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力宿す者

第六話 現状と救い


投稿者名:翔
投稿日時:04/ 6/19

今一人の男が世界有数の霊山である妙神山を登っている。 男の名は横島忠夫、先日、悪霊との戦いにおいて追い詰められながらも自らの身に宿る力を覚醒させ悪霊を滅ぼし、その後、自分の深層意識の中で死に別れた恋人と再会し自分の身に宿る力の存在を聞き神族に協力して貰う様に言われた為、彼が唯一知る神族達が居る場所である妙神山修行場に今向っている最中である。

第六話 現状と救い

「ここに来るのも久しぶりだな、パピリオは元気でいるかな?」
階段を上りながら一人事を言う横島、だがその顔はかなり疲労し疲れた顔をしていた。
「それにしても何でこんなに疲れるんだ?、此処に来る道はともかく山を登るのには階段も出来て楽になったはずなのに」
アシュタロスの乱の際、破壊された妙神山はその後、再建され階段も作られて行き来が楽になっていた。 にも拘らず無尽蔵の体力を持つ横島は疲れてへばっていた。 やけに疲れる身体を変に思いながらも横島は山を上り続けて門に辿り着いた。
「やっと着いた〜〜〜っ、てっ、全然以前と変わらんなこの門構えわ」
一人でぶつくさ言っている横島に鬼門達が気付き話し掛けて来る。
「んっ?、おおっ、横島ではないか久し振りだな?」
「何っ、横島?、おおっ、確かに横島だ久し振りだな?」
「ようっ、え〜とっ、そっちが右ので、こっちが左の鬼門だな?、久し振り」
話し掛けて来た鬼門達に横島は久し振りに挨拶を返す。
「「うむっ、それはそうと横島よ、今日は何用で参った?」」
「ああっ、今日は小竜姫様達に相談が有ってな。」
鬼門達のハモリながらの問い掛けに、横島は真剣な表情を浮かべて答える。
「それに久し振りにパピリオにも会おうと思ってな」
先程の真剣な表情とはうって変わって、何時ものお気楽な表情で答える横島。
「そっ、そうかっ?、・・・まあ修行に来た訳では無いなら良いか?、のう右の?」
「うっ、うむっ、そうだなそれにパピリオも御主に会いたがって居た事だし良いのではないか?左の?」
「じゃあっ、入って良いんだな?」
鬼門達二人の結論を聞いた横島は確認を執る。
「「良かろう、入るが良い」」 ギィーーーーーーーッ
鬼門達が横島の確認の問いに答え門を開ける。 そして横島は、
「あんがとな鬼門」
そう言って中に入っていった。 横島が中に入ったのを見て門を閉めた鬼門達は横島の事を話し合ってていた。
「のうっ、右の」
「んっ、なんじゃっ?、左の」
「横島の小僧・・・変わったと思わんか?」
「御主もそう思うたか左の、・・・我もそう思っておった」
「何かあったのかの、どう思う右の?」
「さあな我にも解らぬ、しかし良い傾向じゃと我は思うぞ。 御主はどう思う左の?」
「うむっ、我も良い傾向だとは思うが一体何があったのか」
「まあっ、我等が考えても仕方有るまい、何か有れば小竜姫様達がなんとかしてくれようぞ、左の」
「そうじゃな」
そう考えて再び門の役目に就く鬼門達であった。

〜〜妙神山修行場〜〜
中に入った横島を出迎えたのは此処妙神山の管理人である小竜姫であった。
「横島さんじゃないですか、お久し振りですね」
「お久し振りです小竜姫さま、相変わらずお美しい」
久し振りに会う横島を見て嬉しそうに話す小竜姫。 横島もそんな小竜姫に笑顔で話し答える。
「そっ、それはどうも・・・とっ、所で今日はどうしたんですか?」
横島の今まで見た事のない自然な笑顔に顔を赤くし、どもりながらもなんとか用件を聞く小竜姫。
「ええっ、実は皆に相談が合って来たんです。 それで出来れば此処に居る皆を全員集めて欲しいんですけど」
「相談ですか?、それに此処に居る全員を?」
「ええっ、お願いします」
小竜姫の問いに真剣な顔で用件を話し頼んで来る横島。
「っ!分かりました。 それでは横島さんは奥で待っていて下さい。皆は私が連れて来ますので」
「分かりました」
真剣な顔と態度で頼んで来る横島を見て相談事が余程大事な事だと悟り、小竜姫も真剣な態度で横島を奥へ促し答える。 
小竜姫に返事を帰し促されるまま奥の部屋に入る横島。
「でわ此処で待っていて下さい、皆を呼んで来ますので」
「すいません小竜姫様」
小竜姫の言葉に思わず謝る横島。
「構いませんよ、じゃあ呼んで来ますから」
そう答え皆を呼びに行く小竜姫。 暫らくして、
「横島さんお待たせしました」
と言って部屋に入ってくる小竜姫、その後ろから他の人達(?)も部屋に入って来る。
「ヨコチマー久し振りでちゅー、全然来ないから寂しかったでちゅよー」
横島に抱きつくパピリオ。
「お久し振りなのね〜〜横島さん」
のんびりした口調で話すヒャクメ。
「久し振りだな横島」
軍人らしく簡潔に挨拶するワルキューレ。
「お久し振りです、横島さん」
男同士だからか多少親しげに話すジーク。
「久し振りだなこぞ、う!?」
相変わらず猿の姿の猿神。
「皆久し振りだな、?どうした猿神」
パピリオ、ヒャクメ、ワルキューレ、ジーク、猿神等と久し振りに会い挨拶を交わす中、猿神の自分を見る目と態度が変な事に気付き問い掛ける横島。
「んっ、いやっ、何でもない(たぶん気のせいじゃろう)」
「そうか」
猿神の返事に違和感を感じながらも納得する横島。
「それよりも小僧、何かわし等に相談があるそうじゃな?」
「んっ、ああっ、とっ、その前にパピリオ、そろそろ離れてくれこれから大事な話をしなきゃいけないんだ」
猿神の言葉に相談をする為、パピリオに離れる様に頼む横島。
「わかったでちゅ、でも後で一緒に一杯遊ぶでちゅよ?」
「ああっ、分かったよ後でな」
「ならいいでちゅ」
パピリオのおねだりに苦笑しながら答えそれを聞き離れるパピリオ。
「ふむっ、それで小僧相談とは何じゃ?」
「ああっ、実は、・・・・・・」

横島は力の覚醒の経緯から、深層意識の中でルシオラと会い伝えられた事実を全て皆に話した。 話を聞いた皆は皆一様に信じられないと言った顔をしていた。 だがその中で唯一人納得した様な顔をした者が居た猿神である。

「猿神、あんたはあんまり驚いていない様だな」
「いやっ、そんな事はないぞ小僧、ワシは唯先程御主と会った時、以前とは何か違う感じがしたのでな、それが何なのかは分から無かったが、今の話を聞いて先程感じた違和感が何なのか解ったんじゃよ」
「そうかっ、でも違和感ってなんだ?』
猿神の話を聞いて横島は先程の猿神の様子を思い出し納得していた。 だが違和感に付いては横島も解らず猿神に聞き返す。
「ワシが感じた違和感の正体は御主の力の波動じゃよ。 御主から発せられる力の波動が以前とは比べ物に為らない位強くなっておるんじゃよ。 最もワシでもかなり集中せねば良く解らんのだがな」
「そういう事すか」
猿神の説明に納得する横島。
「それはともかく、まずは事実かどうか確めて見るとしよう。 ルシオラとやらを信じぬ訳では無いが確証が欲しいのでな。 ヒャクメ、調べて見よ」
「わっ、分かったのね〜〜〜っ」
猿神の言う事に従い横島を調べ始めるヒャクメ。
「じゃあっ、横島さん少しの間じっとしてるのね〜〜〜っ」
そう言って横島の身体に幾つ物コードを取り付けるヒャクメ。

十数分後、

「間違いないのね〜〜、確かに横島さんの身体(魂)にはアシュタロスが作った結晶のエネルギーが宿っているのね〜〜〜、エネルギーが宿った原因はルシオラさんが言ってた通りでまず間違いないのね〜〜〜」
ヒャクメの報告を聞き何とも言えない顔をする一同。
「そうか・・・・・・横島よ、御主はルシオラに言われて此処に来たと言ったな?、なら此処に来る理由は聞いたか?」
「いやっ、此処に来れば分かると言ってたから」
「・・・やはりそうか」
自分の問いに対して答えた横島の言葉を聞き猿神は一つの確信を得た。
「?やはりってどう言う事だ猿神」
一人納得する猿神に訳が分からず聞く横島。
「・・・・・・・・・・・・隠して入ても直ぐに分かる事ゆえ今此処で話してやろう。 よいか横島よ、そのルシオラとやらは御主の身を、命を助ける為に此処に来る様に、そしてワシ等に協力を求める様に言ったのだ」
「ちょっ、ちょっと待て、それはどう言う事だ、俺の命を助ける為ってどうしてそうなる?」
猿神の話を聞き動揺して聞き返す横島。
「そうです、どう言う事なんですか老師?」
此方も動揺して詰め寄る小竜姫。
「そうでちゅ、どう言う事か解る様に説明するでちゅ」
パピリオは怒気を顕わにして問い詰める。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
他の三人は何か納得した様な顔をして黙っている。
「落ち着かんか馬鹿者」
動揺して自分に詰め寄る三人を一喝して黙らせる猿神。
「全く落ち着きが足らんぞ、小僧やパピリオは兎も角、小竜姫よ御主なら冷静に考えれば解るはずじゃぞ」
「・・・・・・・・・・・・あっ」
猿神の一喝で冷静さを取り戻した小竜姫は先程の説明を思い出し考える。 少しして何か解った様に声を出す小竜姫。
「解った様じゃな?」
「はい」
「こっちは全然解ん無いんだけど」
「私達にも説明するでちゅ」
師弟で納得する姿を見て横島とパピリオは不満の声を上げる。
「おおっ、済まんな、なら今から説明してやろう。 まずは二人共、御主等は人と神や魔の違いが何だか知っておるか?」
猿神の問いに、「解らない」と首を振る二人。
「そうかっ、それはな存在の在り方じゃよ」
「在り方?」
解らないと言った顔をする二人。
「うむっ、存在の在り方とは即ちどの様な形で存在して居るかと言う事じゃよ。 元々神や魔は決められた肉体と言う物を持たない存在で有る為、例え肉体が滅びてもその魂さえ無事なら復活する事が出来る。 それは御主等も知っておろう」
「「・・・・・・」」
ルシオラの事を思い出し無言で頷く二人。
「じゃが人間は違う、人間は肉体を持ち、その肉体に魂が宿る事によって存在しておるのじゃ、故に肉体が滅びた時、その人間も死ぬ事になる。」
「そこで問題なのが肉体の存在じゃ、そもそも神や魔は肉体と言う枷から解き放たれた存在故に強大な力を持つに至った存在なのに対し、人間は肉体と言う枷に縛られた存在であるが故、限界というものが存在し、それ故に人は神や魔を超える事が出来ないのじゃ。」
「さて小僧、いやっ、横島、ここまで話せばワシの言いたい事が解るじゃろ?」
「・・・・・・ああっ、つまり俺が人で在る為に、俺の魂に宿ったエネルギーに、俺の人としての身体は耐えられず、やがて限界を超えて死ぬ事になる・・・そんな所だろ?」
「そう言う事だ」
猿神の話を聞く内に自分がやがて迎える結末を悟り、それを確認する様に猿神に聞く横島。 そして猿神はそれを肯定した。
「死を回避する方法は一つ、即ち神族、又は魔族になる事だ。 じゃがそれは正直難しいと言わざる終えない。 何故なら神族原理主義者達は御主を危険視しておるし、何より御主は魔族因子を持っている身だ、我等は兎も角他の神族が、特に原理主義者共は認めはしないじゃろうな。 魔族側にしても同じ事、御主が魔族になる事を魔族側は兎も角、神族の原理主義者共は認めはしないじゃろうしな」
「そうすか・・・・・・・・・・・・俺はどうすれば良い?」
猿神の説明を聞き自分の立場を知った横島はどうすれば良いか解らず尋ねる。それに追従する形で他の者達も猿神に尋ねかける。
「何か方法は無いんですか老師、此の儘では余りにも横島さんが・・・」
必死に訴えかける小竜姫。
「そうでちゅっ、此の儘ヨコチマが死ぬなんて絶対駄目でちゅっ、きっと何か方法が有るはずでちゅ」
怒気を含んで問い掛けるパピリオ。
「老師〜〜何か手はないのね〜〜〜」
ヒャクメは何時もと変わらぬ態度で問い詰める。
「きっと何か方法が有る筈だ」
ワルキューレは冷静に話す。
「ええっ、きっと何か有る筈です」
姉に続く様に言うジーク。
「判っておる、ワシとて此の儘横島を死なせ様とは思わん。 となれば打つ手は一つ横島が人の身のまま、その身に宿るエネルギーをコントロールする方法を探すだけじゃ。」
「人の身のままですか?」
猿神の答えに何とも言えない顔で聞き返す横島。
「それしかあるまい、執り合えず小竜姫よ御主横島に竜気を与えて心眼を付けてやるが良い」
「竜気で心眼をですか?」
猿神の言った事に訳が解らず不思議そうな顔で聞き返す小竜姫。
「うむっ、心眼に横島の霊気をコントロールして貰うのじゃ。 横島よ御主は気付いておらぬ様じゃが、御主の霊力は結晶のエネルギーが覚醒した事により通常より高くなっておる、それ故かなりの負担が御主の身体に掛かっている筈じゃ覚えはないか?」
「そういえば此処に来る時、やけに疲れを感じたっけ」
猿神の話に此処に来る時の事を思い出す横島。
「そうであろうな今の御主は無意識の内に高い霊力を放出してる様な物じゃからの、それを抑える為に心眼を付けるのじゃ」
「成る程、判りました老師、でわ横島さん此方に」
猿神の言葉に納得した小竜姫は横島を自分の前に招いた。
「ジッとしてて下さいね横島さん、でわ我、竜神の一族、小竜姫の竜気を授けます。そなたの主を守り、主の力となりて、その敵を打ち破らん事を・・・!!」
小竜姫が横島のバンダナに竜気を与えた。
「ありがとうございます小竜姫様、さてと心眼聞こえるかー」
横島は小竜姫に礼を言うと心眼に(バンダナ)、話し掛けた。
『久し振りだな主よ』
「オウッ、久し振りだな心眼、で早速で悪いんだが『判っておる』・・・へ?」
久し振りに心眼と話し、用件を言おうとした所で心眼に声を掛けられ横島は変な声を上げた。
『御主の霊力をコントロールすれば良いのであろう』
「何で知ってんだよ」
横島が何も言わずに自分の役目を理解している心眼に聞く。
『我は御主の心眼だぞ、御主の事で知らぬ事はない。 それは兎も角そろそろ霊力を抑えるが良いか?』
「んっ、ああっ、判ったやってくれ」
『うむっ、それでわ・・・どうだ』
心眼の問いに許可を出す横島。 次の瞬間身体が楽になった。
「おおっ、確かに楽になったな」
「しかしあくまでも一時凌ぎに過ぎん急いでエネルギーを抑える方法を探さねばの」
身体が軽くなった事を喜ぶ横島に猿神が釘を刺す。
「解ってる、でっ、俺はどうすれば良い?」
「御主はこのまま此処に残るが良い。 探すのはワシ等がやるからのまずヒャクメ」
「はいなのね〜〜〜」
「御主は神界に戻り過去の記録から横島を救う方法がないか調べるのじゃ」
「判ったのね〜〜〜、直ぐに調べて来るのね〜〜〜」
「お願いねヒャクメ」
「任せるのね〜〜〜っじゃあ言って来るのね〜〜〜っ」ヒュンッ
猿神の言葉に従って神界に戻るヒャクメ。それを見送る小竜姫。
「ワルキューレとジークは魔界で方法を調べて来るのじゃ」
「わかった」 「わかりました」
二人が答え魔界へ戻って行く。
「小竜姫とパピリオは横島の傍に着いててやるが良い何が有るか解らんからな」
「判りました老師」
「判ったでちゅ」
横島の為に動く事が出来ない事を不満に思っていた二人は猿神の話を聞き、納得して返事を返す小竜姫とパピリオ。
「ワシも神界に行き出来る限りの事をするとしよう」
「すまない猿神、いやっ、斉天大聖老師」
猿神の言葉を聴き横島は頭を下げて謝り、感謝の気持ちを込めて老師の名を呼ぶ。
「よいよいっ、でわ行って来る」
「お願いしますね老師」
「頑張るでちゅよサル」
二人の激励を背に老師は神界に向った。

〜〜神界に向う猿神は考え事をしていた〜〜
(唯神界に報告しただけでは横島を救う事は出来まい。 となるとやはりあのお二人に協力して貰う他有るまい。 問題はあのお二人が横島を助けてくれるかと言う事じゃがこればかりは判らんの、しかしあのお二人は横島に対し、決して悪い印象を持っては居ないからの、まっ、何とかするしか有るまい)

第六話 終


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