椎名作品二次創作小説投稿広場


秋さがし!

シリアス路線爆走!ラブ・コメしてますか?


投稿者名:BOM
投稿日時:03/11/ 8

「おキヌちゃん、そっちあった?」
「ないです、横島さん」
「どーする?もう少し探してみる?それともあきらめる?」
「そーですね、もうちょっとだけ探してみましょうか」
「わかった、じゃあ何かあったら教えてね」
「わかりましたぁ」

俺とおキヌちゃんは松茸をあきらめて他のものを探すことにした。理由はおキヌちゃんが、

「あ、そういえば私、松茸は中腹に生えるって聞いたことあります。」って言ったからで。

さすがにいまから中腹に行ってたんじゃ時間がなさ過ぎる。
それよりなら他の秋の味覚でも見つけた方がお得だろう、ということになった。

・・・さっきのことは・・・うん、なんとか許してもらった。
数十秒間にらまれたあとで、

「もういいですよ、松茸、探しにいきませんか?横島さん?」って言って。

でもその後なんか嬉しそうだったのは何でだろ?
う〜ん、ま、いーか。でもあの時・・・おキヌちゃんに膝枕されてた時のあの安らぎは・・・?
まるでルシオラと一緒にいた時みたいな、そんな感じが・・・
そう思った俺は、おキヌちゃんのことが気になり始めた時のことを思い出した。





「ヨコシマ・・・」
「ル、」
「ありがとう・・・・・・」
「ルシオラーーーーーっ!!」

がばぁっ!

「うわあっ!?・・・・・・くそっ、まただ・・・・・・また、あの夢かよ・・・・・・」

アシュタロスとの戦いから数日が経った。
ルシオラとの別れからも・・・
ルシオラがいなくなったその日から、俺の心にはでっかい穴が開いたようだった。

「ルシオラ・・・俺は・・・俺はぁぁぁっ!・・・」

俺はその日、人知れず泣いた。


何日か経って、小竜姫さまやワルキューレ達がやってきた。
調査報告だと言うが、今の俺にはそんなことはどうでも良かった。
俺は屋根裏部屋で一人、ルシオラのことを考えていた。

(逢いたいのに・・・何で、逢えないんだろうな?・・・何で・・・?)

「横島さん?」
「!おキヌちゃん・・・・・・!」
「それ・・・小竜姫さまが持ってきたパピリオからの手紙ですね?」
「ああ・・・!読む?」

手紙の中身はパピリオとベスパの今の状況とかを書きつづったものだった。
それと・・・・・・

『ついしん アシュ様と土偶羅様に私の代わりにお花をあげてくだちゃい』

「パピリオより・・・・・・」
「・・・泣かせるよなあ・・・!ホレ、受け取れ!」
「花をそなえるよりワシが回収されたこと伝えてやらんかい!!」

そう、そこにはもうすぐ逝ってしまう予定の土偶羅がいた。

「でもどーせ、廃棄処分だし・・・・・・」
「何でワシだけ死刑なのよ!?ワシがアシュ様に絶対服従なのはそうプログラムされたからで・・・!」

何やらほざいている土偶羅。

「土偶羅さんのことなら・・・今、ヒャクメ様とジークさんがジャンケンしてますよ。
 二人ともあの情報処理と演算能力が欲しいって・・・」
「ホレ見ろホレ見ろ!」

ちっ!廃棄処分がっ!

「・・・・・・・・・それじゃ結局、ルシオラだけが・・・・・・・・・」

(・・・死ぬことになるのか・・・)

ポウッ・・・・!
俺の手の中に、ルシオラの化身、蛍が現れる。
そう、結局ルシオラの蘇生に必要な霊波片は集まらなかった。
本当に、もうあとわずかなのに・・・・・・

「俺の中にルシオラの霊体は山ほどあるのに、なんで使えねーんだよ!?」
「魔物ならともかく、お前は人間だからな。そう何度も粘土みたいにちぎったりくっつけたりでは
 魂が原形を維持できんのだ」

哀しいけれども、現実を言う土偶羅。

「何かあるはずだ・・・!!何かテが・・・・・・!!」

(何で逢えねーんだよ!?何で逢いたくても逢えないんだよ!?逢いてえよ・・・ルシオラ!)

「横島さん・・・」

きゅっ
おキヌちゃんが俺の手をやさしく包む。

「小竜姫さまたちも一生懸命考えてくれてます。きっとなんとかなりますよ・・・!」
「おキヌちゃん・・・」

俺の手を握るおキヌちゃんの手は、小さくて、それでいてとても温もりがあって・・・心地良かった。
そしてその時気づいた。この娘はいつもそうだ。いつでも俺のことを見ていてくれる。
もしかしたら、この娘がいたから、俺はルシオラがいなくなった今でも横島忠夫でいられたのかもしれない。


そしてこの時から、少しずつだけど俺の中でおキヌちゃんが大切なものへと変わっていった。
それに気づいたのはもっと後になってからだったけど。


・・・その後いろいろあって、将来ルシオラが俺の子どもとして転生するかもしれないということを知った。
また、いつかルシオラに逢える・・・そう思った俺は、決めた。

「俺・・・悲しむの止めにします!彼女のためにも一日も早く、俺・・・」
「そーそ!前向きに考えて・・・」
「一日も早く子供作ります!さしつかえなければ今ッ!?」
「結局それがオチかいッ!?」

どばきゃっ!!


そうだ・・・前向きに生きなきゃ。ルシオラが命を賭けて守ったこの『命』を絶対に簡単に散らせたりはしない!
将来生まれてくるかもしれない、ルシオラの為にも・・・!
そして、もう二度とこんなことがないように、大切な人達を守りきる!
これからは、『守られる命』から、『守る命』になるんだ!


その後からだった。だんだんとおキヌちゃんを意識するようになったのは。






「う〜ん、ないですかね?別に松茸じゃなくてもいいんですけどね」

さっきからずっと探してますけど、全然見つからないんです。秋の旬なものが。
でも、辛いとかそーゆーのは全然ないです。だって、さっき横島さんが・・・

「よっし、これからはおキヌちゃん一本で行こう!」って、言ってくれたんですもの。

あれがホントだったら、これ以上嬉しいことはありません。
幽霊の頃から横島さんのことが好きで、今まで・・・それなりにアピールしてきました。
それでも横島さんったら、全然気づいてくれないんですもの。・・まったく、鈍感なんだから。
でも今、それが実ろうとしているんです!
2人でずっと一緒にいれるんです!
2人の愛の巣の第一歩なんです!
「らぶ☆ゆーとぴあ」はすぐそこなんです!

これからお付き合いすることになっちゃって、そしたら手なんかつないで、一緒にデートしたりして、買い物したりして・・・
それで、それで、その・・・

「横島さん・・・」
「おキヌちゃん、キレイだよ・・・」

・・・ぼっ!

あうあう、また暴走しちゃいました。それはまだ先のお話ですよね?


でも、もしあれがウソだったら・・・本心じゃなかったのなら・・・私は・・・
こんなこと考えちゃいけないハズなのに・・・何でなんでしょう?
やっぱり、横島さんだけじゃなく、私の心のどこかにも、ルシオラさんのことが気にかかってるんでしょうか?

突然現れて、見事横島さんを射止めたあなた。正直、恨めしく思いました。
でもその反面、羨ましくも思ってたんです。
私も、あなたみたいに勇気があれば・・・そう思ったことが一体何度あったことでしょう?
夜も眠れないで、そう思ったことが、一体・・・

ルシオラさん?もし、今、こんな私を見てたら・・・
あなたのその勇気、少しだけ、ほんの少しだけでいいんです。
どうか私に・・・譲ってもらえませんか?横島さんに、告白する勇気を・・・

“あなたのことが・・・好きです”

と、面と向かって言える勇気を・・・



「お〜い、おキヌちゃん?どこ〜?」

そんなことを考えてると、横島の声で現実に引き戻される。

「は、はいぃ!?こ、ここですぅ!」

慌てて裏声になってしまうおキヌ。

「あ、いたいた。おキヌちゃん、さっき見つけたんだけどさ、これ」
「あ、これって松茸じゃないですか?」
「え?そーなの?あっちにたくさんあったんだけど」
「じゃあもっと持って行きましょうよ。美神さん、喜びますよきっと」

2人は先ほど横島がいたところに移動。するとそこには、

「わぁ、すごいじゃないですか。いっぱいありますよ」
「じゃあ全部持ってこうか?」
「全部じゃ多すぎですよ。でも持っていけるぶんは持って行きましょう?」
「そーしよっか」

しゃがみ込んで松茸を集める2人。もう手に入りきらないほどになってしまった。

「そろそろいいんじゃない?おキヌちゃん」
「そうですね、じゃあ行きましょうか」

立ちあがる2人。だが・・・

「キャッ!?」

おキヌがバランスを崩して倒れそうになる。どうやら足下に石があったようだ。それを横島、

「危ない!!」

がしぃっ

おキヌちゃんの頭と背中あたりを押さえ込む。
力一杯押さえたおかげで倒れるのを防いだが、力をいれすぎたせいで・・・

ぎゅっ・・・・・・

おキヌちゃんを抱きしめる形になってしまった。

「大丈夫?おキヌちゃ・・・え??」
「あ、ありがとうございます。横島さ・・・よ、横島さん!?」

今の状況に気づく2人。
どっくん、どっくん。まるでお互いの心臓の鼓動が聞こえるような、そんな気がする。

「あ、ゴ、ゴメンおキヌちゃん!」

そう言って離れようとする横島。だが、

ぎゅう・・・

おキヌが横島の服を掴む。驚く横島。

(お、おキヌちゃん!?こ、こんな積極的だったっけ?)
「・・・横島さん?」
「はっ、はいっ!?」

今度は横島の声が裏返る。

「1つだけ・・・聞いてもいいですか?」
「な、何を?」
「さっき言ってくれましたよね、“これからはおキヌちゃん一本で行こう!”って。あれ・・・本気ですか?」

(さっきのって・・・それだったのか。何で迷ってるかな?そんなの・・・)

「・・・そんなの、決まってるじゃないか。ホントだよ・・・本気に決まってんじゃないか」
「でも横島さんは、ルシオラさんのこと・・・今はどう思ってます?やっぱり、忘れられませんよね?」

“ルシオラ”という言葉を聞いたとき、横島の表情が確実に変わった。
それは動揺が混じったような、それでいて決意がうかがえる表情で。

「・・・うん。ルシオラは、心から俺が惚れた女だ。決して忘れることなんてできない。
 どんな奴からも、絶対に守る!・・・そう思っていた。
 俺にとって、アイツは“必ず守るべき女性”なんだ。」
「やっぱり・・・」
「でも、それはおキヌちゃんも同じ。おキヌちゃんはルシオラと同じ、いやそれ以上かもしれない、
 “守らなきゃならない、一番そばにいて欲しい”今の俺にとってはそんな存在なんだ」
「!」
「だから俺は、精一杯おキヌちゃんを守る!こんな風に言うとルシオラの代わりのように
 聞こえるかもしれないけれど・・・ルシオラの分まで、絶対におキヌちゃんを守ってみせる!」

その眼には偽りはない。純粋な決意が溢れてきている。この人は、全然ウソを言ってない。
そう確信したおキヌは、ぎゅっ・・・と、横島を抱きしめた。
そんなおキヌを抱き返しつつ横島は思った。

(なあ、ルシオラ・・・、これでいいよな?お前は千年待ってた人にゆずるって言ったけど・・・
 今の俺は、この娘を・・・おキヌちゃんを守り抜きたいんだ・・・)

「横島さん?」
「何、おキヌちゃん?」
「私からも言わせてもらっていいですか?」

すうーっ・・・

深い深呼吸をするおキヌ。そして、

「私は・・・あなたのことが・・・好きです。ずっと、一緒にいてくれませんか?」
「もちろん、俺の方こそ。一緒にいてくれないか?これからも・・・」
「横島さん・・・」
「はははははは・・・」
「ふふふ・・・」

なぜだか笑ってしまう2人。そして、時が止まる・・・

「おキヌちゃん・・・」
「横島さん・・・」

2人が見つめ合う。おキヌちゃんが目を閉じる。もう、言葉なんていらない。
横島がそっとおキヌちゃんの顔に近づいて・・・

2人の唇が触れあう・・・




その瞬間、

「「「あーーーーーーーーーっ!!」」」

と、両サイドから声が。
驚いて見てみると、雪之丞、シロ、タマモがそこに。びくぅっとなって離れる2人。
ラブコメのお約束『とてもいいシーンで邪魔が入る』の図であった。

続く


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