椎名作品二次創作小説投稿広場


横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

一番乗り!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 4/ 8

追いかけられる獲物─否、彼もまたハンターであろう。

横島忠夫は事務所の廊下を駆け抜けながら、夢(煩悩)に向かって燃えていた。


「フハハハハッ!! 逃げるッ!! 逃げきっちゃるぞぉッ!!」


その目は血走り鬼気迫るものがあった。


「逃げて、逃げきってそして…そしてその暁には…ッ!!」


ここで彼の妄想が映し出されるが、著しく良識の枠を超えるためカットさせていただく。

まあ、その映像を簡潔に述べるなら、次の言葉が適切だろう。


「ハーレムじゃあぁァァァァッッ!!!」


横島忠夫17歳。健全すぎる煩悩少年である。




          ◆




『アッハッハッ!! 彼は本当にわかりやすいねー!!』


うんうん、と頷きながらロキは随分とご満悦のようだ。


『おっと! どうやらレース序盤からもめているのは…小竜姫くんと斉天大聖かな?』



          ◆



「どーしてですかっ、老師!!」

「どーしてもこーしてもあるか、馬鹿者!!」


すたたたっ! と駆けながら、小竜姫は老師に説教されていた。


「いきなり超加速じゃと!? そんなもん使ったら、あっという間に追いついてしまうじゃろうがっ!!」

「だって、そうしないと…!!」

「いかん!! 自らの実力と知恵で走って捕まえるのじゃ!!」


一応、超加速も技なので実力ではあるのだが…。

斉天大聖の言うことももっともなので、ここは小竜姫にしっかり走っていただこう。


「も〜っ、分からず屋ー!!」

「な、なんじゃとうっ!?」


言い争いながらも足をとめないところは、さすがと言うか何と言うか…。



          ◆



『さーて、ゲーム序盤から波乱の予感だけど…そろそろ誰か追いつくんじゃないかな? 人工幽霊!』

《わかりました。》


そう言ってロキは、人工幽霊壱号に指示を出して横島をカメラに映し出す。


『おや? どうやら一番乗りは彼みたいだね。』



          ◆



「待ってたぜ、横島ッ!!」

「げっ!! 雪之丞!!」


そこには魔装術で霊気の鎧をまとった雪之丞がいた。

どうやら、身体能力を上げてから先回りをしていたらしい。


「な、なぜここが…ッ!?」

「ふっ! お前ならきっとここに来るとふんだからな。」


ここは、事務所の風呂場。

確かに横島がよく熟知している場所でもあり、また吸い寄せられやすい場所でもある。


「くっ!! ……ひとつ聞かせろ雪之丞。お前は何のために…?」

「う…ッ!! そ、それは…!!」


途端、だらだらと冷や汗を流し始める雪之丞。

それを見た横島は、ぴんと来た。


「さてはお前っ!! 俺の文珠で惚とか純とか作って、弓さんに使うつもりだったな!?」


あきらかにぎくっとする雪之丞。


「な、何を根拠にそんなこと言ってやがる!!」

「やかましい!! もー、ネタはあがってんだよ!! しらばっくれても無駄だ!!」


ネタ元はおキヌ(友人という立場を利用してのコネクト)より。


「…ふっ。バレてるからどうだって言うんだ。ついでに言うならタイガーも似た様な目的だぜ。」


友人を売る男、伊達雪之丞。


「どっちにしろ、テメーを捕まえればいいんだろうが!! 腕ずくでもなっ!!」


一瞬にして間合いをつめるべく、大地を蹴って肉迫する雪之丞。

横島もそれに応えて戦闘態勢に─。


「…って、まともに相手するわけねーだろっ!! そんな理由の奴には絶対捕まってやらん!!」

「ぶ…ぶわッ!?」


横島が紐のようなものを引っ張ると、ふいに雪之丞の頭上から大量の布が降ってきて視界を閉ざす。


「な、何だこりゃ!?」


悪態をつきながら雪之丞が這い出てきて振り返る。

そこにあったのは、なにやらレースのついたお椀型の布切れ……ブラジャー。

それに真っ赤になりながら後ずさる雪之丞だったが、ふいに悪寒を感じて振り返る。

そこにいたのは─。


「…何やってますの、あなたは?」


殺意をこめた声で呟いたのは、現在雪之丞と交際中(本人は認めたがらないが)の弓かおり。

そして、その隣でわなないているのは、もちろんこの下着の持ち主─。


「…横島くんのことだからここで下着と戯れてるんじゃ、って思ってたけど…まさかアンタとはね…!!」


美神令子の髪が、怒りのためかざわついていた。

それを見た雪之丞の顔が蒼白になっていくのはいうまでもない。(魔装術で実際には見えないが)


「い、いや!! 確かに横島はいたし、これは横島が─!!」

「問答無用ッ!!!」



          ◆



『うわお♪ 凄いコンビネーションだ! これは立てない雪之丞選手!!』

《…む、むごい…!》


画面に映し出される惨劇に、レフェリー姿のロキがはしゃぐ。


『さてさて、これで雪之丞くんはしばらく動けないわけだね。ところで横島君は逃げおおせたのかな?』



          ◆



とりあえず気の済むまで雪之丞をしばいた美神は、後始末を弓にまかせて辺りをさぐっていた。


(…確かに雪之丞が言ったとおり、ここに来たのね。でもそのまま浴室に入って、ここで途絶えてる。一体どこに…?)


あたりを見回しても、そこには抜け道などはない。

後々のことを考えると、そうやすやすと文珠は使えないはずなのに…。

だが、美神はある重大なことがらを忘れていたのだ。

標的は横島忠夫─。

彼に常識は通じないということを。


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