もう、使われる事もなくなって久しい、廃倉庫。
本来は溢れるほどの荷物を置く場所のはずなのに、何も置かれてない様は、どこかもの悲しい。
屋根の部分はところどころ破れており、そこから入ってくる月明かりのせいか、周りは良く見える。
隅に溜まった埃や、錆びてぼろぼろになった、階段の手すり。
傾きかけたドア。
もう、何年も使われていないのであろう。
女性は、軋むドアを、無理やり動かし倉庫の内部に入っていった。
きょろきょろと、あたりを見回す。
そして、誰も居ない事を確認するとほっと、息をつき、安心したかのように笑う。
あたりには何の音もしない。
聞こえるのは自分の呼吸の音だけ。
女性は、まるで祈るかのように、そうっと瞳を閉じた。
瞼の裏にうつるのは、ひとりの女性。
自分に、最愛の子供を最後に預けてくれた、ひと。
たったひとりの、大切なともだち。
雪之丞に似た、だけどそれよりもっと柔らかく澄んだ瞳の女性。
だらりと、両腕をたらす。
この血を憎んでいた自分に、こともなげに笑って言ってくれたのだ。
両手に霊力を込め、小さな刃物状にし、ざくりと、肩に、突き刺す。
『そんなの、身体を構成してる一部分じゃない?』と
右手の、一指し指を、血で濡らす。
嬉しかった。
ほんとうに、嬉しかった。
なによりも、忌み嫌うこの血を、そんなふうにいってくれたのが。
左手で印を、結ぶ。
たった、それだけと言ってくれたのが、嬉しかった。
そして、今、やっと自分も、すきだと言える。
この血を。
だって、守れるのだから。
血に濡れた指で、真言、自分達にだけに許された、ものを両腕に書く。
この血で、誰よりも、愛しい子を。
男が、そこにたどり着いた時、既に女性は、いた。
月に照らされた女性は、ひどく静かであるのに。
両腕には、赤い呪をつかせ床には、血を落とし、その姿はさながら鬼を思わせる。
「ああ、そおゆう一族でしたね、アナタは」
男はなにか、思い出したかのように、言う。
「忘れてたの?」
もうボケてんじゃないのと笑いながら女性。
と、その瞬間
忘れてませんよ
との声と共に、男は女性の後ろにいた。
女性は反応しきれない。
くっと、身体をねじりよけようとするが、もう、遅い。
ぶしゅっと
肉をたつ、独特の音がする。
血が、床に散らばる。
が、女性は笑っている。
肩を手刀で貫かれたのに、その痛みすら感じていないかのように。
「忘れてるわよ?わたしがどんな、一族の末裔かって」
むしろ、悪戯の成功した、子供のよーに、笑っていた。
つづく
あうあうっらぶです!!!ありがとうございますまじうれしいよおおおおお
…がんばろー…え?今回の出来?………(逃走!!!!! (hazuki)
ゆっきーを無事に育て上げることがゆっきーの生みの母への恩返しだと初めのうちは思っていた。だけどゆっきーとともに過ごしていくにしたがってゆっきーママを徐々にゆっきーのママに変えていったのかなぁ・・・と思ったり。
そう考えると、ゆっきーママって色んなことがあったけどゆっきーの生みの母やゆっきーと出会って強く、そして優しくなった・・・って思考が飛んだりしてw; (NGK)
気になるじゃないですか!! (ウルズ13)