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tragic selection

デート


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/ 5/31

 いよいよ蛍とのデートの日がやってきた。俺は時間に遅れないよう早めに家を出たため、十二時半には約束の場所についていた。

 デジャブーランド入り口前。そこにある喫茶店の窓ガラスで俺は自分の服装をチェックする。

 黒いワンポイントTシャツに白のハーフパンツ。上から白と黒のチェックの長袖を羽織り、足元には無難なスニーカー。悪くはない・・・・・・はずだ。

 こういうファッション関係にはうといため、イマイチ自信が持てなかった。まあいつものヤツ(Gジャン、Gパン)に比べればマシだろう。・・・・・・多分。









「横島くーーん!」

 蛍は一時ぴったりにやってきた。

「待った?」

「いや、全然」

 お決まりの会話を交わし、俺たちは入場した。



 しばらく二人で肩を並べて歩く。

 隣りで歩く蛍は赤いTシャツにジーンズと、ラフなものだった。まあ、俺はただのクラスメートだもんな。そんなオシャレしてくる必要もないか。

 しかしそのラフな格好が逆に蛍のスタイルの良さを強調していて、俺としては大満足だ。

「ねえ、何から乗ろっか?」

「VIP券だからな。全部タダで乗れるし・・・・・・蛍の好きなところにいけばいいさ」

「じゃあ・・・・・・やっぱ最初はこれかな」

 蛍はパンフレットを広げ、あるアトラクションを俺に示した。

『新登場!! 気まぐれUFO暴れヌンチャク!』

・・・・・・・・・なんじゃこりゃ?

「これすごいらしいのよ〜、なんせまったくのランダムで動きを変える新システムが搭載されていて何度乗っても飽きないの!! 時には時速100kmを超える速度で横転したり高さ100mからの垂直落下とかもあるんだから!!」

 つまりそれは死ねということじゃないのか? そんなことして中の人間が無事でいられるとは思えんぞ?

「じゃ、早く行きましょ!! 時間は限られてるわ!!!」

「お、お〜〜〜・・・」

 やっぱり蛍は絶叫系が好きだったか・・・・・・

 軽めの昼食にしといて良かったな、ホント。




・・・・・・・・・しかし暴れヌンチャクてどーよ?








ゴオオオオォォォォォ!!!!

 時速100kmでの横回転!!!

「のわあああぁぁぁーーーーーー!!!!!」

「キャーーーーーーーーー♪」

 高さ100mからの垂直落下!!!

「腸が、腸が上がるーーーーーーーーー!!!!!」

「キャーーーーーーーーー♪」


プシューーーー

 終了


・・・・・・何度乗っても飽きないだと・・・・・・?

 こんなモン二回乗ったら内臓の位置むちゃくちゃになってしまうわ!!!!!

「横島くん次あれ乗ろ、あれ!!」

「『絶叫新世紀あの世まで』!? か、勘弁してくれ〜〜〜〜〜!!!」

 こうして俺は三半規管が完全にその機能を停止するまで蛍に付き合わされた。






「もう絶叫系は勘弁してくれ!! いくらなんでももう体がもたん!!!」

「え〜? まだ乗り足りないのに〜〜」

 な、なんて体力なんだこいつは・・・・・・

「じゃあここ行ってみましょ?」

「ここって・・・『マジカル・ミステリー・ツアー』!? いやいやここはやめたほうが・・・・!」

「なんでよ? 言っとくけど券はあたしの物なんだからね! あなたに拒否権はないわ!! さ、出発出発〜〜〜〜♪」





『あっ、お手伝いに来てくださったGS助手のみなさんですね!?』

「うわー、なに? この子ロボット!? よくできてるわね〜〜」

『こんにちは! 美神除霊事務所へようこそ! 私、美神さんの助手で幽霊のおキヌっていいます。よろしくね!』

 ピー! ピー!

 なにやら電子音が鳴り響く。

『美神さんから通信です』

 ロボおキヌちゃんがそう言うと本棚が左右に移動し、スクリーンが出現した。

『おキヌちゃん!! 横島くんはいる!?』

「へっ?」 

 スクリーンに映る美神さんの言葉を聞き、俺の方に向き直る蛍。

 あーあ。

『横島さんはもうすぐ来ます。こちらはお手伝いのみなさんです』

 アトラクションは進んでいく。

『そう、それじゃみんなお願い! 今すぐ私を助けに来て!! 強力な悪霊につかまっちゃったの! はやく逃げないと殺されて霊力を食べられてしまうわ!! お願い―!』

 そこでスクリーンの映像は途絶えた。

「ねえ、横島くん今の・・・・・・」

・・・・・・・・・そろそろだな。


 その時、ドアが開き「俺」が入ってきた。

『こんにちはみなさん。GS見習いの横島―』
「キャーーーー!! なんでなんでーー!? なんで横島くんがこのアトラクションに出てるのーーー!?」

 はぁ・・・だから嫌だったんだ。



 アトラクションは滞りなく進んでいく。蛍はずっとはしゃいでいた。ロボットの俺に質問攻めをしたり俺とロボットを間違えたり・・・・・・ロボットの俺も蛍のプログラムにない行動に、かなり困っていたようだった。






 そして五時を回ったころ、俺たちはデジャヴーランドをあとにし、近くの喫茶店に立ち寄っていた。

「ふ〜ん。横島くんがGSっていうのはクラスのみんなに聞いてたけど、まさか美神令子の助手だったなんてね〜」

「美神さんを知ってるのか?」

「そりゃ知ってるわよ。GS長者番付第一位。世界で有数の大富豪っていっても過言じゃないし・・・・・・前に魔神が世界を征服しようとしていたのを阻止したのも彼女なんでしょ? 知らないはずないじゃない」

 魔神・・・アシュタロスのことだ。そうだ、世間一般には美神さんが他のGSの力を借りて退治したことになっている。俺の名前は一切公になっていない。といっても人類の裏切り者としてなら顔を覚えられているかもしれないが・・・・・・

「でさ、今日横島くんを誘ったのには理由があるのよ」

「理由?」

「うん。クラスで横島くんしか誘える人がいなかったっていうのも本当だけどね、聞きたい事があったの。聞いてもいいかな?」

「あぁ。俺に答えられることなら・・・」



「ルシオラって、どういう意味?」


 な・・・・・・に・・・・・・・?


「どこでそれを!?」

「いや、あたし耳がいいからさ〜。聞こえちゃったんだよね、横島くんがあたしを見て呟いたの。ねぇ、どういう意味なの?」

「あ、いや、それは・・・・・・・言えないんだ」

 俺はルシオラに関してのことを人に話すのが嫌いだった。簡単に話すことじゃないとも思ったし、なにより不幸自慢をしているようで嫌だった。

「え〜? なんで!? あたしにも関係あることなんでしょ!?」

「・・・・・・ごめん。ただこれだけは言っとくよ。蛍にはなんの関係もない」

「なんか納得いかないなぁ・・・・・・・・・ふん! いいもん!! あたしも横島くんに『おっきな秘密』持ってるんだから!」

 秘密・・・・・・・?

「秘密って、どんな?」

「べー! 教えてあげない!! もういいわ、帰りましょ!!」

 蛍は立ち上がり、さっさと会計を済ませる。

「お、おい、ちょっと待てよ!」

 デートはそこで終了となってしまった。











 その夜、俺は蛍に電話していた。

「今日は、ごめん・・・・・なんかむちゃくちゃにしちゃって」

『ううん、こっちこそごめん。むちゃくちゃにしちゃったのはこっちだよ。誰にだって言いたくないこと、あるのにね』

「ああ・・・・・・・話せなくて、ごめん。これだけは、譲れないんだ」

『うん、わかった。無理に聞こうとしてごめんね。今日は楽しかったよ。じゃ、おやすみ』

「俺もすげえ楽しかった! ・・・おやすみ」

 チンッ!



 一応、デートは成功なのかな?

 でも、蛍が言ってたこと・・・・・・・・・・気になる。

 『おっきな秘密』・・・・・・か。

 まさか・・・・・・・・



「いや、そんなまさかな」

 俺は枕もとの目覚ましをセットした。

 とりあえず、明日からまた学校だ。

 俺はゆっくりと目を閉じた。


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