ケダモノの異名を持つ・・」

―――あの横島忠夫!!??

女子高生の、くみ置き式の便所の中身のおぞましい汚物を眺めるような目線が横島に容赦なく突き刺さる。
その中でパピリオも自嘲気味の笑みを浮かべていた。
「だから紹介したくなかったのよ・・・可哀想だし」







スケベ大魔王は灰になった・・・。


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