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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

オイシイ話にご用心!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 5/23


「くっそー!! しつこい!!」


横島は全力で駆けていた。

その後方から迫るのは、彼がもっとも恐れるもの。

神も悪魔もはだしで逃げ出す、史上最強のGS・美神令子。


「待たんかァ─ッ、横島ァァッ!!」


ばったり出くわしたのが運のツキ。

あらゆる手を使って逃げようとするのだが、自分の行動は先読みされてるらしく徒労に終わる。

ちなみに、お目付け役の美知恵は「男の子なんだから、頑張りなさいね〜」と完全に楽しんでいた。

役立たずめ! と罵ったところで美神が止まるわけもなく、こうやって必死に逃げ惑うしかないわけで。

美神の捕獲(攻撃?)をかいくぐって逃走をつづけながら、横島はふと某ホラーゲームの追跡者を思い出していた。

もっとも、このままでは必ず追いつかれるのはわかっている。そして捕まったら……。

それだけは避けねば!!

横島は生き残るための手段を探して、周囲を見回す。


「─横島さんっ!」

「! 小鳩ちゃん!?」


疾走する横島の目に、通路の角から手招きする小鳩が映る。

一瞬のためらいの後、横島はそちらへと向かう。

角を曲がるとすぐの扉が少し開いており、そこに貧乏神もとい福の神が待っていた。


「小鳩、急げ!!」

「うん! 横島さんも、さあ早く!!」

「あ、ああ!」


横島が入ると、すかさず貧がドアを閉めて結界を張る。

直後、通路を凄まじい勢いで彼女が通り過ぎていく声が聞こえた。

しばらくは、三人とも無言だったが、おそるおそる小鳩が貧に確認する。


「貧ちゃん…行った?」

「ああ。腐ってもわいは神やしな。わいの張った結界なら、そう簡単には気付かれへん。」


貧はそう答えると、ちゃんと見張っとくからと、小鳩に微笑む。

それを聞いて、小鳩はほっと胸をなでおろすと、横島をふりむいてにっこり微笑む。


「横島さん、大丈夫ですか?」

「ああ…ありがとう、小鳩ちゃん。」

「いえ、いいんです。」


横島は、さも疲れたといった感じに、どっかと腰を下ろす。

その隣に、小鳩もすっと座り込む。

とりあえず一息つけた横島だが、今までのことから考えて、念のため小鳩に聞いてみる。


「……小鳩ちゃんはいいのかい? ゲームに参加しているんだろ?」

「ええ。…でも、私には皆さんのような腕力も能力もないですし…。」

「そっか。」


とりあえず横島は安心する。

もともと心根の優しい小鳩のこと、こんな荒事は向いていないのだ。

じゃあ、おキヌはどうなる? という意見は、美神の影響ということでムリヤリ納得する。


「…あ、横島さん。お腹空いてませんか? ずっと走ってたみたいだから…。」

「ん? そーいや、ちょっと小腹が空いてるような…。」


急に話題をふられて、横島がちょっと考えてから答えると、小鳩は嬉しそうな顔で鞄から何かを取り出す。

それは拳大の包みで、なんだかとても美味しそうな香りを放っていた。


「さっきの立食会のときに、お持ち帰りしようと思って取っといたんです。」

「え? ってこれ、食べていいの?」

「ええ、どうぞ。」


にっこりと笑って差し出す小鳩に、横島はふいに涙腺が緩むのを感じた。

このゲームが始まって以来、これほど人の優しさを感じたことがあっただろうか。

ぽろぽろと涙をこぼす横島に、小鳩の表情がひきつる。


「よ、横島さん? そんなにお腹が空いてたんですか?」

「ううん! でも、何でかな? 涙が止まらないや。」


横島は泣き笑いの表情で、次々に溢れてくるキレイな涙をごしごしと拭う。


「それじゃあ、ありがたくいただくよ。」


言うや否や、小鳩から包みを受けとって嬉しそうに包みをはいでいく横島。

それを見る小鳩の微笑みが、少しだけ曇る。


「……横島さん。さっきの話ですけど…。」

「んー? 何?」


しかし、横島はそんな小鳩の表情にも気付かず、嬉しそうに包みを開けていく。

小鳩も、そんな横島の態度にはかまわず話を続ける。


「私って、やっぱり腕力とかないし、横島さんを皆さんのように捕まえるなんて出来ないんです…。」

「そう? 小鳩ちゃんはそれでいいと思うけど。」


横島は心底そう思う。

というか、他の奴らのように小鳩ちゃんまで襲ってきたら嫌だ。


「でも…私だって皆さんのように…。」

「小鳩ちゃんには小鳩ちゃんに出来ることがあるだろ? みんなと同じやり方じゃなくてもいいじゃないか。」

「そうですか…?」

「そうさ…っと、出てきた、出てきた♪」


包みから出てきたサンドイッチに、横島は嬉しそうな声をあげる。

小鳩は、横島の言葉をひとり噛みしめていた。


「小鳩なりのやり方…そう、そうですよね!」

「ああ! それじゃ、いただきまーす!!」


パクッ! と横島がかぶりついた瞬間─。


「…ッ!! こ、これは…!?」


横島は驚愕の表情を浮かべると、そのまま倒れこんだ。

そしてその口からふよふよと…。


《これは…チーズあんシメサババーガー!?》


幽体離脱した横島の魂が信じられないといった風に叫ぶ。

見れば、はみ出ているサンドイッチの具は、チーズとあんがとろりと流れ出し、シメサバにからんで…。


《ま…まさか…! 小鳩ちゃん…君も…ッ?》


横島の魂が振り返ると、小鳩はさもすまなそうな顔をしていた。

が、その顔がどうもしらじらしく思えるのは、横島の被害妄想のせいだろうか。


「ごめんなさい、横島さん。小鳩には横島さんを捕まえる力なんてない…だから…。」

「こうして、魂抜いたれば小鳩でも捕まえることは出来るっちゅーわけや。」

《てめっ、貧!! テメーの作戦か!?》


いつの間にか隣でニヤニヤと笑う貧に、横島は矛先を向ける。

だが、貧はゆっくりと首を振る。


「何ゆーてんのや。これは非力な小鳩がお前を捕まえたい一心で考えた作戦やで? 喜んで捕まってくれや。」

《こ…小鳩ちゃん…!》


横島がギギギッと首をまわして小鳩を見ると、小鳩はそっと涙をぬぐって見せる。


「本当にごめんなさい、横島さん。小鳩は……小鳩は悪い子ですぅ─ッ!!」


そう言うと、貧と素早く横島を抱えあげて、キラキラと涙を輝かせながら逃走する小鳩。


《ちょっとォォォッ!? 小鳩ちゃぁぁんッ!?》


このコもしっかり暴走してる!!

横島は自分の認識が甘かったことを心底思い知った。



          ◆



『…まあ、確かに横島くんを捕まえればいいわけだけど。』

「魂とワンセットとは言ってませんからねぇ…。」


ルールの上では問題ない、とロキは思うが同時に、人としてどうだろうという考えも浮かぶ。

魔鈴の笑顔も、複雑な心境を表してかなり引きつっている。


《…手段は選ばない、というのは美神オーナーたちの専売特許ではないってことですね…。》


人工幽霊壱号は一言だけ呟いて、盛大なため息をついた。


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