椎名作品二次創作小説投稿広場


BACK TO THE PAST!

迷い


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 4/14

上空3000メートルほどの空の上。
そこにあるのは大きな黒い黒雲。
やがてその雲の粒子の一つ一つは互いに融合し、大きな水滴となる。
水滴となった雲はもはや空に浮いてはおられず、地上に向かって落下する。

その一滴の水滴は雲の合間を抜け、徐々に等加速度運動によって加速され下からの風圧により、おわんを伏せたような形になった。
なおも加速は止まらず、スモッグの中を通り空中の汚れを取り込みつつ酸性になり、重い翼を懸命に羽ばたかせる小鳥の脇をすり抜け、やがて


バンダナをつけた青年の肩にポツリと落下する。


その前もその後も連続的に雨粒はそこら中に落下していった。


雨はまだ降り続いている。





今横島はカオスと共に故事が途中で打ち捨てられて誰も立ち入ることは無くなった、赤茶けた地面の空き地にいた。

「いいか、もう一度説明するぞ?この偉大なる天才科学者ヨーロッパの魔王ことDrカオスは遂にコスモプロフェッサ以外の宇宙意思に抵抗する方法を見つけ出した。
その方法とは、文珠により時空超越機、いわゆるタイムマシンをだ、この宇宙から切り離す。それにより宇宙意思の邪魔は入らなくなるはずじゃ。そこで時空超越を行なえばほぼ確実に小僧は過去へと飛べるだろう・・・」



「・・・いきなり何を言い出すんだ?」
降りしきる雨の中、空き地にて、突然聞いてもいないのに分かりきったことを言い出すカオスに、横島は怪訝な顔をした。

横島はカオスの奇行に困惑しているようだが、まあ別に彼が読者に分かりやすく説明してくれることはよくある話だ。(原作テレサ編、ロボット三原則など)気にしてはいけない。

横島は、遂にボケちまったのだろうか・・・と、目の前の老人を哀れみつつ、空間切り離しの準備を着々と進めていった。

工事現場の赤茶けた泥に、ずいぶん前からこの日のために取っておいた文珠を自分たちを囲むようにして埋め込んでゆく。
さっき受け取ったカオスに預けておいた文珠のストックを、一つずつ取り出しては雨で柔らかくなった地面へと押し込む。
途中から我に返ったカオスがこうもり傘(カオス特製。なんとこれ、折りたたんで携帯できる!これはスゴヒ!!28万円、好評発売中)をかざして手伝い、準備はほどなく終了した。


後は、配置した文珠『空』『間』『切』『断』を発動させ、空間を切り離し、時空超越機を起動するだけで横島忠夫という青年はこの世から消滅する。
「それにしてもずいぶんと便利なものを持っておるのう」
「・・・へへへ。いいだろ」
この時、文珠の配置にはできるだけ空間の弱いところを見つけ、そこで事を行なう必要がある。
カオスにはかなり大掛かりなセンサーを使わなければそれが何処だか分からないが、横島にはそれらをリアルタイムで教えてくれる道具があった。
「あいつから勝手にもらったんだ」
横島は額の、かつてルシオラが使っていたバイザーを撫でながら笑って言った。


「そういえば小僧。例のしかけは大丈夫なのか?」
「おう、ばっちりだ」
少し前に雪ノ丞達と戦った時、横島は自分が消えても誰も悲しまないように細工した。と言っていた。もちろんその言葉に嘘はなく、彼はここ一年はかけてゆっくりと細工をしかけていた。
その細工とは強力な記憶削除。いたるところに設置された文珠が、横島がこの世界から消えた瞬間に連鎖しながら発動し、彼の関係者のほとんどが横島という青年の事を忘れ去る。
シロなどはは多分自分がいなくなれば悲しむだろうがやがて立ち直ってくれるだろう。
だがおキヌちゃんや小鳩ちゃんなどはいつまでも引きずってしまうかもしれない。優しい横島にとって、そんなことは絶対に避けなければならない事だった。



「しかし・・・・何なんだよコイツは」
横島は傍らのカオス式時空超越機189号を見てなんともいえない顔をした。
「何って・・・時空超越機だが」
「イエス・ドクターカオス」


それは一見すれば機関車そのまんま。

しかし、その先頭には・・・ドンとばかりに人型アンドロイド・マリアの顔が相当の威圧感とともに張り付いているのだった。






なんと言うかそれは・・・・・






機関車トー○スそのもの。
しかも細部がリアルで身持ちが悪い。

「確かに・・・確かに元ネタの映画もラストシーン辺りで機関車型タイムマシンでてきたよ。でも、こいつは・・・・・・」





いかんともしがたい沈黙が辺りを包む。

カオスも無言でいることから少々自覚があったようだ。

「・・・って、ちょっと待てよマリアがタイムマシンにくっ付いてたら一緒に過去へ跳んじまうんじゃないか?」
横島は重大な事実に気づき、カオスに向かって詰め寄った。
しかしカオスは、それがどうした?という顔でむしろ不思議そうに聞き返す。
「そりゃそうじゃ。ワシだって科学者。過去へ跳ぶなんてすごいことができるかもしれんと聞けば試してみるのはあたりまえだろうが」
「だからって・・・・」
横島は突然の事に困惑した顔を浮かべた。
しかし良く考えてみればカオスたちが付いて来た所で別に何一つ都合の悪いことは無い。それどころが今の自分を知る者がいることはかなり心強いことだった。
「分かった。よろしく頼む」
「任されたり」
「よろしく・ミスター横島」
なんだか良く分からないが、心強いチームが結成された瞬間であった。



「よし、さあ過去に向かって出発じゃ!!」
横島とカオスはタイムマシンに乗り込んだ。カオスが運転席、横島は本来は石炭が積んである車の上に搭乗した。
「小僧、燃料をよこせ」
横島は無言で背後にあった木箱を渡す。カオスはそのふたを取り去り、中からきらきらと神秘的に輝く石のような物をスコップでかき出した。
そして本来は石炭を入れるカマド(ごめんなさい正式名称は知りません)の中に放り込む。
きらきら輝く石はまるで湯水のように消費されてゆく。一応プルトニウムではないようだが・・・。
「・・・・なんか金銭感覚が狂うな」
横島は苦い顔をしてカオスが大量の精霊石をカマドに惜しげもなく放り込むのを見てつぶやいた。
精霊石、それはザンス王国という所ぐらいでしか採れないオカルトアイテムの中でもかなりの高位に値する超高級アイテムだ。
しかしそのぶんその効果は絶大で、どんな魔物にもダメージを与えられるほか、何かを清めたり、他のオカルトアイテムの動力になったり、その他にも応用はいくらでもある。
「わしも1000年以上生きとるがこんなことをするのは初めてじゃて・・・」

なんだかどきどきしてしまう作業はしばらく続いた。


ちなみに何故貧乏な彼らにこんなことができるかというと横島がすばらしく効率のいい金稼ぎを編み出したからだ。
その方法とは文珠を売りはらうことである。とまあ一言文珠を売り払うと言っても薬珍堂に売りこもうものなら三日ぐらいで世界は滅ぶ。
そこで横島は金が唸っていてなおかつ信頼の置ける人物に売り込むことにした。
それはオカGの核。美神美智恵。
この話は前から出ていたのだが、いくら横島でも文珠の危険性は十分把握していたため、自分の目の届かないところで使われるのをためらい、何度も断っていた。
しかし現状では自分はこの世界とはおさらばする身。まあちょっとくらいやばくなっても後は野となれ山となれ。
ということで全ての文珠に管理書類を一枚作ることで美神美智恵にのみ文珠を販売して巨額の富を手に入れたのだ。
おかげで現在、オカGの仕事率は跳ね上がり民間人大喜び、殉職者も減少、上層部もほっくほくだとか。


ざくり、とスコップを精霊石の山の中に突っ込み、がばっとすくい上げそのままカマドの中に投入する。
カマドの中では恐ろしい勢いで霊的反応が進み、途方も無い量のエネルギーが溜まってゆく。
「よし、こんなもんじゃろ」
カオスは木箱の精霊石を9割方ほどカマドの中に放り込むと額の汗をぬぐった。
後は文珠を発動さるだけだ。



横島たちに何故か物悲しい沈黙が訪れる。

ここの世界にはもう決別はつけた。未練ももう無い。そして自分は一刻も早く過去へと飛びたい。
・・・なのに、何でこんな気分になるのだ?
と、横島は妙な感覚にとらわれた。

雨の音がやけに大きく聞こえる。


「なあカオス、一つ聞きたい」

「何じゃ?」
カオスはカマドの中の様子を見ながら振り返らずに答えた。
「あんたは・・・大切なものを失った時、なんとしてでもそれを取り戻そうとしたことは無かったのか?」
カオスは振り返らない。
しかしそれは無理にでも後ろを振り返るまいとしているようにも見とれる。



「わしは・・・・・」


ビィ―――!!ビィ―――!!



突如アラームが空気を引き裂いて鳴り響いた。


「ドクターカオス・何者かが高速で接近中・至急戦闘または逃走準備を」


遂に過去へと跳ぶ準備が完全に整った横島。
しかし、彼らが過去へ行く前にはまだ一悶着が起こるのであった。


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