椎名作品二次創作小説投稿広場


横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

罵声と機関銃!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 6/29

「…ッ開かないッ!!」


全員が見守る中、血走った目で会場の扉を押し続ける西条。

苛立ちもそのままに、扉をバンッと叩く。

せっかく、ジークと土偶羅によって横島の居場所を割り出したというのに、これでは何もできない。

さらに、部屋の外で締め出しをくらっていた美知恵に聞けば、中には美神までいるのだという。


「どーせ、横島が中で文珠を使ってるんだろ。」

「そんなことはわかっている!! だが、早く…早く開けないと、凄くイヤな予感がする…!!」


呆れたように声をかける雪之丞に、西条は声を荒げる。

男の直感というものだろうか。

さきほどから、嫌な予感がぬぐえない。


「そんなに心配することないんじゃない? 横島だって簡単には捕まらないでしょうし…。」

「いや、油断は出来ない!! 彼は最悪のケダモノだ!! 容赦なく排除しなくてはならない!!」


タマモの言葉にも、微妙にかみ合ってない返答をする西条。

その表情は鬼気迫るものがある。


「……前にどっかで聞いたような台詞じゃノー。」

「…根本的に似てるのよね。西条さんと横島くん。」


その姿に感じたデジャヴュに、妙な疲労感を覚えるタイガーと愛子。

そんな周囲をよそに、さらに西条はヒートアップする。


「パピリオ、べスパ!! まだ扉は開かないのか!?」

「ちょっと待って欲しいでちゅ!! 遮断する力が強すぎて…!!」

「ったく! なんでアタシがこんなこと…!」


返ってきた答えに、くっ! と歯噛みする。

こんなときこそ、神魔族が力をあわせるべきなのだが…と西条は後方を見る。

そこには、先の騒ぎで「やりすぎじゃ!」と斉天大聖に殴られた小竜姫とワルキューレが、仲良く気絶していた。

ジークや冥子のショウトラが介抱しているが、目を覚ますにはもう少しかかりそうである。

西条の中で、嫌な予感は膨れ上がる一方だ。

そう…まるで、横島と美神の仲が急接近しているような……って!


「…ッそんなこと、許せるものかァァァッ!!」


咆哮とともに、扉へと拳を叩きつける西条。

突然の行動に全員が呆気にとられる。


「ちょ…ちょっと、西条くん! そんなことしても…。」


美知恵がなだめようとしたとき、ぎぎぃ…と音を立てて扉が開いた。

この事態には、当の西条も目が点になる。


「へっ? あ、あれ?」

「開いた!? いえ、これは……。」

「そう! 『開けてあげた』のよ!!」


突如響いた声に、はっとそちらへと目を向けると、勝利者台の上に凛と立つ美神の姿があった。

……ついでに、その足元で魂が抜けたように脱力してうなだれる横島が転がっている。


「ま…まさか…!!」

「もう…勝負は終わったんですか…!?」

『いや、まだだよ。』


おキヌたちがうろたえていると、ロキと魔鈴が部屋に入ってきた。

二人はそばにあった椅子に腰掛けると、ステージ上の美神を見やる。


『まだ、彼女は立っただけ。宣言はしてないよ。……この10分間ね。』


ロキの言葉に、皆一様に眉をひそめる。


「ということは…美神くんは横島くんを捕まえたにもかかわらず、宣言をしなかったというのかい?」

「私たちを待っていた…? でも、いったい何故…!?」


ざわつく一同を見渡して、満足げに微笑む美神。

その表情に、はっと何かに気づいたのはエミだった。


「令子…おたく、まさか…ッ!!」


美神の笑みがますます深まる。

…次の言葉を聞くまで。


「私たちに、自分が勝利するところを見せつけようってワケ!?」

「な…ッ、何だとォッ!?」

「本当ですかッ、美神さん!?」


エミの言葉に、小竜姫とワルキューレが飛び起きて問い詰めるが、見事なコケを披露している美神には答えられない。

だが、そんなことはお構いなしに、ほかの面々も口々に抗議を始める。


「酷いでちゅ!! 極悪でちゅッ!!」

「人間もいいものだって、思っていたのに…裏切られた気分だわッ!!」

「旦那の性格が悪いとは知ってたが、まさかここまでとはなッ!!」

「いくら美神さんでも、そこまでするとは思ってなかったのねー!!」

「美神お姉さまッ! それはいくらなんでもあんまりですわッ!!」

「拙者、心底見損なったでござる!!」

「美神くんッ! 君はどこまで…ッ!!」

「ミス・美神!! それは・人としての・モラルに・反しています!!」

「さすがの僕もフォローできないよ、令子ちゃん…!!」

「お友達だって〜、信じてたのに〜!!」

「鬼ジャーッ!! 美神さんは本物の鬼ジャー!!」

「なんたる横暴!! 貴様はそれでも人間か!?」

「美神さん…私、信じてたのに…!! 美神さんはとても豊かな人だって!!」

「泣いたらあかん!! 結局、アイツも業突く張りな人間の一人やったんや!!」

「アンタ、それでも日本最高のGSなのかい!? 幻滅だよッ!!」

「いい加減、温厚な僕も怒りますよ!?」

「令子ォォーッ!! どうして、そんな子に育ってしまったの!? もう世間様に顔向けできないわーッ!!」

「とことん見下げた女だね、アンタは!! ポチも何でこんなヤツの下で…!!」

「お主…いくらなんでも悪趣味すぎやせんか…!?」

「大人って汚いわッ!! 私たち子供の心をいたぶって何が楽しいのッ!?」

「美神はん!! そんなん、うちの親父と変わらんでッ!? 人間として最低やッ!!」


………もう、ボロクソである。

非難轟々の美神は、こめかみを押さえながら静かに怒りのボルテージを上げていた。


「…美神さん、本気なんですか!? 横島さんもなにか言ってください!!」

「い、いや! 俺もさっきから聞いてるんだけど、何も答えてくれないんだよ…!!」


おキヌに言われて、横島は困ったように返す。

この10分間、何度となく質問したのだが、まともには答えてくれなかった。

「まあ…いっか。」とか「すぐに分かるわよ。」とか。

いったい、美神が何を考えているのやら、横島にも理解できなかった。

その間にも、皆はギャーギャーとわめきたてており…。


「あんた達、少しは話を聞けェェーッ!!」


ズガガガガッという機関銃の音ともに、美神の怒声が響き渡る。

銃口は天井を向いていたが、美神のあまりの剣幕に口をつぐむ一同。

会場はしんと静まり返り、それを見回して美神はため息をついた。


「まったく…そんなわけないでしょ!? …まあ、いいわ。残り時間もあと少しだし…始めるわよ。」


そう言うと、ふっと美神の表情が変わる。

いつもの大胆不敵な、あの笑みに─。




残り時間、あと5分─。


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