椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

ゴージャスな憂鬱


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 6/18

ここは近所でも超高級物件として名高く、有名人なども住居しているということでマスコミにも取り上げられたこともある超大型マンション。
その一室の、巨大なキングサイズベットの上で優雅な長髪を広げながらベッドの右端で毛布に包まる人物がいた。

ごろごろごろ(←左へ移動中。

その整った顔立ちから女性と分かるその人物は、先ほどからベッドの右端と左端を転がりで往復してばかりいるようだった。
そしてぼぅっとした顔が突然不機嫌な顔になったり、にへらっとふやけた笑みを浮かべたりと、とにかく顔の筋肉が忙しい。

そしてどの顔も真っ赤であった。

――――なんだろう、このキモチ。

彼女、美神令子はまたころりと転がって、ポーっとした顔で天井を見つめる。

心の中がもやもやする。熱い。
そしてあの時以来何をやっても、あいつの顔がはっきりと脳裏に現れてしまう。
――――きっと精神汚染だ。冗談じゃないわよ!
とりあえず全て悪いのはアイツだ、ということにして枕に顔をうずめる。

ふと、またアレの発作が現れる。

   『コイツは俺の女だ!』

・・・ボッ!
彼女ただでさえ真っ赤になっていた顔がさらに赤みを帯びる。
「うっ・・・うう・・・うきぃ〜!」
どうしようもない体の火照りに、思わずうめき声と共にバシバシと枕を叩く。
しばらくして何とか『アイツ』のビジョンを振り払い、彼女は正気に戻り、乱れまくった寝具に始めた気づいた。

「・・・・無駄に動いたわね。汗かいちゃった」

その汗は動いたためだけではないのではあるが・・・。
「シャワーでも浴びるか」







筆者力不足により一部カット!!







「あ〜〜・・・さっぱり・・・しないな、あんまり」
贅の限りを尽くした超ゴージャスでウルトラゴールデンでスーパーロイヤルな脱衣場で何となくぼやく。
鏡の中にはしっとりとした髪の、ふわりとバスローブを羽織った自分。

う〜〜ん、まだまだいけてるわね。

悪友や、母親から『そろそろ曲がりカドって奴じゃないの?』などと言われて少し心配にもなったが、まだまだいけそうな体にほっと一息を着く。

やっぱ老けちゃったらアイツも・・・・

「ってきゃぁああ!!何でアイツ出る!?」
一気に体中を高潮させ、ベッドに向かって走る。
そして枕にあらん限りの力で強パンチの連打。

ボボボボボボボボボボボボボス!!!

やがて持久力の限界が来て、美神は哀れなボロボロの枕に倒れこむ。
「・・・・はぁ、はぁ、はぁ」
上がった息を整えている間に冷静な思考が繰り広げられてきた。

もしかして・・・・ってそんなはずは無い。よく考えろ自分がアイツなんかに・・・

うんうん。どう考えてもありえないはず・・・

まて、そういえば・・・小竜姫様のキスの時は?小鳩とかいう娘の時は?グーラーの時は?ルシオラがいた時も・・・

そしてこのもやもやしたキモチ・・・・・



・・・・・・っておいおい









これってまさか・・・こっ、・・・こ・・








「うきゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」


こーなりゃもう脳みそ大パニック。体中はマグマのよう。思考回路はスパーク。頭真っ白。
体中がお祭りフィーバー。

そこいら中にアイツの幻覚まで見えてきた。
ケタケタと神経を逆なでするような笑いを浮かべるアイツが360度全方向に見える。

「ふ、ふふ、うふふふ・・・」
完全に思考回路がイっちゃっている彼女はベッドの脇の護身用神通昆をむんずと掴んだ。
「砕けろー!」
そして(ウケケケケッ、と笑うアイツに見えている)キャビネットに全力で振り下ろす。
哀れキャビネットは粉々に粉砕された。
「くらえー!」
ベッドサイドの(美神さーん!と飛び掛るあいつに見えてる)ライトスタンドが吹き飛ぶ。
「たぁあー!」
ばきっ!どかっ!ぐしゃっ!めりめり!ドガン!

「きゃはははは!!」

・・・・どうやら完全に壊れたらしい。

「くたばれぇ!横島ぁああ!!」


約二十分後、破壊の限りを尽くした彼女は殺風景になった部屋の真ん中で荒い息をしていた。




その時・・・
ピンポーン
ドアチャイムが鳴る。
美神はふらふらと玄関へと向かった。

がちゃり、ドアが開く。

「あっ美神さん。すごい音しましたけど大丈夫っすかー?」





一瞬の間



「まだ居たか――――――ッ!!!」
「えっ・・・ちょっ、まっ・・・・






ギィャァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!」

                  ・
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                  ・



                  ・



「・・・で、こうなちゃったと」
「・・・ウン」

とある病院の一室。窓の外からはすがすがしい風がカーテンを泳がせる。四方を清潔で真っ白な壁に囲まれたその部屋のベッドの上には包帯の塊、もとい半死半生の横島が転がっていた。
ぶすぶすと刺された点滴やチューブが痛々しい。

その脇には渋い顔をする美神美智恵と拗ねたような顔でそっぽを向く美神令子が丸椅子に座っていた。ドアの外には事務所のメンバーに加え、西条が中の禍々しい雰囲気に追い出されている。(そのうちシロとおキヌはドアにはりついていた。しかしどうしてか中の会話は聞こえない)
「でも悪いのは・・「言い訳は聞きません!!」
美知恵の剣幕に思わず引っ込む令子。

そう、あの時令子は、なかなか事務所にやって来ない美神を心配してやって来た横島の頭に神通昆を振り下ろしたのである。何の手加減もなしに。

神族魔族と渡り合い、中級魔族を一撃で葬るほどの実力を持つGSのテンション全開の一撃である。いかに横島でも、いつものようにすぐ復活とは行くはずも無く、仕事はキャンセル、横島は緊急入院。

よってこのありさまである。

「全くあなたって子はいつもいつも、どうしてこう自分を律せられないの。少しは自重しなさい自重!しかも毎回毎回横島クンに迷惑かけて・・・彼は今オカGに文・・げふんげふん。・・っとにかく、そんなんじゃ何時かあなたにかまってくれる人なんていなくなっちゃうわよ!」
「でも!」
「でももクーデターもありません!」
完全に言われ放題の令子。
「大体あんたはねぇ、くどくどくどくど・・・・(以下永遠と続く)」
「ひーっ・・・」
約一時間後。やっと美知恵の気もおさまってきた。
「・・・なのよっ!分かった!」
やっとこさ長いお説教が終わるころには美智恵は疲労困憊、令子にいたってはちょっと涙目だった。
しかし令子はまだ反撃をあきらめていなかった。
「悪いのはこいつだもん」
「まだ言いますか!」
すかさず再沸騰する美知恵の怒り。しかし令子も今回ばかりは譲れなかった。
「だって、だってコイツ・・・あんなよけいなことしやがって!おかげでこっちは・・なんかこう・・いつもいつも思い出しちゃうし、何か変な感じだし・・とにかくコイツが悪いの!」
彼女は顔を紅くして肩で息をしながらそう叫んだ。そして来るであろう母親の反撃に身構え、目を閉じる。が、美智恵は何も言い返してこなかった。
恐る恐る目を開けるとそこには半ばあきれ返り、目を点にする母親の顔があった。
「・・・っひょっとしてあなた、気づいてない?」
「なにによ!」
美知恵の問いにたたきつけるように答える令子。それを見た美智恵は深い溜め息をついた。
「はぁ・・・あなたってホントまだまだ子供ねぇ・・・もうっ可愛いんだから!」
そしてそう言うといきなり愛娘をぎゅ〜っと抱きしめる。
「きゃ・・・いきなりなにするのよ!」
先ほどとのギャップに思わず目を丸くする令子だったが、まんざらでもない様子だ。
しばらくお互いに(令子にとっては意味不明な)沈黙が続く。
「・・・ごめんね、私があなたの一番大事な時を壊しちゃって」
今度は唐突に真剣な声をする美知恵に令子は不安を覚える。
「ママ?」
しかしそれは優しい声に打ち消される。
「『私の死』がね、あなたから人生で一番輝かしくて、一番楽しくて甘酸っぱい時期を奪っちゃったの」
「何それ?」
「ん〜・・ちょうど私があなたのお父さんとであった時のころ」
「ふ〜ん。それで?まー確かにあのころは荒れちゃったけど・・・それとこれとに何の関係が?」
くすくすと笑う美智恵。
「だ・か・ら。ピュアラブのできる時期よ」
「は?」
「つまりね、あなたは今やっとそれを取り戻してるのよ」

―――今あなたは彼に恋してるの。そりゃもう少女みたいにね。

唐突に言われた言葉。それは無防備だった令子の脳みそを直撃し、つい先ほど考えてしまった『思い出したくも無い愚かなる考え』を掘り起こし、思考回路をオーバーヒートさせる。

このあたしが?こいつに?いや、思い当たるふしもあるけど。だからってあたし2○才よ?いまさら小娘みたいに・・・。アレ、千年前は?そーいや未来から横島が旦那のあたしの手紙があったような・・・。えっウソ、なに?まじ!?

「とりあえずは、謝ることから始めてみたら?」
美智恵はそう言ってドアを開け、出て行こうとした。

きぃ・・がん!
「「いたっ」」
開いたドアがそばで耳をそばだてていた二人を直撃する。
「なにやってんのよ・・・」

かちゃりとドアがしまった。

残された彼女は全く身動きすら出来ないぐらいに緊張していた。

私・・・いや、まだ解らない。でもまあ謝るくらいなら・・・。

やがて大きく深呼吸をすると
「・・・あの・・・さ、なんと言うか、その・・・」
そこでまた口が途切れる。

「ごめ・・・「ミカミーーー!!」パピリオ?!」

突如壁が粉砕され、小柄な少女が現れる。
「よくも私のポチを!ちょっと痛い目に会いなさい!!」
びしっと指を突きつけるパピリオをじっと見つめる美神。
やがて小さな笑みを浮かべた。
「・・・・何いってんのよ。コイツは私の下僕なのよ!どうしようが私の勝手よ!!」
「何ぃ―!これでもくらいなさい!」
パピリオの直線的な攻撃をさばきながら、また笑み浮かべている彼女。

ま、もうちょっとぐらいこんなもんでいいかな。

「何笑ってるのよ!?」
いつもどおりの笑みだった。


遠くで聞こえる爆音で美智恵は娘の失敗を知った。
うーん・・・先は長いわね。ま、今はまだこれでいいか。

「気の強いところは私似だけど、ああゆうシャイなところはお父さんそっくりね・・・」
くすくすと笑いながら一人病院から帰る彼女の足取りは軽かった。


おなじくその爆音で何かを悟った者がいた。
「・・・私の病院」
どこかでここの院長が泣いていた。

本気で、泣いていた。


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