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力宿す者

第三話 経緯と決心


投稿者名:翔
投稿日時:04/ 6/12

第三話 経緯と決心

何故横島の体内に結晶のエネルギーが入り込んだのか?其の経緯を、詳しく説明するとこうなる。
まず横島は、ルシオラとべスパの戦いに入り、其の身を挺して、ルシオラを護り深い霊的ダメージを負った。
深い霊的ダメージと共に、べスパの妖毒に侵され、欠損、死滅していく横島の霊基構造を、ルシオラは自らの霊基構造で補う事で、横島を死の淵から救った。
しかし、元々、人間と魔族と言う、違う種族である為、両者の霊基構造が、安定し、定着するまでには其れなりの時間が必要だった。
そのため、安定、定着していない両者の霊基構造の間に、ほんの僅かな綻びが存在していた。
そして、そのほんの僅かな綻び、魂の傷口が、結晶エネルギーの入り口となり、その結果、横島の体内へと、結晶エネルギーが流れ込む事に成ったのだ。
しかしまだ終わらない、幾ら入り口が在るとはいえ、結晶のエネルギーが全て横島の体内に入り込むは、通常在り得ない。
では何故、横島の体内に、全てのエネルギーが入ったのか?、その理由が、霊的ダメージである。
横島はべスパに、そしてルシオラは、メドーサとの戦いでダメージを負い、さらにべスパとの戦いで著しく魔力を消耗していた。
そのため、横島の身体の霊基構造は既に深いダメージを負っていたのだ。
横島が其の事に気付かなかったのは、ルシオラの霊基構造を受け入れた為、霊力の出力が上がっていた為である。
そして、そのまま、アシュタロスとの戦いに臨み、限界以上の霊力を揮い結晶の破壊に成功する。
そして、結晶を破壊し、その内に秘められたエネルギーが解放された時、横島の身体に宿るルシオラは、無意識のうちに、魔族としての生存本能を働かせ、開放された結晶のエネルギーを、吸収し、自らが宿る横島の霊基構造を癒し、安定させたのだ。
これが横島の身体に、結晶のエネルギーが宿った経緯である。

「そうだったのか」
話を聞き終えた横島は複雑そうな顔をしていた。
だが、次の瞬間、ルシオラが横島に謝り出した。
「御免なさい、ヨコシマ」
「どうした、急に?」
「だって私のせいでヨコシマは・・・」
申し訳なさそうな顔をするルシオラ。
「謝る事はないさ、俺を救おうとした結果、こうなっただけだろ?なら俺は、ルシオラに感謝こそしても、責めたりはしないよ」
「ヨコシマ・・・ありがとう」
「どういたしまして」
横島の言葉を聞き、ルシオラはキョトンとした顔をした後、「クスッ、」と笑った。
其れを見た横島は、嬉しそうに、
「やっと笑ってくれたな」と言って、
「やっぱりルシオラは笑顔のほうがいいよ」と言った。
「もう・・・バカ」
ルシオラは顔を、赤くして、そっぽを向きそう呟いた。その時・・・
「ルシオラ!!」
横島が叫んだ、何故なら、ルシオラの姿が透けて来たからだ。
「もう・・・時間みたいね」
「そんなっ・・・待ってくれルシオラ、俺はっ・、俺はお前に一言謝りたかったんだ」
何の事か判らず、首を傾げるルシオラ
「俺はっ・・・お前を選べなかった、・・・お前を選ばなかった、・・・ずっと・・・ずっと其れが、心に引っかかってた・・・」
「・・・後悔してるの?」
「・・・判らない、・・・いやっ、判ろうとしてないだけなんだろうな・・・あの時、あの判断が一番正しかったんだと思う・・・でもっ・・・でも俺は・・・たとえ世界と引き換えにしたとしても・・・お前と一緒に居たかった」
横島は顔を俯かせながら呟き、最後の一言だけは、涙に濡れた顔をルシオラに向け、そう語った。
「ヨコシマ」
ルシオラが横島に近づき、そっと横島を抱き締めた。
「ありがとう、ヨコシマ、私には其の言葉だけで、もう十分よ」
ルシオラが言葉を紡ぐ。
「ヨコシマと出会い、たとえ僅かな時間でも、ヨコシマと共に過ごす事ができて、そして、ヨコシマにそこまで想って貰って、本当に幸せだったんだから」
「ルシオラ」
「それとも、ヨコシマは幸せじゃ無かったのかしら?」
「そんな訳無いだろ」
「んっ、よろしい!」
しばしの沈黙、そして、
「ヨコシマ、忘れないでね、私は何時でも、貴方と共にあることを、だからいつまでも悲しんでないで、前を見て、私が愛したヨコシマなら、其れができるはずよ」
「ルシオラ・・・判ったよルシオラ、俺はもう迷わない、此れからは前を見て歩いて行くよ」
「其れでこそ、私のヨコシマよ」
そう言って、ルシオラは最高の笑顔を見せてくれた。
「それじゃあそろそろ行くけど、最後に一言、言って置く事が有るの」
「んっ、なんだ?」
「目が覚めたら、妙神山に行って、小竜姫達の助けを借りてね」
「小竜姫様達の?、なぜっ?」
「其れは・・・行けば判るわ」
「そうか、・・・時間だな、ルシオラ、また逢おうな?」
「ええっ、・・・また逢いましょう、ヨコシマ」
そう言って、ルシオラは漆黒の闇の中に、消えていった。
そして横島は、
「さあ俺も行くか」
と言って、漆黒の闇の中で、上空の唯一点、光り輝く場所を目指し昇って行った。

第三話 終


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