「可哀相にというのならば、そのまま見逃してくれないかしら?」
可愛らしく、首をかしげながら女性は、言う。
手には、ほんの少し霊力をためて。
「駄目ですよ」
笑顔のまま、男は言う。
それは、聞き分けのない子供をたしなめるような優しげな響きを持っているのに、その瞳、そして吊りあがった唇がひどく異質な冷たさを感じる。
「そっおっ!!!!」
言った際、女性は手にしていた霊力を投げる。
しゅんっ
人を殺すまでにはいかないであろうが、傷をつけるには充分な、それ。
もちろんそれは、その男には当たらない。
余裕で、すこしだけ身体をずらしそれを避ける
いや、避けたはずだった。
くんっと
女性は指を動かす、と同時に、ぱあんっという音とともにそれは二つに分裂する。
ひとつは、身体を避けた男に対して
更にもう一つは、窓へと向かって
ぱりいいいんんっ
という音とともに、男への顔面にヒカリがぶつかった。
だんっと
女性は床を蹴り、そのまま男へと向かう
男は、顔を抑え、うめいている─が、その手の平の下にある瞳は光を失っていない。
ぼたりと、男の顔面から滴り落ちる血液が床へと落ている。
きっと、ここで調子にのって攻撃していれば、この男に女性は殺されていただろう。
が女性は、ほんの少しの奇襲に成功したと言って調子に乗るような、馬鹿ではなかった。
だからこそ、ここまで生きてこれたのだろうが。
一瞬も迷わなかった。
それこそ一瞬の迷いもなく女性はがんっと男の顔面を足で踏みつけ逃げた。
ひゅんっと
壊された窓から飛び降り、裸足のままアスファルトの地面を走る。
できるだけ、離れられるように。
もちろん、死ぬつもりなんてないけれども。
なにがなんでも、生き残るつもりだけれども。
それでも、自分が平気でいられるとは、思わなかったのだ。
それは、感情とは別の部分で言う。
思いが弱いわけではない。
諦めているわけでもない。
ただ事実を認められないような、馬鹿ではないということなのだ。
歴然とした、実力差が気力で埋まると言い切れるほど、もう幼くはないのだ。
ならば、離れないと。
できるだけ、愛しい我が子がまきぞえを食らわないように。
「…ほんと。親の鏡だわわたし」
荒い呼吸のなか紡がれる言葉は、ひどく柔らかい。
確かにむかってくる気配を感じながら、女性は、ゆるりと口元を動かし
笑った。
つづく
ゆっきーママ頑張って!!(←応援)
ってまともなコメントになってないなぁこれ(汗 (NGK)