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彼の者纏いしは・・・混沌 

第4話 六道の夏!! 序幕


投稿者名:ATO
投稿日時:04/ 4/16

 俺が六道家に来てから、1月ほどがたった。





チュンチュン・・・チチチ。



 窓から朝日が差し込み、眩しくて寝返りをうつ。



ガチャ



 扉の開く音と共に、人が侵入してくる気配。

 その人物は、枕元までやってくると・・・。



「澄川様、朝ですよ。起きてください」



 澄川蛍人。

 俺が六道家に世話になると決まった次の日、理事長が『蛍人く〜〜ん、戸籍がないといろいろと不便でしょ〜〜?作っておいたから〜〜』という理由で付いた名前。

 ちなみに20歳という設定。

 それは、俺の体の時間が止まった歳・・・。

 俺が、本当に人間でなくなった年・・・。





・・・まあそんな暗い話しは置いといて。





 今俺の枕元に歩み寄り、女性特有の綺麗なソプラノでささやく女性。

 明るい茶色がかったショートカットの髪に抜けるような白い肌、つり目気味の鋭さを感じさせる黒い瞳に高くスッキリとした鼻、そして柔らかそうな唇。 

 つまりまぎれもない美人なわけで〜。

 さらにメイドさん!!w

 その細くしなやかな指で体を揺らされたりなんかすると・・・。



「やはっ、おはようございます!

爽やかな朝ですね!こんな朝は俺と一ついい汗かきませんか!?」



 浪漫式加速装置(主に萌え、たまに熱血がエネルギー源)のスイッチが入った俺は傍らに寄り添い、女性の肩に腕をまわす。



こういう時は限界に近い速度が出るんだよなw



 俺のいい加減な理性が綻びちゃったりするわけで・・・。



シュバ!!


 
 だが俺が肩に回した腕が触れた瞬間、彼女の右腕が残像さえ残しそうなほどの速さでアゴ目掛けて下から襲ってきた。



「!?」



 過去の女性達と違い、冷たい殺気のこもったソレを反射的に顔をのぞけらせて避ける。



ヒュ・・



 避けた右腕が蛇のように動きを変え、今度は喉を突き刺すように落ちてきた。



バシッ!!

 

 避けるのは不可能、と判断したソレを左手が掴む。



ゴウッ!!



 瞬きほどの時すら設けず左掌低が唸りを上げて昇ってくる。

 ソレを認識した瞬間、体が竜巻のように1回転し避けた。



 怒りではなく、戦いの殺気を受けた俺の体は障害を排除するために動く。

 そのまま回転と体重を乗せた一撃をこめかみに叩き込



 ・・・もうという寸前でなんとか止めた。



「おはようございます」



 当たれば命がなくなりかねない勢いの拳を文字通り紙一重で止められたというのに、女性はわずかにも怯えた様子を見せず、微笑んでいる。



「お、おはよう・・・」



 俺は殴りかかった状態のまま返事を返した。



「朝食の用意ができていますので、着替えが済みましたら食堂へいらしてください」

「は、はい」



 唇が触れ合いそうなほどの距離でも、彼女は全く反応を見せずに離れていった。

 そして全く足音を立てずに扉の前まで行くと、彼女は振り向いた。



「・・・あなたは、先ほどの顔のほうが素敵だと思います。

いつもの顔と、どちらが本当なのかは分かりませんが」

「え?」

「それでは」



 俺の疑問の声に答えず、一礼して扉を閉めた。



 彼女の名前は四ノ森尚香(しのもり なおか)、19歳。

 六道の分家から来ているらしい。

 何故だか知らないが、理事長に俺の世話を言いつけられている。

 顔、プロポーション共に抜群の彼女なのだが、少々困らせられることが。

 どうも雪乃丞と似たところがあるらしく、たまに先ほどのようなことをしてくる。

 

張り倒すのは構わんけど、殺気を込めるのは止めてくれんかなぁ。



 戦いの日々で培われた自己防衛本能は、その殺気に敏感に反応してしまう。



俺、どんな顔してたんだろ?

・・・すてき?すてきってなんだ!?じぇんとるめんの持ってる木製の棒か!?



 着替え終わった俺が、そんなことを考えながら食堂へと向かっていると・・・。



・・・パタパタパタパタ



「け〜〜い〜〜と〜〜さ〜〜ん!」



 背後から駆けてきた冥子ちゃんが、背中に飛びつき首に腕を回してくる。

 六道女学院の制服は、涼しげな夏服になっている。

 俺は歩みを少しも乱さず、冥子ちゃんの腕に手を添えた。



「おはよう、冥子ちゃん」

「おはよう〜〜」



 冥子ちゃんは何がそんなにうれしいのか、はずんだ声で答えた。 







「おはようございます」



 俺は冥子ちゃんをぶら下げたまま、食堂の扉を開いた。



「おはよう〜〜」

「おはようございます〜〜お母さま〜〜」



 理事長の顔がこちらを向く直前に、冥子ちゃんは俺からすばやく離れて席に着く。



冥子ちゃん、なんでこんな時だけ動きが早いんだろう?



 俺も席につくと、すでにそこには朝食が並べられていた。

 カリカリのベーコンが乗った目玉焼き。

 狐色に焼きあがったサクサクのトースト。

 厳選されている(らしい)豆を使ったコーヒー。

 貧乏人の俺にはコーヒーといったら缶コーヒーかインスタントだ、細かいことなんてわかるもんか(涙)。



 ・・・ま、まあそれらが1枚ウン万もしそうな皿とグラスに戴かれている。



「お砂糖、いつも通りでよろしいですか?」



 角砂糖の詰まったビンを持った尚香さんが尋ねる。



「あ、はい。いつも通り1つで。それと」「ミルクですね」



 基本的に俺はコーヒーをブラックで飲まない。

 なぜなら砂糖は極貧生活当時、貴重なカロリー源だったからだ!!



わ、笑えねぇ・・・。

くそぉ、全部・・・ぜ〜んぶ!!貧乏が悪いんやぁーーーーーー!!

 

「もしも〜し、蛍人く〜ん」

「全部、ぜんぶ・・・」

「蛍人く〜〜ん!」

「ぜん・・・は、はいっ!何でしょうか!?」



・・・っは!!危ない危ない、某3番目の少年みたいに内側の自分に会いに行っちゃうところだったよ。



「今日のお仕事は〜〜1つだけだから〜〜パパっと片付けて早めに帰ってきてね〜〜」

「りょ、了解っす!」



 そんな軽く言われても・・・。



「それじゃあ〜〜行ってきま〜〜す!」



 俺があらぬ世界に旅立っている間に冥子ちゃんは食べ終えていたようで、もう出発しようとしていた。



「今日は〜〜30度を超えるそうだから〜〜気をつけるのよ〜〜?」

「は〜〜い」



夏か〜

・・・・・・ん?夏に六道女学院?

なんかあったような・・・



「お〜い、蛍人!いつまで飯食うとるんや?はよせー!」

「ん〜?わぁったよ、チョット待て!」



 呼びかけに応えて、残っていたトーストを押し込みコーヒーを注ぎ込む。



「ったく、お前はもうちょっと上品に食えんのか?」

「うっせぇ、朝飯もゆっくり食わせてくれんくせにウダウダ言うな」



 食堂の扉の前に立つ、男性。

 鬼道政樹。

 冥子ちゃんと同じく俺のいた世界の鬼道より若い。

 だがその実力は、俺の世界のあいつより上じゃないかと思わせるほどだ。

 

 何故こいつが六道家にいるかというと・・・。

 子供の頃、借金のかたに取られてきたんだとw

 六道家が鬼道家の借金の証文を全部まとめて握っている状況らしい。

 昔の俺ほどじゃないが、半丁稚状態だとか。



 

「それでは冥那様、行ってまいります」

「行ってきます」

「は〜〜い、行ってらっしゃ〜〜い」



 俺が六道家でもらった仕事は、鬼道政樹のサポートだった。

 彼は前回のGS試験で合格し、見習い中なのだという。

 俺が政樹と会ったのは、俺が『澄川』蛍人になった次の日。 

 



〜〜回想〜〜



「この子が〜〜蛍人さんのパートナーの鬼道政樹くん〜〜」



 もといた世界の鬼道とは、少し雰囲気が違った。

 どこか懐かしく、心のどこかに引っかかる。



「こちら〜〜今度うちの来た澄川蛍人さん〜〜」



 鬼道と目が合う。



あ、あの目は!!



 そう、鬼道の瞳は美神除霊事務所で助手をしていたころの俺とそっくりだったのだ。

 疲れているようで、しかし希望を失っていない目。

 苦労の中に、小さな幸せを見つけている瞳だ!!





 鬼道の瞳を見つめる。





 鬼道も俺の目を見返す。





「えっと〜〜どうしたの〜〜?」





 俺達は、まるで時間が止まったかのように動かなかった。





・・・・・・・・・ガシッ!!





 なんの合図もなしに、コンマの違いもなく同時に出した手を握り合う。





「澄川蛍人だ、蛍人でいい」

「鬼道政樹。俺も政樹でええ」





 理事長は急な展開について行けず、おろおろしている。





「え〜〜?え〜〜?なんで〜〜?」





理事長。

・・・・・・人は・・・分かり合えるモノなんですよ。





 まあこんな感じで俺達は親友・・・いや『心友』になったのだった。





〜〜蛍人、心友との出会い 了〜〜





















・・・って終わらせるな!!



「蛍人!!そっちいったで!それで最後や!!」



 ここは廃ビル。

 悪霊の溜まり場としてはよくある場所だ。



 今回の仕事はここに溜まった悪霊を除霊すること。

 だが『蛍人、心友との出会い』を上映しているうちに、もう仕事は終わりに近づいていた。





 一匹の悪霊が俺の方に向かってくる。





「シネシネシネシネシシシシシシネネネネネ!!」



 人の頭蓋骨だけが飛翔しているソレは、30mほどの距離を1秒ほどで0にした。

 かなりのスピードだ。



「シィィィィィィィィィィィィィネェェェェェェェェェェェェ!!!!」



だが・・・俺にとっては、そんなものカメさんに等しい!!



「グギャァァァァァァァァ!!」



 体をずらし、半身になって避ける。

 すれ違いざまに霊波刀で切り裂くのを忘れずに。



「死して屍、拾う者なし」



 決め台詞をきちんとつけるのも忘れない。



あれ?なんか違う?

・・・まいっか。



「ごくろーさん、蛍人」



 政樹が荒れた息を整えながら言う。



「お前もな」



 俺は整えるほど息を乱してはいない。

 こういう所は、鍛え方が違う。



ふっ、美神除霊事務所での生活はこんなもんじゃなかったからな!!

ああ!こんなもんじゃなかったともさ!!



「んじゃ、早く帰るよう言われてるからとっとと帰るか」

「せやな」


_______________________________



「澄川蛍人、鬼道政樹、戻りました」



 俺達が理事長の仕事部屋に行くと、そこはもぬけの空だった。



「あれ?尚香さんは部屋にいるって言ってたのにな・・・」



 と言いつつ俺達が足を踏み出した、その時。



パカッ



「「えっ?」」



 床がマンガのように開き、俺達はそこへ落ちていった。



「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」



 滑り台のようにパイプ状になっているそこを滑る。

 曲がりくねりスパイラルさせられて、少し気分が悪くなった。



「で、出口!?」



 2分ほど滑った頃、明かりが目に入る。

 

「「うわっ!」」


 
 滑り落ちるうちに付いた勢いを逃せず、俺と政樹はもつれ合って倒れる。



「くっ!」



 暗闇から急に明い場所に出たので、目が見えない。



「ようこそ〜〜」



 聞き覚えのある声が聞こえた。



そこで俺達が見たものは!?



<続くw>


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