椎名作品二次創作小説投稿広場


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虎と屋敷と父母(ちちはは)と


投稿者名:cymbal
投稿日時:04/ 3/ 4

今、六道家の屋敷の中は騒然していた。

横島が消えた・・・・もっとも今は六道だが。

「誰か〜!地下にあったもの覚えている人いる〜!?」
冥子の母親の声が鳴り響く。しかし・・・返事はない。

だいたい六道家の敷地は半端ではない。
東京ドーム何個とかの世界である。誰も全てを把握していない。
ましてや、放ってあった地下室など誰が覚えているだろうか。

「奥さま・・・。私何か覚えがあるのですが・・・・。」
「何かしら〜フミさん〜!何でもいいから〜!言ってみて〜!!」
この六道家の中ではベテランの方に入るメイドである。
彼女は普段、冥子の身の回りのお世話を任されていた。表の顔ではあるが・・・。

「5年ぐらい前でしたか・・、旦那様が海外で買って来た椅子を地下に運び込んだ覚えがあります。」
「椅子〜?そんなものあったかしら〜〜?」
首を傾げる・・・・そんな昔の事、この人が覚えてるわけなかった。

「ええ、なんでも買ってきたはいいんですが、非常に危険な代物だそうで・・・。人目の付かない所に置いておいて欲しいと頼まれましたので・・・地下室に。」
「それ、確かなのね〜〜?」
「はい。間違いありません。」
そう言うが早く、彼女は夫の元へと足を向けた。
(椅子・・・・、何だったかしら〜?何か気に掛かるわ〜〜。)







その頃・・、平介とポーラは事件現場へ到着していた。
「ここが、金成木邸ですか・・・。」
一言溜息が漏れる・・・・。資本主義社会の成功者と言ったところか。
まるでお城みたいな屋敷だ。

金成木邸は、街のど真ん中に位置していた。
はっきり言えば悪趣味な建物と言えるかも知れない。なんせ金ピカに光りまくってるし。
この街での自分の力を誇示しているかのようにも見える。

「凄いわ〜、お金持ちさんは違うわね〜〜。」
「なんか惨めになってきますねー。」
世間的に有名とは言え、所詮ただの探偵である。そんな余裕のある生活ではないのだ。

二人が感慨にふけっていると、後ろから大きな巨体が迫ってきていた。
ぬうっ。
「どわっ!!」「きゃ〜!」
「待ってたんジャぁーー!!もうわっしには手が負えんですケン!何とかしてツカーサイ!!!!」

がしっ!二人は抱きつかれて身動きが取れない。
「わ、わかったから!離さんかい!!この馬鹿力が!!」
「きゃ〜〜〜!きゃ〜〜〜!」
ポーラさん、実は楽しそうです。

巨体の主の名前はトラップ警部。心優しい警部なのだが・・・、いかんせん無能である。
事件に駆り出されては、見当違いの推理を連発。古き良き探偵小説の鑑(かがみ)みたいな奴だ。


それでは、ここで事件の概要を・・・・・・。
この屋敷の主人、金成木三郎。彼が屋敷の一室で殺されていたのだ。
その部屋は何処かというとこの見取り図で・・、と言うわけにもいかないので文字で説明しなければいけない。つらいなあ・・・・。

まず、この建物は3階建てであるということだ。そして無駄に広い。
玄関に入ってすぐ広々としたホールになっており、玄関の真正面、部屋の四隅にドアがそれぞれ付いていて、サッカーコートの半分ぐらいの広さがありそうだ。
ここだけで、うちの事務所がいくつ入ることやら・・。うう、みんなビンボが悪いんや。

そして、4隅のドアを抜けた先は通路になっていて、右の2つのドア、左の2つのドアはそれぞれが繋がっている。んで通路の進むとはホールの裏側へと続き(正面のドアを抜けた先ね)、そこに階段があるというわけだ。

2階と3階は同じ作りに都合上なってて、真ん中に階段、後はそこから左右に部屋が広がって、どちらの方向にも10部屋ずつと。


などと長々と説明している間に、トラップ警部に連れられて事件のあった部屋へと来てました。
警察が一般市民である探偵にこんな所見せて良いのかよ!!っと言うことは置いといて、この部屋は3階の左方向に伸びた一番奥の1室。彼の寝室らしい。

「それで〜〜?死体は何処にあったの〜〜?」
「それなんジャケンノー・・・、死体はあそこに座っておったんジャ。」
トラップが指差した先には・・・・・椅子があった。大仰な細工が施してあり、その細工は文字のようにも見えた。

(・・・・・・・?どっかで見たよーな・・・・・・。)
ばしっ!!頭の中でなにかが弾ける音がした。
「これは・・・・・。」





気付いた時はベッドの上。天井だけが見えた。
「どうやら、目が醒めたようだね・・・横島くん。」
目の前で、眼鏡を掛けた医者っぽい人が顔を覗き込んでいた。

「・・えっ・・・・おれ・・何してたんだ・・っけ・・・。冥・・・子は?ここ・・・どこだ?」

医者らしき人は悲しそうな目をこちらに向けて、・・・こう言った。

「もう・・・・、いないよ。そしてここは・・・・」
バシッ!!





「ターくん〜!!」





「平介くん〜!?平介くん〜!?」
「えっ・・、あっ・・・・ポーラ・・・さん。・・・どうしたんですか?」
いつのまにかベッドの上で寝かされていた。なんだか頭が痛む。

(さっきのは・・・・何だろ?何か大事な事のような・・・、んっ?)
ふわっ。
ポーラさんの髪が顔の前で揺れる。彼女は俺に身体を寄せてきたのだ。
「よかった〜〜、急に倒れるから〜〜〜、ビックリしたの〜〜。」
彼女の目元には涙の後が残っていた。

「すいません、なんか心配させちゃって・・・・。」
「ううん〜、いいの〜〜。平介くんは私の大事な助手なんだから〜〜。」
甘えるような瞳が自分の心を貫きました。

視線が重なり・・・・・目を閉じる。

「ポーー・・・・」
「平介さん!!!わっし、もー心配で心配で!!!平介さんはワシの大事な友達ジャケン!!とにかく意識が戻って良かったんジャーーーー!!!」

・・・・・・・・二人の空気をぶち壊す暴風が吹き荒れる・・・・。

そして溜息がその場を包みこむのであった・・・・。












再び六道家・・・・・・
「存在を消滅させる椅子ですって〜〜!!!」
突然妻が飛び込んできた。えらい剣幕だが、昔買った椅子の事を聞きたいらしい。
「そ、そーだよ。でもあの椅子は文字の書かれた物を・・例えば本だね、そーゆう物を持ってないと力を発揮しないんだ。だからただ座っただけでは何も起こらないんだよ。」

愕然とした顔を見せる妻。何かあったのだろうか?
「なんでそんな物買ってくるのよ〜〜!!」
「君が欲しいっていったんじゃなかったっけ?」
「・・・・そうだった〜〜〜、かしら〜〜?」
急に弱腰になる。こうゆう所は昔と変わってない。今でもカワイイと思う。

「はっ・・そんな事どうでもいいのよ〜〜!!!忠雄さんがその椅子に座っちゃったのよ〜〜!!」
どがーーーん!
「な、なんだってーーーーーーー!!!あの椅子はどこかにしまってある筈じゃあ!?」
思わず大きなリアクションをとってしまう。昔のクセなのだが、今はそんな事言ってる場合じゃない。

「い、いつだ!?何時頃の話なんだ!?何を読んでたんだ!?」
「えっ〜、え〜〜っと、私が戻って来るまでだから〜〜、たぶん11時ぐらいかしら〜〜、読んでたものはわからないわ〜〜。」
腕の時計を確認する。時刻は、12時を示していた。

(1時間・・・・、まだ戻る様子が無いとすると短い本じゃないな・・・。やっかいな物を読んでなければいいが・・・・・。)
とにかくその場所へ!!彼は地下へと走り出した。

つづく・・・・


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