守れると、信じていたんだ。
目の前で血に濡れて倒れているひとがいる。
それは他の誰でもない、自分の母親で、その姿は間違え様もないのに、なにかの間違えであってほしいと思った。
単なる勘違いだと。
目の錯覚だと。
けれど、つんと鼻につく血液どくどくの匂いや、さび付いた空気の感触、そしてそのひとの存在が全てを本当だと教えてくれる。
心臓のおとがヤケに大きく聞こえる。
手足の感覚が、ない。
やけに、喉がかわく。
「ままっ」
叫んでいるはずなのに、その呼ぶ声は驚くほど力ない。
震える足を懸命に動かし、何度もつんのめりながら、誰より大切なひとのところへと、いく。
ぱしゃん
と生暖かい血溜まりの上に膝をつき、母親をかかえよるとするが、ずるりと血が、腕をすべり、うまく抱えきれない。
「………まま」
搾り出すような、声。
まだ、身体はあたたかい。
生きている。
死んでない。
助けけるんだ。
「絶対に、助ける」
ぐっと、唇を結び雪之丞。
血溜まりのなか、膝をつき、母親を背負おうとする。
が
雪之丞は発育が遅く、標準以下の体型と体力しかもっていない。
そんな子供に、女性とは言えオトナの人間、しかも意識を失った人間を抱えきれるわけもなくばしゃん、とその場に倒れこむ。
床に倒れこみ、全身に血が付着する。
ぜえぜえと肩で呼吸を繰り返しながら、床に手をつき、そしてまた背負おうとする。
背負えたとしても、進めるわけがないのに。
「……………なんで」
雪之丞は、頬を涙で濡らしながらその言葉を繰り返した。
なんで、自分はこんなに非力なのだろうか?
大切な人が死にそうなのに、助ける事もできない。
護るどころか、護られる事しか、できない。
「ちきしょお」
もっと、この腕の力が強かったら。
もっと、この足が早く歩く事ができたら。
もっと、ちからが、あったら。
守れたのに。
それでも、懸命に震える足で前に進む。
ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返しながら、前に進む。
ここから、一番近い病院は距離にして約五キロ。
この辺には公衆電話もなければ、雪之丞自体も、小銭(金銭自体)を持っていない。
更には、住宅街を離れているため民家自体がない。
だから、人目のつくところまで背負って運ばないと。
そうしたら、誰か救急車をよんでくれる。
そして、病院に、いけばきっとこんな傷、治るから、ぜったいに治るから。
それだけを、思い雪之丞は足を進めた。
つづく
…つーかオッケイなのだろうか?これ…すんごいダークだよ(汗
…もんごる相撲が読みたくて書いたなんていえないよなあ(おい (hazuki)
ゆっきーママの覚悟、わかるけど・・・ゆっきーのことを考えると・・・つらいなぁ。
投稿、お疲れ様でした。次回も楽しみにしてます。 (NGK)
雪之丞は僕としても好きなキャラクターなのですぐに話しに入れました。
こんなシリアスな雰囲気もけっこう好きなのでこれからもそんな話を宜しくお願いします。 (サシミ)
雪之丞主役の話はあまりないのでけっこう楽しめました。
子どもの頃の雪之丞の設定もいいですけど、母親の設定もこれまたいい〜〜〜(笑
後半は話全体がメチャクチャかっこよかったです。 (鷹巳)