椎名作品二次創作小説投稿広場


残像。

瞬間


投稿者名:hazuki
投稿日時:03/ 4/ 2

この女性の一族を表す言葉に、血族という、言葉がある。

普通この言葉から連想されるのに、血縁関係にある親族というのが一番妥当である。

が、この女性の一族に言うならば、違う。

有る意味、これほど簡単にこの女性の一族の、特異さを表しているのかもしれない。

なぜならば、この女性たちの力は、特異な一族だけが持ちえる力を使うには、有る一定の条件が必要なのだから。

其すなわち、術者の『血液』

ともすれば、失血死の恐れをまねくかのような大量の血液と呪。

そして一族にだけに、伝えられている印。

これらが全て揃わないと、開放できないのだ。


そして、その代償として得る力は、凄まじいの一言につきる。

まるで自分の命を切り取って、燃やしているかのような凄まじさ。


その力の解放の後にちらばる、自分の血と自分以外の血液が溢れ返る、凄惨さに眉をひそめ名づけられた、一族の名前が『血族』



肉親は、みんなこの力を解放して死んだ。


文字どうり、あたりを血の色にして。

そんなふうに自分も死ぬんだと思っていた。

嫌だった。

とても嫌だった。

こんな力いらないと、何度も叫んだ。

血の海に沈む自分を夢に見て、泣きながら、目を覚ました。

闇のなか伸ばす手は、誰もつかんでくれないと思っていたのだ。

だけど、掴んでくれるひとがいた。

笑ってくれた。
お日様の下でそんなこと大した事じゃないって言ってくれる友達が、居た。

もういないけれど、その人は、自分の宝物を私に預けてくれた。

その宝物は、ぬくもりと、切なくなるくらいの、優しさをくれた。

切なくて、悲しくもないのに、涙が滲むほど嬉しいをくれたのだ。

だから、いいやと思う。

ほんとうは、もっともっともっと生きていたかったけど、可愛い我が子のお嫁さんでも見て、小姑にでもなりたいなぁなんてことも思ったけど


まぁ、こんなんもありかな?と



ぶしゅっと、

肉を貫かれる感触に眉をしかめながらも左手で印を結ぶ。

色を失った唇がわななく。

額には油汗が流れ、身体は激痛のため硬直している。

けれどその唇は、悲鳴ではなく、『呪』を紡ぐ。

右手は、逃がさないとばかりに男の身体を掴む。


「その呪はっ!!!!」


男の驚がくの表情と、揺れたような声。

この声に重なるように、小さいけれど凛とした声がこの空間を支配した。



『記憶封鎖』


つづく


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