椎名作品二次創作小説投稿広場


黒き天使にささげる

少年は悲しき悪魔と出会い、漆黒の羽を手にする


投稿者名:誠
投稿日時:03/11/ 7


私は彼を愛していた・・・。
彼はいつも私にやさしくて、私はいつも素直じゃなかった。

ある日彼はいつもどおり人間の精気を吸いに行った。
いつもどおり彼は帰ってくるはずだった・・・。


彼は帰ってこなかった。


なぜ私は早く彼に想いを伝えなかったのか?
勇気がなかったから。素直になれなかったから。

なぜ彼は帰ってこれなくなったのか?
人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!人間が殺したから!


私は人間を許さない・・・。
この怒りが理不尽な怒りだということはわかっている。
だけど人間を許さない!

弱肉強食、痛いほどわかる。この世の真理。絶対の法。
だけど私は許さない!

彼を奪った人間を・・・。彼を滅した人間を・・・。彼を苦しめた人間を・・・。










「どうだい?シロくん、タマモくん。なにかわかったかい?」

西条は二人が同時に床のにおいをかぐのをやめたので期待を込めて聞いた。



日本でも屈指の力を持つゴーストスイーパー、山本龍二の死体が発見されたのは美神除霊事務所などの大手GS事務所が一連の大量殺人事件の捜査、解決をGメンと合同で行うということが発表されてから二日後のことだった。

なんの手がかりもなかった捜査本部は早速捜査を開始していた。



「なんかおかしいでござる。前回の時とは違って被害者の死臭に混じってなんか別の匂いがするでござる。」

「これは・・・フェロモン?でもなんで・・・?今まではこんな匂いなかったのに・・・。」

「フェロモンだって?じゃあ被害者のあのやつれようは・・・まさか淫魔に?だが淫魔が犯人だとしたらなぜあんな・・・?」

西条が言うように淫魔ならただ人間の精気を奪えばいいだけだ。しかし今回の被害者の傷に生活反応があったことから生きたままいたぶられ、そして精気を吸われ殺されたことがわかる。

「今回の事件の犯人は今までの事件の犯人とは違うということね・・・。」

美智恵が結論を出す。しかしその顔色は優れない。

「何でこんなに事件が重なるのよ・・・。」

美智恵の言葉はすべての捜査員が感じたことだった。






「で、犯人は違うやつなのかい?」

「ええ、神父。今回の犯人が淫魔だということはわかったのですが、今までの方の犯人がわからなければ意味がありませんわ。」

「でもママ、前回の目撃者が犯人は天使だっていったんでしょ?」

令子が多少不機嫌そうな顔で尋ねる。

「そうよ。その線から小竜姫様に神界のほうでの調査を求めたわ。」

「先生、そのことについて妙神山から調査結果がきています。数ヶ月前地上に任務で降り立っていた権天使、ハミエル様が・・・堕天していたそうです。」

「なぜ・・・なぜ堕天したんだね。」

いつになく強い口調で唐巣が西条にたずねる。

「そこまでは・・・わからないそうです。」

唐巣のいつにない口調と西条の言葉に皆一瞬静まるが美智恵が口を開いた。

「わたし達は対策を練らなければならないのよ。いまはなぜ堕天したのかはいいわ。今一番の問題は次に誰が狙われるのかがわからないことよ。狙われたのはすべて金持ちということぐらいしか共通点はないわ。」

最後のセリフ『金持ち』という部分で唐巣、西条も美智恵とともに令子をみる。

「わ、わたしは狙われる覚えはないわよ!」

目を泳がせそっぽを向く令子。

「まぁいいわ。とりあえず淫魔のほうはほかに任せてわたし達は被害者たちの共通点の調査をするわ。一刻も早く!」

美智恵の全員を鼓舞するような一声で会議は終了になった。







「ごっそーさーん!!」

美神除霊事務所でおキヌがつくった晩御飯にありついた横島は一通りくつろいでから事務所を後にした。

「ふー、まったく美神さんも人使い荒いなー。自分達は捜査があるからっておれとおキヌちゃんだけに仕事させて・・・。」

ぶつぶつと文句を言いながら家路につく横島は見知った顔をみてとっさに電柱のかげに隠れた。

「あ、あれはピート・・・。しかも綺麗なねーちゃんと一緒や・・・。なにっ!!」

横島は叫んだそりゃあもう驚愕の表情をして・・・。
横島の友人、バンパイア・ハーフのピートが美しい女性と熱いくちづけをかわそうとしているのだ!

「コラ―!ピートー!何をしとるんじゃおまえはーーー!!」

横島は叫ぶとピートの頭をぶん殴った。
ピートは吹っ飛んだ。横島は女性の方を見た。悔しそうな顔で女性は横島を睨んでいる。

なぜかピートは起き上がり、横島に礼を言った。

「よ、よこしまさん・・・。助かりました。」

頭をおさえ少しよろめきながらピートは女性の方に向かって身構えた。

「横島さん!気をつけてください・・・。そいつは淫魔です・・・。」

「淫魔?このムチムチのねーちゃんが!?」

「ふんっ残念だったねぇ。もう少しであんたの精気もすべて吸い取れたのに・・・。」

「あんたの精気『も』?ほかにやられたやつがいるのか?」

横島は霊波刀を出し、身構えながらきいた。

「ふん、ゴーストスイーパーの男の精気をすべて吸い取って殺してやったんだよ!」

「なぜだ!淫魔は精気をすべて吸い取って人間を殺したりしては人間と共存できなくなる。そんな自分達が狙われるようになるようなことはしないはずだ!」

「ふんっ、そんなものは関係ないね!」

淫魔は叫ぶと同時に爪を伸ばし横島に切りかかった。

横島は霊波刀で左手での攻撃を受け止める。しかし、淫魔は残った右手で横島の左わき腹を貫こうとした。

「ダンピール・フラッシュ!!」

淫魔はピートが放った光弾をかわすために後ろに飛ぶ。

―『脱』―

横島はその隙を逃さずに文珠を投げる!
しかし、次の瞬間なぜか文珠は横島のもとへ戻ってきて、文字通り横島の服が脱げてしまう。

「なにっ!!」

横島は叫ぶがもっとビックリしたのは淫魔だった。

「なにやってんだ変態!!さっきのは・・・文珠だね。そうか、あんたがアシュタロスを倒した文珠使い、横島忠夫!」

淫魔は計算しはじめる。目の前にいるのは素っ裸の文珠使い横島忠夫。しかもさっきから霊力が上がっている。(美女に裸を見られている状況が横島の煩悩を刺激している。)そして、バンパイア・ハーフ。二人同時に相手をするのはきつい。しかし、逃がしてくれそうにはない。

淫魔は軽く舌打ちをして攻撃の体勢をとる・・・。そのとき、



「横島さ〜ん、忘れ物ですよ〜。」

おキヌが右手に横島の忘れ物(レンタルビデオショップの袋だ)をもってやってきた。

「おキヌちゃん!きちゃだめだ!」

横島が叫ぶ。しかし淫魔はその隙を逃さなかった。おキヌにむけて黒い妖気の塊を連続で撃つ。

―『速』―

横島は文珠を発動するとすごいスピードでおキヌの前にでて妖気弾を弾く。
しかし、妖気弾は何発も打ち込まれてきた。

「バンパイアミストッ」

ピートがおキヌもろとも霧になり避難する。

横島が最後の妖気弾をはねかえして周りを見ると淫魔はもう逃げた後だった。




「おキヌちゃん、怪我は?」

横島がさわやかな笑顔でたずねると、

「大丈夫です。・・・でも・・・。」

「でも・・・?」

「はやく服を着てください!!」

その時横島は自分がまだ裸だったことに気づいた・・・。








「ハア、ハア、ハア・・・。」

なんとか逃げ切った淫魔は裏路地の壁にもたれて荒く息を吐く。

「くっ、さすが魔神を倒しただけのことはある・・・。」

横島は妖気弾を弾きながら文珠『矢』で淫魔の左肩を貫いていた。

「くっ、わたしに力があれば・・・。彼の復讐を果たすことができるのに・・・!」

淫魔は悔しそうに壁をたたいた。

「力がほしいか?」

壁の上に黒い羽を生やした美しい男がいた。

「あんただね。さっき文珠をはね返したのは!」

淫魔は男に詰問する。

「そうだ。おまえは力がほしいのだろう?おまえの目標もわたしの目標も同じだ。人間への復讐・・・。どうだ?協力するのなら力をやるぞ?」

「・・・わかった。」

少し考えてから淫魔は言った。

「わたしの名前はエミリア・・・。あんたは?」

「わたしの名はハミエル、堕天使・ハミエルだ・・・。」






「でもなんで文珠がはねかえってきたんですか?」

ピートは服を着ている横島にたずねる。

「ああ、これだよ。これが飛んできて文珠にあたってはねかえしたんだ。」

横島は一枚の羽を取り出しピートに渡した。
それは黒・・・いや、漆黒の羽だった・・・。


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