椎名作品二次創作小説投稿広場


tragic selection

出会いのあとで


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/ 6/ 8

 コンコン

 ドアを叩く音がする。一体だれだろう? 今日は別に誰か来るなんて話はなかったはずだが。

 そう思いながら俺は来訪者に声をかけた。

「は〜い、今開けま〜す」

 ガチャッ

「お久しぶりです、横島さん」

「おキヌちゃんじゃないか! 久しぶり!」

 そこにいたのは仕事を休むと連絡して以来まったく会っていなかったおキヌちゃんだった。

「どうしたの? 今日は」

 言ってから気づいたのだがおキヌちゃんは手に買い物袋をさげている。

「横島さん、もうご飯たべちゃいましたか?」

「いや、まだ。つってもどうせカップラーメンなんだけどね」

 俺がそう言うとおキヌちゃんはくすりと笑った。

「もう、やっぱり! そんなことだろうと思ってご飯つくりにきたんですよ」

「え、マジで!?」

 相変わらずおキヌちゃんは優しいなあ・・・・・・

「あ、ごめん。上がってよ。ちょっと散らかってるけどさ」

 玄関で立ち話をしてしまっていた俺は慌てておキヌちゃんを中へ招きいれた。










「あ、ごめん。上がってよ。ちょっと散らかってるけどさ」

 横島さんは何の連絡もせずに突然訪れた私をこころよく迎えてくれました。

「おじゃまします」

 私は横島さんの部屋へと足を踏み入れました。

 そして、息を呑みました。

 これで・・・ちょっと?

 横島さんの部屋は人が住めるとは思えないほど散らかっていました。

 ずっと敷きっぱなしの布団。そこらじゅうに転がるカップラーメンのから。

 ジュースでもこぼしたのか大きな染みをつくってしまっている畳。

 なにに使用したのかところどころに転がっている丸まったティッシュ。

 キッチンにはいつ使ったのかもわからない薄汚れた皿やコップ。よく見るとカビが生えているのもあります。



 ・・・・・・これは掃除もしなきゃいけないな。

 とりあえずキッチンは片付けなきゃ。このままじゃ料理ができません。

「横島さん、ちょっと片付けてからつくるんで少し時間がかかっちゃいそうです。ごめんなさい」

「いや、そんな・・・汚してた俺が悪いんだし。ゆっくりやってくれていいよ。こっちこそごめんね、なんか」

 私に謝られた横島さんはなんだかあたふたしてました。

 それがなんだか可愛くて・・・・・・

「よし、やるぞ!」

 私はなんだかとってもやる気になっていました。












 おキヌちゃんはキッチンの掃除を終えると持参してきたエプロンを身につけ料理に取り掛かった。

 ふんふんと鼻歌を歌いながら料理をつくるその姿はとても愛らしくて・・・・・

(なんか新婚夫婦みたいやな〜!!)

 俺を妄想の旅に旅立たせるには十分だった。



「ただいま〜」

 俺がドアを開けるとキヌが奥からトタトタとかけよってくる。

「おかえりなさい。お仕事どうでしたか?」

「いや、けっこうてこずっちゃって。お腹ぺこぺこだよ」

「ご飯できてますよ」

「じゃあすぐに食べたいな」

「うふふ・・・じゃあ食べましょうか」

 俺たちは和室に移動するとそこにすでに準備されていた食卓へとつく。

 俺はあっというまに平らげてしまった。

「ふう〜食った食った」

「お粗末さまでした」

 キヌが微笑みかけてくる。

「なあ、キヌ・・・」

「なんですか? あなた」

「人間には三大欲求とゆうものがあってな。それは食欲、睡眠欲、性欲なんだ」

「はあ・・・・・・」

「今俺は食欲が満たされた。実は帰ってくる時に電車で一眠りしたから睡眠欲も満たされてるんだ。そうすると人間というものは残りの欲を満たそうとするもので・・・」

「うふふ・・・難しいこと言っちゃって。要は・・・・・・」

「そう、要は・・・・・・・・・」





「ごっちゃんです!!!!!」

「いや〜忠夫さんせめてベッドで〜〜〜〜〜!!!」







「横島さん、ご飯できましたよ?」

「はっ!!!」

 ふぅ・・・今回は声には出ていなかったようだ・・・・・・。

 俺も成長してるってことよ。






「うまい!!」

 久しぶりにきちんとしたメシを食ってる感じだ。いつも朝は賞味期限のきれた食パン一枚だし、夜はカップラーメン三昧だった。たまに玉子を入れたりして豪華版などにしていたんだが・・・・・・ピートからもらう(強奪する)昼の弁当がなけりゃホントに死んでるかもしれん。

 そんなわけで久しぶりに自宅で食べるまともな食事に俺は感動していた。

「うまい! ホントうまいよおキヌちゃん!!」

「うふふ、ありがとうございます。慌てて食べると喉につまりますよ?」

「ふぁいひょーふふぁいひょーふ」

「口にものを入れてしゃべっちゃだめです」

 俺は獣のような勢いで飯を平らげた。食いきるのに2分もかからなかったのではないか。

「いや、マジでおいしかったよおキヌちゃん。ありがとう。ごちそうさま」

「お粗末さま。きちんと噛まないと体に悪いですよ?」

 そう言いながらおキヌちゃんは空になった食器を片付けにかかる。

「ああいいよいいよ! それくらい俺がやるから!」

「いいですよ横島さんは座ってて」

「そんなわけにもいかないよ。洗い物くらい俺がするから!」

「でも・・・あ、そうだ。じゃあその間私お部屋の片付けしてますね」

「え、でも・・・・・・」

「いいですからいいですから」

 結局俺が洗い物をしている間におキヌちゃんが部屋の掃除をすることになった。

 なんか悪いなあ、ホント。







 カチャカチャカチャ・・・・・・

 慣れない作業のため、俺が食器を洗う速度は遅い。俺が半分ほどを洗い終わるころにはおキヌちゃんはあれほどあったごみをまとめ終わっていた。

「ねえ・・・横島さん」

「ん? なに?」

 一息ついたのかおキヌちゃんが話しかけてきた。

「私、今日蛍さんに会いました」

 俺は洗っていた食器を落としそうになってしまった。

「いろんなお話をしました。素敵な人ですね」

「おキヌちゃん、彼女は・・・・・・」

「わかってますよ。ルシオラさんとはなんの関係もない、でしょ? それくらい私にもわかりますよ。あれだけ個性的な蛍さんがルシオラさんなワケないじゃないですか」

 おキヌちゃんは蛍のことを思い出したのか、くすりと笑った。蛍と色々話したみたいだな。

「おキヌちゃん、蛍のことはあまりみんなには・・・」

「わかってます。言いませんよ」

 別に蛍の存在を隠したいわけじゃない。ただルシオラのことを知る人が彼女のことを知ることで無駄な混乱を招くのはさけたかった。俺が蛍を妙神山に連れて行ったように、色々動く人も出てくるだろう。そんなことで蛍に迷惑をかけたくはない。

 おキヌちゃんもそれをわかってくれているようだ。

「それで、蛍となにを話したんだい?」

「え、いや、それは・・・・・・」 

 何気ないことを聞いたつもりなのにおキヌちゃんは真っ赤になってしまった。

 人に言えないような話でもしたのか?

 はっ! まさか女の子同士の禁断の花園へ!?





 ・・・アホらし。おキヌちゃんに限ってンなことあるわけない。大体初対面やっちゅーに。

「まあ、話したくないことなら話さなくていいよ」

 俺は止まっていた手を再び動かし、洗い物を再開した。

 おキヌちゃんも片付けを再開したようだ。











「まあ、話したくないことなら話さなくていいよ」

 そう言って横島さんは洗い物を再開しました。

 話せるワケないじゃないですか! 

 横島さんのことばかり話してたなんて!

 蛍さんが横島さんのことが好きって言ったことなんて!

 そして・・・そして・・・・・・・・

 横島さんをめぐってライバル関係になってるなんて・・・・・・

 私は恥ずかしくてもうほっぺが熱くなってきました。きっと真っ赤になっているに違いありません。

 横島さんの方を見ると、特にこちらを気にすることもなく洗い物に集中しています。横島さんを見るだけでなんだか胸が熱くなってきました。


 言ってしまおうか。


 そんな思いが生まれます。

 よくよく考えれば、時々とはいえ女の子が男の子の家にご飯をつくりに行くなんて、普通の友達じゃありません。ひょっとしたら横島さんも私のことを・・・・・

 す、好き、だったりして・・・・・・・

 この上ないほど顔が熱くなります。心臓は悲鳴を上げるほど速く、強く脈打っています。もし、横島さんが私のこと好きだったりしたら、私の思いに応えてくれたら・・・・・・・・今日は・・・・・・

「横島さん、だめですそんな・・・」

「? おキヌちゃんどうしたの?」

「!!! いえ! なんでもないです!!」

 声に出ちゃってた・・・・・・恥ずかしぃ〜〜〜。

 でも、そうなる可能性は0じゃない。大丈夫、今日はかわいい下着をつけてきた。






 言って、しまおう。


 私はそう決意しました。

 とりあえずこの片付けが終わったら・・・・・・

 私は布団を片付けようと押入れに手を伸ばしました。









 俺は最後の食器を洗いながらふと後ろを振り向いた。

 !!!!!!

 おキヌちゃん、押入れを開けようとしてるのか!?

 しまった! 迂闊だった!! そりゃそうだ、片付けなんだから開けるに決まってるじゃねえか!!

「だめだおキヌちゃん!! そこだけわああぁぁぁぁぁ!!!!」

 しかし、俺の叫びも虚しく・・・・・・・・


 禁断の扉は開けられた。










「だめだおキヌちゃん!! そこだけわああぁぁぁぁぁ!!!!」

 横島さんが何かを叫びましたが、その内容を理解する前に私は押入れを開け放っていました。

 どさどさどさッ!!

 途端にたくさんの本がこぼれ落ちてきました。

 私は畳に散らばった本を拾い上げました。






 どん!!

『街に散らばる巨乳娘大集合!』

 どどん!!!

『巨乳巫女。汚れた巫女服』

 どどどん!!!!

『淫乱巨乳女子高生放課後の課外授業』

 どーーーーーーーーーーーん!!!!!

『巨乳万歳! inUSA』


 ぷるぷるぷる・・・・・・・・・

 私の体は小刻みに震えていました。

 いえ、いいんです。男の子なんだもの。こういう本やビデオに興味があることくらい理解できます。幽霊だった時も何度も見かけました。

 でも・・・でも・・・・・・・・・!

 ほかにもたくさんたくさんでてきた『ソレ』。

 その全てに共通していたコトバ。






『巨乳』






「あのね、おキヌちゃんこれは・・・」
「横島さんのばかあぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 んバチコーーーーーーーーーン!!!!!

「うわぁ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」











 おキヌちゃんは俺に強力なビンタをかますとそのまま凄い勢いで出ていってしまった。

「お、俺のじゃないのに・・・・・・」

 その呟きは中途半端に片付いた部屋に虚しく響くのみだった。




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