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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

彼女こそは!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 7/ 6


それはあまりにも意外な一言で─。


「さあ…始めるわよ?」


まさか、勝利者宣言か!?

そう思い、どうやって逃げようかと思案していた横島が身構える。

皆も同じ事を考えたのか、今にも飛び出そうとしていた。

だが、そんな中で美神が放った台詞は─。


「まずは、横島くんの初任給! 250円から!!」


……………………?


そのとき、確かに。少なくとも。

その場の時間が、世界が止まったと横島は後に語る。

会場を見渡せば、そこら中に疑問符が浮かんでいそうな雰囲気だ。

美神が何を言っているのか、わからない。


「…あら、いないの? せっかくのチャンスなのに?」


……いや、わかっている。

何を言っているのかは皆、解っている。

だが、それを分かりたくはないのだろう。

まさか。ありえない、と。

だが、それを裏切るように美神はさらに煽りたてる。


「ほらほら! さーて、誰が《落札》するかしらねー♪」


落札。

横島をはじめその場にいた全員が、もはや間違えようもなく確信した。

美神はこう言っている。

《横島GET権を競り落とした者に、これを与える》と。


「さあ!! オークションの始まりよ!!」

「そ…ッ!?!」



そう、きたかァァァァァァ─ッッ!!?



その場にいた全員の心が、無音の大合唱を響かせる。

なお、余談ではあるが、このときの心の声は海を越え、遠く離れた土地で研究に没頭していた美神公彦教授にまで届いたという。


「あ…あのぉ〜…美神さん? それって…マジっスか?」

「大マジに決まってるでしょ!!」


おずおずと聞き返す横島に、はっきりと何故か得意げに言い切る美神。


そうだった…この人は…。


横島は目の前が急速に暗くなっていくのを自覚した。

同じく会場の隅では、くらりとよろけた美知恵が、斉天大聖老師に支えられていた。


そうだった…あの子は…。


また会場の至るところで、誰もがこめかみを押さえて考え込んでいた。


そうだった…あの女は…。

彼女は…。


「私が誰かが決めたゲームに大人しく従うわけないじゃない。私を誰だと思ってるのよ?」


そうだ、彼女は。

彼女こそは。

神界にもその底なしのがめつさを轟かし、魔界にもその悪どさでは並ぶ者なしと謳われた女─。





『…フッ…ッアハハハッ!! ハーッ、ハハハハハッ!!』

「ろ、ロキ様?」


発作のように突然笑い出したロキに、魔鈴が顔を引きつらせる。

だが、そんなことはお構いなしに、ロキはおかしくてたまらないといった様子で笑い続けていた。

まさか、そんな手でくるとは…面白い!!

彼女は本当に面白い人間だ。

アイツが、友人でもある魔神アシュタロスが、彼女に翻弄され執着していたのも頷ける。

素直に、心から面白いと思える彼女だからこそ、アイツも気に入っていたのか。



「─さあ、フィナーレに相応しく……派手にいきましょ?」


彼女こそは、美神令子。

魔神さえ手玉に取る、三千世界一の性悪女である。


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