椎名作品二次創作小説投稿広場


ドッグス オア ウルヴズ?

始まりは家出から


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:03/11/12

 第一章 これは犬塚シロが美神除霊事務所を家出した時のお話である。



 キッカケは些細な事だった。

毎日の様に繰り返されるシロとタマモの言い争いがその発端である。

 「この…バカイヌバカイヌバカイヌバカイヌ!!」

 「だから拙者は狼でござると何度も言っているであろうクソ狐!!」

 多少ヒートアップしているものの、ここまではいつもの事だった。だがこの時は、タマモが更に一言言ってしまったのだ。


 「でもアンタって名前からして犬塚じゃない。やっぱり犬なんじゃないの?」


  がーーん…


 シロはショックを受けた。確かに自分の名字は犬塚だ。そして思えば里のみんなの名字も犬の文字が入ったものが多かった気がする。あのポチも犬飼って名字だったし…まさか本当にそうなのだろうか…?

 「そ…そんなハズはないでござる!拙者は由緒正しい人狼の一族でござるよ!!」

 一瞬浮かんだ懸念を打ち消すようにまくし立てるシロ。

 「ふ〜〜ん……」

 「な!その態度は何でござるかー!!拙者は本当に…」

 「はいはい。分かってるわよ……犬なんでしょ?ホントは」

 「違うーー!!犬じゃない!犬じゃないもん!」

 ムキになるシロを軽くあしらうタマモ。そうこうするうち、シロが俯いて黙ってしまった。

 「う……う……」

 ちょっとからかい過ぎたかな?と思ったタマモは適当にフォローを入れようと思ったが、それは少しばかり遅かった。

 「あ、シロ…」

 「うわぁぁ〜〜〜ん!タマモのバカ〜〜〜!ショタギツネェェ〜〜……」

 そう叫びながらシロは外に向かって走っていってしまった。

 「アイツ〜…どさくさに紛れて人聞きの悪い事を…真友君はそーゆーんじゃないって言ってるのに…」

 

 この時点では事務所の誰もがこう思っていた。ああ、いつもの事か…でもお腹が空いたら帰ってくるだろう、と。

 しかし日が暮れても、翌日になってもシロは帰ってこなかったのだ。





 第二章 これはシロが美神除霊事務所を飛び出した後のお話。



 「シロちゃん…帰ってきませんね」

 「勢いで走って行っちゃったから、迷子にでもなってるんじゃないの?」

 「う〜〜ん、一昨日いなくなったんだから2日目か…どうします、美神さん?」

 「シロが必要な仕事は入ってないから、もう2〜3日様子を見ましょう。シロの事だし多分心配要らないわ」

 心配そうなおキヌと自分が原因のくせにクールなタマモ。そしてやっぱり心配そうな横島に、本当に全然心配していない美神。

 「いや、でも…」

 「うっさいわねぇ…そんなに心配なら自分で探せばいいでしょ?すごい勢いで走っていったプラチナブロンドでロングヘアーの女の子を見なかったかって聞き込めば、そのうち見つかるわよ。でも当然その間給料は出ないし、シロがどこまで走っていったか知らないけど遠くまで行く事になるんでしょうねぇ……」

 「そうっスね!もう2〜3日様子を見ましょう!」

 いつもの散歩の距離から考えて、シロが2日かけてどこまで行ってしまったかを想像した横島はあっさり妥協する事にした。隣でおキヌが呆れているが、ともあれそういうわけで事務所の面々は特にシロの捜索には動かなかったのだ。



 その頃、シロはというと人狼の里への入り口で立ち往生していた。

 「ウヲォォ〜〜〜ン…ウヲォォォ〜〜ン」

 飛び出した後、名前と自分の種族の事を長老に聞きに行こうと思い立って里まで帰ってきたのだが……勢いで飛び出したシロは通行証を持ってきていなかったのだ。

 「ウヲォォォ〜〜〜ン……ウヲォォォ〜〜ン…」

 人狼の里は結界に包まれていて、通行証を持たないものは入る事も見る事も出来ない隠れ里だ。ここまで来て引き返す事も出来ないシロは、仕方なく遠吠えでひたすら「誰か来てくれ」と呼びかけ続けた。

 そして呼びかけ続けて30分。3人ほど連れ立って様子を見にきた村人に中に入れてもらったシロは長老の家に向かった。自分の誇りに関わる疑問の答えをもらう為に。

 「ところで、何故すぐに来てくれなかったのでござるか?もしや、何かあったのでは?」

 道中、ふと気付いて迎えに来てくれた村人に聞いてみる。

 「ああ、気にするな。ただ単にメシ時だったから、食い終わるまで誰も行こうとしなかったというだけだ」

 「…そうでござるか…」

 その答えと、自分の空腹を思い出した事でヘコむシロであった。





 第三章 これはシロの話を聞いた後の里の長老のお話です。



 「………………シロよ……」

 「はい」

 突然帰ってきたので何事かと思ってみれば……何を考えているのだシロよ……

 

自分達は本当に人狼なのか?実は人犬ではないのか?この里の者に犬の名を持つ者が多いのはそのせいではないのか?

 いきなりそう問われた時は驚いたが、何故そう思ったのか聞いた所、友人(本人は友人ではないと否定していたが)に犬とからかわれて口論したから、と聞いた時はむしろ微笑ましく思った。

 あの時の一件で体は成長はしたものの、心はまだまだ子供なのだな……と。だが、シロは続けてこう言ったのだ。

 「と、いうわけで拙者改名したいと思うのでござるが、許可していただけるでござるか?」

 冗談ではない。何でそうなるのだ。改名したところでどうなるというのだ?

 「何故、改名したいなどと…」

 「犬塚でなく、狼塚と名乗れば犬呼ばわりはされずにすむからでござる!」

 …………………………………犬塚よ。お前、娘の教育間違ったぞ。絶対。

 

何やら力が抜けて行っているが、気力を振り絞って立ち直る。

 さて、まずは我らが狼の末裔である事から説明してやるか……

 「シロよ。改名などする必要は無い。我々は間違いなく人狼だ…忘れたのか?フェンリル狼に変じた犬飼の事を」

 「あ…」

 人間達から霊力を狩り集め、潜在能力を解放して先祖帰りを起した犬飼はフェンリル狼になった。我々が大神(狼)の末裔であるという紛れも無い証拠である。

 シロもそれに思い至ったのだろう。目をキラキラさせて、喜んでいる。

 「では、拙者はやはり犬ではないのでござるな!良かったでござる!」

 「それに名字に犬の一字を入れた家が多いのは……ぶっちゃけた話、狼という文字が名字に使い難かっただけじゃ」

 「…そ、そうだったんでござるか…」

 「うむ。納得してくれたようじゃな。……所でシロよ」

 「何でござるか?」

 顔を見れば分かる。こやつは何も分かっていない。だからこそ説教をしてやらねばならない。

 「改名をする、という事は犬塚という名字を捨てると言う事だ。それが分かっているのか?」

 「あっ……す、すみませぬ!拙者そこまで考えていなかったでござる!」

 そう指摘すると、シロは顔色を変え、あわてて正座しなおして頭を下げた。

 「うむ。わかればいいのだ。だが、お前は親一人子一人だっただろう?お前がそんな理由で犬塚でなくなってしまっては父親に申し訳がなかろう」

 「…ごめんなさい…」

 頭を下げたまま、もう一度謝るシロ。うむ、本当に反省しているようだし、説教はこの辺でよかろう。

 「これからは、よく考えてから行動する事も覚える事だな。……ところで久しぶりに帰って来たのだ。ゆっくりしていくのか?」

 「いえ、事務所の皆には黙って来たので…その、心配しているかと…」

「……本当に考えてから行動に移すようにした方がよいぞ、シロ……」

 仇討ちだと里を飛び出していったまま、無鉄砲な所は直っていないようだな…やれやれ。まだまだ子供、か…

 あ、そうそう忘れるところだった。これだけは言っておかねば。

 「ああ、シロ。今度来る時は土産を忘れるでないぞ。ドッグフードが良いな」

 それを聞いたシロは何故かコケていた。





 第四章 これは事務所にシロが帰ってきた時のお話。



 「ただいまでござるー!」

 ドアを開け、大声でただいまを言うシロ。黙って里まで行って来てしまったので心配をかけただろう皆に元気な姿を見せようという心遣いだ。

 「シロちゃん!?」

「どこで迷子になってたのよバカイヌ!心配して保健所に電話しちゃったじゃない!」

「シロ、今までどうしてたんだ?」

だだだだ…と足音を立ててやってきたおキヌ、タマモ、横島は口々に…若干一名は素直じゃないが、心配していた事を伝え、何をしていたかを聞く。

「心配をかけて申し訳なかったでござる。拙者、長老に聞きたい事が出来て里帰りをしていたのでござるよ」

「聞きたい事?」

タマモのセリフの保健所という単語が少し引っかかったものの、横島とおキヌに説明する事が先だと思って押さえるシロ。

「忘れたのでござるか、タマモ?お前が拙者の名前をバカにしたのを…里に帰って聞いてきたのでござる!拙者達は間違いなく人狼で、犬では無いでござる!!」

どうだとばかりに胸を張るシロ。そんな事で…と呆れる横島とおキヌ。そしてタマモは…

「へ?………あ〜あ〜、そんな事もあったっけね〜」

少し考えてポン、と手を打ってそう言った。どうやら忘れていたらしい。

「…ってホントに忘れていたのでござるか!」

「うん」

こくり、と頷くタマモ。

話の本筋には関係が無いが、それを見た横島が「う、ちょっとカワイイ」と口にしてしまい、おキヌに睨まれていた。

「(プチッ)うがぁ〜〜!!拙者はそのせいで改名まで考えたというのに、何で忘れるんでござるかぁ〜!!」

「落ち着け、シロ!事務所でケンカしたら後で美神さんがっ…」

「ま、まぁまぁ…シロちゃん落ち着いて」

タマモに襲いかかろうとするシロを2人で押さえる横島とおキヌ。平然とそれを見ながら話しを続けるタマモ。

「ふ〜ん。で、結局なんて改名したの?狼塚とかだったら笑うわよ?」

「ぐ…」

「図星?」

「違うでござる!拙者は犬塚のままでござるっ!……父上の残してくれた名字をそんな理由で変えてはならんと長老に叱られたでござるよ……」

長老に止められていなかったら狼塚と名乗るつもりだったシロは、あらためて長老に感謝した。

タマモは、シロも自分と同じく天涯孤独の身の上だと聞いた事があったのを思い出して、ちょっと気まずかった。

だから、いい事を教えてあげようと思った。

「ふ〜ん…でも、逆に言えばちゃんとした理由があったら名前を変えてもいいって事よね?」

「ちゃんとした理由って…例えば?それに拙者犬塚の名を捨てる気は…」

「横島って名前ならどう?結婚するって理由なら、多分ダメって言われないと思うわよ」

悪戯を仕掛ける時の笑みを浮かべてタマモがそう言った。

しばらく、沈黙があたりを支配する。



しーーーん…



そして、時が動き出す。

「オレかっ!?」

「タ、タマモちゃん、何を言ってるの!?」

「先生と拙者が……ウォォォ〜〜ン!!せ、先生っ!拙者を横島シロにっ…」

シロが横島に決定的な一言を言おうとしたその時。

「あ〜〜〜も〜〜〜〜うるっさい!!昨日は遅くまで仕事だったんだから静かにしてろって言ったでしょうが〜〜〜!!!」

自室の方から現れた、パジャマ姿に上着を羽織った美神令子の不機嫌そのものの叫びが邪魔をしたのだった。

狙ってかどうかはわからないが。





 第五章 これはタマモの一言が起した騒動の結果、どうなったかのお話。



不機嫌を隠そうともしない美神に横島がシロが帰ってきてからあった事を説明した。

いつもの事とはいえ、損な役回りではある。特に今回はシロが横島を名乗るという地雷が混ざっているのだ。

「あんた、シロにまで手を出す気!?このケダモノ!」

炸裂する右フック。

「ぶ!?俺が言ったんじゃなくってタマモが…」

「シロだけじゃなくってタマモにまで!?」

「いや、だから話を聞いて……ぶべらぁっ!?」

左のショートアッパーからの右ストレート!そしてトドメの神通棍の一撃が叩きつけられる!

その後もお約束どおりに横島は美神にシバかれ続けた。濡れ衣ではあるが、この場にいる他のメンツも止めようとしない。というか、止められない。

彼女達にはただでさえ朝が弱いのに、寝不足で起き抜けな為とても機嫌が悪い美神への生贄として彼を差し出す他に出来る事はなかったのだ。

「ごめんなさい、横島さん…」

「うう…申し訳ありません先生…無力な拙者を許して下され…」

「骨は拾ってあげるわ…」



約一時間後。思う存分暴れてスッキリしたのか冷静になった美神にシロが説明して、美神も事情を飲み込めた。

「ふ〜〜ん…横島クン?」

「な、なんスか…?」

未だ床に倒れている横島が、美神の問いかけにビクゥ!と震えて恐る恐る聞き返す。

その横島を横目で睨んで問い詰める美神。

「あんた…ホントにシロに手を出してないでしょ〜ね?」

「出してないってさっきから何度もゆ〜とるやないですかっ!なのに何度も何度もシバくとはどーいう事ですかっ!こうなったら償いとしてそのチチちょっとばかしもませて〜〜〜」

グシャ!

床から半ば物理法則を無視したように美神に飛び掛った横島は、美神の肘で打ち落とされ再び床へと倒れた。

「…ったく、ホントに学習しないわね、コイツは…」

これで終わればいつもの事ですんだだろう。しかし、この時はシロが一歩踏み込んだ。

「先生っ!先生はなんで拙者に手を出さないんでござるか?」

「シ、シロちゃん?」

「シロ?」

「答えてくだされ!先生っ!」

何故か動揺するおキヌと美神を無視して、シロはまっすぐ横島の目を見て真剣に問い掛けた。





 第六章 これは弟子のために災難にあう師匠のお話



「いや…だって、どうしてって言われてもな〜…」

あらためて聞かれると…シロがまだ子供だからと言うしか無いわけで…でもそれで今のシロが納得するとは思えんな…

「子供だからでござるか!?拙者はもう大人で御座る!せーりだってあるし、胸だってこの通り日々育っているでござるよ!」

そう言って胸を張るシロ。うっ、確かにこれはそろそろBカップに届くか…?

はっ、いかん!おキヌちゃんと美神さんの視線が冷たい!

「違うっ!俺はときめいてなんかいないっ!いないったらいないんや〜〜!」

ガンガンと壁に頭を打ち付ける。落ち着け!落ち着くんだ、オレ!シロは俺の弟子であいつはまだ子供だ!オレはロリじゃない!ロリじゃないんだ!

「先生…拙者は先生にとってそんなに魅力が無いのでござるか…?」

目に涙をためてこっちを上目遣いで見つめるシロ。

いつのまにこんな高等テクを…なんかメチャメチャ良心が痛むぞ。

「い、いやそんな事は無いぞ。だけどやっぱり…」

まだ早い。そう俺が言うよりも早くシロが叫んだ。

「だったら!だったら…拙者を嫁にもらって下され」

……………

ハイ?何故イキナリそこまでトビマスカ?

呆然としている俺をよそに、突っ走るシロ。

「拙者を、横島シロにしてくだされ!先生!」

ゴゴゴゴゴゴ……

背後からのプレッシャーで俺は正気を取り戻した。この感じ…美神さんだけじゃない、おキヌちゃんもか…俺は悪くないと思うんだけど…聞いてくれないんだろうな…

「……せんせぇ?」

シロが不安そうにこちらを見つめている。俺の返事を待っているんだろうが……

断ったら泣くだろうし、おキヌちゃんにも美神さんにも責められるんだろう…かと言ってOKしてしまったら、間違いなく美神さんに殺される。おキヌちゃんも黙っちゃいないだろう………どないせいっちゅーねん!俺がなにしたっちゅーんじゃ〜〜!!

うぅ…シロを傷付けないように断れれば、何とかなるかも知れん…やるだけやってみるか。死んだフリとかじゃどーにもなりそーにないからな…

「あ、あのな、シロ。結婚っていうのは男は18歳、女は16歳にならないと出来ないんだ。お前は…16歳よりもっと下だろう?」

よし。我ながらナイスな言い訳だ。心なしか背後からのプレッシャーも弱まった気がする。

だが、シロには通用しなかった。

「拙者の事なら心配ないでござる!以前西条殿が「君は人間ではないから、法律的にも何があってもおっけぃ」だと言っていたでござる!」

あ…あの野郎シロにまで余計な事をっ…

再び強くなったプレッシャーに急かされ、西条に対する怒りを一時押さえ込んでシロの説得を続ける俺。

「でっでも、俺もまだ17歳だしさっ。ほら、俺もお前もまだダメだろ?な?」

「分かったでござる!」

おお分かってくれたか、シロっ!偉いぞ、それでこそ俺の弟子!

「ならば先生が18になったら拙者と結婚するでござる!」

わかってねぇぇぇ!!このバカ弟子はわかってねぇよ!

俺が思わず頭を抱えた隙に、シロは再び玄関を開けて外に出て行ってしまった。

「約束でござるよ〜〜!」という一言を残して。

そして、とうとう極大になったプレッシャーに俺は振り返る事が出来なかったわけで…

俺が…俺が何をしたっていうんや〜〜!!!





 第七章 これはこの騒動を見守っていたタマモのお話



「へ〜…。良かったですね横島さん?」

「アンタ…ホントに手ぇ出すんじゃないわよ?」

またシロが出て行った後、横島は物凄い笑顔のおキヌちゃんと美神に釘をさされていた。

結構怖かった。



それから、シロがまた2日間帰ってこなかった。

あのバカイヌどこに行ったんだろう?

こっちが心配してやったっていうのに、全然学習していない。

やっぱりバカイヌ。



でもシロがいなくなった事で一番ワリを食っているのは横島。

シロを囲ってるんじゃないかって美神に部屋をガサイレされたり、シロに何かして、そのせいでいなくなったんじゃないかっておキヌちゃんに疑われたりしていた。

そーゆーわけで居心地が悪いせいか、横島は事務所にあんまり居着かない。いつもなら時給を稼ぐ為にも入り浸っているのに。

シロもいないし、お陰で平和なんだけどちょっと退屈。



「ただいまでござる〜!」

3日目の昼前に何も無かったみたいにケロリとした顔でシロは帰ってきた。

そして前にも増して問い詰める私達へこう答えた。

「へ?言ってなかったでござるか?長老に先生のところに嫁に行くなら改名してもいいって許可を貰いに行っていたのでござる」

一言も言ってないわよ、バカイヌ。

「へ…へぇ〜。で、許可は出たの?」

「勿論でござる!」

動揺しながらも、きっちり聞き出そうとするおキヌちゃん。そういう機微にさっぱり気付かず直球で返すシロ。

「そう…よかったじゃない、シロ」

「はいでござる!」

言葉とは裏腹に横島に向けてプレッシャーをかける美神。浮かれているせいで、さっぱり気付かないシロ。

あんた…凄いわ。シロ。

「先生!これで晴れて拙者達は許婚でござるな!」

周りの空気を全然気にせずに、ここでそのセリフを言えるって本当に凄いわよ。

私はこの後の惨劇を見たくなかったので、シロを誘って屋根裏部屋に退避する事にした。



部屋に戻ると、シロが真面目な顔で話し掛けてきた。

「タマモ…これで、良かったのでござるか?」

「良かったんじゃないの?あんた横島が好きなんでしょ?」

軽い感じで言い返す。真面目に恋愛について話すのは好きじゃない。

「そうじゃなくって……その、お前も先生の事を…」

「!!」

へぇ、驚いた…気付いてたんだ、シロ。横島と師弟揃って鈍いと思ってたのに…

「大丈夫よ。だって私は…」

シロを安心させる為に笑顔を浮かべて、諭す。

「タマモ…」

「愛人ってのが性に合ってるから」

すてーーん!

シロは座っていたベッドの上から転がり落ちた。

ふふふ…横島も好きだけど、シロも嫌いじゃないから両方いないとイヤなのよね。

この2人がいればこの先、ずっと退屈しないですみそうだし。

ま、そういうわけだから…

「よろしくね、シロ?」

私は極上の笑みを親友に送った。


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