邪神ロキ─。
北欧神話に登場する悪戯の神である。
魔術にも長け、またプレイボーイで知られるトリックスター。
しかし、神話後半になると次第にその邪悪さが目立ち始めるようになる。
最終的には光の神バルドルを奸計により殺害し、そのまま最終戦争ラグナロクの発端を生み出したとされる。
ちなみに、魔狼フェンリルや大蛇ミドガルズオルム達の親でもある。
「─そんな僕がここにいるのが、そんなに不思議?」
「不思議に決まってんでしょうが!!」
にこにことした笑顔を崩さないロキに、美神がくってかかる。
突如現れた邪神に、横島誕生パーティーの会場は騒然としていた。
「邪神クラスのやつが人間界に…それもちんけなガキの誕生パーティーに出席するなんて聞いたことないわよ!!」
「ちんけなガキってのは聞き捨てならないッスね!!」
美神のさりげない暴言に、横島が突っ込む。
「まあ、そうだけどね。でも何てゆーのかな…。同じ女好きとして興味がわいただけだよ。」
「興味がわいた…って、しかも女好き同士っていうそんな理由で!?」
「そーゆー人なんです…。」
隣に控えたジークが、溜め息混じりに言った。
その様子から察するに、ジークはさんざんロキのこういう性格に振り回されてきたようである。
「というわけで、僕にも出席させてもらえないかな?」
「……なんか企んでないでしょうね?」
「とんでもない! 僕は何も企んじゃいないよ。」
両手をあげて否定するロキ。
確かに何も企んで無さそうに見えるが……相手は神話界のトリックスター。
どんな手を隠しているものやら…。
「…俺は別にいいッスよ。」
「横島君!?」
「いいじゃないッスか。ここまで来てくれたのに無下に追い返すわけにもいかないでしょう?」
「……わかったわ。今日の主役はアンタだものね。」
美神がしょうがないといった風に納得すると、美知恵がロキのもとにやってきた。
「では、せっかくですから、乾杯の音頭でもとってもらえますかしら?」
「そうだね。それじゃあ、みんなグラスを取って!」
魔鈴が配るグラスを一人一人が受け取っていき、全員にいきわたったところでロキは満足気に頷く。
「それじゃあ。横島忠夫の誕生日を祝って…カンパーイッ!!!」
会場のあちこちでグラスを合わせる音が響く。
そのとき横島たちは気付くべきだったのだろう。
口をつけていないロキと、その隣で一口含んだ美知恵が妙に嬉しそうな顔をしていたことを。
どこか似た感じのする、してやったりな二人の笑顔に。
「…う…うぅん…? あれ…俺、いつの間に眠ったのかな…。」
横島はぼんやりする頭で周りを見る。
すると、隣で床に倒れこんでいる美神が見えた。
「美神さんっ!? 大丈夫ですか、美神さん!」
「ん…んぅ…横島くん…?」
どうやら寝ていただけのようで、横島はほっと胸をなでおろす。
そして、あたりの状況に気付いた。
まわりでは、やはり美知恵や西条など会場中の人間が倒れており、横島たちと同じように起き上がってきていた。
……と、そこで横島は違和感を感じる。
「あの…美神さん? この会場って、こんなに……広かったですかね?」
「え? ……!! 違うわ、横島くん…。会場が広いんじゃなくて……ッ!!」
美神が見上げるそれは、テーブルの足─。
遥か高みにある天井─。
「あたし達が縮んでるのよォ──ッ!!」
「な、何じゃこらァァァァッ!?」
まるで『不思議な国のアリス』のワンシーンのような異様な光景に、横島も気付いて叫びをあげる。
確かに今、自分たちは体長5cmほどに縮んでいたのである。
しかし、一体なぜ─?
「気に入ってくれた?」
唐突にかけられた声にふりむくと、そこには笑顔の美形の顔─。
「ロキ!! あんたやっぱりなんか企んでたわね!?」
「違うよ。僕『は』って言ったんだ。これは……」
「私との共同案よ。」
その声に後ろを見ると、起き上がっていた美知恵がにやりと人の悪い笑みを浮かべていた。
「ママ!! 一体、何を…!?」
「これはね…『余興』よ、令子。せっかくの祝いごとなんだから、楽しい方がいいでしょう?」
「余興〜?」
疑わしそうにする愛娘に、美知恵はさらに笑みを深くする。
その眼が何かを企んで輝いた。
「そう…。《鬼ごっこ》よ─!」
さて、この話までが下ごしらえになり、ようやく計画の内容が明らかにされていきます。
ロキが出てきた理由ですが、本当にそれだけの理由です(苦笑)
やはり、アシュタロスを倒したからってのもあるのですが、大きな理由にはなっていないと。
小さくした理由は、ルールの上でまあ、必要だったからです。次回で解説します。
お気に召していただければよいのですが…(汗) (詠夢)
軽く悪どそうですね〜美智恵w (紅蓮)
うちの隊長さんは、かなり悪どいです。娘いじり大好きですvv (詠夢)