追いかけられる獲物─否、彼もまたハンターであろう。
横島忠夫は事務所の廊下を駆け抜けながら、夢(煩悩)に向かって燃えていた。
「フハハハハッ!! 逃げるッ!! 逃げきっちゃるぞぉッ!!」
その目は血走り鬼気迫るものがあった。
「逃げて、逃げきってそして…そしてその暁には…ッ!!」
ここで彼の妄想が映し出されるが、著しく良識の枠を超えるためカットさせていただく。
まあ、その映像を簡潔に述べるなら、次の言葉が適切だろう。
「ハーレムじゃあぁァァァァッッ!!!」
横島忠夫17歳。健全すぎる煩悩少年である。
◆
『アッハッハッ!! 彼は本当にわかりやすいねー!!』
うんうん、と頷きながらロキは随分とご満悦のようだ。
『おっと! どうやらレース序盤からもめているのは…小竜姫くんと斉天大聖かな?』
◆
「どーしてですかっ、老師!!」
「どーしてもこーしてもあるか、馬鹿者!!」
すたたたっ! と駆けながら、小竜姫は老師に説教されていた。
「いきなり超加速じゃと!? そんなもん使ったら、あっという間に追いついてしまうじゃろうがっ!!」
「だって、そうしないと…!!」
「いかん!! 自らの実力と知恵で走って捕まえるのじゃ!!」
一応、超加速も技なので実力ではあるのだが…。
斉天大聖の言うことももっともなので、ここは小竜姫にしっかり走っていただこう。
「も〜っ、分からず屋ー!!」
「な、なんじゃとうっ!?」
言い争いながらも足をとめないところは、さすがと言うか何と言うか…。
◆
『さーて、ゲーム序盤から波乱の予感だけど…そろそろ誰か追いつくんじゃないかな? 人工幽霊!』
《わかりました。》
そう言ってロキは、人工幽霊壱号に指示を出して横島をカメラに映し出す。
『おや? どうやら一番乗りは彼みたいだね。』
◆
「待ってたぜ、横島ッ!!」
「げっ!! 雪之丞!!」
そこには魔装術で霊気の鎧をまとった雪之丞がいた。
どうやら、身体能力を上げてから先回りをしていたらしい。
「な、なぜここが…ッ!?」
「ふっ! お前ならきっとここに来るとふんだからな。」
ここは、事務所の風呂場。
確かに横島がよく熟知している場所でもあり、また吸い寄せられやすい場所でもある。
「くっ!! ……ひとつ聞かせろ雪之丞。お前は何のために…?」
「う…ッ!! そ、それは…!!」
途端、だらだらと冷や汗を流し始める雪之丞。
それを見た横島は、ぴんと来た。
「さてはお前っ!! 俺の文珠で惚とか純とか作って、弓さんに使うつもりだったな!?」
あきらかにぎくっとする雪之丞。
「な、何を根拠にそんなこと言ってやがる!!」
「やかましい!! もー、ネタはあがってんだよ!! しらばっくれても無駄だ!!」
ネタ元はおキヌ(友人という立場を利用してのコネクト)より。
「…ふっ。バレてるからどうだって言うんだ。ついでに言うならタイガーも似た様な目的だぜ。」
友人を売る男、伊達雪之丞。
「どっちにしろ、テメーを捕まえればいいんだろうが!! 腕ずくでもなっ!!」
一瞬にして間合いをつめるべく、大地を蹴って肉迫する雪之丞。
横島もそれに応えて戦闘態勢に─。
「…って、まともに相手するわけねーだろっ!! そんな理由の奴には絶対捕まってやらん!!」
「ぶ…ぶわッ!?」
横島が紐のようなものを引っ張ると、ふいに雪之丞の頭上から大量の布が降ってきて視界を閉ざす。
「な、何だこりゃ!?」
悪態をつきながら雪之丞が這い出てきて振り返る。
そこにあったのは、なにやらレースのついたお椀型の布切れ……ブラジャー。
それに真っ赤になりながら後ずさる雪之丞だったが、ふいに悪寒を感じて振り返る。
そこにいたのは─。
「…何やってますの、あなたは?」
殺意をこめた声で呟いたのは、現在雪之丞と交際中(本人は認めたがらないが)の弓かおり。
そして、その隣でわなないているのは、もちろんこの下着の持ち主─。
「…横島くんのことだからここで下着と戯れてるんじゃ、って思ってたけど…まさかアンタとはね…!!」
美神令子の髪が、怒りのためかざわついていた。
それを見た雪之丞の顔が蒼白になっていくのはいうまでもない。(魔装術で実際には見えないが)
「い、いや!! 確かに横島はいたし、これは横島が─!!」
「問答無用ッ!!!」
◆
『うわお♪ 凄いコンビネーションだ! これは立てない雪之丞選手!!』
《…む、むごい…!》
画面に映し出される惨劇に、レフェリー姿のロキがはしゃぐ。
『さてさて、これで雪之丞くんはしばらく動けないわけだね。ところで横島君は逃げおおせたのかな?』
◆
とりあえず気の済むまで雪之丞をしばいた美神は、後始末を弓にまかせて辺りをさぐっていた。
(…確かに雪之丞が言ったとおり、ここに来たのね。でもそのまま浴室に入って、ここで途絶えてる。一体どこに…?)
あたりを見回しても、そこには抜け道などはない。
後々のことを考えると、そうやすやすと文珠は使えないはずなのに…。
だが、美神はある重大なことがらを忘れていたのだ。
標的は横島忠夫─。
彼に常識は通じないということを。
一応、リタイアではないので復活する可能性はありますが(笑)
さて、今回は謎を残して終わってみました。
横島は一体どこへ消えてしまったのか!?(って単純な問題ですけどね♪) (詠夢)
雪之丞は早速リタイヤですか。
皆が横島君の行動を読んでるのが面ろいw (紅蓮)
これだけの数のキャラクターを同時に動かすのは至難の業ですよ。
しかもギャグ精神もピカイチ。
今後は乱戦が予測されますが、大いに期待しております。 (核砂糖)
ひょっとしたら、後々復活するかもしれません。
なんと言っても横島君の友人ですから!(←関係ない)
核砂糖様、コメントありがとうございます!!
ここまで褒められると、もう感謝の言葉もございません。
勢いに任せて作者も暴走しつつ書いてますので、いつボロが出るかひやひやしてます(汗)
ご期待には応えられるよう(もちろんそれ以上を目指し)頑張ります! (詠夢)