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力宿す者

第五話 意地と立場


投稿者名:翔
投稿日時:04/ 6/17

「さてと、令子の様子でも見に行きましょうか」
そう言って美知恵は美神除霊事務所に入って行った。

第五話 意地と立場

「令子入るわよ」 ガチャッ
一声掛けて中に入る美知恵、中には不機嫌な顔をした美神と、美知恵が来た事でホッとした顔をするおキヌちゃんが居た。
「何よママ、何か様?」
「随分な言い草ね、せっかく様子を見に来てあげたのに」
「様子を見に来てあげた?、良くそんな事言えるわね、人を陥れといて」
美知恵の言葉に怒りを顕わにして言う美神。
「そうね、確かに令子、貴女を陥れたのは私よ」
「やっぱりそうだったのね!、何でこんな事するのよ、自分の娘を陥れるなんてそれでも母親なの?」
「母親だからこそしたのよ、これ以上娘を誤った道に進ませない為にね」
美知恵の答えに激昂する美神、しかし美知恵はあくまでも冷静に言い返す。
「それに言った筈よ、『私にも考えがある』とね」
「くっ、・・・だっ、だからってここまですること無いじゃない、幾らなんでも酷過ぎるわよ」
「幾ら口で言っても判らないからこそ、この方法を執ったのよ」
「でっ、でもっ、だからって・・・・・・」
美知恵の答えに涙ぐみながらも必死に反論する美神。
「それにどの道、私が令子、貴女を陥れなくても同じ目に遭っていたわよ」
「?!どうゆう事よ?」
美知恵の言っている意味が解らず聞き返す美神。
「簡単な事よ、GS協会、国税局査察部、この二つは随分前から貴女に対し目を付けていたのよ」
「なっ、なによそれ?、国税局はまだしも、何でGS協会から睨まれなくちゃいけないのよ」
「令子、それ本気で言ってるの?、GS協会には貴女の仕事に対する少なくない苦情が来ているのよ。 唯でさえGSの仕事は高額の報酬を請求するのに、貴女は更に高額の料金を要求するし、仕事に失敗したにも関らず成功したように見せかけて報酬をもらったり、依頼人の弱みを握って高額の報酬を請求したりしてるでしょ。 だからよ」
「うっ」
美知恵の話に対し何も言えず、言葉に詰まる実神。
「そして今回の横島君の件をGS協会が知り、今迄の事を含めて貴女を処罰する事にしたのよ」
「・・・・・・」
「令子、貴女は絶対に認めようとしないでしょうけど、GS協会での横島君の評価は凄く高いのよ。 当然よね、アシュタロスの乱の最大の功労者で、人類唯一の『文珠使い』でも有り、実力、霊力共に既に貴女を超えているとさえ言われて居るのよ。 評価されない方がおかしいわよ」
「・・・・・・」
美知恵の話に何も言えない美神。
「その横島君に対して執った貴女の行動や行為は正しかったと言えるの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「だからこそGS協会は貴女に対して処罰する事にしたのよ。 ついでに今迄GS業界の風評が落ちるのを恐れて抑えていた国税局や労働管理局に、『業界に波風を立てない様にするなら強制捜査を許可する』と言う旨を伝えても居たしね」
「これで解ったでしょ?、確かに私は貴女を陥れたけど、たとえ私が手を出さなくとも、どの道遅かれ早かれ同じ目に遭っていたわよ」
「くっ」
何も言えずうなる美神。
「さっ、解ったなら行くわよ。おキヌちゃんも」
「?行くって何処に?」
「何処に行くんですか?」
二人して聞き返す。
「横島君の所よ、ここに来る前病院から連絡が有ったわ」
「「本当?(ですか?)」」
「ええっ、面会も出来るそうだから一緒に行きましょう」
「はいっ」
「・・・・・・」
嬉しそうに返事をするおキヌ、だが美神は何も答えない。 そんな美神の姿を見て溜息を吐きながら美知恵は話しかける。
「令子」
「何よ」
「そろそろ意地を張るのもやめなさい」
「・・・別に意地を張ってなんか」
「無いって言うの?」
「・・・・・・」
ふうっ、「わかったわ令子、見舞いに来いとはもう言わないわ。 その代わり私達と一緒に来て横島君に渡す物を渡しなさい」
「何よ渡す物って?」
「しらばっくれても駄目よ、既に労働管理局から通達を受けて入る筈よ」
「!!」
「国税局の方は多少時間が掛かるだろうけど、労働管理局の方は事情聴取の際、通達を受けているはずよ」
「・・・・・・」
あくまでも意地を張る美神に対し、美知恵は強引且つ、力尽くで横島に会う様に仕向ける。
「令子」
「わっ、わかったわよ。 行くわよ、行けばいいんでしょ。」
そう言って自分の部屋に着替えに行く美神。
「ほんと意地っ張りなんだから」
「あっ、あの隊長さん、良いんですかあれで?」
美知恵の呟きに、今迄二人のやり取りを傍観してたおキヌが美知恵に聞き返す。
「んっ、良いのよおキヌちゃんあれで、あの娘の意地っ張りは筋金入りだから、ああでも言わないと絶対に横島君に会いに行こうとはしないから」
「ん〜〜〜確かにそうかもしれませんね」
美知恵の答えに、何となくだが納得するおキヌ。
「ほらっ、おキヌちゃんも着替えて来ないと御見舞いに行けないわよ」
「あっ、はいっ」
部屋に着替えに戻るおキヌ。
着替え終わった二人と美知恵は、横島が入院して居る白井総合病院に向った。

〜〜白井総合病院内、横島の病室前〜〜

コンコンッ、「どうぞーっ」ガチャッ
「入るわよ横島君」 「ふんっ、元気そうね」 「失礼します横島さん」
「あっ、隊長に美神さん、おキヌちゃんもどうも」
「元気そうで安心したわ横島君」
「ありがとうございます隊長」
「心配したんですよ横島さん」
「ごめんねオキヌちゃん心配掛けて」
「・・・・・・」
「美神さん?」
美神だけ話し掛けて来ないので、不審に思う横島。
「令子の事なら気にしなくていいわ横島君、色々合って沈んでるだけだから」
「色々っすか?」
「ええっ、色々よ・・・さてと、それじゃあ令子判ってるわね」
横島の不審と疑問に答えて、令子を促す美知恵。
「・・・・・・判ってるわよ」
懐から一枚の小切手を取り出す美神。
「ほらっ、受け取りなさい横島」
「はあっ、・・・てっ、なんすかこれ?」
「見れば判るでしょ小切手よ」
「いやっ、それは判るんですが、なんで俺にこんな大金(二億九千八百万円)が書かれた小切手を渡すんですか?」
「それは・・・・・・」
横島の問いに言い澱む美神。
「それに関しては私が説明してあげるわ。 色々とね」
美知恵は横島が寝ている間、起きた事を事細かに説明した。
「・・・と言う訳で横島君が今もってる小切手は、本来横島君が受け取っている給金だから横島君が自由に使っていいわよ」
「いっ、いいんすか本当に俺が貰って?」
横島は信じられないといった様な顔で美神聞く。
「・・・仕方ないでしょ、そうしないと私は逮捕されて、刑務所行きになるんだから」
搾り出す様な声で答える美神。 その時、
「うおおおおおおおおおっ、やっと、やっとこれで貧乏暮らしとおさらばできる、『ドギャッ』グハァッ」
「喧しい、あんたは嬉しくても、私はちっとも嬉しくないのよ」
喜ぶ横島を神通根でシバキ倒して不満を顕わにする美神。
「まっ、まあまあ美神さん落ち着いて」
尚も横島をシバコウとする美神を必死に抑えるおキヌ。
「俺、怪我人なんすけど」
美神にシバキ倒されて血を流しながら話す横島。
「ふんっ、その位、いつもの事でしょ」
「いつもの事って・・・一応死にかけたんですけど・・・はぁーもういいです」
これ以上何を言っても無駄だと悟り、話をやめる横島。
「それはそうと横島君、貴方に渡す物が在るわ」
そう言って懐から一枚のカードを取り出し、横島に渡す美知恵。
「これって、GS免許証(ライセンス)じゃないですか?!、それもA級?!」
GS免許証を受け取り、驚く横島。
「ちょっ、ちょっと何よそれ?、何で横島にGS免許証が下りるのよ、私は認めた覚えは無いわよ」
横島以上に驚きを顕わにする美神。
「これはGS協会の許可の上で、横島君に渡される物よ」
「だから何で横島に免許証が下りるのか聞いてるのよ」
「GS協会が横島君の実力と、実績を調べたからよ。 この前の貴方のに対する強制捜査際、GS協会は貴方の仕事内容等の書類を調べた結果、横島君が除霊したにも関らず、協会に報告されてない件が多数見付かったそうよ。 覚えがあるでしょ」
「・・・・・・」
無言で汗を流す美神。
「GS協会は貴女が故意に報告をしなかったと見て色々と調べ、そして横島君が単独で行なったと思われる除霊件数と内容を纏め、その結果出た横島君の実績を元に、横島君が持つ事が出来る免許証を決め渡す事にしたのよ」
「無理も無いわ、横島君が単独で行なった除霊は判ってるだけで、C級が五十件以上、B級でも十件以上こなしてるし、その上A級も三件こなしてる。 普通ならとっくの昔に正式な免許証を渡してる筈だもの」
「・・・・・・」
美知恵の話にぐうの根も出ない美神。
「と言う訳だから横島君、今日から貴方は見習いGSでわ無くGS横島よ」
「あっ、ありがとうございます隊長」
「良かったですね横島さん」
おキヌちゃんも祝ってくれた。
「ありがとうおキヌちゃん」
おキヌに礼を言う横島。 対して美神は・・・
「・・・・・・」
凄く不機嫌だった。
「処で横島君、いつごろ退院できるの?」
場の状態を察して、話を変える美知恵。
「特に異常が無ければ数日で退院出来るそうです」
「そうっ、それは何よりね」
「もう無茶はしないで下さいね横島さん」
「ふんっ」
横島の答えに、安堵の顔をする美知恵と、横島を注意するおキヌ、そしてそんな三人を見て益々不機嫌になる美神。 その時、
「令子、貴女は横島君に何か言う事はないの」
諭す様な口調で美神に話し掛ける美知恵。
「別に無いわ・・・悪いけど用が有るからこれで帰るわ」
部屋を出て行く美神。
「まったく、本当に意地っ張りなんだから、御免なさいね横島君、あれでも結構横島君のことを心配してるのよ。口には出さないけどね」
「大丈夫ですよ。気にしてませんから」
笑顔で答える横島。
「ありがとう、じゃあそろそろ私達も帰るわね」
「そうですね、そろそろ帰って夕食の準備をしないと」
そう言って立ち上がる二人。 最後におキヌが、
「じゃあ、横島さんまた明日来ますね」
「ああっ、わかった気をつけてね」
「はい」
部屋を出て行く二人を見送った横島は一人考え事をしていた。

(美神さんも大変だったみたいだな。でも俺に執っては寧ろラッキーだったな。 これで生活に困らないし、仕事も休める、後はゆっくりと自分の問題に取り組める。 取り合えず退院したら、ルシオラに言われた通り妙神山に行く事にしよう。)

第五話 終

設定
GS免許証のランクは基本的に五つある。
階級        霊力(マイト数)
S級 超一流GS    80以上
A級 一流GS     60〜80 
B級 腕の良いGS   40〜60
C級 一般GS     40以下
D級 見習い、助手   関係なし
基本的にはこんな感じだが、実績によって多少変わる。(横島の霊力は100マイトを超えてるが実績がまだ足りない為、A級なのである。)


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