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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

吠えろ魂!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 5/28


スイスの哲学者、アミエルいわく。

信用は鏡やガラスのようなものである。ひびがはいったら元道りにはならない。


《もう誰も信じるもんかぁぁ〜…ッ!!》


いきなり血を吐くような台詞をのたまう横島の魂。

文字通りに魂の叫びである。


《おキヌちゃんにつづき、小鳩ちゃんまで…ッ! 女性キャラの二大良心に裏切られ、何を信じろと言うのだ!?》


神も仏もこの世にいないのか!? と横島は天を仰いで嘆く。

その神や仏までも、このゲームに目の色を変えているのだから始末におえない。


「いつまでぐちぐち言うとんのや? もー、観念したらええやん。」

《やかましい!! 俺のピュアなハートは今、ひどく傷ついとるんだ!!》


愚痴のひとつやふたつ、こぼしても仕方がないと憤る横島に、貧は「まーまー」といってなだめようとする。


「小鳩やったら、そんな酷いこと頼まへんって。なっ?」

《ここまで来といて、自分の野望を諦められるかァ─ッ!! それに…!》


そこまで叫んだ横島が、チラリと小鳩を見る。

横島の体(抜け殻)を抱え上げ、わき目も振らず突っ走る少女。

自分の世界に入っているのか、横島と貧の視線にも気づかず、ときどき「クスクス」と含み笑いをこぼす。


《……今の小鳩ちゃんには、そんな保障できねーだろ。》

「………。」


こればかりは、さすがの貧もフォローしきれず冷や汗を流す。



          ◆



画面を見ながら、魔鈴は呆れた表情で呟く。


「…小鳩さんって、あんな人でしたっけ…?」


面識はあまりないが、常識人だと思っていたのに。

もともと素質があったのだろうか。それとも他の人たちに染まってしまったのか。

それを思うと、涙が出そうである。


《小鳩さんほどの人格者がここまで変わってしまわれるとは…。》

『いや〜…我ながら恐ろしいゲームを発案しちゃったなぁ。ハハハ…。』


人の隠された一面をむき出しにするゲーム。

さすがの邪神も今更ながらに、その意味を考え始めたようだった。



          ◆



とにかく、嘆くのもわめくのも、体に戻ってからだ。

気を取り直して横島が体に戻ろうとしたとき、そうはさせじと貧が後ろから羽交い絞めにする。


《こ、こらッ、貧!! 離せ、離しやがれ〜!!》

「誰が離すかいッ! お前には悪いが、このまま小鳩に優勝してもらうんや!」

「び、貧ちゃん! お…重い〜ッ! 急に離さないで…ッ!」


二人が空中でごろごろと取っ組み合ってる下では、小鳩が横島の体を支えきれず、その場にうずくまってしまった。

意識を失った人の体というものは、驚くほど重い。

普通のかよわい女性である小鳩には、ちょっと無理があるようだ。

─そのとき、その混乱を狙っていた狩猟者が動いた。


「キャッ!?」

「こ、小鳩!?」


狩猟者は風のように飛び出すと、素早く横島の体を奪い取る。

小鳩の悲鳴に気付いて、貧は横島を突きとばすようにして飛び離れた。


《のわぁッ!?》


突き飛ばされた横島は、その勢いのまま自分の体に戻ってしまう。

最初に見えたのは、床。

そこで自分が狩猟者のわきに抱えられていることに思い至る。


「な、なんなんだ? 今度は誰だ?」

「先生! 大丈夫でござるか?」


上から降ってきた声に首をめぐらすと、そこにいたのは長い銀髪と赤い前髪。

愛弟子の人狼、シロがにこにこと嬉しそうに見下ろしてくる。


「シロ!! まったく…今度はお前か!!」

「先生…その言い方はないでござるよ。助けてあげたのに…。」


あからさまに嫌そうに言う横島に、シロはちょっと肩を落とす。


「お前、ワシらの後をつけてたんか!?」

「横島さんの文珠でジャミングされてるのに…どうやって…!」


うろたえる二人に、シロはふっと笑ってみせる。


「確かに拙者の鼻にも耳にも、先生の姿はひっかからなかったでござる。」

「なら、どうして…!?」

「それは……運命でござる!! 拙者と先生の深い絆が、二人を引き合わせたのでござるよ!!」

「うッ…運命!? 深い…絆ッ!?」


拳を握り締めて力説するシロに、ショックをうけて後ずさる小鳩。

……なにやら誤解しているようにも思える。

だが、その中心にいるはずの横島は、どこか冷めた表情をしていた。


「…おい、シロ。」

「な、何でござるか?」

「お前…小鳩ちゃんのもってる、ご飯の匂いに魅かれただけだろ?」


横島の言葉にあきらかに、ぎくぅっと動揺するシロ。


「な、なんのことでござるか…?」

「とぼけるな。俺の体を奪ったときに、一緒に盗ったもんを出せ。」

「………。」


シロは横島を右腕に抱えなおすと、素直に左手にもっていた包みを横島に渡す。

それを見た小鳩が、あわてて自分の鞄を見ると立派な穴が開いていた。


「わ、私の鞄…!」

「ずいぶんと上達したが、まだまだだな。もっと自然にやらねーと。」


それじゃあ、いつまでたってもおキヌちゃんからつまみ食いなんて出来ねーぞ、とほがらかに笑う横島。

というか、盗みのテクニックを教えてどうする。


「でも、やっぱり飯が目当てだったんだな?」

「そ、そんなことは…! ただ、ちょっと美味しい匂いがして、なんでござるかなーと思って…!!」

「で、来てみたら俺がいたと。」

「………はい。」


さらに突っ込まれて、素直に白状するシロ。

やれやれと、呆れたように首を振る横島に必死に弁明する。


「だ、だって、先生を探して事務所中を走り回ったんでござるよ!? おかげで服が汗でベトベトでござる!!」

「だーッ!! 胸元をひろげて見せるな─ッ!!」


ぐいっと襟元を引っ張って証明しようとするシロを、横島は慌てて止める。

こんなにくっついてりゃ、汗ぐらいわかる!

あ…でも、汗ばんだ肌の匂いと、女の子の香りが……ッッて!!


「違うぅぅ─ッ!! 俺は…俺は変態じゃない─ッ!!」

「わわッ!? せ、先生、暴れないでくだされ!!」


頭抱えて苦悩してもだえる横島に、気をとられるシロ。


「!! 今やッ!! もろたでェ─ッ!!」


そこにすかさず貧が打出の小槌を振りかざして突撃する。

だが、その一撃は空を切り、貧ごと床に激突する。


「ぐぁッ!?」

「び、貧ちゃん!?」

「それじゃ、先生はもらっていくでござるよ〜!」


気がつくと、シロはすでに遥か彼方である。

どうやら、逃げ足も師匠直伝らしい。見事な逃げっぷりであった。



          ◆



シロに抱きかかえられたまま、しばらく無言だった横島。

ふいに半目の表情でシロを見上げる。


「シロのお願いって…やっぱ散歩か?」


しっぽをパタパタと動かして、シロは満面の笑みでうなずく。


「そーでござる! これからずぅっと毎朝毎晩、最低50キロは付き合ってもらうでござるよ!」

「やっぱり…。まー、そんなとこだよな…。」


聞き様によっては大胆な発言にも思える台詞を、さらりと流してまた黙りこくる横島。

その横島の態度に、シロは少しだけ不安を感じて足を止めると、横島をおろして顔を覗き込む。

ちょっと涙目で、上目がちな瞳が潤んでいる。


「もしかして……先生は嫌でござるか?」

「うっ!?」


か、可愛いじゃねーか、チクショーッ!

とは言え…その願いはちょっとなぁ………やむをえんか。

横島は腹を決めると、小さな包みを取り出す。

それは─。


「シロ。あーん。」

「!? な、なんでござるか、急に!」


横島の突然の行動に、シロはわたわたとうろたえる。

鼻先にいきなり食べ物を持ってこられたのもあるが、それ以上に横島が食べさせてあげようとしている事実にだ。

赤くなるシロに、横島はさらにすすめる。


「いらないのか? 俺も食べたから平気だって。ほら、あーん。」

「じゃ、じゃあ……あ、あーん。」


おずおずと口に入れたとき、横島がぽつりと「スマン。許せよ。」と呟いたのをシロはしっかり聞いてしまった。



─そして今、横島の持っていた『チーズあんシメサババーガー』によりシロの魂はふよふよと浮かんでいた。

茫然とシロは横島を見つめる。


《……先生。》

「悪いな、シロ。可愛い弟子の頼み、聞きたいのはやまやまだが俺も死にたくはないんだ。ああ、心が痛む…。」


と言いつつ、テキパキと抜け殻となったシロの体を簀巻きにしていく。


《……せんせぇ。》

「幽体の状態に慣れていないお前なら、戻るのに少し時間がかかるだろうな…。」


作業を終えて、すっと立ち上がる横島。

その顔は……笑っていた。


「その前に俺は逃げるけどな!! じゃッ!!」


本家本元、ニトロダッシュ。

見る見るうちに横島の背中は点となり、やがて見えなくなった。

ひとり取り残されたシロの肩が、小さく震える。

やがて彼女は、ありったけの心情を込めて吠えた。


「先生の…バカァァァ─ッ!!」


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