椎名作品二次創作小説投稿広場


初恋…?

そのに。


投稿者名:hazuki
投稿日時:04/ 6/11

「いないでござる」

ポカリを二つ腕の中に入れ、ほてほてっと歩いてベンチへと戻ってきたがいるべき相手がいない。

「せんせー…?」

どこへ行ったんでござろうか?
シロはくんくんと鼻を鳴らし、首を左の方向へと向けてまたほてほてっと歩いていった。


その数分前。
横島が、何の気なしに辺りを見回していると視界の先にある横断歩道にひとり可愛らしい女の子がいた。

ばっさりと肩まででそろえらえた髪に、ほんわかと穏やかな顔。

すとらいくぞーんである。

が、まあ散歩にきている身でナンパするのもなんだしなあとそんな殊勝なことを考えつつ、が見てる分にはいいだろうと思って、みていると

その少女の前に、信号が赤にも関わらずに、トラックがものすごい勢いで、それこそ止まる様子も見せずに迫ってくる。

「なっ」

がたんっとベンチから立ち上がり横島。

今から行っても間に合わない。

女の子は硬直しており、避けられよう筈もない。

咄嗟に、ジーンズのポケットにあった文珠を二個取り出し、『移』『動』と念を込める。

きいんと独特の音をたてて光ると同時に、しゅんっと

ベンチから、横断歩道へと移動する。

「きゃぁ…」

目の前には、恐怖で張り付いた表情の少女。

がっと、腕を掴み力任せに引き寄せる。

「ええっ!!!!?」


次の瞬間、少女は横島の腕のなかに納まり、トラックは運転席から『ばかやろー』などと言いながら走り去っていく。

「バカはどっちなんだよ」

呆れるかのように、ため息をつき腕の中で震えている存在の肩をぽんぽんと叩きながら

「大丈夫?」

と言った。


「は………はい。助けてくれてありがとうございます」

ほおっと顔を赤らめながら少女。

ふと、その声音で自分が助けたのが、女の子だということを知る。

しかも可愛い。

つーか可愛い。

これはもう、助けた事を恩に着せてナンパするしかない。

しない訳は、ないだろう!!!

腕の中の存在の手を取り、きりっと必要以上に自分の中で(あくまでも中で、である)男前な顔を作り

「この後時間あるかいっ?」

と言う。

「え?」

きょとんっと目をみはり、数瞬考えるように黙り込むがやがて、ゆっくりと頷こうとしたのを確認した時

がんっと背中に衝撃を受ける。

まるで大型犬が、ひっついてきたようなこの衝撃─────

「せんせいっ」

いわずもがな愛犬(?)シロである。

「うわっひっつくなっ!!!今ナンパちゅんなんだぞっ」

むうっと、その言葉にシロは頬を膨らませ、後ろから首に腕を絡ませる。

「せ・ん・せ・い・は、拙者の散歩中なのでござるっ!!!」

少女を睨みつけながらシロ。

更にぐうっと絡ませる腕を強めてゆく

そう、言うまでもなくっこれはチョークスリーパーだっ

「な……ちょ…ちょーくちょーくっ……ぐええええええええっ!!!」

首に強烈な圧力を感じ抵抗を試みるが、とき既に遅し横島の意識ブラックアウト。






横島の意識が明けたときもちろん、少女の姿あるわけもなく。





「あああ〜あるかないか、わからない折角の成功のなんぱがあああああ!!!!」
ネオンに照らされた商店街の中、はらはらと自転車の上で涙を流しつつ横島。
血を吐くような叫びである。


「せんせーは、拙者とおさんぽをしていたのだから仕方ないのでござる」

うんうんと何度も頷きながら、上機嫌で自転車を引っ張りながらシロ。

夜の商店街を中学生くらいの少女が、腹部にロープを巻きつけ、ロープその後にはおんぼろ自転車に乗った少年がいるのだ。

はっきし言って異様である。

みんなの注目集めまくりである(笑)。

「せんせーは、拙者とお散歩してたのだから仕方ないでござる」

うんうんと頷きながらシロ。

「ああっ甘く切ない(はずだった)時間よかもーんっ」

だらだらと鼻水まで流しよこしま。

「せんせーは、拙者と甘い時間を過ごすで御座る」

こくこくと納得しながらシロ。

「ああっ折角可愛い子だったのに…かわいかったのに…かわいいのに…かわいかったのに…」

ぐっと拳を作りながら横島。

「ん?」
ふと、その『可愛い』という形容詞に今日来た少女のことが頭に浮かんだ。

大阪弁を話すひどく可愛らしい──────

「せんせい?」

「……………ねえちゃん……………ん?なんだシロ」

ふっと何かに思いを馳せるように、遠くを見ていた横島は、はたと首を傾げシロを見る

「…そういえば今日、事務所にこられた女の人も可愛らしかったでござるな」

その言葉にぴくっと、横島の肩が揺れる。

「………そ、そうか?」

「せんせいは………女の人と知り合いでござるよな?いつも可愛らしい女子をみたら一もニもなく、問答無用でなんぱされるでござるのに…なんであの人の場合はされなかったでござるか?」

「仕方ねーだろ。苦手なんだから」

憮然とした表情で横島。


「せんせいでも苦手な女の人がおられるでござるなー♪」

たったたと軽やかに自転車を引きながらシロ。

「ま、一応初恋の、相手ですっぱり振られたからなあ」


はあっとため息をついて横島。


「えっ!!!??」

その一言に、自転車を引く足こそは緩めないが、ぐりっと身体を後ろに向けシロ。

「なんだよ、そのえっていうのは」


かなり気分を害したらしく、顔を顰め横島が言う。

と、シロはぐるぐると、なにかをごまかすように腕を、振り回しながら殊更明るい声をつくって、言う。

「…………いやそのっ、せんせーでも初恋をいうものをするのかっとおもってでござるっ」

わたわたと、どこか慌てたような感を持たせ、シロ。

本人(犬?)にしてみれば悪気もないのであろうが、はっきしいってこの言葉は、痛い。

と、いうことは、横島はシロにそんな風に、見られてなかったということなのだから(笑)。

「………ほう」

そーゆうことをおのれは言うのか?
と横島。
怖い、はっきりいって怖い。

まあ『せんせーでも』と言われ怒らない人間は滅多にいないであろうし、もちろん横島も大多数のほうの人間なのだから。

はっと口を両手で抑えシロ。

言わなくてもいいことを言ってしまった!?といわんばかりの焦った表情でわたわたわたっと更に言い募ろうと、足を止め弁解に努めようとしたのだが───

シロが足を止めるということは、自転車を引いている動力源が止まるということである。

そしてここに、有名な格言

『自転車は急には止まれない』

という素敵なものがある(?)







どんがらがしゃん☆。








などという、騒がしい音をたてて横島の、散歩専用(ブレーキなっしんぐ)自転車。『まいらーぬいちごう』は、シロと共に、(推定)35キロで、電柱へとぶつかった。


「…………………せ、せんせい??」


蒼白な、それこそ紙のように真っ白な顔で、隣に倒れこんでいるシロがいう。

だらだらとその顔には、冷や汗をたきのように流しながら、言う。

喉にひっからまったような、声の掠れ具合からも、シロの動揺っぷりは見て取れるものであろう。

本当は、この場所から、全速力で逃げ出して、ふとんでも被りたい。

そしてこれはっ夢でござるなどと言いつつ夢の中へと逃げ込みたい。

が、そんな想いとは、裏腹にシロの足は地面に接着剤で止められたように動かない。



やがてそうこうしている間に、横島はのそりと地面から上半身を頭を抑えながら起こす。


痛いとも言わないあたりがまた恐ろしい。

びくびくと、身を竦ませながら声をかけるシロ。



「……………………シロ。」




低い、そりゃもう地面を這うような声である。





「はいでござるっっ」





ぴしっと思わず直立不動でシロ。

これから言われる事を、なんとなくわかっていながらいたりするところがもう哀しい。

その言葉にどれだけ威力がありそして、そのことによってどれだけ傷つくかわかっていたりするが、それでも一縷の望みとでも言うかのように、シロは横島の言葉をまつ。

が、現実はそんなに甘くない。

横島は膨れ上がった後頭部を抑えながら、







「おめーはっ1週間サンポぬきじゃあああっ!!!!!!!」







と、予想どおりのお言葉をのたまわった。














「ああ、だからシロちゃん元気ないんですねぇ」

そしてサンポ後、事務所にてのおきぬの言葉である。

ちなみに、もう夏子は帰ったということである。

なんとなく、いないことに安心したような、がっかりしたような奇妙な感情を覚えていると、おきぬは仕方ないなあという目でシロの駆け込んでいった屋根裏部屋をみている。

美神は書類と睨めっこをしており、会話に加わる気自体なさそうだ。


「でもなぁ、このままじゃ俺の身体もたんし………」

げんなりと、いたるところにある傷に眉をしかめながらも、横島。


ちなみに唯今、シロは布団にもぐり込みすすりないている事間違いなしである。



「シロちゃんにも悪気はないんですよ」



おきぬは苦笑しながら、一応フォローをいれつつヒーリングをしている。

まあ、帰ってきてからのシロの様子があまりにもひどかったからだろうけれども。



横島はそのおきぬの言葉にがくうっと肩を落とした。


「悪気がないといってもなあ………」

ふっと遠くを見つめ横島。

悪気がないからと言って、首を羽交い絞めされた挙句に落とされたり、自転車で電柱につっこんだり、全速力ではしっていかれてもいいのだろうか?

いや、まあ既にそれらは、日常茶飯事と化してはいるのだが。


だが、百歩譲ってそれは許そう。


が、しかしである。


滅多にそりゃもう滅多なことでは、成功しそーにないナンパを邪魔されたことだけは、許せない。

人間として、否、やろーとして許せないのだ(そんなことはありません)



(しかもあのアホ犬人のこと、初恋もまだだと思ってやがったし………)




なんだか、シロにすらそう思われているということは、他の人間にはどう思われているのだろうか?とそんなことを考えたとき、




「でも自転車ぶつけたり、首をしめられたり、全速力で走るなんて何時もの事じゃないですか。それで1週間もサンポ禁止なんてシロちゃん可哀想ですよ。」



額の傷を治しながら、おきぬが遠慮がちに口にする。

駄目でしょうか?といわんばかりのその声に、横島はばつの悪そうな表情でおきぬを見て、言う。


「いやけど…んなら、自分でいけばいいんじゃないんかなあ? いや、だって俺がサンポについていかねーってだけだし」




さすさすと、良くなっていく手足をさすりながら言うその言葉には、おきぬに対する弁解以上のものは見えない。


いや、それはそうなのだが。


おきぬは、なんだか言いようのない脱力感を感じ、がくうっと肩をおとす。



「横島さんって………」



「んあ?」



「いえ………いいんです、なんでもないです気にしないで下さい」


おきぬが、その顔に苦笑をはりつけて答えたとき、


「馬鹿ね、その朴念仁に気付けってほうが無理よ」


と、いう美神のからかうような声が飛んできた。


どうやら一段落ついたらしく、人差し指でぱしんっと書類を弾きながらのお言葉である。





横島と『一緒に』サンポにいきたいシロの想い、その根底にある淡い感情。

それにおきぬと、美神はとっくの昔に気付いていた。

気付いてないのは、この鈍感男くらいだろうか?



くすくすと、まるで共犯者のような顔で笑う二人を横島な、なんとなく仲間はずれのよーな気分で眺めながらも、ふと気付いたことに口を開いた。



「そおいや、なんで夏子はココにきたんですか?」



と。





「………なつこ?」


気のせいだろうか?

この名前を出した瞬間室内温度が、ぐんっと下がったきがする。


「………ああ今日の依頼人ね」


心なしか美神の声もいつもより、イチオクターブ低く感じる。




「綺麗な人ですよね」



ぼそっと霊気でもはらんでそうな声でおきぬ。


「そおね…綺麗な子だったわよね」


美神ときたら絶対零度かと疑いたくなる冷たさである。



「へ…………?」



気のせいだろうか?

なんだかこの二人、夏子の名前が出た瞬間機嫌がわるくなったように、横島の目に写ったのである。


何故、夏子の名前でこの二人が機嫌が悪くなるのか横島にはわからない。


と、いうか夏子の出現で機嫌が悪くなるのは自分だとすら、思える。




そりゃもう、忘れ様の無いほどの個性とアクの強さをもった女性で、あんなのが初恋だなんて、もう目を覆いたくなる。

昔からそう、もう五年前から苦手で苦手で………。









そんで、イイオンナだったんだよなあ…昔から。





ふと横島は表情を緩め昔、そう五年前、自分が初めて夏子を意識した時のことを思い出していた。


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