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力宿す者

第四話 自業自得


投稿者名:翔
投稿日時:04/ 6/15

第四話 自業自得

「うっ、・・・こっ、ここはっ、・・・つっ!?」
目を覚まし、身体を起こそうとした横島は、全身に走る激痛の為、起き上がる事が出来なかった。
仕方なく横島は、横になったまま周りを見渡した。
「此処は病院か?、・・・!、そうだっ・・・」
横島は、何故自分が病院に居るのか、不思議に思いながらも、次の瞬間、深層意識の中でルシオラから聞いた話を思い出し、確める様に、自分の身体に意識を集中し始めた。
「・・・感じるっ、確かに俺の体の中に、今まで感じなかった力を、エネルギーを感じる。」
自分の身体の中に、今まで感じ取れなかった力を感じ、横島はあの話が、夢や、幻で無い事を悟った。そのとき・・・
コンコンッ、ガチャッ、「あらっ、目が覚めた様ね、横島君」
ドアがノックされ、一人の女性が部屋に入り、横島に声を掛けて来た。
「隊長!」
入って来たのは、オカルトGメン最高顧問で在り、隊長を務める美神美智恵其の人だった。
「どうして隊長が此処に?」
「簡単よ、横島君を病院に運んだのが、西条君だからよ」
「西条が、俺を?」
「ええっ、正確には、連絡を受けたオカルトGメンが、ビルに入った所、怪我をして倒れている横島君を発見して、直ぐに救急車を呼び、病院に運んだんだけどね。」
「そうだったんですか、でも、一体誰がオカルトGメンを?」
「ビルの近くに住んでいる人が、連絡をくれたのよ。 元々あのビルで起きた悪霊騒ぎは、結構騒がれてたし、其処に来て、ビルで凄い音がして、光が走ったと聞けば、オカルトGメンとしても、調べない訳には行かないからね」
「そうっすね」
話を聞いて納得する横島。
「まっ、其れはともかく、一体何が遭ったのか、説明してくれるわね、横島君」
「あっ、はいっ、わかりました」
横島はビルで起きた事を、美知恵に話した、途中、なぜ『文珠』を使わなかったのか聞かれ、事務所でのやり取りも全て話した。(話させられた?)
「そう、そんな事があったの、」
横島の話を聞いた美知恵は、平静を保ちながらも、心の中で溜息を付き、同時に自分の娘を罵倒していた。
(何を考えているのよあのバカ娘は、経費節約の為に『文珠』を取り上げるなんて・・・)
「話は判ったわ横島君、後の事は私達に任せて、貴方はゆっくり身体を休めなさい、気付いてないかも知れないけど、横島君の怪我はかなりの重傷よ、全身打撲に、数箇所の裂傷、更に限界以上に霊力を使ったせいで、起き上がることも出来ないはずよ」
美知恵から、自分の身体の状態を聞かされ、横島は彼女の言う通り、休む事にした。
「判りました」
そう言って横島はまた眠りに付いた。
「眠った様ね、・・・全く、横島君がこんな事になったのは、間違いなく令子のせいね、今度と言う今度は、流石に見逃す訳には行かないわね」
美知恵はそう言って部屋を出て行った。
部屋を出た所で、此方に向って走ってくる二人の姿が見えた。
自分の娘である美神令子と、彼女の助手である氷室おキヌである。
おそらく、自分の入れて置いた留守番電話を聞き、駆け付けて来たのだろう。
「ママッ、横島のヤツは大丈夫なの?」
「横島さんは無事なんですか?」
「二人とも落ち着いて、大丈夫よ命に別状は無いから」
慌てて聞いてくる二人に、横島は無事である事を教える。
「そっ、そうですか、・・・良かった」
ホッとするおキヌ、しかし美神は・・・
「全くあのバカは、こんな簡単な仕事でミスして、迷惑をこうむるのはこっちだってのに・・・」
事情を知らず、しかもこうなった原因が自分に在る事すら自覚せず、勝手な事を言う美神。
「令子、其の事に関して話があります」
「なっ、何よ急に、」
底冷えする様な声で話す美知恵に、身体を引いて答える美神。
「いいから来なさい、悪いけどおキヌちゃんも来てくれる?、聞きたい事があるから、」
「えっ、でも私は・・・」
美知恵の言葉に、横島が寝ているで在ろう部屋を見て口ごもるおキヌ。
「横島君なら大丈夫よ、其れに今は体力と霊力を回復させる為、深い眠りに付いてるから当分起きないわ」
「そうですか」
「明日になれば、横島君も気が付くだろうから、其のときに、お見舞いに行けばいいわ」
「わかりました」
美知恵の言葉に、がっかりしながら答えるおキヌ。
「どうでもいいけど私に話って何?」
覚えが無いとでも言いたそうに聞いて来る美神。
「此処じゃ何だから、取り敢えず令子、貴方の事務所で話しましょう」
「わかったわ」
美知恵の提案に答え、事務所に戻る三人。

〜〜美神除霊事務所〜〜
「其れで話しって何よ?」
ソファに座り、おキヌちゃんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、聞いて来る美神。
「話しって言うのは、他でもないわ、横島君の事よ」
反対側のソファに座り、美神に話しかける美知恵。
「横島がどうしたって言うのよ、今回の事はアイツがミスしたから、こんな事になったんでしょ自業自得よ。」
「令子、・・・それ本気で言ってるの?」
「何よ、違うって言うの?」
自分の娘の自覚の無さに、呆れ果て頭を痛くする美知恵。
「いいわ令子、この際はっきり言ってあげる、今回横島君が入院したのは、間違いなく、令子、貴女の所為よ」
「なっ、なによそれ、どうして私の所為になるのよ」
激昂する美神、それに対して冷静に、答える美知恵。
「理由は簡単よ、令子、貴女が横島君から『文珠』を全て取り上げたり、依頼の内容や、今現在の状況を、調べて置けば、こんな事には為らなかった筈よ」
「うっ、そっ、それは・・・」
美知恵の話に反論できず、言いよどむ美神。
「でっ、でもっ、依頼はC級レベルの悪霊の除霊だったのよ、アイツの霊波刀なら簡単に・・・」
「横島君が除霊した悪霊はC級どころか、A級以上の悪霊だったそうよ」
「そっ、そんなっ、依頼書では、確かにC級だった筈・・・」
「多分、ここ数日の内に、力をつけたのね、横島君が言ってたわ、霊力を吸い取られた雑霊が、一杯居たってね」
「・・・・・・」
美知恵から、事情と状況を聞くにつれ、何も言えなくなる美神。
「其の上、横島君から、経費節約の為と言って、『文珠』まで取り上げたそうじゃない?、自分の弟子の最低限の安全すら確保出来ないなんて、師匠失格ね」
「それは・・・」
図星である為、何も言えない美神、代わりに美知恵はおキヌに問い掛ける。
「どうなのかしら?おキヌちゃん、横島君の言っていた事は事実?」
「そっ、それはそのっ・・・はい」
言いよどんでいたおキヌも、横島が言っていた事であると聞き、遠慮がちながらも、それを認めた。
「そうっ、ありがとう、おキヌちゃん」
おキヌに、礼を言い、美神に向き直る美知恵。
「でっ、何か言い訳は、あるかしら?」
「くっ、・・・べっ、別にいいじゃない、横島は私の丁稚よ、丁稚をどう扱おうが私の勝手でしょ!」
厭くまでも、自分は悪くないと、反論する美神に、美知恵は再び底冷えのする声で、美神に通告する。
「そう、厭くまでも、自分の非を認めないと言うのなら、私にも考えがあります」
「なっ、何よっ、何をするって言うの?」
母親の含みのある言葉に、不安を感じて、問う美神。
「直ぐにわかるわ、・・・直ぐにね」
そう言って部屋を出て行く美知恵。
「なっ、何よあれ」
「あっ、あの美神さん、今からでも謝った方が善くありませんか?」
不安な気持ちを隠して、虚勢を張る実神に対し、おキヌは提案する。
「どうして?」
「だって、今回の事は、どう考えても美神さんの方が悪いですよ、それに私も、止められなかった責任が有るし、」
「いーのよ、言ったでしょ、アイツは私の丁稚なんだから、其れに死んでないんだから、いーじゃない」
「でっ、でもっ・・・」
なおも、食い下がるおキヌ。
「ああっ、もうやめやめっ、この話はお終い」
力ずくで話を終わらせる美神。
「ほらっ、おキヌちゃんも、明日は学校でしょ、早く寝ないと明日がきついわよ」
「・・・・・・わかりました、お休みなさい美神さん」
此れ以上言っても、無駄だと悟り部屋に戻るおキヌ。
おキヌが、部屋に戻ったのを見て、美神は小声で横島を叱責する。
「全くこんな事になったのも横島の所為よ、あのバカ、退院したら、シバキ倒して今迄以上にこき使ってやるから・・・」
物騒な事を言う美神、だが、この数日後、美神は自分の非を、認めなかった事を激しく後悔するのだった。

〜〜数日後 美神除霊事務所にて〜〜

「美神オーナー、お客様が来てますが?」
「客?、依頼かしら?、いいわ上がって貰って、」
「わかりました」
人口幽霊一号の呼び掛けに答える美神。
コンコンッ、ガチャッ、「失礼します」
ドアをノックして入って来たのは、女性だった、更に、其の後ろから男女合わせて十数人の人が部屋の中に入ってくる。
「ちょっ、ちょっと、何よあんた等?」
突然、大勢の人間が部屋に入って来て、慌てる美神。 そんな美神に対し、先頭の女性が美神に話しかける。
「美神令子さんですね?」
「そうだけど、あんた等誰よ?」
美神が聞くと、女性が一人、前に出て来た。
「私はGS協会管理部所属の和泉涼子と言います、美神令子さん、今日は貴女に対し、GS協会からの処罰を伝えに来ました」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、処罰て何よ?、私は処分される様な事して無いわよ!」
和泉の言葉に、何の事か解らず、怒鳴る美神。
「先日GS協会に報告された件について、貴女の弟子である横島少年に対する、師で有る貴女の対応が問題になったのです。」
其の言葉を聞き、美神の顔が青くなる。
「GS協会は此れまで、貴女の実力と実績を考慮し、多少の事には、目を瞑ってきましたが、今回の件を見逃す事は出来ず、厳重な処罰を下す事にしたのです」
「処罰の内容は、半年間の免許停止処分です」
「そして此れが其の書類です、どうぞ」
そう言って、持っていた書類を渡す和泉。
美神は青くなったまま、何も言わず、唯その書類を見つめる。
そして、和泉と入れ替わる様に、男性が一人前に出て来た。
「初めまして、美神令子さん、私は国税局査察部所属の山岡武と言います」
美神は、その言葉を聴いた瞬間、石化した様に、固まった。
「貴女に脱税の容疑有りと見て、貴女の身辺、及びこの事務所を強制捜査させて頂きます」
「尚、この強制捜査は、国の許可を得た正式な物で有り、拒否は出来ません」
「そして此れが、その旨を伝える書類です」
美神は、ギギギッと音がしそうな感じで、顔を下げ、書類に目を向ける。
そして再び、山岡と入れ替わる様に、別の男性が出て来た。
「初めまして、美神令子さん、私は労働管理局の松田強と言います」
その言葉を聴いた瞬間、固まっていた美神から、ビシィッ、と音がしたような気がした。
「我々が来たのは、貴女が雇用している横島少年の、労働状況と、彼に支払われた給金、及び報酬について、お聞きする為です」
「貴女が国に出した書類では、彼に払った給金は額面上は三億円此れは彼の仕事内容や、GS免許を取得している事から、アルバイトとは言え、決して破格の金額ではありません。しかし我々が調べた所によると、彼は極貧で通っており、彼方此方で裏を取ると、彼の時給はコンビニのアルバイト以下であり、それらを元に計算した結果と、彼の普段の生活水準、栄養状態、資産状態を総合的に判断しても、この二年間に、彼が受け取った給金は二百万を超えないと、我々は判断しました」
「この件に関して詳しい事をお聞きしたいので、ご同行願います。」
「尚、此れも正式な国の許可を得た上での事ですので、拒否は出来ません。」
「もし拒否すれば、公務執行妨害でこの場で逮捕します。」
美神はもはや、何も聞こえて無い様だった。
「それでわ、ご同行願います」
その言葉と共に、体格の良い二人の男が出て来て、美神を連れて行く。
その後ろでは、早速、家宅捜索を、始めていた。

その後、事務所に戻ってきた美神は、人口幽霊一号の報告を聞き、真っ白になった。
なぜなら、美神がしてきた脱税の裏帳簿から、銀行の隠し口座、隠して置いた土地や、株の書類、更に公共施設の下に作った隠れ家と、隠れ家に隠してあった金塊、使った事にして隠して置いたオカルトアイテムなど等、様は今迄して来た全ての脱税行為が明るみにされたのだ。其の上、横島に払った給金に関しても言い逃れできず、罪を免れる為に、追徴金及び罰金の支払いと、オカルトアイテムの譲渡、(オカルトGメンとGS協会に)そして横島に対し、残りの給金、(二億九千八百万円)の支払いを命じられたのだった。(従わない場合、逮捕され、刑務所行きとなる)
その日、美神は血の涙を流した。

そして翌日、美神は刑務所行きになるよりわと考え、仕方なく、命じられた通りするのだった。


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