椎名作品二次創作小説投稿広場


tragic selection

そして事件は突然に


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/ 6/ 1

「おはようございます横島さん。どうでしたか? デートは」

 デートの次の日、学校に登校した俺はピートに話しかけられた。

「ん〜、まあボチボチってとこか?」

 デート自体は楽しかったのだが、やはり最後に蛍を怒らせてしまったのでこんなもんだろう。

「おはよう!!」

 ちょうどその時、蛍が登校してきた。

「おはよう横島くん! 昨日は楽しかったよ!!」

 そう言って蛍は俺の背中をぽんっと叩いていった。

「うん、どうやら機嫌は完ぺきに直ったみたいだな」

 よかったよかった。昨日電話でとりあえずは仲直りしたとはいえやっぱちょっと不安だったからな。

 気づくとピートがにやにやしながらこちらを見ていた。

「横島さ〜ん、ボチボチだなんてもう。大成功じゃないですか!」

「そんなことねえよ、まったく・・・・・・」

「なんの話?」

 愛子が興味をそそられたのか、話に加わってきた。

「横島さんのデート大成功って話ですよ」

「え、デート!? 誰と!?」

「蛍さんですよ」

「横島くん・・・まさか・・・・・・」

 愛子が凄まじい表情で俺を睨みつける。頭の中ではあの時の映像(俺が蛍を押し倒してしまった時)がフラッシュバックしているのだろう。

「ちょ、ちょい待て愛子! 俺はなんもやましいことはしとらんぞ!?」

「嘘ね・・・・・・横島くんのことだもの・・・・・デートが大成功ってことはあ〜んなことやこ〜んなことまでしたにちがいないわ。横島くん、あなたは学生なのよ? そんな不純異性交遊なんかしてはダメ・・・・・・」

「不、不純異性交遊・・・・・・」

 なんでこいつは最近言うことがこんな過激なんだ!? はっ! いかん、このままではまた机の角でどつかれてしまう!!

「違う違う!! 愛子、ホントに違うんだ!」

 俺は机を振り上げ始めていた愛子に懸命に説明した。

「・・・・・・ほんとに違うのね・・・?」

「ほんと。神に誓う」

 俺は右手を上げて誓いの姿勢をとった。

「なら、いいわ。横島くん、あなたは学生なんだから。くれぐれも軽率な行動はとらないようにね」

 愛子はそれだけ言うと離れていった。

「すいません、横島さん。まさかこんな大事になるとは・・・・・・」

 ピートがすまなそうに頭を下げる。

「ああ、いいよ別に。しかしやっぱり学校妖怪なだけあって校則に反することは許せないんだろうな、アイツ」

「・・・・・・・・・愛子さんも大変だ」

「ん? なんか言ったか?」

「いえ・・・・・・別に・・・・・・」

・・・・・・・・? 変なヤツだ。














ドゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 突然の、轟音。

 それは、昼休みに突然起こった。

「な、なんだぁ!?」

 いつものようにピート、タイガーとだべっていた俺は音のした方角、校庭に目を向けた。

 そして、自分の目を疑った。



「ありゃあ・・・・・・・霊団!?」

 校庭に現れたソレは、いくつもの亡者の念が集まってできたもの、霊団だった。

「なんであんなモンがここに・・・・・・!?」

 厄介だ。とてつもなく厄介だ。以前も霊団とは戦ったことがあるがまったく手も足もでなかった。おキヌちゃんがネクロマンサーとして開花しなければ確実に殺されてしまっていただろう。

 しかし今、おキヌちゃんはいない。



 時間が昼休みというのがまずかった。校庭には何十人か生徒が出てしまっている。怪我人も何人かでてしまっているようだ。このままだと死者まででてしまう。

「ピート! タイガー!」

「はい!!」

「合点承知!!」

 俺たちで、なんとかするしかない。





 ピートのバンパイア・ミストで俺たちは校庭に降り立った。

「ピートとタイガーは急いでみんなを避難させてくれ!!」

「横島さんは!?」

「なんとかこいつをくいとめる!!」

「む、無茶ジャー!」

「大丈夫! 文珠をうまく使うさ! 急げ!!」

 ピートとタイガーは少し迷ったようだったがすぐに行動に移った。

 そうだ、これが最善のはずだ。ピートのバンパイア・ミストなら、タイガーの怪力なら怪我をして動けないものでも連れていける。そして霊団の足止めには文珠を使える俺が最適だ。

 幸い、ずっと仕事をしていなかった分文珠のストックはたっぷりある。

 俺はすぐさま『護』の文珠を4つ造り、霊団を囲むようにして投げ放った。結界が霊団の四方を囲むように展開し、動きを封じ込める。

「要はネクロマンサーの笛みたいに、広域を浄化すればいいんだろ!?」

 俺は再び文珠を4つ出現させるとそのすべてに『浄』の文字を込めた。

「く、らええぇぇぇぇぇぇ!!!」

 4つの『護』文珠により限定された空間に、4つの『浄』文珠すべてを投げつける。すぐに文珠は発動した。



・・・・・・だが。



「なんだと!?」

 霊団は浄化された空間でもなお、その存在を保っていた。

「馬鹿な! おキヌちゃんのネクロマンサーの笛のように悪霊一体一体に作用させることはできなくてもまとめて成仏させれるくらいの威力だったはずだ!!」

 あの時の霊団とは桁違いってことかよ・・・・・・これじゃ、たとえおキヌちゃんがいても・・・

 その時、校舎から出てくる人影が目に入った。

「横島くん!!!」

「なっ!!! 蛍!! なんで・・・・・・出てきちゃだめだ!!」

 俺が叫んだのと同時に『護』の結界が破られた。霊団は無数の目を新たに現れた蛍へと向ける。

『ミ・・・ミツケタ・・・・・・!』

・・・・・・!!! なっ!? こいつら、蛍が狙いだってのか!!?

「蛍! 逃げろーーーーーー!!!!」

 霊団から腕のような物が発生し、蛍に迫る。蛍は、かわせない。

「蛍ゥーーーーーーーーーー!!!!!」





 だが、その腕は蛍に触れる直前で弾け飛んだ。

 俺は、自分の目を疑った。

 何事もなかったように平然と立ち続ける蛍。




 だが、その右腕は俺の『ハンズ・オブ・グローリー』のように、奇妙な形へと変貌していた。

「ほ、蛍・・・・・・お前・・・それ・・・・・・」

 俺は紫色の、長い爪をもつ獣の腕のようにも見えるソレを指差しながら、かろうじて言葉をしぼりだした。

 蛍は微笑みを浮かべ、答えた。

「へへ・・・もう『おっきな秘密』ばれちゃったね。実は、あたしもゴーストスイーパーなんだ」









「何だってえええぇぇぇぇぇーーーーーーー!!????」

 ぶったまげた。マジでぶったまげた。

「まあ、そんなわけだから加勢するよ! 一応、自信あるんだあたし!!」

 確かに先ほどのやり取りから見ても、蛍は相当腕が立つようだ。ここは素直に力を借りたほうがいいだろう。

「あ、ああ・・・・・・・驚いたけど・・・・・・そういうことなら頼むぜ!   蛍!!」

 俺たちは二人で霊団へと踊りかかっていった。








 怪我人の避難をすませたピートとタイガーも加わり、俺たちは霊団と戦いを続けていた。

 厄介なのはやはりその回復能力。『浄』の文珠4つがかりにも耐え切った以上、なにかそれ以上の出力をもった攻撃を加えなければ消滅させることはできない。でも、今の俺たちにそんな手段はない

 ジリ貧だった。



「きゃあっ!!!」

「危ない!! 蛍!!!」

 蛍に迫った霊団の腕を霊波刀で斬り払う。

「あ、ありがとう・・・」

「気にするな、次がくるぞ!!」

 再び蛍に迫り来る腕を斬り払う。

・・・・・・・・・妙だ。

 こいつらはさっきから蛍ばかりを狙っている。

 さっき言っていたことといい・・・・・・蛍になにかあるのか?

「横島くん! タイガーくん! ピートくん!」

 俺の考えは蛍の声で中断される。

「やってみたいことがあるの! 護衛、お願いね!!」

 そう言うと俺たちの返事も聞かず、蛍は目をつむり霊力を集中し始めた。

「おい、蛍―」
「横島さん、どうせこのままではジリ貧です。蛍さんに賭けましょう」

 ピートが蛍の元へ駆け寄ろうとした俺を制する。ピートもタイガーも、蛍がGSだったという事実に驚きはしたものの、すぐに受け入れていた。

「ワッシももうそれしかないと思うんジャガ・・・・」

・・・・・・確かに、このままじゃいずれ体力が尽きて殺されるだけだ。

 蛍に賭けるしかない。

「よし!! ピート! タイガー! 蛍に指一本触れさせるなよ!!」

「はい!」

「がってん!!」

 そして俺たちは執拗に続く蛍への攻撃を三人がかりで捌いていく。

 しばらく、防御に集中する時間が続いた。












「よし!!! みんな、どいて!!」

 蛍の声があがり、俺たちはすぐさま横へ飛んだ。

「破アァァァァァァ!!!!!!」

 蛍が霊波砲を放つ。

 その威力はあまりにも強大で、一瞬のうちに霊団を跡形も残さず消滅させた。

「ふうぅ〜〜〜〜。よかった〜。うまくいった〜〜〜」

 蛍は全霊力を使い果たしたのか、その場に座り込んでしまった。

「凄いじゃないですか!! 蛍さん!!!」

「あんな威力の霊波砲、初めて見ましたケン!!!」

「えへへ、さんきゅー」

 ピートとタイガーは興奮し、しきりに蛍に賛辞の言葉をおくっている。

 だが・・・・・・俺は・・・・・・・・・

「どうしたの? 横島くん」

「・・・・・・あぁ、なんでもない。凄いな、蛍」

「えへへ〜〜〜」

 蛍はさすがに照れたのか、頬をぽりぽりとかいていた。


 そして事件は終わった。













 なぜ、霊団は彼女を狙った?

 あれほどの威力の霊波砲、人間に放てるものなのか?

 そしてなにより・・・・・・・・・










 あの霊波砲から感じたのは確かに・・・・・・・・・・魔力。









 蛍・・・・・・・・・・





 お前は、何者なんだ?




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