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天使と戯れ悪魔と踊れ

第二話「まずは私と踊りましょう」


投稿者名:矢塚
投稿日時:03/ 3/ 3

 日本の80%程度の国土面積にカトリック教徒が大半を占め、GSの最高峰でもあるバチカン市国を内包する特殊な国家、イタリア。
 ヨーロッパ諸国は修行と称する出稼ぎスイーパーに対しては、比較的寛大だ。大抵の場合には、GS免許さえ携帯していれば、各国の協会において簡単な手続きのみで仕事を請けられるし、入国の際に強力な対霊装備を持ち込んでも特に厳しいチェックを受けるわけでもない。
 しかし、ここイタリアはその限りでは無かった。この国のGS関係者は、どちらかといえば排他的な傾向にあり、良く言えば同郷意識が少々強い。バチカンの直系とも言える込み入った事情もあるかもしれないが、よそ者、正確には他流の除霊技術をあまり認めたがらない。
 自分達の除霊技術に対して、絶対の自信と誇り、さらにはGSの最高峰たる自負を掲げた国家と言えるだろう。
 そのイタリアの首都であるローマに、唐巣は今向かっていた。
「本協会に所属していない他国籍のGSは、月に一度協会本部まで出頭し、詳細な活動報告書を提出のこと」
 イタリアのGS協会が、外国籍のスイーパーに対して発行している規約の一文である。
 要は、この国には本国のGSがいれば十分であり、よそ者が勝手をすると目障りだから隅のほうで慎ましやかにやっててね。
 それも目の届く範囲内で、ということだ。
そして、今日がその出頭日にあたる。
 所属していたのが日本の教会とはいえ、そこを破門されたという立派な経歴を持つ唐巣が、どのようなすばらしい待遇を受けているかは、推して知るべし。
 ナポリから協会本部のある首都ローマまでのさして長くない移動を、唐巣は電車に委ねる。座り心地があまり良くないシートに尻を冷しつつ、胡散臭い目で対応する協会職員と、除霊斡旋先の紹介所でいい加減な応対を繰り返されるかと思うと流石に気が滅入ったが、仕方ない。
 唐巣にとっては破門されたとはいえ心は主と共にあり、己の道を見つけようとするのにイタリアという国、正確にはバチカンに一番近い国で修行をすることが意味のあることに思えたのだから。

 バチカン市国に程近い場所にイタリアのGS教会本部は建っており、ビルの周りは観光客でごった返していた。毎月ここに来る度に、もっと閑静な場所に本部を置けばいいのにと唐巣は思いながら、観光客の入り乱れる通をすり抜けて、本部のビルに入っていく。
 ビル1階の受付に、唐巣が先月行った詳細な除霊内容を記したレポートを提出する。一つの仕事につき、原稿用紙25枚から30枚程度のものを要求されるので、これを書くだけでも一仕事であり、除霊よりもこのレポートに手こずったというのはよくある話だ。
 今回唐巣が提出した書類はおよそ300枚程度。コンスタントに難度の高い除霊を請け、平然とイタリア語でレポートを提出する唐巣は、破門されたGSの名よりも、その実力の方が職員間では評価されつつあった。
 その後、先週の大赤字を出した一件の時に入手した不自然な霊体片の解析を協会本部に依頼しておいたので、その検査報告がどうなっているか受付の若い男性職員に聞いておく。
「……ああ、承ってますね。えーと、どうなってんのかな? 解析自体は終わっているようですが……研究室の方に問い合わせておきますから、ここにいて下さい。研究所職員の手が空いたら、対応させますから」
「……ありがとう、そうさせてもらうよ。……あなたの親切に祝福がありますように……」
 必要以上に慇懃な礼を、こめかみに浮き上がった血管共々唐巣が言うと、若い職員は急がせますからと付け加え、おびえた声で電話を研究室にかける。 
 今のやり取りを見ていた別の職員から『除霊レベルは高いくせに料金はかなり低くて、国内のGSは手を出したがらないからよそ者にでもやらしとけリスト』を借りて、同フロアーにある休憩用ソファーに体を沈ませながら次の仕事を探し出す。
 ここ最近疲れ気味なので、居心地のいいソファーでタバコとコーヒー片手にゆっくりとしたかったが、残念ながら禁煙中の身であり、ポケットから飴玉を取り出して口の中で転がす。
 突如として、入り口付近でなにやら喧騒が始まり、ぼんやりとリストを眺めていた唐巣もそれに気付いてそちらに目をやる。
 そこには何人かの男性職員と、彼らに囲まれて立つ女性が一人。
 そして、唐巣があんぐりするほどに、その女性は異質であった。
 彼女は取り囲んだ男性職員より頭一つ分背が高い、どうやら190cmはありそうで、白に近い金髪が、肩の辺りで切りそろえられている。その顔はとても美人とは言い切れず、強い自我を宿した切れ長の二重の目に、寝不足なのか濃いクマを貼り付けている。唐巣より二、三歳は年上だろうか。黒いパンツスタイルのスーツが、妙に似つかわしい。
 その第一印象は、ファッションショーに出てくるような、強烈な個性を持ったモデルだ。
 とはいえ、その外見は異常という感情を引き起こすほどではない。
 唐巣が驚愕するほどのインパクトを与えた理由は他にあり、それ以外にはありえなかった。
 それはつまり、彼女はその傍らに、使い魔とおぼしき『悪魔』を引き連れていたのだ。
 その悪魔は一抱えあるぐらいの大きさで、蛇のような目に長細いしっぽをつけたずんぐりとした体型。薄汚れたような黒い体毛を張り付かせ、口からは気色悪い舌が飛び出ている。
 時折、職員に向かって大きく口を開けて威嚇し、頭に響く甲高い奇声をあげる。
 唐巣が彼女を見てあんぐりとした理由をまとめると、『パリコレのモデルみたいに強烈な女性が、白昼堂々悪魔を従えてGS協会に乗り込んできた』だろう。
「……だからっ! ここがどこか分ってるのか? あんたはっ!」
「まったく、なに考えてんだか」
「あんたなぁ、何度言ったらわかるんだ?」
 どうやら職員には顔見知りもいるらしいが、それらの怒号を女性は平然と受け流している。
 取り巻く職員を毛筋程にも気にかけていない女性が、フロアー内をぐるりと見渡す。人を探すような素振の彼女と唐巣の目が合い、しばらく二人で見詰め合ってしまう。じっと唐巣を見ていた女性がふいに、にこりと微笑むが、唐巣はその微笑に不吉なものを感じてあわてて目をそらす。
 目をそらした態度に気を悪くするでもなく、女性が唐巣に向かおうとすると職員達が彼女の前に立ちふさがり、早々に退去するように命令する。
 しばらくの間、職員から女性に向かって一方的な騒ぎが続いたが、それは唐突に終了した。
「ええいっ! いい大人がごちゃごちゃと騒ぐんじゃぁないわよっ!! 私はそこに居るGS唐巣さんに用事があるだけなんだから、それさえ済めば頼まれなくてもこんな陰気臭いとこ、さっさと引き上げるわよ。さあっ、はやくおどきっ! ……私の機嫌がいいうちに退かないと、……呪い殺すわよ?」 
 どうやら彼女は悪い意味で有名らしく、最後のかなり危ない台詞が微笑付きでその口から漏れると、取り巻いていた職員全員がいっせいに道をあける。
 7〜8メートルほどの人垣という名の花道が彼女から唐巣まで出現し、その中央を拍手代わりの畏怖のこもった表情を全身に浴びつつ、威風堂々と闊歩してくる。
 腰掛けている唐巣のすぐ目の前に彼女が立ち、見下ろすように顔を覗き込む。
「GS唐巣さんね?」
「ああ、そうだが……君は?」 
 目の前の女性と悪魔を見比べながら、不審を隠す事無く訊ね返す。
「私は、ジゼル。ジゼル・クラッセ。少しお時間、よろしいでしょう?」
 ジゼルと名乗る女性の有無を言わせない口調と、この状況を明らかに楽しんでケラケラ笑っている黒い悪魔を見やり、唐巣は今自分がまわりからどういう目で見られているのだろうと、他人事のように考えていた。

 ジゼルと名乗る女性の強引さと、成り行きを見ていた協会職員の無言の圧力に屈した唐巣は、協会本部に程近いカフェテラスに場所を移して彼女の話を聞くことにした。
 周りを歩く観光客や、店員の好奇に満ちた視線が注文したコーヒーに程よい味付けをしてくれる。
 しかし、悪魔を従えて堂々としている人間とはいえ、どのような事情があるかは本人のみぞ知るわけであり、表面上はまったく落ち着いた様子を取り繕って彼女に問いかけた。
「さて、私に何の用かな?」
 コーヒーをすすっていたジゼルはその言葉を聞くと、すいと目を細め口元には薄笑いを浮かべる。
「キキキッ! こんなボンクラそうな日本人じゃ、聞くだけ無駄だキィ!」
 ジゼルより先に、黒い悪魔が口を挟む。
「おだまり。ベリアル」
 一言呟いた彼女の左手の指が小さく不規則な動きを見せると、ベリアルと呼ばれた悪魔の体が一瞬ショートしたように発光し、ぶすぶすと煙を立ち昇らせて彼女の足元に転がった。
「うわ……」
 悪魔に対する躾といえども、この女性は少々厳しいなぁと思いつつ、迂闊なことを言ったら自分が二の舞になりそうなので口を噤んでしまう。
 その唐巣の反応を無視して、ジゼルが口を開く。
「私の名はジゼル・クラッセ。黒魔術を中心に結界術等も修めている呪術師、とでも言えば聞こえはいいかしら? もちろんGS免許はこのとおりだけどね。でも、それなりのお仕事にはあり付いているわ」
「キキキッ。どんな仕事かは、聞かないほうがいいキッ!」
 瞬く間に復活したベリアルが楽しそうに、騒ぎ立てる。唐巣は騒がしい悪魔を見つつ、悪魔と契約したものが免許の取得や更新が出来たという話は聞いたことはないが、それなりの仕事があるのはいい事だとだけ思うに留めた。
「そして、あなたの名は、唐巣和宏。かつて日本の教会を破門されながらも、未だに主に心を寄せるGS。若手ではトップクラスの実力を兼ね備えており、今は更なる実力向上の為にここイタリアで修行に励む毎日。恐らく悪魔を従えた呪術師とは、一番気が合わないと思われる」
 くすりと笑って、唐巣の紹介までするジゼル。それに対し何か言おうとするが、結局何も言わずに黙っている。
 その沈黙を受けて、彼女は続けた。
「さて、本題に入りましょうか。今回私があなたを訪ねた理由は二つ、一つは先日あなたが入手した人工霊魂片の入手経緯を詳しくお聞かせ願う為。もう一つは、あなたがこの腐れ悪魔、ベリアルを封じることが出来るかどうかを見極める為よ」
 唐巣の目をしっかり見据えて、言いよどむ事無く彼女は話す。
「ベリアルの方は特に急ぐ訳ではないから、後々ゆっくり相談させていただくけど、一つ目の方は急ぐ上にかなり重要だから、是が非でも今お聞かせ願いたいの。よろしくて?」
 傲慢なうえに自己中心的な物言いに、唐巣は少々腹が立ったが、自分に救いを求めるものを無碍にする性格ではなかったし、人工霊魂という台詞に引っ掛かるものもあった。
「ふむ、やはり好き好んで悪魔と契約をしているわけじゃあなかったのか……それにしてもベリアルとは立派な名だね」
 大層な名を冠した、見るからに低級の悪魔に目をやり唐巣は続けた。
「で、その人工霊魂というのはなんだい? 私にはイマイチ何のことか、心当たりがないんだがね。詳しく、事情を聞かしていただけるんだろうね?」
 もちろんこのタイミングであり、それなりの心当たりはあるが、わざわざ向こうのペースに引きずられる必要は無いし、何より今の状況を理解する情報が少しでも欲しかった。
 唐巣のとぼけた物言いに対し、皮肉な笑みを口元に浮かべる。
「もちろん、詳しいお話をお聞かせしたいのはやまやまなんだけど、後には引き返せなくなるわよ? あなたの身の安全を考えたら、素直に聞かれたことに対してだけ答えるのが一番いいと、私は思うわ」
「……なるほど、傲慢の塊のような質問におとなしく従って答えるのが、一番いいわけだ」
 傲慢のあたりを特に強調したうえに、さも厭そうな感じを込めて唐巣が言う。
「そうね、何の質問をするでもなく、ただ言われるままに答えるのが、さらにいいと思うわ」
 しれっと何事にも動じない口調でジゼルは答えるが、そのこめかみが僅かにひくつく。
「私もそのほうが賢明な気がしてきたが、しかし、どう云う訳かは知らないが、今はひどく口が重いうえに胸までもやもやしている有様でね、なかなか思うようにしゃべれそうも無いなぁ。どうしたら、私は気持ちよくしゃべれるのかなぁ?」
「あらそうなの? 見た目よりも、それなりに繊細なのね。」
「どこかの自己中心女のように、神経がワイヤーロープで出来てるわけじゃぁないさ」
「ふふふふふふふふふふ」
「はははははははははは」
「キキキキキキキキキキ」
 乾いた二人の笑い声にベリアルの奇声も加わり、異常な空気がカフェに流れる。傍から見れば和やかな笑顔だったが、一触即発の空気を大いにはらんでおり、危険を感じ取った店員の目に恐怖の光が浮かぶ。
 テーブルを挟んで、しばらく互いに一歩も引かないにらみ合いが続くが、唐突にジゼルが大きく息を吐き臨戦態勢を解く。
「――まあ、確かにいきなり訪ねてきて、今の物言いは失礼だったわね、ごめんなさい」
 いきなり素直に謝った彼女に対して、肩透かしを食らったような唐巣は何も言えなくなり、うむと唸って黙り込んでしまう。
 まるで猫の目のようなめまぐるしい彼女の変化に、唐巣は完全に主導権を握られる。一枚も二枚も、彼女の方が上手であった。
 先程の緊張感をころっと忘れたように、ジゼルは言う。
「あなたは先日、修行を兼ねた除霊の現場において一片の霊体片を入手し、それをの解析を研究所に依頼した。私が知りたいのは、その霊体片を入手した時の詳しい感想、それだけなの。いつ、どこでそれを入手したかは今日あなたが提出した資料を調べればそれで済むもの。ただデーターとは別に、その時あなたが感じた生の感想を、お聞かせ願いたいということなの。詳しい理由が必要であれば話すけれど、身の安全は保障できないわよ? よろしいかしら?」
 嘘偽りを全く感じさせない、真摯な口調のジゼルに唐巣は答えた。
「……まあいいさ、それにどうやら始めから、私を巻き込むつもりだったんだろうし」
「あら、そうでもないわよ? 先の質問に、ロバのように答えてもらうだけでも良かったもの。でも、巻き込まれてもらった方が、二つ目の目的も同時に達成できるから、助かるのは本音ね」
 全く悪びれた様子も無く言う彼女に、ついにはさしもの唐巣も苦笑してしまう。
「わかったよ、私の負けでいいから続けてくれ」
「ええ、そうさせていただくわ。でもその前に、何か軽くお腹にいれましょう」
 その台詞に、本当につかみ所の無い女性だと、唐巣は本日何度目かの苦笑いを浮かべた。
 軽食を口にしながら、ジゼルは語る。
「そもそも、人工霊魂。別名“メタソウル”というのは、ご存知かしら?」
「ああ、詳しくは知らないが、耳にした事はある」
 唐巣が答える。
「詳しくは省くけど、人が人工的に生み出した霊魂の一種で、それを使えば無機物にかりそめの命を与えることが出来る代物よ。ただし、簡単そうに聞こえるけれど、それの合成に成功したのは歴史上でただ一人、ヨーロッパの魔王Drカオスのみ。唐巣さんは彼をご存知?」
「ああ、面識は無いがね」
 流石にこの業界にいるので、その名くらいは知っていた。古今東西のオカルト技術に精通した、偉大なる錬金術師。
「で、話は変わって私は人を探しているの、その尋ね人がDrカオスと同じく人工霊魂の合成の研究をしていた。もちろん成功はしていないけれど、不完全ながらも悪霊くずれぐらいまでは形に出来ていたみたい」
「つまり?」
「つまりは、あなたが入手した霊体片が少しでも尋ね人の手がかりになるかも、と思ったのよ。この世に不完全ながらも人工の霊体を作れる人間が、何人いると思って? 未だにその人が研究をしているかは疑問だけど、それでも何の手がかりが無いよりはましということよ」
「……それだけ?」
「ええ、それだけよ。あなたが霊体片を入手したのをどうして知ったかは、企業秘密だけど」
 どうせさまざまな研究所や協会の職員に、先程のような殺し文句を使って情報を集めているのだろうが、それにしても予想していたよりもあっさりと話が終わってしまい、拍子抜けしてしまう。
「なんでそれだけのことに、身の危険だの何だのとぐちゃぐちゃ言ったんだ?」
 唐巣は思わず、いままでの時間はなんだったのかと言いたくなるが、きょとんとした顔のジゼルが心底不思議そうに尋ねた。
「ほんとに分らない?」
「だから何がだ?」
「血の巡りの悪いおっさんだキィ!」
「私はおっさんではない! この悪魔め!」
 余計な一言を言ったベリアルを、ジゼルが例の躾を使い黙らせる。転がったベリアルを無視して彼女は続けた。
「おっさん――失礼。唐巣さんは、Drカオスが合成した人工霊魂が、どうなっているかはご存知?」
「? ああ、確か彼が生み出した人造人間に移植されたとか……」
 先の失言にむっとしつつ、そこまで言った唐巣の顔がみるみる青ざめ、その顔を見たジゼルが満足そうに言う。
「そう、彼が魔王の称号を不動のものにしたといってもいい研究とその成果。Drカオスの鋼鉄の従者、人造人間“マリア” まさに禁断の錬金術ね。ただの鉄の塊が自分の意志で、動いているんですもの。私は直接見たことは無いけれど、それは本当に生きている人間とほとんど区別はつかないそうよ」
 青ざめている唐巣をよそに、さらに続ける。
「機械で出来た人間を生み出し、あまつさえ自我を与える……禁断の科学、錬金術といわずして何と言えばいいか、今の私には適当な言葉が見当たらないわ。ちなみに、こういった研究はそれこそ、ご法度以外の何者でもない国もたくさんあるでしょうね。付け加えるならば、Drカオスが公安のブラックリストに乗ってる国って、けっこうあるそうよ」
 まず間違いなく、Drカオスの入国もその研究もご法度であろう国のカフェで、歪曲に説明を続けるジゼル。
「人工霊魂の出来損ないとはいえ、そんなものにかかわった人間を探している者と、自分からこの件に飛び込んだ者のこの国での行く末を考えると少々不安になりそう」
 唐巣はすでにその皮肉たっぷりの言葉の半分も、耳に入っていなかった。
 まだまだ語られるべきこと聞くべきこと疑問その他がたくさんあったが、今の彼の心を占めていたのは、本当に果し無く厄介なことに首を突っ込んでしまったという実感でしかなかった。
 


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