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BACK TO THE PAST!

仁義無き戦い・開戦編


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 4/ 4

横島が目を覚ましたのはそれから2時間後の事だった。
「う・・・ん・・・あれ、皆は?」
――お目覚めですか。皆さんはもう仕事です。
物静かな人口幽霊一号の声が何処からともなく聞こえてきた。
「そうか・・・美神さん怒ってるだろーなー」
どよっとした空気を背負う横島に人口幽霊一号が笑いかける。
――くすくす・・・そうでもないみたいですよ?
「へ?何か言った?」
――いえ、なーんにも・・・
横島は、何かキャラ違くないか?という疑問を押し込めて、ソファーの上で寝返りを打つ。
「あ〜だりぃ・・・ちょっとやそっと寝たぐらいじゃあ全然回復しねぇや」
ぶつくさと文句をたれ、重い頭を抱える。
しばらくぼーっとしている横島だったが、不意に顔を上げた。
「そういえばさ、人口幽霊一号」
――なんでしょう?
「何か名前言いにくいからあだ名で読んでいい?」
――はぁ、まあ別にいいですが。
「じゃあ一ちゃん」
ガタンと、窓枠が音を立ててずれた。
――い、いっちゃんですか・・・長い間この世に存在していますがその用に呼ばれることは初めてです・・・。
「いいじゃんべつに。フレンドリーでいいと思うぞ?俺なんか、よこっちとか呼ばれてたぞ」
――そ、そうですか?
相手が机やロボットでも気楽に受け入れてしまう横島にとって家と和解するなど造作で無い事のようだ。
「と言うわけで一ちゃん、早速コーヒーでも入れてくれよ」
――いきなり何を言いますか・・・
「いいじゃんかよ〜まだ眠いんだよ〜」
――まあ無理ではありませんが・・・
「うんと濃いぃ〜のね」
――分かりましたよ。よこっちさん。
「へ?」
――くすくす・・・お返しです。

家とすらいい雰囲気をかもし出だす人物、横島忠夫なのだった・・・。

「そういえばさ、一ちゃん。何か面白い話でもないか?」
突然横島がフヨフヨと浮遊してきた極濃コーヒーのマグカップを受け取りながら言った。
――いきなりそんなこと言われましても・・・そうですね、シロさんとタマモさん喧騒が主ですね。
ちゃらららりら〜・・・
謎の効果音と友に空中に『美神除霊事務所の日常』などというホームドラマのような題名が浮かび上がった。
「手が込んでるな・・・」
――でしょ?

もはや『完全』にキャラが変わった人口幽霊一号、もとい一ちゃんと横島はシロタマの騒動や美神、おキヌ達のやり取りを見て楽しい時をすごした。

「ああ面白かった」
一通り映像も見終わり、横島は満足げにそう言った。それに対し、苦笑したような声が響いてくる。
――はて、横島さんにしては珍しいですね。いつもなら『このちょ−しで、入浴シーンでも行きましょーか??!!』などと言ってお騒ぎすると思うんですが。
横島はニヒルな笑みを浮かべながら言う。
「いや〜身体疲労がピ−クに達するとそういうのはあまり出ないんだよ」
そしてでっかい目のクマを眠たそうにこすった。
「兎に角ありがと、一ちゃん。面白かったよ。イヤー美神さんがあんな事してたとは・・・くははは!!」
――どういたしまして、でもオーナーには秘密ですよ。
「分かってる分かってる・・・・・・もし知られたら命が危ないって」
横島の一言にず〜んとした重い空気が滞った。
しばしの間どちらも言葉だ出せない状態が続く。

――あ、そうです。とっておきの秘密があるんですけど聞きます?
一ちゃんがその場を取り繕おうとやけに明るい声を出した。
「へぇ、教えてくれよ」
重い空気に押しつぶされちゃたまらん、と話に乗っかる横島。


――実は私、女です。

「マジか!!??」



その後も談笑をしたりしてすごす二人(?)であったが不意に横島が席を立った。
――どうしました?
「あ〜、ちょっと出かけてくる。野暮用があるみたいだ」
――横島さん?!
一ちゃんが止めるまもなく彼は外に走り去っていった。

空は黒雲が立ち込め、一雨来そうなうすぐらい空であった。



ここは山のふもとに作られた古びた公園。
人気の無い砂場に、古びたシーソー、さびた滑り台。
そして木の板の腐りかけた公園の定番、ブランコが風を受けてゆらゆらゆれていた。
「さあ望みどうり来てやったぜ。何者だ、あんた」
横島は先ほどからずっと公園の真ん中で殺気を放ちつづける人物に話し掛ける。
「おい、どうした。わざわざ来てやったってのにだんまりか?」
「・・・」
横島は敵を睨みつける。
そいつは全身をだぶついた黒いコートに包み何やら靄(もや)のような物を身にまとっていた。顔は包帯のようなものを巻いており、分からない。

だぶついた服装は筋肉の動きから攻撃を相手に読まれないようにするための戦闘服。
こいつ・・・強い・・・。

横島は心の中で汗をかく。

しかも今つかえる技はサイキックソーサーと霊は刀のみ・・・双文珠は使えないことは無いが後二回ぐらいが限度だ。霊力だってまだ半分も回復してねぇ・・・。
分が悪いけど美神さん達を呼ぶ暇はない・・・どうする?

横島が思考している隙間をついて黒コートは攻撃を仕掛けてきた。
ふっ、と姿が掻き消えたと思えばすでに横島の目の前に拳が飛んできていた。

何とかガードが間に合ったが一気に後ろへと吹き飛ぶ。
しかし今一瞬見えた黒コートの拳は・・・
「魔装術か!!」
黒コートはそれに答えずヒットアンドウェーを繰り返す。
魔装術、それは魔族と契約を交わした者だけが使えるという魔力の鎧。
大きな力を持つ鎧である。
しかし中途半端な使い手は力に取り込まれ魔族と化す。
横島の友人に魔装術を使いこなすものがいるが、彼ならこんな戦い方はしないはずだ。
横島の友人、雪ノ丞の戦い方はとにかく正面からぶつかって押して押して押し倒す。そんな戦い方であるはずだ。ヒットアンドウェーでちまちま戦うなど有り得ない。
機敏に動き回る黒コートに横島はなかなか攻撃を仕掛けられない。
「くっそ・・・雪ノ丞みたいな奴ならうまくさばけば勝てるのに・・・戦いにくい!!」

ぴくっ・・・

黒コートがわずかに怒ったように見えた。が、横島にはそんな細かいことに気づく余裕は無い。
「にしても・・・」
10メートルほど離れていた黒コートが次の瞬間には目の前にいる。
「・・っ!早すぎる!!」
横島は黒コートのすばやい突きをかろうじてかわしながら愚痴る。

何だ?超加速なのか?いや、そこまでできるパワーは無い・・・何故・・・。

戦いはヒットアンドウェーをかわしつづける形でしばらく滞っていたが横島に一瞬のチャンスが巡ってくる。

またしても黒コートが何メートルもの距離を一瞬で縮めた直後、運と偶然を味方にし、横島は黒コートが突き出した右手を捕まえたのだ。
「よっしゃ!どーだこれですばやい動きは・・・」
横島が勝ち誇った声を出す・・・が、

ぼふっ
「なにぃ〜〜〜!!」
黒コートの腕は霧のように霧散した。
逃げていく黒コートに横島は慌ててサイキックソーサー投げつけたが今度は体のほうも霧散して攻撃をすり抜けてしまう。
「バンパイアミスト?!」
それは吸血鬼だけができる自らの体を霧に変える技。同じく横島の知り合いにその技の使い手がいたが、彼は聖職者だ。魔装術など使えるわけがない。

まずい・・・。

横島は表面には出さなかったが内心かなり焦っていた。
あちらの攻撃は目に見えないし、こちらの攻撃はすり抜ける。
勝率は絶望的に低い。

・・・逃げちゃおうかな〜。

横島はいつもの横島的思想を持ち上げ始めた。頭の中にはすでに逃亡ルートが組まれている。
敵はこう見えても、人気の無いところで戦おうとする割と人情のある奴のようだから逃げても周りに被害が出るわけではないはずだ。

そのまま美神さんたちに合流すれば・・・


           ―また逃げるのか―


・・・だって勝てねぇよ。


           ―言い訳する気かよ―


・・・美神さんたちの協力を得れば別に、


       ―そんなだから女一人助けられないんだよ―


・・・!


       ―俺がアシュタロスを倒す?嘘つき野郎め―


         ―また誰かを見捨てるつもりか?―

      ―この程度の敵にビビッてんじゃねぇよ。俺!!!―

          ―俺は・・・「もう失わない!!」


気づけば横島は霊波刀を手に切りかかっていた。

きぃん!きぃん!

黒コートはこちらの霊波刀を弾いたり霧で無効化したりしながら霊波砲や体術で応戦してくる。
横島は未だに黒コートにこれと言ったダメージを与えられない。いっぽう横島の方は日ごろの疲れのせいで衰弱が激しい。

くそっ・・・考えろ。どこかにカラクリがあるかもしれない。なぜ間合いを詰めるのは恐ろしいほど速いのにこいつの攻撃自体は遅い?そして攻撃を避ける時だけは動きが遅い・・・わざわざバンパイアミストを使うまでしてよけなければならない・・・?

魔装術、バンパイアミスト・・・・どこかで聞いた組み合わせだ・・・でも何かが足りない?

・・・精神感能?

そうか!!


横島は突然距離を取り、目をつぶった。
黒コートも何事かと手を出さずにこれから横島がしようとする何かに身構えた。

横島は精神を集中させ、気配を探る。
どこだ〜どこだ〜・・・

「たぶん、そこだぁぁあああ!!!!」
横島は誰もいない砂場に向かってサイキックソーサーを投げつけた。

ちゅどーん
「グァアア!!」
すると誰もいないはずの砂場でくぐもった悲鳴が聞こえ、突然現れた大男が倒れた。

「もうネタはばれたぜ。ピート、雪ノ丞、タイガー」

「・・・ちっ」
「ばれましたか・・・」
「痛いですケンのー」

黒コートは包帯を解き、顔を見せる。そして纏わり着いていた靄は人の型をなし、倒れていた大男が起き上がる。

「雪ノ丞が戦い、タイガーが精神感能であたかも凄まじい動きをしているように見せかけ、ピートがバンパイアミストで雪ノ丞ごと霧化し、攻撃を避ける・・・いい作戦だったな。今まで異常な仕事が入ってきたのも俺を衰退させる作戦か?
というか、何でこんなことを?俺は恨みを買うことをした覚えは無いぞ」
横島が意外そうな顔でそう言った。

三人はじっと横島の顔をほとんど睨みつけるように見つめつづけている。
「な、何だよ」
三人のただ事ではない気迫にさすがの横島も少々たじろぐ。
「・・・おまえ、過去に行くんだろ?」
雪ノ丞がポツリと言った。
横島の表情が硬くなる。
「・・・誰に聞いた?」
横島がそう言うが無視してピートが続ける。
「それによって僕たちと、皆さんと二度と会えなくなる事は知っているんですか?」
「・・・・・・・ああ」
「知ってて行こうとしているんですかい?」
タイガーがうつむきながら言う。その顔は暗くなっていて伺えない。
「おまえらには関係の無いことだろう」
「てめえぇ!!」
「横島さん!!」
「横島さん!!わっしは・・・」
横島は続ける。
「・・・それで、どうしようってんだよ。力ずくで止める気・・・」ドウン!
横島の言葉を雪ノ丞の霊波砲が黙らせた。
「始めはそうしない予定だったが・・・どうやら痛い目にあわねーと分かんないみたいだな・・・」
タイガーも指をばきばき鳴らせながら雪ノ丞に続いた。
「わっしも久しぶりにカチンと来たケン。どうやら横島さんには、ちとお仕置きも必要のようじゃのー」
ピートは立場上しばらくどうすべきか迷っていたがやがて決心したように。戦闘体勢をとる。
「僕も、今回ばかりはあなたが許せません・・・」



向かい合う横島と雪ノ丞達。


「・・・来いよ、まとめて相手してやる」


ザ――ザ――・・・・

ちょうど雨が降り始めたその時。戦いの火蓋は切って降ろされた。


「ど、どうしよう・・・」
公園の近くの山の方でパピリオが一人焦っていた。

当初の作戦では三人が横島をぼこぼこに、そして自分が介抱。芽生える愛。と言う作戦だったのだが。

「何やってるんでちゅか・・・皆」

状況はどうしようもない状態になっていた。


またもや続きます


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