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tragic selection

横島的な日常2


投稿者名:堂旬
投稿日時:04/ 5/28

「横島さん、久しぶりですね」

 俺が教室に入るとピートが話しかけてきた。

「あぁ、今日来なかったら留年だって担任に脅されたからな」

「横島さん4月全然学校来てないですもんね」

 ピートが苦笑する。確かに、担任によると6回しか来てないらしいからな〜。

「あれ? 横島くん、久しぶり。今日はどうしたの? なんか早いじゃない」

 今度は愛子だ。

「あぁ、担任に電話で早く起こされちまってな。やることもないからもう学校来たんだ。ところで愛子、今日は身体測定の日だったよな、確か」

「そうよ。何? 横島くんそのために学校に来たの?」

 愛子がジト目で俺を睨んでくる。いかん! なんとかごまかしを・・・

「そんなに自分の身長体重が気になるの? 可笑しいわね、横島くん! まあそれも青春なのかもね」

 そういうと愛子はころころと笑った。

「あ、ああ。成長期だからな・・・・・・」

 こいつこんなに天然だったのか。意外だ。まぁ変に追求されなくてよかったが・・・
 


 身体測定はどうやら昼休みにあるらしい。場所は保健室。男子が先で、その後で女子が行うそうだ。そして俺は朝のショートホームルームが終わった後、タイガーが話しかけてきた。

「横島さん、やっぱり来ましたノー。こんな日に学校に来るってことは目的は同じとみていいんですかいノー?」

 俺はタイガーの問いかけに薄く笑いを浮かべて答えた。

「無論よ。ほかに一体何があるというんだ?」

 俺の答えにタイガーも笑みを浮かべる。

「ふっふっふ、それでこそ横島さんですノー。これで計画の成功は約束されたも同然ジャー」

「詳しい打ち合わせは後だ・・・・・・ピートが来た」

 後ろをふり向き、ピートの接近を確認したタイガーは無言で頷いた。

「横島さん、タイガー、何の話をしてるんです?」

「いやなに・・・つまらんことさ」

 気分は少年漫画にでてくる大ボスだ。

「・・・? タイガー?」

 俺から納得のいく話を聞けなかったピートはタイガーに聞きなおす。

「わっしは少し用事があるんで失礼しますジャー」

 そう言ってタイガーは教室から出て行った。

「・・・・・・?」

 ピートはなにがなにやらという表情だったが、日直の仕事があるということで特に追求してくることはなかった。




 1時間目が終わっての休み時間、俺とタイガーは屋上でプランを練っていた。

「じゃから天井裏から・・・」

「いや、だめだ。それだと見えないポイントが出てくる」

「文珠を使って透明にはなれませんかの〜?」

「あいにく今文珠のストックは一つしかないんだ。無理してつくりだしても『透』の文字じゃ完全に透明になるとは限らない。最悪服だけ消えることになるかもしれない・・・かといって『透明』の二文字を二人に使うにはあと3つ文珠がいる。いくら今煩悩が高まっているとはいってもそれは無理だ」

「じゃったらワシの精神感応で透明になりますかいノ〜」

「う〜ん・・・今のところそれがベストか・・・・・・」

 しかしその時、俺の頭に天啓の様なものが閃いた。

「そうか・・・そうだ、これがいい! これがベストだ!!」

「な、何か思いついたんですかいのノー」

 突然立ち上がった俺に驚きながらもタイガーは俺に尋ねた。

「ピートを使う」

「ピートさんを? どういうことジャー?」

「まだわかんないのか? ・・・ピートの能力を思い出してみろ」

「・・・!! 霧になる能力!!」

 その能力に思い当たったタイガーは思わず叫んでいた。

「そうだ、その能力を使えば・・・あらゆるアングルから超至近距離で下着姿のじょしこーせーを観察できる!! いや、もういっそのこと下着の中に入り込むことだって!!」

「う、うおおおおぉぉおおお!?」

 タイガーは鼻血を噴きながら後ろに倒れこんでしまった。ふっ、こいつには刺激が強すぎたか。

「で、でも横島さん・・・・・・」

 しばらくたってようやくタイガーが起き上がる。

「ピートさんがそんなことに協力してくれるとは思えんノー。どちらかといえば止められそうな気がするんジャが・・・」

「心配するな。ぬかりはない」

 俺は自信満々に答えた。




 キーンコーンカーンコーン


 授業開始のチャイムが鳴り響く。いつの間にか休み時間は終わってしまったようだ。

「すべては昼休みだ。ぬかるなよ、タイガー」

「らじゃーですジャー」

 そして俺たちは屋上をあとにした。








 そして昼休み・・・・・・

 身体測定を終えた俺はピートを外に呼び出していた。

「どうしたんです、横島さん? こんなところに呼び出して・・・」

「ピート、単刀直入に言う。俺たちは今から覗きを行う。協力してくれ」

「なっ・・・! 一体なにを・・・」

「俺たちを霧にして保健室の中へ連れていってくれ。頼む、お前を同じ男と見込んで頼んでるんだ」

「あなたは『男』の使い方を間違っているっ!! まったく、今朝タイガーと何を話していたかと思えば・・・こういうことだったんですね!?」

「頼む! ピート!! お前にもわかるはずだ!! 健全な女子高生の肢体を求める男の本能が!! 煮えたぎる情熱が!!」

「わかりません!! わかったとしてもそんな女性の尊厳を汚すような真似はできません! ・・・そしてあなたたちにもそんなことはさせない!」

「そうか・・・それじゃしょうがない・・・」

 俺はパチンと指をならす。

「一体なにを・・・うわっ!!」

 ピートは突如現れたタイガーに羽交い絞めにされた。

「タイガー! いつの間に!?」

「実は最初からおったんジャー。もっとも、ピートさんには見えてませんでしたがノー」

 タイガーは精神感応でピートには自分の姿が見えないようにしていたのだ。

「ピート、すまないな」

 そう言うと俺は文珠を取り出す。『操』の文字を込めて。

「横島さん!! まさか!?」

「若い情熱のために死んでくれ! ピート!!」

 俺は無理やりピートに文珠を飲ませた。


「あ、あなたという人は・・・」

 急に顔を伏せるピート。再び顔を上げたピートに俺は尋ねた。

「手伝って、くれるかな?」


「ハイ、ワカリマシタ、ヨコシマサン」


 そして俺たち三人は霧と化し、保健室へと飛び込んでいった。






(うおっ! うおっ! すげぇ!! ちち!しり!ふともも! かつてこんな間近で見たことがあっただろうか!! 父さん、母さん、俺を生んでくれてありがとーーーーーっ!!!)

 俺は人生最大の幸福に酔っていた。

(わっしは、わっしは、死んでも本望ジャー!!!)

 タイガーも(おそらく)歓喜の涙を流している。

 俺は俺で存分に楽しむことにした。

「うーん友人と体を比べあう身体検査。ある者は妬み、ある者は勝ち誇る・・・・青春よねー」

 おぉ! あそこにいるのは愛子じゃないか。服脱げたのかあいつ・・・・・・結構いいチチしとんな〜。下着もなにやら白で統一されていて・・・うんうん、それでこそじょしこーせーだ!! これで背負ってる机さえなかったらな〜・・・いや、このアンバランスさがなんとも・・・・・・




「う・・・ううん・・・・・・」

 ゲッ! やばい! ピートの奴もう文珠の効果がきれかけてやがる!! なんて精神力だ・・・だてに700年生きてねえな・・・・・・いや感心してる場合じゃない!! なんとかしないと・・・・・・

「はっ! ここは・・・?」

 しかし時すでに遅く、ピートは正気を取り戻してしまった。途端に俺たちは霧化が解けてしまう。床に落ちた俺はしたたかにケツを打ち付けてしまった。

「いててて・・・・・・・はっ!?」

 気づくと俺たち三人はクラスの女子に囲まれていた。(皆下着姿なので素晴らしい眺めではあったのだがもはやそれを楽しむ余裕はなかった)


 皆の包囲網が徐々に狭まってくる。俺はもう覚悟を決めた。






「いつから居たこの女の敵ーーーーーーーーー!!!!」

「こんな青春認めないわーーーーーーー!!!!!!」





ドゴクチャメキボギョこきゃり!!!!











「僕は違うんだぁーーーーーーーーーーっ!!!!」


 ピートの叫びが虚しく保健室に響き渡った。

   


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