椎名作品二次創作小説投稿広場


tragic selection

そして新たな日常の始まり


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/ 5/29

 ルシオラにそっくり、いや、ルシオラそのものと言ってもいい。その転校生は意気揚々と自己紹介を始めた。

「どうも! 牧之瀬 蛍(まきのせ ほたる)っていいます! 九州は長崎からやって来ました! これからもよろしくお願いしますね!!」

 なんてこった。声までおんなじだ。しかも名前が・・・・・・蛍?

「じゃあ牧之瀬さんはとりあえず・・・・・・ちっ、横島の隣りしか空いてないのか。あの男の隣りに座ってくれるかな? 横島、明日の朝刊を賑わすような行動はとるんじゃないぞ」

「アンタは俺をなんだと思っとるんだ・・・・・・」

「普通に思われてると思ってるのか?」

 確かに前科が数多くあるため俺はそれ以上言い返せなかった。いや、それよりも・・・・・・

 俺は隣りに座った女の子に目を向けた。彼女はころころと笑っていた。

「くすくす・・・あなたおもしろいのね。名前、なんていうの?」

「あ・・・よ、横島。横島忠夫」

 突然声をかけられて俺はどもってしまった。彼女はそれがおもしろかったのか、今度は声をあげて笑った。

「ホントにおもしろいわね、横島くん。女の子と話したこととかないの? あたしのことは蛍って呼んでいいからね」

 そう言って彼女・・・蛍は右手を差し出してきた。あわてて俺も握り返し、そして思い切って聞いてみた。


「なぁ・・・俺たちって前に会ったことなかったっけ?」

 俺の問いに彼女はキョトンとなる。

「え・・・? あたし横島くんのこと知らないよ? あたしが忘れてるだけなのかな・・・・・・横島くん長崎に住んでたこととかある?」

「いや、ないけど・・・・・・」

「じゃあ多分会ってないよ。あたし長崎から出たことないもん」

「・・・じゃあ俺の勘違いかな」

「多分そうだと思うよ?」

 この子はルシオラじゃないのか? ・・・そうか、そもそも今高校3年ってことはアシュタロスと戦った時より前からいたってことだもんな。ルシオラなはずないんだよな・・・・・・

 前にもおキヌちゃんそっくりな女の子がいたっけ。多分そんな感じなんだろ。

 まだなんとなくモヤモヤしてはいたが、俺は無理やりそう結論づけた。

「変なこと聞いてごめん。これからもよろしく、蛍」

「うん、よろしく! 横島くんがここに来て初めての友達だね」

 そして俺たちはずいぶん長いこと握っていた手を離した。







 ちなみに俺たちが握手していた間、担任が俺を恐ろしい表情で睨んでいたが・・・・・・無視。







 そして一日が終わり放課後。今日は俺が日直当番となっていた。

 いつもならこんなモンさぼって帰るところなんだが・・・今日は特別だ。というのもうちの学校では日直は男女ペアで行われる。そして転校生「牧之瀬 蛍」と俺「横島 忠夫」は出席番号が近かったので日直のペアになったのだ。彼女のことはやはり気になるので、少し話がしたかった。

「まったく、日直制度って嫌いなのよね〜。働かせるなら報酬をちゃんとよこしなさいってのよ、まったく」

 その蛍はぶつぶついいながら床にほうきをかけていた。

 今日一日見ていて思ったのだが、蛍はルシオラと顔、声は似ていても性格が全然違う。すごくさばさばした性格なのだ。やはりこの子はルシオラとは無関係なのだろう。

「はい、愛子ちゃん。ごみ捨ててきて」

「はいはい」

 そういって愛子はごみを持って教室から出ていった。愛子はずっと学校にいるため日直を手伝ってくれるのだ。しかし今のやりとりからするともうかなり仲良くなったみたいだな。そういえば蛍は今日だけでクラス全員の女子と話していた。友達をつくるのがうまいんだろう。


 気づくと蛍がほうきの柄にあごを乗せ、こちらをみてにやにやしていた。

「・・・なに?」

「んふふ〜、色々横島くんの話聞いちゃったよ。・・・昨日のこととか」



 ・・・・・・なんだとう?



「ち、違う!! 違うんだ!!」

 なにが違うのか自分でもよ−わからんが。

「まぁ、しょうがないよねえ。男の子だもんねえ」

「そ、そう! そうなんだ!! 俺は男としての本能に従っただけなんだよ!!」

「でもサイテー」

「ぐはっ!!!」

 蛍の一言に俺は血を吐いて倒れこんだ。蛍は腹を抱えて笑っている。俺も声をあげて笑った。


 俺たちは長いこと笑っていた。気づくと、夕日が教室の中を照らし全てを赤色に染めていた。俺はなんだかルシオラと夕日を見ているような気になってしまって、涙をこらえるのに必死だった。




 いつの間にか蛍は窓際まで移動していた。


「昼と夜の一瞬のすきま・・・・・・短時間しか見れないからよけい美しいのね」



・・・・・・・・・・・!!!



 だめだ。 だめだよ蛍。 アイツと同じ顔で、アイツと同じ声で、そんなこと言われたら・・・・・・



 俺は無意識のうちに蛍を後ろから抱きしめていた。

「・・・・・・え? 横島くん?」

「・・・・・・っは!? ご、ごめん!!」

 俺はすぐに蛍をはなそうとした。しかし、あまりに慌ててしまったため机に足をひっかけてしまい、倒れこんでしまった。

 自然、蛍に覆いかぶさってしまう様な体勢になってしまう。

「あ・・・ご、ごめ・・・・・・・」

 目の前には蛍の顔。俺はつい、見入ってしまった。








「いや〜〜〜〜! だめよ横島くん!! 夕日に染まる放課後の教室で謎の転校生美女と二人きり・・・最高に萌えるシチュエーションなのはわかるけど私たち、今日出会ったばかりなのよ〜〜〜〜!!!!」

「な〜〜〜〜!!! ち、違・・・・・」

 その時俺はただならぬ気配を察知し、振り返った。

 そこには、鬼神のごときオーラを身にまとった愛子が立っていた。

「横島くん・・・淫行と青春を履き違えてはいけないわ・・・・・・」

 淫行って・・・なんて危ないキーワードを・・・・・・・

 マテ、その振り上げている机はなんだ。まさか下ろすのか?振り下ろす気なのか?

 お前知らないんだろう。それとっても痛いんだぞ? いや、下手すりゃ死・・・・・・・









「横島くんの馬鹿ーーーーーー!!!」

「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーースッ!!!!!!!!」


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