椎名作品二次創作小説投稿広場


文字

椅子


投稿者名:cymbal
投稿日時:04/ 2/28

幸せ・・・・それは探している時には見つからない。歩き疲れた時に、気が付けば側にあるもの。

「こ、これ全部ですかーーー!!!」
横島の目の前には、本棚がうんざりするほど並んでいる。
黒魔術の本、式神関連の本、神話、霊験、とにかくなんでもござれだ。
「そ〜よ〜、あなたには〜、六道家の人間として〜〜、色々な知識を身に付けてもらわないと困るの〜〜。」

ここは、六道の地下にある・・書庫・・って言ったらいいのかな。ほんとになんでもある家だ。
ここから部屋の端がかろうじて見える。めっちゃ広え。

(ううっ、東京都内だぞここ。とてつもない富の偏りを感じる・・・。俺やってけるのかな。)
今更ながら、自分が迷い込んだカゴの大きさにビビる横島。

「まあ〜、出来る事なら〜〜、全部読んで欲し〜わね〜〜〜!」

(・・・・無理じゃー!だいたい俺勉強自体ほとんどした事ねーし・・・。)
「そ〜なの〜?私〜ここ入ったの初めて〜〜。」

ずるっ!
(ほんとに読む必要あるのだろーか。)
良く見ると床にほこりがびっしりと積もってる。あんま、人入ってねーなあ・・。

お御母さんに目を向けると向こうは目を逸らした。あんたも読んでないな。

「じゃ〜、頑張ってね〜〜、私は〜用があるから〜。」
そそくさと部屋から出て行ってしまった。

残された横島と冥子。
(くっくっ・・密室に夫婦で二人きり・・・ならば読書なんぞよりやることは1つしか無いだろう!)
「な〜に〜?何するの〜、タ〜くん〜?」
「ああ!!なんで懲りないんじゃ俺はーー!!・・・っと昔なら言っていたろうが今は夫婦なのだ!!
つまり何しようが夫の胸先三寸!!冥子ーーー!!!!!!」

「あら〜〜、これ〜〜面白そう〜〜。」
すかっ
「ありゃ・・・・。」ぼふっ
ほこりが舞い上がる。

げほっごほっ・・・ぶっ・・
「あー、気持ち悪い。」
「大丈夫〜〜〜?」
すんなりかわされてしまった。成長したな冥子・・・・・。
美神さんのシバきのように、俺のリズムが読まれてしまっているようだ。

「あ〜、この本〜、昔〜読んだ事あるわ〜〜。こんな所に来てたのね〜。」
そう言って手に取った本・・・名探偵ポーラ。著者はアゲハ・クリスティーナ・奈々子。
日本ミステリー界の女王と呼ばれた人だ。代表作に「あら、誰もいなくなっちゃった」など。

「推理小説か、これなら読めそうだけど・・・あんま関係無いよなこの家と。」
冥子・・・っと呼びかけようとしたが、彼女は向こうの方へ行ってしまった。
「仕方ない、これでいいか。んー、でも一応もう1冊ぐらい・・・」
横島が右に視線を動かすと、もう1つミステリーの本が置いてある。
本を普段読まない横島でも聞いたことのある作品だ。
「シャルロッテ・ボムズの冒険」江戸荒川 放次(えどあらかわ ほうじ)

「これにしよう。どーせなら姉ちゃんが出てくる話の方がいいに決まってる。」
勉強とは名ばかりの読書である。

横島は周りを見渡す。
(どっか座れる場所は・・・・・・あれなんかいいかな。)
視線の先には、大仰な装飾を施した椅子が置いてあった。
良く見るとその装飾は、規則性のある文字のようにも見える。

「ふーん、高そうな椅子やな。まっ、いいか。」
椅子にどっかりと腰を降ろし、本を開こうと・・・・・・んっ?


(変だなこの椅子。なんか霊力を感じるような・・・・。)


「・・・まあ、気のせいだろ。」
強くなっても相変わらずまだ、自分の力を完全には信じていない。
それが彼の良い所に繋がっているのだが・・・、この時はそれを信じるべきだった。

本を開いたその時・・・・・・!!!! 
コトン。


冥子は横島を探していた。なんせ広い部屋だ。
見失うと1つ1つ本棚の間を確認しなければならない。
「タ〜〜くん〜〜、何処に居るの〜〜〜?」
少し離れていたら、なんかもう寂しくなったのだ。
まさに新婚って奴である。

ぱしゅーーーーーー!!!!!
冥子の目が横島を捕らえる・・・っといっても一瞬見えただけだった。
彼は消えてしまったのだ。光と共に・・・・・。

彼の消えた後に残っていたのは深緑色の珠。刻まれていた文字は・・・・・(注)
その文字の意味することはまだ判らない。

そこで、冥子の意識は飛んだ。

つづく・・・・。


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