椎名作品二次創作小説投稿広場


彼の者纏いしは・・・混沌 

第2話 2度目の『はじめまして』


投稿者名:ATO
投稿日時:04/ 3/29

 心地のよいまどろみ。

 そうだ、あれはただの夢だ。

 目を開けば、またあの楽しい毎日が・・・。



・・・なんだ?



 目を開くと、そこは深い山の中だった。

 黒い、今は1m半ほどの長さになった龍が傍らにいた。



そうか・・・やっぱり、夢なんかじゃなかったんだな。



「戻れ」

 

 とりあえず龍を影に戻す。

 そして、俺は絶望しながらも、なぜか誰もいないあの町に戻ろうと思い文珠を二つ取り出した。
 
 ・・・だがそのとき、戦闘のせいか服がボロボロなのに気がついた。



「・・・この格好じゃ確実に職務質問だな」



 意識を集中させる。

 すると、黒く光沢を放つ布のようなモノが体を覆いはじめる。

 数秒後、なんとかシャツをジャケット、それにズボンとブーツに見えるような形になった。
 


「魔装術の応用だけど、うまくいってよかった」



 そして・・・



『転移』



 俺は・・・誰もいない思い出の町へと・・・。
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ない!ない!なぜだ!?



 そこには、あるはずの俺の家がなかった。

 襲撃された時、半壊したが確かにあったはずなのに。 



 と、そのとき・・・



なんだ!?この高まっていく、独特の指向性のない霊圧。



 人間にしては桁違いの力。
 


・・・まさか、冥子ちゃん!?



 数百年前に死んだはずの女性が思い浮かぶ。



冥子ちゃんはもういないはずなのに。

・・・まさか、時間移動したのか!?



 俺は、走り出した。

 会いたかった。

 会って言葉を交わしたかった。



 もし時間移動したのだとしても、冥子ちゃんが俺を知っているはずがないのに。

 だが俺の孤独感は、それほどまでに俺の思考能力を奪っていた。

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 六道冥子は困っていた。



「ねぇねぇ、君一人?一人じゃ寂しいだろ?俺も一緒してもいいかな?」



 今巷で評判の店にケーキを食べに来たのに、いかにも軽薄そうな男にナンパされていたから。



「えっと〜〜あの〜〜結構です〜〜」



 と、特徴的な間延びした声で言っても。



「そんな冷たいこといわないでさぁ。いいだろ?」



 ナンパ君は引き下がろうとしない。

 いい加減冥子の脆い我慢も限界だった。



「ふっ・・・ふぇ・・・」



 目尻にみるみる涙が溜まっていく。

 そして、さあ爆発するぞ!という瞬間・・・。



「こぉんのどあほうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 
 黒い"なにか"がナンパ君を吹き飛ばした。


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 俺がその霊圧を感じる場所へと急行した。

 するとそこには、オシャレなオープンカフェでケーキをつつく冥子ちゃんと彼女にしつこく声をかける命知らずな男がいた。

 冥子ちゃんはおそらく、俺が始めてあった時と同じくらいの歳だと思う。



ということは、やっぱり時間移動をしたのか?



 しかし、よく見れば冥子ちゃんはもうプッツン寸前。

 俺はうれしさに涙をこぼしそうになりながらも、プッツンを阻止するために走るスピ−ドを上げる。

 そして・・・。



「こぉんのどあほうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



 とりあえず原因とおぼしきナンパ男を跳び蹴りで蹴り飛ばす。

 

「ふぇ?」



 冥子ちゃんは急に現れた俺に驚いた様子で、ぽかんと俺を見ている。



「ほらほらほら〜、もう大丈夫だよ〜?変なお兄さんは排除したからね〜」



 子供をあやすように話しかける。



「て、てめぇなにしやが・・・」

「うせろ」

「は、はい〜」


 
 先ほどのナンパ男が何か言いたげだったが、一睨みで黙らせる。

 これでも齢数百を重ねた"人魔"横島だ。

 並の人間ではこの威圧に耐えられるはずもない。



「・・・ふぅ」

「あ、あの〜」

 
 
 冥子ちゃんのプッツンを回避したと安心していると、冥子ちゃんが恐々と俺に話しかけてきた。



「ん?なんだい?」

「えっと〜〜あの〜〜ありがとうございます〜〜

 しつこくて〜〜困ってたんです〜〜」

「いやいや、気にしなくていいよ。俺が勝手にやったことだしね」

「そうですか〜〜?あ、そういえば〜〜お名前は〜〜なんていうんですか〜〜?

 わたし〜〜六道冥子といいます〜〜」



・・・やっぱりか。



「あの〜〜」

「・・・あ、うんよろしく冥子ちゃん。

 俺はよこ・・・いや蛍人(けいと)っていうんだ」



危ない危ない。

この時代の俺がいるはずなのに、横島忠夫だなんて名乗ったらいけないよな。



「よろしく〜〜蛍人さん〜〜」

「それじゃあね、今度は気をつけるんだよ?」



 俺は冥子ちゃんに向けて手を上げ、そのまま別れようとした。



ガシッ!



 ・・・が、できなかった。



「えっと・・・なんだい?」

「お母様が〜〜人に助けてもらったら〜〜きちんとお礼をしなさいって〜〜」

「いや、俺は全然気にしないから・・・」



 正直、俺を知らない冥子ちゃんを見ているのは苦痛だった。



「お礼〜〜させてくれないんですか〜〜?」

 

 だが、その潤んだ子犬のような瞳で見つめられると断りようがなかった。



「よろしくお願いします」

「はい〜〜」



 うなだれて言う俺を見て、冥子ちゃんがとたんに笑顔になる。



ま、いいか・・・。


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