「横島さんって、本当に最低ですね。」
『そ、そう…ハハハ…。』
にっこりと笑顔を浮かべて言い切る魔鈴に、ロキも笑うしかない。
「女の子の気持ちを踏みにじった罪は重いんですよ〜。」
『そうだね、うん。そう。』
含みある魔鈴の台詞に、ロキはとりあえず刺激しないようにうなずく。
彼女は今しがた、ちょっとした『ひと仕事』を終えてきたのだ。
女性を敵にしてはならない。プレイボーイ条件第一項。
ロキはしっかりと心のメモ帳に書き込むのだった。
◆
ここに、一人の爆走する少女がいた。名をパピリオ。
「ポチィ─ッ、どこでちゅかァーッ!!」
横島を見失ってから、パピリオはずっとこんな調子だった。
眷属たちを事務所中に放ち、くまなく捜索させたりしているのだが、いっこうに発見できない。
「あ〜もうっ!! こんど見つけたら、ブン殴ってでも逃がさないでちゅ!!」
物騒なことを口走りながら、彼女は元気いっぱいに駆けていった。
◆
ここに、怒りをまとう女がいた。名をワルキューレ。
「まったく、お前は何をやっている!! おかげで目標を見失ってしまった!」
彼女に一喝されて、後ろにいたジークはびくっと肩を震わす。
タマモに狐火で焼かれた焦げ跡が痛々しい。
「そ、そう言われても。だいたい姉上が…!」
「任務中は姉上と呼ぶなと言っているだろう!!」
これは任務ではないのだが。
ジークは深々とため息をつくと、責めるように半目で軽くにらむ。
「……ワルキューレ大尉が、完全に我を忘れて暴走した挙句、迂闊にも幻術に惑わされたんじゃないですか。」
「うぐ…ッ!」
よどみなく正確に事実をつかれ、さすがのワルキューレも怯む。
だが、このくらいでへこたれるようでは、魔界軍特殊部隊大尉は務まらない。
「と、とにかく!! 我々の現在最優先事項は、一刻も早い目標の発見および確保だ!! いいな!!」
そう言い捨てると、さっさと部屋の出口へ向かう姉を見ながら、ジークはふたたび深いため息をついた。
◆
ここに、野望に燃える中間管理職がいた。名を土偶羅魔具羅。
「フフフ…ついに!! ついにわしの時代が来たァァーッ!!」
背景に雷を背負いながら、遮光器土偶は高らかに笑う。
「ポチを捕まえるなど、このわしにかかれば容易いこと!! 何故なら、わしにはこの頭脳があるからな!!」
かつて、コスモプロセッサの演算装置の役目を果たした土偶羅なら、横島の行動予測をたてるなど簡単だろう。
今まではそのデータ収集に努めていて、そしてついに現在の予測位置を割り出したのだ。
「捕まえたら何を願おう…ッ!? ダビデ像のようなカッコいいボディを手に入れるか、それとも…!!」
こーゆーのを、獲らぬ狸の皮算用という。気が早いことだ。
というか、そんなことを夢見てたのか…。
「さあ、いざ行かん!! 我が成功への扉を開いて─!!」
彼は溢れんばかりの期待を胸に、目の前にそびえる扉を開いた。
◆
ここに、三人(+α)の狩人が顔を合わせた。
『あ。』
一瞬、全員の声がハモって、動きを止める。
だが、うち二人はすぐに我に変えると、いま相手に聞くべきことを聞いた。
『横島はどこにいる(でちゅか)!!』
………。
「な〜んだ、そっちも見つけてないでちゅか。」
「お前こそ、見つけてなかったのか。」
パピリオとワルキューレは、お互いにお目当てを手に入れてないとわかり、警戒をとく。
もし、どちらかが横島を捕まえていたら………。
ジークはふと浮かんだ考えに寒気を覚え、頭を振ってそのイメージを払う。
「あ〜、ビックリした…! いきなり他の参加者と鉢合わせするとは…。」
「あ、土具羅様。そうだ! 土偶羅さまは、横島を見かけまちぇんでちたか?」
「いや、わしはこれから…。」
言いかけて、土偶羅ははっと思い至る。
ここで「これから捕まえにいくところ」などと言う訳にはいかない。
言えば、そこに連れて行かされ、そのうえ自分の野望は遠のいてしまう。
「こ…これから探しに行こうかなぁ〜と…。」
「そうか…。まったく、アイツは今どこにいるんだ!?」
土偶羅の言葉に、ワルキューレは忌々しげに吐き捨てる。
ご、誤魔化せた…。
土偶羅は気付かれぬようほっと安堵する。
だが、このことが彼にさらなる悲劇を与えることになった。
「…そう言えば、土偶羅さまの演算能力でわかりまちぇんか?」
ギクゥッ!!
パピリオの一言に、土偶羅は滝のような汗を流す。
「そうか…! おい、土偶羅…。」
「い、嫌じゃ!! 何でわしがお前らのために計算せんとならんのだ!?」
ワルキューレの手から逃れるように、飛び離れる土偶羅。
その態度に、二人の目がすぅっと細くなる。
「ほう…拒むか。だが、そんなことはどうでもいいぞ?」
「別に土偶羅さまの意思は関係ないでちゅ。ちょっと回線いじって、その情報だけ取り出せればいいでちゅから…。」
「な…っ!? こ、この人でなしッ! 悪魔ァーッ!!」
二人の冷徹さを土偶羅は非難するが、もともと二人は悪魔であるし、人ではない。
異様な迫力を出しながらじりじりと近寄ってくる二人を、土偶羅は心底から恐ろしいと感じた。
「なに、すぐに済むから大人しくしていろ…。」
「大丈夫でちゅよ。用事が済んだら直してあげまちゅから…。」
「ひ、ヒイイィィーッ!!」
土偶羅は悲鳴をあげて、ささっとジークの背に隠れる。
かわって矢面に立たされるジークにはいい迷惑だ。
しかし土偶羅の気持ちもわかるので、とりあえずおそるおそる庇ってみる。
「あ、姉上…。一応、コレも軍の備品ですので、あまり無茶なことは…。」
「って、わしは物かいッ!? これでも兵鬼よ!?」
「いいから…それをよこせ、ジークフリード少尉。命令拒否は認めんぞ?」
妖しい輝きを宿す姉の目は……本気である。パピリオも同様だ。
拒否すれば命の保証はない。
ジーク、絶体絶命! あと土偶羅も!
◆
そのころ、横島は─。
「何でこんなところにゴキブリホイホイが─ッ!?」
ゴキブリ並みの生命力と揶揄され続けてきたが、まさか本当にゴキブリホイホイにかかる日が来るとは。
彼がその部屋に逃げ込んだ瞬間、まるで狙い済ましたかのような罠。
入り口すぐのところに仕掛けてあったそれに、横島は自ら飛び込んでしまったのである。
「あッ、ネバネバがさらに…!! あッ、あッ…! こ…このッ…ネバッ、ネ…ネヴァネヴァーッ!!」
人知れず、横島はピンチになっていた。
土偶羅は本当にすっかり忘れていて、危ないところでした。
今回はちょっと変わって、横島とキャラのからみは無しでやってみました。
…こんな小競り合いが、ひょっとしたら今までにも繰り返されてたかもしれません(汗)
ちなみに、魔鈴がしてきた『ひと仕事』は、横島の行き先にアレを仕掛けることでした。
女の人って、本当に怖いねv(涙) (詠夢)
『大人しく言うべきだったか、それとも拒否するべきだったか。』(土偶羅視点)
『大人しく引き渡すか、それとももう少し頑張ってみるか。』(ジーク視点)
以上の二点より。どちらも残酷(笑) (詠夢)
こんな奴でもきちんとキャラを立てられる詠夢さんは凄い!本当に羨ましいです。
又た、それぞれのキャラの動きを見事に絡ませられるその構成力にも脱帽です。 (竹)
魔鈴さん、怖いです・・・。 (紅蓮)
しかし彼の場合はいくら横島の居場所を割り出しても厄珍の二の舞は確実だからなあ。こ
こで進んで共同作戦取っといたほうがまだ目があったかもしれんのだな(笑)。
どっちみちこの状況を他の女性陣がほっとくわけもないし、これからさらにヒートするの
かなあ。 (HAL)
しかし、参戦も果たせないままアイテム化しちゃいましたね、あわれな(涙
復活組のリターンマッチが始まりましたが、完全に暴走してるし、横島は
魔鈴の怒りに触れて動けないし、まさにピ〜ンチですねw
刮目して待ってます。
PS しかし、行間といい、コミカルな展開といい、ほんと読みやすいですよねぇ。 (R/Y)
ダビデ像の様な姿など認めん!!
ところで横島くんはゴキかい・・・・(哀 (ノーフェイス)
いきなりでなんですが私この「横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ」
大好きでございます!!よくもまーこれだけの人数のキャラを
たてることができるな〜と尊敬。あとこれだけ結末が予想できない
話もめずらしい!!これからもがんばってください。 (堂旬)
竹さま:
土偶羅を出そうとしたら、こんな可哀想な扱いに(汗)
横島とは絡ませにくそうだったので、こんな展開にしてみましたが、気に入っていただけたようでなによりです(安堵)
紅蓮さま:
魔鈴さんはどんどん怖くなっていくような…(汗)
男性陣、押しが弱いですよねぇ。もっと頑張ってもらいましょう(笑)
HALさま:
はい、出してみました(笑)
横島と絡んでない理由、図星です。厄珍の二番煎じは嫌だったもので。
でも、この先の展開次第では、絡むかもしれませんね。
その前に、ここから生き延びることが出来ればですが(笑)
R/Yさま:
作者も忘れるところでした(笑)
ぶっちゃけ、ムリヤリ絡めてみたんですが、割と上手くいった気がします。
まだまだ、これからがピンチ、さらにピンチ…ピンチ、ピンチの大出血バーゲンですよ(ニヤリ)
ノーフェイスさま:
そーですね。やっぱり土偶羅はあの姿じゃないと…
原作でのルシオラの名言(?)「チン●口」を忘れないためにも!!(申し訳ございません)
横島…どんどん扱いが酷くなっていってます(涙)
堂旬さま:
初めまして!!
私の作品を気に入っていただいて…有難うございます!!
結末…一応、私の中ではすでに考えてあるんです。もちろん秘密ですがv
あとは、そこに至るまでどれだけキャラたちをいじり…いやいや、キャラたちを動かして面白く出来るかですね。
そのためにも、これからも最高の笑いを目指して頑張ります!! (詠夢)
行動不能に陥った横島クンを最初に捕捉する運のいい人は誰なんでしょうね? (林原悠)